はじめてシーケンス制御を学ぶ前に、まずは基本的な用語を知っておきましょう。シーケンス制御の解説をするには、どうしても電気的な専門用語を使わなければなりません。このページでは、初心者の方でもわかりやすいように、シーケンス制御について基礎的なところから、やさしく解説しています。
シーケンス制御とは?
電気を使って機械設備を自動的に動かすには、電気制御回路が必要です。制御回路は機械設備に行わせる動作や順序を記憶させておき、動作中に危険があれば停止させたり、設定値に近づくとゆっくり動かしたりという風に一連の機械動作を行わせる命令です。こうした動作のことを自動制御といいます。その自動制御を大きく分類すると「シーケンス制御」と「フィードバック制御」に分けることができます。
シーケンス制御とは、「あらかじめ定められた順序または手続きに従って制御の各段階を逐次進めていく制御」と、日本工業規格(JIS)の旧規格 C0401 で定義されています。
フィードバック制御とは、「検出器やセンサーからの信号を読み取り、目標値と比較しながら設備機器を運転し、目標値に近づける」ことを言います。
シーケンス制御は制御系に於いて、フィードバックを伴わない制御のことをいます。出力に対して、目標を達したか否かの検出機構をもっており、その反応に応じて処理の継続と停止を制御する方法です。具体的には、スイッチのON/OFFや、モーターの回転/停止など、制御対象となる現象の有無を制御する方法です。
身近な電気機器を例にすると、洗濯機はシーケンス制御されていて、エアコンはフィードバック制御されているといえます。洗濯機はスタートボタンを押すと、「給水」⇒「洗い」⇒「排水」⇒「脱水」のようにプログラムされた順序通りに自動的に洗濯が進みます。エアコンは部屋の温度を感知しながら、運転の強弱を自動で行っています。これは、部屋の温度が設定温度に近づくようにコントロールしているためです。
このように「自動制御」を2つに分類しましたが、シーケンス制御は「自動操作」と考えたほうがわかりやすいかもしれません。
シーケンス制御の方式
シーケンス制御は主に使用する機器の種類よって、「有接点シーケンス」「無接点シーケンス」「PLCシーケンス」の3つの制御方式に分類することができます。
有接点シーケンス
リレーシーケンス(Relay Sequence)ともいいます。電磁継電器などの有接点リレーをスイッチとして利用し制御する方式です。各制御機器間は電線で接続し、電線の接続図(制御図)を表すにはシーケンス図が用いられます。他の方式と比べて電気的なノイズには強いのですが、機械的な接点のため動作が遅いのが特徴です。
有接点シーケンスの長所
- 過負荷耐量が大きい
- 開閉負荷容量が大きい
- 電気的ノイズに対して安定
- 小電力の入力で大電力を制御できる
- 独立した多数の出力回路を同時に制御できる
- 入力と出力が分離
- 動作状態の確認が容易
- 温度特性が良い
有接点シーケンスの短所
- 消費電力が比較的大きい
- 動作が遅い(数msが限度)
- 接点の消耗や摩耗があり、寿命に限界がある
- 機械的振動、衝撃、引火性ガスなどに比較的弱い
- 外形の小形化に限界がある
無接点シーケンス
ダイオードやトランジスタ、ICなどの半導体論理素子をスイッチとして利用した制御方式です。電圧の高低や電流の方向などで回路や信号の切り換えを行っており、機械的に動く接点はありません。制御図を表すには論理回路図が用いらます。有接点シーケンスと比べて、接点の摩耗がないところは有利ですが、製作が複雑であるため、拡張や変更が容易ではありません。尚、無接点シーケンスのことを、ロジックシーケンス(Logic Sequence)ともいいます。
無接点シーケンスの長所
- 高頻度の使用に耐え、長寿命
- 高感度(数mW以下の入力で動作)
- 動作速度が速い(数ns)
- 耐環境性が高い(機械的振動、じんあい、引火性ガスなど)
- IC化により、複雑な論理判断が可能
- 多数入力、少数出力に有利
- 小形軽量で保守が容易
