押しボタンスイッチとは?(接点記号と配線図)

リレーシーケンス

押しボタンスイッチは、人の手で操作することで、ON/OFFするスイッチです。押しボタンスイッチはシーケンス制御で必ず理解をしておかなければならない「接点」についてよくわかる制御機器です。押しボタンスイッチを題材にして接点の理解を深めましょう。

押しボタンスイッチの構造

押しボタンスイッチは人の手の操作によりON/OFFするスイッチで、制御回路に広く用いられています。押しボタンスイッチは、接点の動作状態から自動復帰形(モーメンタリ動作)と保持型(オルタネイト動作)に分けることができます。

自動復帰形(モーメンタリ動作)

ボタンを押している時だけ、接点が開または閉となり、手を放すとバネの力で元に戻る接点を持つスイッチです。シーケンス制御では、このスイッチがよく使われています。接点とは、電気回路間に電流を流したり、遮断したりする接触部分のことをいいます。

自動復帰形(モーメンタリ動作)
自動復帰形(モーメンタリ動作)

保持型(オルタネイト動作)

ボタンを1回押すと、接点が開または閉となり、そのままの状態で保持します。2回目の押し操作でロックが解除されて、接点が元に戻るスイッチです。

保持型(オルタネイト動作)
保持型(オルタネイト動作)

押しボタンスイッチの接点

シーケンス制御で用いるスイッチやリレーなどの接点には、a接点とb接点があります。自動復帰形の押しボタンスイッチを例にして、a接点とb接点の動作を説明します。

a接点の押しボタンスイッチ

押しボタンスイッチを押すと接点が閉じ、手を放すと接点が開くスイッチをa接点の押しボタンスイッチといいます。スイッチは通常状態では、接点が開いているので接続端子間は導通しません。ボタンを押している間は、可動接点と固定接点がくっつき、接続端子間は導通します。尚、「導通」とは、「電気を通すこと」をいいます。

a接点の押しボタンスイッチ
a接点の押しボタンスイッチ

b接点の押しボタンスイッチ

b接点の押しボタンスイッチ
b接点の押しボタンスイッチ

押しボタンスイッチを押すと接点が開き、手を放すと接点が閉じるスイッチをb接点の押しボタンスイッチといいます。スイッチは通常状態では、接点が閉じており接続端子間は導通します。ボタンを押している間は、可動接点と固定接点が離れ、接続端子間は導通しません。

接点の呼び方

a接点は、働く接点(arbit contact アルバイトコンタクト)という意味です。また、常時開いている接点(Normal Open)という意味もあり、その英字の頭文字をとり「NO接点」ともいいます。JIS C 0617 ではメーク接点(make contact メークコンタクト)と呼称されています。

b接点は、途切れる接点(break contact ブレークコンタクト)という意味です。また、常時閉じている接点(Normal Close)という意味もあり、その英字の頭文字をとり「NC接点」ともいいます。JIS C 0617 ではブレーク接点(break contact ブレークコンタクト)と呼称されています。

さらに、一つのスイッチでa接点、b接点の両方を備えた「c接点」(change over contact チェンジオーバーコンタクト)というものもあります。JIS C 0617 では切替接点(change over contact チェンジオーバーコンタクト)と呼称されています。

押しボタンスイッチのシーケンス図(接点記号)

押しボタンスイッチをシーケンス図で表すと下図のようになります。電気機器は電気回路図を書く時にわかりやすいように、IEC(国際電気標準会議)で決められたシンボルである「電気用図記号」使って表します。

a接点記号とb接点記号
a接点記号とb接点記号

押しボタンスイッチの接点の図記号は、見た目でわかりやすいように、接点の図記「/」と押し操作記号「…E」を組み合わせて表します。

押しボタンスイッチの動作と配線図

押しボタンスイッチが「ON動作」や「OFF信号」をつくる開閉信号として動作する回路について紹介します。

押しボタンスイッチのa接点の「ON動作」

次の図は、押しボタンスイッチのa接点を使ってランプを点灯する配線図の例です。入力信号として押しボタンスイッチを押すと、a接点が閉じて出力信号のランプが点灯します。このような回路路をa接点の「ON動作」といいます。

