電験三種の法規で出題される工事計画及び検査について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の試験で、実際に出題された過去問題も解説しています。
工事計画
工事計画とは、電気工作物の新・増設の際、保安上の問題がないかどうかを工事を着手する前に審査するために作成するものです。重要な電気工作物や規模の大きい電気工作物、複雑な電気工作物は、工事を着手する前に工事計画を作成し、認可または事前届出を行い、技術基準に適合しているかどうかを確認する必要があります。
事業用電気工作物の設置者が電気工作物の設置または変更の工事を行う場合には、その工事の内容、規模によって、規制を受けることになります。
認可が必要な工事
一般的に、電圧が高く、出力、容量等の規模の大きい送電線路、変電所および需要設備等の電気工作物、高圧、高温、高速等の危険の度合いの大きい機器のある発電所等の電気工作物などが対象になります。具体的には、電気工作物の電圧、出力、最大電力等で決められています。例としては、次の通りです。
出力 20[kW]以上の発電所の設置であって、次に掲げるもの以外のもの
- 水力発電所の設置
- 火力発電所の設置
- 燃料電池発電所の設置
- 太陽電池発電所の設置
- 風力発電所の設置
事前届出が必要な工事
電圧が低く、出力、容量等の規模の小さい電気工作物が対象になります。具体的には、電気工作物の電圧、出力、最大電力等で決められています。例えば、発電所、変電所、送電線路および需要設備の設置の工事をする場合で届出を要するのは、次のとおりです。
設置工事
- 発電所
- 水力発電所の設置
- 汽力発電所の設置
- 出力1000〔kW〕以上のガスタービン発電所の設置
- 出力10000〔kW〕以上の内燃力発電所の設置
- 汽力・ガスタービン・内燃力以外の火力発電所の設置
- 二以上の原動力を組み合わせたものを原動力とする火力発電所の設置
- 出力500〔kW〕以上の燃料電池、風力の発電所の設置
- 出力2000〔kW〕以上の太陽電池の発電所の設置
- 変電所:電圧17万以上の変電所の設置
- 送電線路:電圧17万〔V〕以上の送電線路の設置
- 発電設備
- 太陽電池設備
- 出力2000〔kW〕以上の太陽電池の設置
- 出力2000〔kW〕以上の太陽電池の取替え
- 出力2000〔kW〕以上の太陽電池の改造であって、次に掲げるもの
- 20パーセント以上の電圧の変更を伴うもの
- 支持物の強度の変更を伴うもの
- 出力2000〔kW〕以上の太陽電池の修理であって、支持物の強度に影響を及ぼすもの
- 風力発電設備
- 出力500〔kW〕以上の発電設備に係る風力機関の設置
- 出力500〔kW〕以上の発電設備に係る風力機関の改造であって、次に掲げるもの
- 回転速度の変更又は5パーセント以上の出力の変更を伴うもの
- 風車又は支持物の強度の変更を伴うもの
- 調速装置又は非常調速装置の種類の変更を伴うもの
- 出力500〔kW〕以上の発電設備に係る風力機関の取替え
- 出力500〔kW〕以上の発電設備に係る風力機関の修理であって、次に掲げるもの
- 調速装置又は非常調速装置の取替え
- 風車又は支持物の強度に影響を及ぼすもの
- 太陽電池設備
- 需要設備
- 受電電圧1万〔V〕以上の需要設備の設置
- 受電用遮断器
- 他の者が設置する電気工作物と電気的に接続するための遮断器(受電電圧1万ボルト以上の需要設備に属するものに限る。)であって、電圧1万ボルト以上のものの設置
- 他の者が設置する電気工作物と電気的に接続するための遮断器(受電電圧1万ボルト以上の需要設備に属するものに限る。)であって、電圧1万ボルト以上のものの改造のうち、20パーセント以上の遮断電流の変更を伴うもの
- 他の者が設置する電気工作物と電気的に接続するための遮断器(受電電圧1万ボルト以上の需要設備に属するものに限る。)であって、電圧1万ボルト以上のものの取替え
- 受電用遮断器と電力貯蔵設備以外の機器
- 電圧1万ボルト以上の機器であって、容量1万キロボルトアンペア以上又は出力1万キロワット以上のものの設置
- 電圧1万ボルト以上の機器であって、容量1万キロボルトアンペア以上又は出力1万キロワット以上のものの改造のうち、二十パーセント以上の電圧の変更又は二十パーセント以上の容量若しくは出力の変更を伴うもの
- 電圧1万ボルト以上の機器であって、容量1万キロボルトアンペア以上又は出力1万キロワット以上のものの取替え
使用前検査
認可申請または事前届出をしたものは、工事が完了して使用を開始するまでに使用前検査を受け、これに合格しなければ使用できません。使用前検査の合格基準は、次のとおりです。
- 認可申請または事前届出をした工事計画に従って工事が行われたものであること。
- 技術基準に適合したものであること。
ただし、一部の事前届出範囲については、使用前検査を受ける必要がありません。
使用開始届