無接点シーケンスの短所
- 過負荷耐量が小さい
- 電気的ノイズに弱い
- 温度の変化に弱い
- 負荷を直接制御できない
- 安定な別電源が必要
PLC(Programmable Logic Controller)シーケンス
専用のマイクロコンピュータを利用した制御装置のことを「PLC(プログラマブルロジックコントローラ)」または「シーケンサー」といいます。パソコンや専用の入力装置を利用して、制御内容をプログラムによって表現し、これを実行することによりシーケンス制御を行う装置です。制御図を表すにはラダー図が用いらます。
PLCシーケンスの長所
- 接点の寿命がない
- 制御機器間の配線が不要
- 複雑な制御が省スペースで出来る
- ソフトウェアなので量産化が容易
PLCシーケンスの長所
- PLCが壊れると一式交換が必要
- メーカー変更が容易でない
シーケンス制御を理解する上で知っておきたい基本用語
シーケンス制御で使われる用語には、統一したものが使われています。普段から使う用語なのですが、聞き間違えによるヒューマンエラーをなくすために、電気の世界では使う用語を特定しています。例えば「とる」という言葉ですが、電気機器をアース線に接続する際には「接地をとる」と言う場合があります。またアース線を外す場合も「接地をとる」と言う場合があります。このように「接続すること」と「外すこと」が同じ言葉で使われる場合がありますので、紛らわしいので「とる」という言い方はしません。このような間違いを起こさないように使う用語を特定しています。
機能に関する基本用語
- (Action)動作
所定の動作をさせることです。 - (Reset)復帰
動作前の状態に戻すことです。 - (Open)開放・開く
スイッチなどを「切り」電流が流れないようにします。 - (Close)閉路・閉じる
スイッチなどを「入れ」電流が流れるようにします。 - (Start・Run)始動・起動・運転
運転させることです。 - (Stop)停止
停止させることです。 - (Closing)投入
ブレーカーなどを「入れる」ことです。 - (Breking)遮断
ブレーカーなどを「切る」ことです。
シーケンス制御図とは?
シーケンス制御図は配電盤などの電気設備と関連機器や、制御盤と機械設備の動作や機能を電気的に接続して「電気用図記号」を使って表した図面です。設計や維持管理をするためには、シーケンス図の見方や書き方を知っておく必要があります。
シーケンス制御を表す図面の種類
シーケンス制御の動作の流れや機器の接続状況を図面に表す場合は、その目的によってシーケンス制御を理解しやすいように、次のような図面が用いられています。
- シーケンス図(展開接続図)
- 裏面接続図
- フローチャート(ブロックシーケンス)
- タイムチャート
なお、各図面の説明は次のページを参考にしてください。
シーケンス図(展開接続図)
シーケンス制御の動作の順序を正確に理解できるように考えられた電気回路の接続図をシーケンス図または展開接続図といいます。シーケンス図では、構成されている制御機器の機構的な関連は省略して書かれており、スイッチやリレー、ランプなどの制御機器は規格で定められた電気用図記号を用いて表しています。機器を接続する母線の方向が縦書きのものと、横書きのものがあります。ここでは、縦書きのシーケンス図について簡単に説明をします。
- 制御電源は図の上下に横線で示す
- 制御機器などを結ぶ接続線は、上下の制御母線間に縦線で示す
- 接続線は動作の順序に従い左から右に書く
- 制御機器などは、電気用図記号と文字記号を用いる
- 制御機器は休止の状態で、電源を切り離した自然な状態で示す
シーケンス制御は、機械設備を自動的に動かすための制御回路です。機械設備に行わせるための、動作や順序を電気回路を使って記憶させておき、運転や停止などの命令動作を行わせることといえます。
このようにシーケンス図は、シーケンス制御の構成と機能を理解する上でたいへん便利で最もよく利用されています。