第三種電気主任技術者(電験三種)試験に独学で合格できるよう、分野ごとに「考え方」や「解き方」の解説と過去問題をまとめています。このページで、電験三種の理論科目に出題される単相交流の並列共振回路の消費電力について、初心者の方でも解りやすく、基礎から勉強できます。また、電験三種の理論科目の試験で、実際に出題された単相交流の並列共振回路の過去問題も解説しています。
$RLC$ 並列回路の共振
図のように抵抗 $R$、コイル $L$ 、コンデンサ $C$ を並列接続したときの合成アドミタンス $\dot{Y}$ とその大きさ $Y$ は、次のように表すことができます。
$\dot{Y}=\displaystyle \frac{ 1 }{ R }+\displaystyle \frac{ 1 }{ jωL }+jωC$
$Y=\displaystyle\sqrt{ \left(\frac{ 1 }{ R }\right)^2+\left(ωC-\displaystyle \frac{ 1 }{ωL }\right)^2}$
各周波数が、
$ω_0=\displaystyle \frac{ 1 }{ \sqrt{LC} }$
の条件を満たすとき、
$ω_0L=\displaystyle \frac{ 1 }{ ω_0C }$
となります。このとき、アドミタンスの大きさ $Y$ は、最小値 $Y_{min}$ になります。
$Y_{min}=\displaystyle \frac{1}{R}$
回路に流れる電流の大きさ $I$ は、
$I=Y×V=\displaystyle\sqrt{ \left(\frac{ 1 }{ R }\right)^2+\left(ωC-\displaystyle \frac{ 1 }{ωL }\right)^2}×V$
で、表すことができますので、各周波数 $ω_0$ のとき、回路に流れる電流は最小値 $I_{min}$ になります。
$I_{min}=Y_{min}×V=\displaystyle\frac{V}{R}$
このように、並列回路で電流が最小値になる現象を共振といいます。また、共振が起こる角周波数 $ω_0$ を「共振角周波数」といいます。共振が起きたときの、フェーザ図を次に示します。
共振が起きたときにコイルとコンデンサに流れる電流は、
$\dot{I_C}=jωC\dot{V}$
$\dot{I_L}=-j\displaystyle\frac{\dot{V}}{ωL}$
になります。$I_C$ と $I_L$ は、大きさが等しくまた、逆相となりますので、互いに打ち消しあいます。したがって、電源電圧 $V$ と抵抗に流れる電流 $I_R$ は同相になります。
電験三種-理論の過去問解説:単相交流の並列共振回路
(財)電気技術者試験センターが作成した、第三種電気主任技術者試験の理論科目で出題された問題です。
2002年(平成14年)問8【電験理論の過去問題】
図のような $RLC$ 交流回路がある。この回路に正弦波交流電圧 $E=100$[V]を加えたとき、可変抵抗 $R$[Ω]に流れる電流 $I$[A]は零であった。また、可変抵抗 $R$[Ω]の値を変えても $I$[A]の値に変化はなかった。このとき、容量性リアクタンス $X_C$[Ω]の端子電圧 $V$[V]とこれに流れる電流 $I_C$[A]の値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
ただし、誘導性リアクタンス $X_L=20$[Ω]とする。
電源からの電流が零ということは、$LC$ の回路が共振状態であることを示しています。$LC$ の並列回路のインピーダンスは無限大となり、$V=100$[V]となります。
したがって、コイル $X_L$ 及び コンデンサ $X_C$ に流れる電流は、$\displaystyle \frac{ 100 }{ 20 }=5$[A]になります。
答え (3)
2008年(平成20年)問8【電験理論の過去問題】
図のように、正弦波交流電圧 $e= E_msinωt$ [V]の電源、静電容量 $C$ [F]のコンデンサ及びインダクタンス $L$ [H]のコイルからなる交流回路がある。
この回路に流れる電流 $i$ [A]が常に零となるための角周波数 $ω$[rad/s]の値を表す式として、正しいのは次のうちどれか。
回路に流れる電流 $i$ [A]が常に零になるということは、共振を起こしているということです。したがって、
$\displaystyle\frac{1}{ωL}=ωC$