工事規模が軽微なもので、工事計画の認可申請、事前届出が不要な自家用電気工作物は、指定された様式の自家用電気工作物使用開始届出書を電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長にその電気工作物の使用の開始の後、遅滞なく報告する必要があります。
自家用電気工作物(原子力発電工作物を除く。)を設置する者は、次の場合は、遅滞なく、その旨を当該自家用電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長に報告しなければならない。
一 発電所若しくは変電所の出力又は送電線路若しくは配電線路の電圧を変更した場合(法第四十七条第一項若しくは第二項の認可を受け、又は法第四十八条第一項の規定による届出をした工事に伴い変更した場合を除く。)
二 発電所、変電所その他の自家用電気工作物を設置する事業場又は送電線路若しくは配電線路を廃止した場合
電気関係報告規則第 5 条
電験三種-法規(電気関係法令)過去問題
2007年(平成19年)問2
「電気事業法」及び「同法施行規則」に基づき事業用電気工作物の設置又は変更の工事の計画は、経済産業大臣に事前届出を要することが定められている。次の工事を予定するとき事前届出の対象となるのはどれか。
- 受電電圧 6600[V]で最大電力 1900[kW]の需要設備の設置の工事
- 受電電圧 22000[V]の需要設備における受電用遮断器の 25[%]の遮断電流の変更を伴う改造の工事
- 受電電圧 6600[V]で最大電力 1500[kW]の需要設備における受電用遮断器の取り替えの工事
- 受電電圧 6600[V]の需要設備における受電用変圧器(一次電圧 6600[V])の 1250[kV・A]の容量増加を伴う改造の工事
- 受電電圧 22000[V]の需要設備における受電用遮断器の保護装置の取り替えの工事
2007年(平成19年)問2 過去問解説
受電電圧 10000[V]以上の需要設備の設置、変更工事の場合は事前届出が必要です。したがって(1),(3),(4)は事前届出は不必要です。
(5)については、容量の記載が欠けているので不明です。(2)は受電用遮断器で 20[%]以上の遮断電流の変更を伴う改造の工事は、事前届出が必要です。
答え (2)
2013年(平成25年)問2
「電気事業法」及び「電気事業法施行規則」に基づき、事業用電気工作物の設置又は変更の工事の計画には経済産業大臣に事前届出を要するものがある。次の工事を計画するとき、事前届出の対象となるものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 受電電圧 6600[V]で最大電力 2000[kW]の需要設備を設置する工事
- 受電電圧 6600[V]の既設需要設備に使用している受電用遮断器を新しい遮断機に取り替える工事
- 受電電圧 6600[V]の既設需要設備に使用している受電用遮断器の遮断電流を 25[%]変更する工事
- 受電電圧 22000[V]の既設需要設備に使用している受電用遮断器を新しい遮断器に取り替える工事
- 受電電圧 22000[V]の既設需要設備に使用している容量 5000[kV・A]の変圧器を同容量の新しい変圧器に取り替える工事
2013年(平成25年)問2 過去問解説
受電電圧10000[V]以上の需要設備の設置、変更工事の場合は事前届出が必要です。したがって(1),(2),(3)は事前届出は不必要です。
(5)は容量 10000[kV・A]以下ですので、事前届出は不必要です。(4)の遮断器の取り替え工事は事前届出が必要です。
答え (4)
2014年(平成26年)問2
次の文章は、「電気関係報告規則」に基づく、自家用電気工作物を設置する者の報告に関する記述である。
自家用電気工作物(原子力発電工作物を除く。)を設置する者は、次の場合は、遅滞なく、その旨を当該自家用電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長に報告しなければならない。
- 発電所若しくは変電所の( ア )又は送電線路若しくは配電線路の( イ )を変更した場合(電気事業法の規定に基づく、工事計画の認可を受け、又は工事計画の届出をした工事に伴い変更した場合を除く。)
- 発電所、変電所その他の自家用電気工作物を設置する事業場又は送電線路若しくは配電線路を( ウ )した場合
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 出力 | こう長 | 廃止 |
(2) | 位置 | 電圧 | 譲渡 |
(3) | 出力 | こう長 | 譲渡 |
(4) | 位置 | こう長 | 移設 |
(5) | 出力 | 電圧 | 廃止 |
2014年(平成26年)問2 過去問解説
- 発電所若しくは変電所の( 出力 )又は送電線路若しくは配電線路の( 電圧 )を変更した場合(電気事業法の規定に基づく、工事計画の認可を受け、又は工事計画の届出をした工事に伴い変更した場合を除く。)
- 発電所、変電所その他の自家用電気工作物を設置する事業場又は送電線路若しくは配電線路を( 廃止 )した場合
答え (5)