直流回路の消費電力

理論

このページでは、直流回路の消費電力について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の理論科目で、実際に出題された直流回路の消費電力の過去問題の求め方も解説しています。

電力とは

電流が1秒当たりにする仕事のことを電力(消費電力)といいます。電流がする仕事の仕事率のことです。
電力は、仕事率と同じように記号を $P$ で表します。単位は[W]ワット を用います。

電力は、「電流×電圧」で求めることができます。オームの法則 $V=RI$ を用いると、次のように表すことができます。

電力の公式

$P =VI=RI^2=\displaystyle \frac{ V^2 }{ R}$[W]

  

電験三種-理論(直流回路)過去問題

1998年(平成10年)問11

二つの抵抗 $R_1$[Ω]及び $R_2$[Ω]を図1のように並列に接続した場合の全消費電力は、これら二つの抵抗を図2にように直列に接続した場合の全消費電力の 6倍であった。このとき、$R_2$ の値として、正しいものは次のうちどれか。ただし、$R_1=1$[Ω],$R_2>R_1$ とし、電源 $E$ の内部抵抗は無視するものとする。

1999年問11

(1) 1.1 (2) 1.4 (3) 2.0 (4) 3.7 (5) 4.3

1998年(平成10年)問11 過去問解説

図1の回路の消費電力を $P_1$[W]、図2の回路の消費電力を $P_2$[W]とすると、$P=\displaystyle \frac{ E^2 }{ R}$ より

$P_1=\displaystyle \frac{ E^2 }{ \displaystyle \frac{ R_1R_2 }{ R_1+R_2}}=\displaystyle \frac{ (R_1+R_2)E^2 }{ R_1R_2 }$

$P_2=\displaystyle \frac{ E^2 }{ R_1+R_2}$

題意より、$P_1=6P_2$ なので、

$\displaystyle \frac{ (R_1+R_2)E^2 }{ R_1R_2 }=\displaystyle \frac{ 6E^2 }{ R_1+R_2}$

$(R_1+R_2)^2 =6R_1R_2$

$R_1=1$[Ω]なので、

$(1+R_2)^2 =6R_2$
$R_2^2-4R_2+1=0$

$R_2=\displaystyle \frac{ 4±\sqrt{ 16-4 } }{ 2}=\displaystyle \frac{ 4±2\sqrt{ 3 } }{ 2}=2±\sqrt{ 3 }$

$R_2>R_1$ なので、$R_2=2+\sqrt{ 3 }≒3.7$[Ω]

答え (4)

1999年(平成11年)問6

図の $L$ 及び $C$ を含む直流回路において、$L$ 及び $C$ に蓄えられるエネルギーの合計値[J]として、正しいのは次のうちどれか。

1999年問6

(1) 6 (2) 30 (3) 46 (4) 54 (5) 80

1999年(平成11年)問6 過去問解説

電源が直流ですので、定常状態では $L$ は短絡状態、$C$ は開放状態になります。回路に流れる電流を $I$[A]、2[Ω]の抵抗に加わる電圧を $V$[V]とすると、オームの法則と分圧の法則より

$I=\displaystyle \frac{ 6}{ 1+2}=2$[A]

$V=\displaystyle \frac{ 2}{ 1+2}×6=4$[V]

$L$ 及び $C$ に蓄えられるエネルギーをそれぞれ、$W_L$,$W_C$[J]とすると、

$W_L=\displaystyle \frac{ 1}{ 2}LI^2=\displaystyle \frac{ 1}{ 2}×3×2^2=6$[J]

$W_C=\displaystyle \frac{ 1}{ 2}LV^2=\displaystyle \frac{ 1}{ 2}×5×4^2=40$[J]

したがって、$L$ 及び $C$ に蓄えられるエネルギーの合計値 $W$[J]は、

$W=W_L+W_C=46$[J]

答え (3)

2002年(平成14年)問12

図1の抵抗回路において、抵抗 $R$[Ω]の消費する電力は 72[W]である。このときの pq 端子の電圧 $V$[V]をもとめる。次の(a)及び(b)に答よ。

2002年問12

(a) 図1の pq 端子から左側を見た回路は図2に示すように、電圧源 $E_0$[V]と内部抵抗 $R_0$[Ω]の電源回路に置き換えることができる。$E_0$[V]と $R_0$[Ω]の値として、正しいのは次のうちどれか。