a接点の「ON動作」配線図
a接点の「ON動作」配線図

ON動作の順序

  1. 押しボタンスイッチを押す
  2. 押しボタンスイッチのa接点が閉じる(ONする)
  3. a接点が閉じると、電流が流れる
  4. 配線を通って電流が流れるので、ランプが点灯する

a接点の「ON動作」は、設備機器の始動信号としてよく用いられています。

押しボタンスイッチのb接点の「OFF動作」

次の図は、押しボタンスイッチのb接点を使ってランプを消灯する配線図の例です。入力信号として押しボタンスイッチを押すと、b接点が離れて出力信号のランプが消灯します。このような回路路をb接点の「OFF動作」といいます。

b接点の「OFF動作」配線図
b接点の「OFF動作」配線図

OFF動作の順序

  1. 押しボタンスイッチを押す
  2. 押しボタンスイッチのb接点が開く(OFFする)
  3. b接点が開くと、電流が流れなくなる
  4. 配線に通っていた電流が流れなくなるので、ランプが消灯する

b接点の「OFF動作」は、設備機器の停止信号としてよく用いられています。

押しボタンスイッチの用途と種類

押しボタンスイッチは、用途に応じて使い分けができるように、様々な色と種類があります。ここでは色と種類について、簡単に説明します。

ボタンの色と用途

ボタンの色には、規格で定められた意味があります。用途に応じて使い分けをします。

意味説明用途の例
非常危険状態及び非常時に操作・非常停止
・非常機能の開始
異常異常状態に操作・異常状態を抑制するために開始
・中断した自動サイクルの再起動
安全安全状態に操作
正常状態を準備する操作
強制強制的アクションを要する状態の場合に操作・リセット機能
特になし機能の開始時に操作(非常停止以外)・始動/オン(望ましい)
・停止/オフ
特になし機能の開始時に操作(非常停止以外)・始動/オン
・停止/オフ
特になし機能の開始時に操作(非常停止以外)・始動/オン
・停止/オフ(望ましい)

押しボタンスイッチの種類

押しボタンスイッチ押しボタンスイッチ(push-button)
人体の部分、通常は手の指又は手のひらによって加えられる力で作動する操作部と蓄積エネルギー(スプリング)復帰を備えている制御スイッチ。
引きボタンスイッチ引きボタンスイッチ(pull-button)
手動引張りによって作動し、蓄積エネルギー(スプリング)復帰を備えている制御スイッチ。
押し引きボタンスイッチ押し引きボタンスイッチ(push-pull-button)
手動プッシュによって作動し、手動プルによって元の位置に復帰し、又はその逆に作動する操作部を備えた制御スイッチ。この他に、“プッシュ-プッシュ”又は“プッシュ-ターン”、その他のボタン組合せがある。
ラッチ付き押しボタンスイッチラッチ付き押しボタンスイッチ(latched push-button)
スプリング復帰を備えているが、別の操作でラッチが開放されるまでは作動された位置に保持されたままでいるスプリング復帰付き押しボタンスイッチ。ラッチングは同じ押しボタン又はその近くの押しボタンの、電磁石の作用などによる事後の起動(押し、回転など)によって開放される。
ロック付き押しボタンスイッチロック付き押しボタンスイッチ(locked push-button)
別の操作によって、1か所以上の位置において固定することのできる押しボタンスイッチ。ロッキングはボタンの回転、かぎの回転、レバーの回転などによって行なうことができる。
鍵付き押しボタンスイッチかぎ付き押しボタンスイッチ(key operated push-button)
かぎが挿入されている間だけ限定操作され得る押しボタンスイッチ。かぎ引抜きは、任意の位置で行うことができる。
限時押しボタンスイッチ(delayed action push-button)
ボタン上の力が所定の時間保持されるまでは開閉作動を行わない押しボタンスイッチ。
セレクタスイッチセレクタスイッチ(selector switch)
手動回転によって作動する操作部を備え、プッシュボタン用開閉素子からなるスイッチ。ロータリプッシュボタンスイッチは、2以上の位置を備える。スプリング復帰を備えても備えなくてもよい。
照光押しボタンスイッチ照光押しボタンスイッチ(illuminated push-button)
押しボタン内に信号ランプを内蔵している押しボタンスイッチ。小形押しボタンスイッチの表示・操作面の形状は、丸形、正方形、長方形の 3 種類がある。
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