磁力線と磁束

理論

このページでは、磁力線と磁束について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。

磁極と磁荷

磁石は鉄やニッケルを引き付けます。この力を磁力といい、磁力の元になる性質を磁気といいます。磁石は、常に磁気を帯びた永久磁石と、巻き付けたコイルに電流を流したときにだけ磁気を帯びる電磁石があります。

永久磁石の磁力は先端部で強くなります。この鉄やニッケルを引き付ける部分を磁極といいます。磁極にはN極(+極)とS極(-極)があり、互いに力を及ぼします。同種の磁極は反発し、異種の磁極は引き合います。

磁極の間にはたらく力は、磁気が磁極にあるためです。この磁気の量を「磁荷」または「磁気量」といい、$ m$(単位:ウエーバー[Wb])で表します。一つの磁石でN極とS極にある磁荷の絶対値は等しいと考えられています。

磁荷は静電界における電荷と似ていますが重大な違いがあります。電荷は正電荷や負電荷が単独で存在できますが、磁極のN極とS極は常に一対で存在し、単独では存在しません。また、磁石を細かく砕いても、N極とS極をもつ小さな磁石になり、単一の磁極をもった磁石にはなりません。

磁気力

磁極と磁極の間にはたらく力を磁気力(=磁力=電磁力)といいます。その大きさは、それぞれが持つ磁荷の積に比例し、距離の2乗に反比例します。これを磁気に関するクーロンの法則といい、次の式で表します。

磁気に関するクーロンの法則
磁気に関するクーロンの法則

$ F=\displaystyle \frac{ 1 }{ 4πμ_{ 0 } }\frac{ m_{ 1 }m_{ 2 } }{ r^2}$

$ F$:力の大きさ 単位:ニュートン[N]
$ m_{ 1 }、m_{ 2 }$:二つの磁荷の量 単位:ウエーバー[Wb]
$ r$:二つの磁荷間の距離 単位:メートル[m]

$ μ_{ 0 }$ (ミューゼロ)は真空の透磁率と呼ばれる定数です。透磁率は磁界の強さがどれだけ空間に及ぶのかを表しています。空気中でもほぼ同じ値になります。尚、真空の透磁率は次の値を持ちます。

$ μ_{ 0 }=4π×10^{ -7}  $[H/m](ヘンリー毎メートル)

透磁率

磁石が置かれる空間は真空中だけではありません。真空中以外にある場合は働く大きさが異なってきます。また、真空は磁化するものではありません。便宜上、真空の透磁率$ μ_{ 0 }$ というものが定められています。

ある物質の磁化のしやすさを表す値として、透磁率μ(ミュー)(単位:ヘンリー毎メートル[H/m])で表します。透磁率は磁化しやすい物質ほど値が大きくなります。

各物質の透磁率は異なりますので、真空の透磁率と比較した値である比透磁率で表すことで数値的な比較をします。誘電率に対する比誘電率と同じです。比透磁率を表す記号は$ μ_{ S }$ を使います。$ μ_{ S }$ は比率を表す量記号ですので、単位はありません。

比透磁率 $ μ_{ S } =\displaystyle \frac{ μ }{ μ_{ 0 } }$

磁界と磁力線

静電気力は、電荷のまわりにできる電界によって伝えられます。それと同様に、磁荷のまわりの空間を磁界(磁場)といいます。磁界によって磁極の間に力が伝えられると考えられています。磁界の大きさと向きは、1Wb の N極を置いたときに受ける力とその向きです。N極の磁極が右に行こうとするときは磁場の向きは右向きです。

磁界の強さは $H$(単位:ニュートン毎ウェーバ [N/Wb]) で表されます。

$ F=mH$[N]

磁界の様子を表すのに、電界における電気力線に相当するのが磁束線です。磁力線の性質は電気力線の性質と同じです。

  • 磁力線はN極から出て、S極に入ります。
  • 磁力線の接線の方向は、その点での磁界の方向です。
  • 磁力線は途中で折れ曲がったり、枝分かれしたり、交わることはありません。
  • 磁界の強いところほど、磁力線は密になります。
  • 磁力線の密度と磁界の強さは一致しています。
磁束線

  

磁束と磁束密度

磁力線が束になったものを「磁束」といい、単位面積あたりの磁力線の数を「磁束密度」といいます。

磁束は記号 $ϕ$(ファイ)(単位:ウェーバ [Wb])で表されます。磁束は大きさだけで、方向のないスカラー量です。

磁束密度 は記号B (単位:テスラ [T])で表されます。磁束密度は、磁界の強さ H [A/m] と透磁率 μ をかけたもので方向性のあるベクトル量です。

磁束密度 $ B=μH$[T]
磁束   $ϕ=BS$[Wb]

尚、磁束は磁束密度と面積が直交している必要があります。

磁極により生じる磁界の強さ

磁力を帯びている磁極の周りには磁界が発生します。その磁極により生じる磁界の強さ $H$[N/Wb]または、[A/m]は、次の式で表します。

真空中において、磁極 $m$[Wb] から $r$[m]離れた地点の磁界の強さ $H$[A/m]は、

$H=\displaystyle \frac{ 1 }{ 4πμ{ 0 } }\frac{ m}{ r^2}$[A/m]

$ H$:磁界の強さ 単位:[N/Wb]または[A/m]
$ m$:磁極の強さ 単位:ウエーバー[Wb]
$ r$:磁極からの距離 単位:メートル[m]

理論電験3種
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