(1) $E_0=40$[V],$R_0=6$[Ω]
(2) $E_0=60$[V],$R_0=12$[Ω]
(3) $E_0=100$[V],$R_0=20$[Ω]
(4) $E_0=60$[V],$R_0=30$[Ω]
(5) $E_0=40$[V],$R_0=50$[Ω]

(b) 抵抗 $R$[Ω]が 72[W]を消費するときの $R$[Ω]の値には二つある。それぞれに対応した電圧 $V$[V]のうち、高い方の電圧 $V$[V]の値として正しいのはどれか。

(1) 36 (2) 50 (3) 72 (4) 84 (5) 100

2002年(平成14年)問12 過去問解説

(a) テブナンの定理を利用します。電圧源は短絡し、端子 pq から左側の回路を見た合成抵抗 $R_0$[Ω]は、

$R_0=\displaystyle \frac{ 20×30}{ 20+30}=12$[Ω]

端子 pq 間を開放したときの端子間電圧 $E_0$[V]は、分圧の法則より

$E_0=\displaystyle \frac{ 100}{ 20+30}×30=60$[V]

答え (2)

(b) 抵抗 $R$ に流れる電流を $I$[A]とすると、テブナンの定理より、

$I=\displaystyle \frac{ V_0 }{ R_0+R }=\displaystyle \frac{ 60 }{ 12+R }$

消費電力は $P=RI^2$[W]で表されます。題意より、$P=72$[W]なので、

$R×\displaystyle \frac{ 60 ^2}{ (12+R)^2 }=72$

この式を $R$ について解きます。

$R^2+24R+144=50R$
$R^2-26R+144=0$
$(R-8)(R-18)=0$
$R=8,18$ [Ω]

$R=8$[Ω]のときは $I=3$[A]で、そのときの電圧は 24[V]
$R=18$[Ω]のときは $I=2$[A]で、そのときの電圧は 36[V]

高い方の電圧は 36[V]

答え (1)

2007年(平成19年)問5

起電力が $E$[V]で内部抵抗が $r$[Ω]の電池がある。この電池に抵抗 $R_1$[Ω]と可変抵抗 $R_2$[Ω]を並列につないだとき、抵抗 $R_2$[Ω]から発生するジュール熱が最大となるときの抵抗 $R_2$[Ω]の値を示す式として、正しいのは次のうちどれか。

(1) $R_2=r$ (2) $R_2=R_1$ (3) $R_2=\displaystyle \frac{ rR_1}{ (r-R) }$ (4) $R_2=\displaystyle \frac{ rR_1}{ (R_1-r) }$ (5) $R_2=\displaystyle \frac{ rR_1}{ (r+R_1) }$

2007年(平成19年)問5 過去問解説

2007年問5

図に示す回路で、テブナンの定理を利用します。電圧源は短絡し、端子 ab から左側の回路を見た合成抵抗 $R_0$[Ω]は、

$R_0=\displaystyle \frac{ R_1r}{ R_1+r}$[Ω]

端子 ab 間を開放したときの端子間電圧 $E_{ab}$[V]は、分圧の法則より

$E_{ab}=\displaystyle \frac{ R_1}{ R_1+r}×E$[V]

抵抗 $R_2$ に流れる電流を $I$[A]とすると、テブナンの定理より、

$\begin{eqnarray}I&=&\displaystyle \frac{ E_{ab} }{ R_0+R_2 }\\\\&=&\displaystyle \frac{ \displaystyle \frac{ ER_1}{ R_1+r} }{ \displaystyle \frac{ R_1r}{ R_1+r}+R_2 }\\\\&=&\displaystyle \frac{ ER_1}{R_1r+ R_2(R_1+r) }\end{eqnarray}$

可変抵抗 $R_2$[Ω]の消費電力 $P$[W]は、

$P=R_2I^2=R_2\left(\displaystyle \frac{ ER_1}{ R_1r+ R_2(R_1+r) }\right)^2$

消費電力 $P$[W]が最大になるときの条件は、分母が最小になるときです。最小の定理より、

$R_1r= R_2(R_1+r) $

$R_2=\displaystyle \frac{ rR_1}{ (r+R_1)}$

答え (5)