$ω=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{LC}}$
答え (1)
2010年(平成22年)問13【電験理論の過去問題】
図1は、静電容量 $C$[F]のコンデンサとコイルからなる共振回路の等価回路である。このようにコイルの内部抵抗 $r$[Ω]が存在する場合は、インダクタンス $L$[H]と抵抗 $r$[Ω]の直列回路として表わすことができる。この直列回路はコイルの抵抗 $r$[Ω]が、誘導性リアクタンス $ωL$[Ω]に比べて十分小さいものとすると、図2のように、等価抵抗 $R_p$[Ω]とインダクタンス $L$[H]の並列回路に変換することができる。このときの等価抵抗 $R_p$[Ω]の値を表わす式として、正しいのは次のうちどれか。
ただし、$I_C$[A]は電流源の電流を表わす
図1の抵抗 $r$[Ω]と、インダクタンス $L$[H]の合成インピーダンスを $Z_1$[Ω]とすると、
$Z_1=r+jωL$[Ω]
図2の等価抵抗 $R_p$[Ω]とインダクタンス $L$[H]のの合成インピーダンスを $Z_2$[Ω]とすると、
$Z_2=\displaystyle\frac{jωR_pL}{R_p+jωL}$[Ω]
題意より
$Z_1=Z_2$
$r+jωL=\displaystyle\frac{jωR_pL}{R_p+jωL}$
$(r+jωL)(R_p+jωL)=jωR_pL$
$rR_p+jωrL+jωR_pL-ω^2L^2=jωR_pL$
$R_p=\displaystyle\frac{ω^2L^2-jωrL}{r}$
コイルの抵抗 $r$[Ω]は、誘導性リアクタンス $ωL$[Ω]に比べて十分小さいので、
$R_p≒\displaystyle\frac{(ωL)^2}{r}$
答え (4)
2016年(平成28年)問9【電験理論の過去問題】
図のように、$R=1Ω$ の抵抗、インダクタンス $L_1=0.4mH$、$L_2=0.2mH$のコイル、及び静電容量 $C=8μF$ のコンデンサからなる直並列回路がある。この回路に交流電圧 $V=100V$ を加えたとき、回路のインピーダンスが極めて小さくなる直列共振角周波数 $ω_1$ の値 [rad/s]及び回路のインピーダンスが極めて大きくなる並列共振角周波数 $ω_2$ の値 [rad/s] の組合せとして、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
回路の合成インピーダンス $\dot{Z}$[Ω]は、
$\begin{eqnarray}\dot{Z}&=&R+jωL_1+\displaystyle\frac{1}{jωC+\displaystyle\frac{1}{jωL_2}}
\\\\&=&R+jωL_1+\displaystyle\frac{jωL_2}{j^2ω^2CL_2+1}
\\\\&=&R+jω\left(L_1+\displaystyle\frac{L_2}{1-ω^2CL_2}\right)\end{eqnarray}$
直列共振は虚数部が0になるときですので、
$L_1+\displaystyle\frac{L_2}{1-ω^2CL_2}=0$
$ω^2CL_1L_2=L_1+L_2$
$\begin{eqnarray}ω&=&\displaystyle\sqrt{\displaystyle\frac{L_1+L_2}{CL_1L_2}}
\\\\&=&\displaystyle\sqrt{\displaystyle\frac{0.4×10^{-3}+0.2×10^{-3}}{8×10^{-6}×0.4×10^{-3}×0.2×10^{-3}}}\\\\&≒&3.06×10^4[rad/s]\end{eqnarray}$
並列共振するためには、
$\begin{eqnarray}ω&=&\displaystyle\frac{1}{\sqrt{L_2C}}
\\\\&=&\displaystyle\frac{1}{\sqrt{0.2×10^{-3}×8×10^{-6}}}\\\\&≒&2.5×10^4[rad/s]\end{eqnarray}$
答え (5)
電験三種の理論科目に出題される「単相交流分野」のページ
1.正弦波交流の波形
2.単相交流の直列回路
3.単相交流の並列回路
4.RLC直列共振回路
5.RLC並列共振回路
6.単相交流の電力と力率
電験三種の理論科目に出題される「三相交流分野」のページ
1.三相交流回路
2.三相交流の電力と力率