送配電線路の中性点接地と非接地方式

電力

このページでは、送配電線路の中性点接地と非接地方式について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の電力科目の試験で、実際に出題された送配電線路の中性点接地と非接地方式の過去問題も解説しています。

送電系統の中性点接地

送電線路の中性点は一般に接地が行われています。中性点を接地する目的は次の通りです。

  • 地絡故障に起因する異常電圧(過電圧)の発生を抑制する。
  • 地絡電流を抑制して故障の拡大や被害の軽減を図る。
  • 地絡事故時に保護継電器の動作を確実にし、故障区間を早期に除去する。

直接接地方式

中性点を、直接導体で接地する方式です。187[kV]以上の超高圧送電系統に採用されています。

直接接地方式
直接接地方式

特徴

  • 1線地絡事故が発生しても、健全相の対地電圧はほとんど上昇しませんので、線路や機器の絶縁レベルを下げることができます。
  • 事故時の地絡電流が大きいため、保護継電器の動作が確実になります。
  • 地絡電流が大きいので、機器への衝撃や損傷が大きくなり、通信線(弱電線)等に大きな電磁誘導障害を誘起して、障害を与える危険性があります。そのため高速度遮断器等の設置が必要となります。

抵抗接地方式

中性点を、100[Ω]から1[kΩ]程度の抵抗で接地する方式です。抵抗の大きさにより低抵抗接地方式と高抵抗接地方式に分類されます。66[kV]から154[kV]の送電線路に採用されています。

抵抗接地方式
抵抗接地方式

特徴

  • 1線地絡事故が発生した場合、健全相の対地電圧が上昇しますので、線路や機器の絶縁レベルを下げることができません。
  • 直接接地方式と比べると、1線地絡時の地絡電流は小さくなります。
  • 通信線に対する誘導障害は直接接地方式より少なくなります。

リアクトル接地方式

中性点をリアクトルで接地する方式です。消弧リアクトル接地方式と補償リアクトル接地方式があります。

リアクトル接地方式
リアクトル接地方式

消弧リアクトル接地方式

消弧リアクトル接地方式は、送電線の対地静電容量と並列共振するように設定されたリアクトルで接地する方式です。対地容量とリアクトルの共振作用により地落電流がゼロになり、アークが自然消弧するのが特徴です。これにより線路や機器に与える影響は小さくなります。

しかし、消弧リアクトル接地方式は高価なことと、調整が煩雑なため、新たな採用は多くはありません。

補償リアクトル接地方式

抵抗接地方式をケーブルや長距離送電線に適用する場合、対地静電容量が大きくなり、1線地絡事故時には大きな地絡電流が流れ、保護継電器の適用が難しくなります。これを補償するために、抵抗と並列にリアクトルを設置し、保護継電器の動作の安定化を図ります。

非接地方式

中性点を接地しない方式です。送電電圧が低く、線路こう長が短い高圧配電線路に多く採用されています。

非接地方式
非接地方式

特徴

  • 1線地絡事故が発生すると、健全相の対地電圧が相電圧の$\sqrt{ 3 }$ 倍になります。
  • 対地静電容量が小さいので、地絡電流が小さくなり、通信線への電磁誘導障害が生じにくくなります。
  • 間欠アークによる対地電圧の累積作用により、異常電圧が発生する場合があります。

  

電験三種-電力(送配電)過去問題

1997年(平成9年)問9

中性点非接地方式の三相3線式高圧配電線路で地絡事故を生じた。地絡電流の大きさに大きく関係するものは、線路の対地電圧のほか、次のうちどれか。

  1. 電線の抵抗
  2. 対地静電容量
  3. 対地リアクタンス
  4. 負荷電流
  5. 線路の漏れ抵抗

1997年(平成9年)問9 過去問解説

地絡電流の大きさは対地静電容量に関係します。

答え (2)