最小の定理
$a、b$ の2つの数があって、その積 $ab$ が一定であれば、$a=b$ のとき、和 $a+b$ が最小となります。

最大の定理
$a、b$ の2つの数があって、その和 $a+b$ が一定であれば、$a=b$ のとき、積 $ab$ は最大となります。

2010年(平成22年)問5

図の直流回路において、12[Ω]の抵抗の消費電力が 27[W]である。このとき、抵抗 $R$[Ω]の値として、正しいのは次のうちどれか。

2010年問5

(1) 4.5 (2) 7.5 (3) 8.6 (4) 12 (5) 20

2010年(平成22年)問5 過去問解説

消費電力は $P=RI^2$[W]で表されます。この式を変形すると、

$I=\displaystyle \sqrt{ \frac{ P}{ R}}$

12[Ω]の抵抗に流れる電流を $I$[A]とすると、

$I=\displaystyle \sqrt{ \frac{ 27}{ 12}}=1.5$[A]

回路全体の合成抵抗を $R_Z$[Ω]とすると、

$R_Z=30+\displaystyle \frac{ 12R}{12+R}$

12[Ω]の抵抗に流れる電流を $I$[A]を 抵抗 $R$ で表します。分流の法則より、

$\begin{eqnarray}I&=&\displaystyle \frac{ R}{12+R}×\displaystyle \frac{ 90}{R_Z}\\\\&=&\displaystyle \frac{ R}{12+R}×\displaystyle \frac{ 90}{30+\displaystyle \frac{ 12R}{12+R}}\\\\&=&\displaystyle \frac{ 90R}{360+42R}\\\\&=&1.5[A]\end{eqnarray}$

$27R=540$
$R=20$[Ω]

答え (5)

2013年(平成25年)問6

図の直流回路において、抵抗 $R=10$[Ω]で消費される電力[W]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

2013年問6

(1) 0.28 (2) 1.89 (3) 3.79 (4) 5.36 (5) 7.62

2013年(平成25年)問6 過去問解説

テブナンの定理を利用します。端子 ab 間を開放したときの端子間電圧 $V_0$[V]を、図に示す $V_a$[V]と $V_b$[V]から導きます。

2013年(平成25年)問6 過去問解説

分圧の法則より、

$V_a=\displaystyle \frac{ 40}{40+40}×60=30$ [V]
$V_b=\displaystyle \frac{ 80}{60+60}×60=40$ [V]

$V_0=V_b-V_a=40-30=10$[V]

電圧源を短絡し、端子 ab から見た合成抵抗を $R_0$[Ω]とします。等価回路図は次のようになります。

2013問6解答

$R_0=\displaystyle \frac{ 40}{2}+\displaystyle \frac{ 60}{2}=50$[Ω]

抵抗 $R$ に流れる電流を $I$[A]とすると、テブナンの定理より、

$I=\displaystyle \frac{ V_0 }{ R_0+R }=\displaystyle \frac{ 10 }{ 50+10 }=\displaystyle \frac{ 1 }{ 6 }$[A]

抵抗 $R$ の消費電力は $P$[W]は、

$P=RI^2=10×\left(\displaystyle \frac{ 1 }{ 6 }\right)^2≒0.28$[W]

答え (1)

2014年(平成26年)問7

図に示す直流回路において、抵抗 $R_1=5$ Ω で消費される電力は抵抗 $R_3=15$ Ω で消費される電力の何倍となるか。その倍率として、最も近い値を次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

2014年(平成26年)問7

(1) 0.9 (2) 1.2 (3) 1.5 (4) 1.8 (5) 2.1

2014年(平成26年)問7 過去問解説

抵抗 $R_1$ に流れる電流を $I$[A]、抵抗 $R_3$ に流れる電流を $I_3$[A]とすると、分流の法則 より

$I_3=\displaystyle \frac{10I }{ 10+15 }=\displaystyle \frac{2I }{ 5 }$

消費電力は $P=RI^2$[W]で表されます。抵抗 $R_1$ で消費される電力を $P_1$[W]、抵抗 $R_3$ で消費される電力を $P_3$[W]とすると、消費される電力比 $\displaystyle \frac{P_1 }{ P_3 } $ は、

