マグネットスイッチを使ったシーケンス回路

リレーシーケンス

 電動機の始動方法の一つに「直入れ始動法」という方法があります。マグネットスイッチを投入し、電動機に全電圧をかける方法です。始動操作は簡単ですが、始動トルクや始動電流が大きいため、小容量の電動機に用いられている方法です。このページでは、マグネットスイッチを使ったシーケンス回路の一例として、「直入れ始動法」によるシーケンス回路図をやさしく解説しています。

直入れ始動法によるシーケンス回路の例

 次の図は、最も単純なシーケンス回路の例です。電磁接触器(52-MC)の主接点回路に、サーマルリレー(51-THR)を介して、電動機を接続します。電磁接触器(52-MC)の電磁コイル回路には、電動機始動用の押しボタンスイッチ(BS-1)、電動機停止用の押しボタンスイッチ(BS-2)、過電流保護用のサーマルリレー(51-THR)の接点を接続し、電磁接触器(52-MC)の電磁コイルが補助接点(a接)を介して自己保持するような回路を考えます。

シーケンス図
マグネットスイッチ 配線の例

使用機器の役割

  1. 配線用遮断器(MCCB)
    電気回路の保護に用いられるサーキットブレーカのことです。主回路で電路や電動機に短絡事故が発生した場合には、主回路に大電流が流れるので、火災などの危険を防止するために回路を遮断します。
  2. 電磁接触器(52-MC)
    接点の開閉により電動機を運転停止します。電動機の始動電流を投入できる接点容量のものを選定しなければなりません。
  3. サーマルリレー(51-THR)
    電動機に定格以上の電流が流れた場合に過電流を検出します。過電流が流れると、電動機が損傷する恐れがあるため、回路を遮断します。
  4. 押しボタンスイッチ(BS-□)
    スイッチを押しているときだけ接点が動作する、手動操作自動復帰の構造のスイッチです。スイッチを押すことにより電磁接触器のコイルを励磁または消磁させます。

マグネットスイッチを使ったシーケンス回路の動作

  1. 押しボタンスイッチ(BS-1)を押すと、電磁接触機(52-MC)の電磁コイルに電流が流れます。
  2. 電磁接触機(52-MC)の電動機を接続した主接点(a接)と補助接点(a接)は閉じます。主接点を通って電動機は運転し、補助接点で自己保持します。
  3. 押しボタンスイッチ(BS-2)を押すと自己保持が解かれ、電磁接触機(52-MC)の電磁コイルは復帰し、電動機は停止します。

回路の注意点

  • サーマルリレー(51-THR)は機器の保護用です。過電流を検出して、サーマルリレーがトリップすると電動機が運転できない回路となっています
  • シーケンス図中の●は接続箇所を示しています。線は交差しているものの、●のない箇所は配線は接続されていません。
  • (1)~(5)は配線番号を示します。実際の回路では、見た目で何の配線かわかりやすいように記号と併用して、配線番号は示されています。
  • 52-MCや51-THRのように数字で表されている部分は、JEMで標準規格化された、自動制御器具番号から付けられた数字です。

 直入れ始動法によるシーケンス回路の例で、マグネットスイッチのコイル配線(52-MC)は、電源のS相に接続されています。これは、操作回路のスイッチなどが地絡を起こした場合に、コイルに電流が流れるのを防止するためです。

実際の配線図例(実体配線図)

マグネットを使った回路

 赤・白・青で接続された配線は、電動機を接続する主回路用の配線です。線番1~5で示された配線は制御回路用の配線です。解りやすいように制御回路については5色使っていますが、実際には同じ色の配線が使われます。尚、交流の制御回路は黄色の配線で、直流の制御回路は青色の配線が使われることが多いです。

 以上がマグネットスイッチを使ったシーケンス回路として一番単純な、「直入れ始動法」による回路の説明です。この回路を基本にして、運転中や停止中のランプを点灯させたり、警報回路を組んだりして、実際に使用できる回路へと豊富化を図ります。

リレーシーケンス
シェアする
cubeをフォローする
基礎からわかる電気技術者の知識と資格