1999年(平成11年)問10

次の記述は、我が国で一般的に用いられている非接地三相3線式の高圧配電方式に関するものである。誤っているのは次のうちどれか。

  1. 高圧配電線は、多くの場合、配電用変電所の変圧器二次側Δ巻線から引き出されている。
  2. 一般に1線地絡事故時の地絡電流は十数アンペア程度であり、中性点接地高圧配電方式に比べて小さい。
  3. 1線地絡故障中の健全相対地電圧は、正常運転時と同じである。
  4. 地絡事故時の選択遮断方式は、中性点接地高圧配電方式に比べて複雑になる。
  5. 高圧と低圧が混触した場合、低圧電路の対地電圧の上昇は、中性点接地高圧配電方式に比べ小さい。

1999年(平成11年)問10 過去問解説

1線地絡故障中の地絡線の対地電圧はゼロとなります。健全相の対地電圧が相電圧の $\sqrt{ 3 } $ 倍となります。

答え (3)

2001年(平成13年)問7

電力系統の中性点接地方式に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

  1. 直接接地方式は、他の中性点接地方式に比べて、地絡事故時の地絡電流は大きいが健全相の電圧上昇は小さい。
  2. 消弧リアクトル接地方式は、直接接地方式や抵抗接地方式に比べて、一線地絡電流が小さい。
  3. 非接地方式は、他の中性点接地方式に比べて、地絡電流及び短絡電流を抑制できる。
  4. 抵抗接地方式は、直接接地方式と非接地方式の中間的な特性を持ち、154[kV]以下の特別高圧系統に適用されている。
  5. 消弧リアクトル接地方式及び非接地方式は、直接接地方式や抵抗接地方式に比べて、通信線に対する誘導障害が少ない。

2001年(平成13年)問7 過去問解説

短絡電流は接地方式に関係なく抑制できません。

答え (3)

2005年(平成17年)問10

送配電線路に接続する変圧器の中性点接地方式に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

  1. 非接地方式は、高圧配電線路で広く用いられている。
  2. 消弧リアクトル接地方式は、電磁誘導障害が小さいという特徴があるが、設備費は高めになる。
  3. 抵抗接地方式は、変圧器の中性点を 100[Ω]から 1[kΩ]程度の抵抗で接地する方式で 66[kV]から 154[kV]の送電線路に主に用いられている。
  4. 直接接地方式や低抵抗接地方式は、接地線に流れる電流が大きくなり、その結果として電磁誘導障害が大きくなりがちである。
  5. 直接接地方式は、変圧器の中性点を直接大地に接続する方式で、その簡便性から電圧の低い送電線路や配電線路に広く用いられている。

2005年(平成17年)問10 過去問解説

直接接地方式のは、187[kV]以上の超高圧送電系統に採用されています。

答え (5)

2007年(平成19年)問13

わが国の高圧配電系統では、主として三相3線式中性点非接地方式が採用されており、一般に一線地絡事故時の地絡電流は( ア )アンペア程度であることから、配電用変電所の高圧配電線引出口には、地絡保護のために( イ )継電方式が採用されている。
低圧配電系統では、電灯線には単相3線式が採用されており、単相3線式の電灯と三相3線式の動力を共用する方式として( ウ )も採用されている。
柱上変圧器には、過電流保護のために( エ )が設けられ、柱上変圧器内部及び低圧配電系統内での短絡事故を高圧配電系統側に波及させないよう施設している。

上記の記述中の空欄箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

 (ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)百~数百過電流V結線三相4線式高圧カットアウト
(2)百~数百地絡方向Y結線三相4線式配線用遮断器
(3)数~数十地絡方向Y結線三相4線式高圧カットアウト
(4)数~数十過電流V結線三相4線式配線用遮断器
(5)数~数十地絡方向V結線三相4線式高圧カットアウト

2007年(平成19年)問13 過去問解説

わが国の高圧配電系統では、主として三相3線式中性点非接地方式が採用されており、一般に一線地絡事故時の地絡電流は( 数~数十 )アンペア程度であることから、配電用変電所の高圧配電線引出口には、地絡保護のために( 地絡方向 )継電方式が採用されている。
低圧配電系統では、電灯線には単相3線式が採用されており、単相3線式の電灯と三相3線式の動力を共用する方式として( V結線三相4線式 )も採用されている。
柱上変圧器には、過電流保護のために( 高圧カットアウト )が設けられ、柱上変圧器内部及び低圧配電系統内での短絡事故を高圧配電系統側に波及させないよう施設している。