$\displaystyle \frac{P_1 }{ P_3 } =\displaystyle \frac{5I^2 }{ 15×\left(\displaystyle \frac{2I }{ 5 }\right)^2 }=\displaystyle \frac{25 }{ 12 } ≒2.08$

答え (5)

2016年(平成28年)問5

図のように、内部抵抗 $r=0.1$ Ω、起電力 $E=9$ V の電池4個を並列に接続した電源に抵抗 $R=0.5$ Ω の負荷を接続した回路がある。この回路において、抵抗 $R=0.5$ Ω で消費される電力の値[W]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

2016年問5

(1) 50 (2) 147 (3) 253 (4) 820 (5) 4050

2016年(平成28年)問5 過去問解説

テブナンの定理を利用します。

2016年(平成28年)問5 過去問解説

電圧源は短絡し、端子 ab から下側を見た合成抵抗 $R_0$[Ω]は、

$R_0=\displaystyle \frac{ r}{4}=0.025$[Ω]

端子 ab 間を開放したときの端子間電圧 $V_0$[V]を求めます。

端子 ab 間を開放

この回路には、電位差がないので電流は流れません。つまり、電源電圧 $E=9$[V]が、端子 ab 間の電圧になります。$V_0=9$[V]

抵抗 $R$ に流れる電流を $I$[A]とすると、テブナンの定理より、

$I=\displaystyle \frac{ V_0 }{ R_0+R }=\displaystyle \frac{ 9 }{ 0.025+0.5 }≒17.14$[A]

抵抗 $R$ で消費される電力を $P$[W]とすると、

$P=RI^2=0.5×17.14^2≒147$[W]

答え (2)

2017年(平成29年)問6 (消す。)

$R_1=20Ω$,$R_2=30Ω$ の抵抗、インダクタンス $L_1=20mH$,$L_2=40mH$ のコイル及び静電容量 $C_1=400µF$,$C_2=600µF$ のコンデンサからなる図のような直並列回路がある。直流電圧 $E=100V$ を加えたとき、定常状態において $L_1$,$L_2$,$C_1$ 及び $C_2$ に蓄えられるエネルギーの総和の値[J]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 0.12 (2) 1.20 (3) 1.32 (4) 1.40 (5) 1.52

2017年(平成29年)問6 過去問解説

定常状態中にある直流回路では、コンデンサは開放,コイルは短絡として扱うことが出来ますので、抵抗のみの回路として電流を計算することが出来ます。つまり、定常状態の回路は次の図のように考えることができ、回路に流れる電流 $I$[A]は $2$[A]と計算することができます。

問題文の回路図で考えると、コイル $L_1$,$L_2$ に流れる電流は $2$[A]、各コンデンサ $C_1$,$C_2$ の端子電圧をそれぞれ $V_1$,$V_2$ とすると、並列に接続されている抵抗の端子電圧と等しくなりますので、$V_1=40$[V],$V_2=60$[V]となります。

したがって、コイルとコンデンサ $L_1$,$L_2$,$C_1$,$C_2$ に蓄えられるエネルギー $W_{L1}$,$W_{L2}$,$W_{C1}$,$W_{C2}$ は、

$W_{L1}=\displaystyle\frac{L_1I^2}{2}=\displaystyle\frac{20×10^{-3}×2^2}{2}=0.04$[J]

$W_{L2}=\displaystyle\frac{L_2I^2}{2}=\displaystyle\frac{40×10^{-3}×2^2}{2}=0.08$[J]

$W_{C1}=\displaystyle\frac{C_1{V_1}^2}{2}=\displaystyle\frac{400×10^{-6}×40^2}{2}=0.32$[J]

$W_{C2}=\displaystyle\frac{C_2{V_2}^2}{2}=\displaystyle\frac{600×10^{-6}×60^2}{2}=1.08$[J]

エネルギーの総和 $W$[J]は、

$W=W_{L1}+W_{L2}+W_{C1}+W_{C2}=1.52$[J]

答え(5)

理論電験3種
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