配電用変電所においては、地絡保護のために、「地絡方向継電方式」が採用されています。

柱上変圧器は二台の単相変圧器をV結線として変則V結線三相4線式として利用されています。また、変圧器内部の短絡事故の一次側配電系統への波及を防止するために、高圧カットアウトが用いられています。

答え (5)

2010年(平成22年)問8

一般に、三相送配電線に接続される変圧器は△-Y 又は Y-△結線されることが多く、Y 結線の中性点は接地インピーダンス Znで接地される。この接地インピーダンス Znの大きさや種類によって種々の接地方式がある。中性点の接地方式に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。

  1. 中性点接地の主な目的は,1線地絡などの故障に起因する異常電圧(過電圧)の発生を抑制したり、地絡電流を抑制して故障の拡大や被害の軽減を図ることである。中性点接地インピーダンスの選定には,故障点のアーク消弧作用、地絡リレーの確実な動作などを勘案する必要がある。
  2. 非接地方式(Zn→∞)では、1線地絡時の健全相電圧上昇倍率は大きいが、地絡電流の抑制効果が大きいのがその特徴である。わが国では、一般の需要家に供給する 6.6[kV]配電系統においてこの方式が広く採用されている。
  3. 直接接地方式(Zn→0)では、故障時の異常電圧(過電圧)倍率が小さいため、わが国では、187[kV]以上の超高圧系統に広く採用されている。一方、この方式は接地が簡単なため、わが国の 77[kV]以下の下位系統でもしばしば採用されている。
  4. 消弧リアクトル接地方式は、送電線の対地静電容量と並列共振するように設定されたリアクトルで接地する方式で、1線地絡時の故障電流はほとんど零に抑制される。このため、遮断器によらなくても地絡故障が自然消滅する。しかし、調整が煩雑なため近年この方式の新たな採用は多くない。
  5. 抵抗接地方式(Zn=ある適切な抵抗値 R[Ω])は、わが国では主として 154[kV]以下の送電系統に採用されており、中性点抵抗により地絡電流を抑制して、地絡時の通信線への誘導電圧抑制に大きな効果がある。しかし,地絡リレーの検出機能が低下するため,何らかの対応策を必要とする場合もある。

2010年(平成22年)問8 過去問解説

直接方式は 187[kV]以上の超高圧送電系統に採用されています。66[kV]から 154[kV]系統では抵抗接地方式が採用されています。

答え (3)

2014年(平成26年)問11

次の文章は、配電線路の接地方式や一線地絡事故が発生した場合の現象に関する記述である。

a.高圧配電線路は多くの場合、配電用変電所の変圧器二次側の( ア )から3線で引き出され、( イ )が採用されている。
b.この方式では、一般に一線地絡事故時の地絡電流は( ウ )程度のほか、高低圧線の混触事故の低圧側対地電圧上昇を容易に抑制でき、地絡事故中の( エ )もほとんど問題にならない。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)Δ結線直接接地方式数百~数千アンペア健全相電圧上昇
(2)Δ結線非接地方式数~数十アンペア通信障害
(3)Y結線直接接地方式数~数十アンペア通信障害
(4)Δ結線非接地方式数百~数千アンペア健全相電圧上昇
(5)Y結線直接接地方式数百~数千アンペア健全相電圧上昇

2014年(平成26年)問11 過去問解説

a.高圧配電線路は多くの場合、配電用変電所の変圧器二次側の( Δ結線 )から3線で引き出され、( 非接地方式 )が採用されている。
b.この方式では、一般に一線地絡事故時の地絡電流は( 数~数十アンペア )程度のほか、高低圧線の混触事故の低圧側対地電圧上昇を容易に抑制でき、地絡事故中の( 通信障害 )もほとんど問題にならない。

配電線路は送電線路に比べて電圧が低いので,一般には△結線が採用されています。

答え (2)

電力電験3種
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