電験三種の法規で出題される施設の維持管理について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の試験で、実際に出題された過去問題も解説しています。
- 接地抵抗の測定
- 絶縁油の劣化(劣化対策)
- 高調波対策
- 変流器の取扱い
- 電験三種-法規(施設管理)過去問題
- 2000年(平成12年)問10
- 2000年(平成12年)問10 過去問解説
- 2001年(平成13年)問9
- 2001年(平成13年)問9 過去問解説
- 2001年(平成13年)問10
- 2001年(平成13年)問10 過去問解説
- 2002年(平成14年)問10
- 2002年(平成14年)問10 過去問解説
- 2004年(平成16年)問8
- 2004年(平成16年)問8 過去問解説
- 2007年(平成19年)問10
- 2007年(平成19年)問10 過去問解説
- 2009年(平成21年)問9
- 2009年(平成21年)問9 過去問解説
- 2010年(平成22年)問10
- 2010年(平成22年)問10 過去問解説
- 2014年(平成26年)問8
- 2014年(平成26年)問8 過去問解説
- 2015年(平成27年)問10
- 2015年(平成27年)問10 過去問解説
接地抵抗の測定
接地抵抗計による接地抵抗の測定原理を次図に示します。
接地極 E と補助極 C の間に交流電圧 V をかけて電流 I を流し、接地極 E と補助極 P の間の電圧 Veを測定します。これより、極地極 E の接地抵抗 Re が次式により求めることができます。
$Re=\displaystyle \frac{ Ve }{ I }$
絶縁油の劣化(劣化対策)
油入変圧器などの絶縁油は、使用中に次第に劣化して酸価度が上がり、抵抗率や耐圧が下がるなどの諸性能が低下します。さらには泥状のスラッジができるようになります。 変圧器油劣化の主な原因は、油と接触する空気が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化です。この酸化反応は変圧器の運転による温度の上昇によって特に促進されます。そのほか、金属や絶縁ワニス、光線なども酸化を促進し、劣化生成物のうちにも反応を促進するものが数多くあります。これらの劣化具合を判定するために、絶縁耐力試験および酸価度試験が一般に実施されています。
また劣化防止のため、空気が触れる油面を小さくするコンサベータ(変圧器本体の上部に設置される小形の油タンク)、コンサベータに窒素ガスを封入した窒素ガス封入式、油面と空気の間を合成ゴムで仕切った隔膜式コンサベータ、窒素ガスを封入した密閉式などで対策を施しています。
高調波対策
パワーエレクトロニクス技術の発展により半導体応用機器が広く普及しています。これらの機器の多くは電力系統から供給される正弦波電圧の一部を利用したり、正弦波を矩形波に変えて利用しているため、50/60〔Hz〕の商用周波数の整数倍の周波数成分である高調波電流を発生し、これが電力系統に流出することになります。系統に流出した高調波電流は、配電線路や変圧器などの系統各部のインピーダンスによって高調波電圧を生じ、ほかの機器にひずんだ電圧を供給することになり、高調波障害を引き起こすことがあります。高調波障害とは、次に示すものです。
- 通信線への誘導障害
- 電力用コンデンサの過負荷
- 回転機、変圧器の騒音、振動、過熱
- 地中送電線の送電容量の低下
- 蛍光灯の雑音防止用コンデンサあるいは安定器の過熱、焼損
- 保護継電器の誤動作、および計器類の誤差増大
電力系統に接続されたさまざまな機器が相互に影響を及ぼすことなく機能するためには、高調波対策を図ることが必要です。
- 高調波発生機器に対しては発生量を抑制して、電力系統の高調波電圧を適切なレベル以下に維持する。
- 高調波電圧に弱い機器に対しては、高調波耐量を強くする。
変流器の取扱い
変流器は、交流の大電流を測定するのに用いる計器用の変成器です。変圧器と同様に一次巻線と二次巻線があり、二次巻線に小電流を出力します。
一次側を通電中の変流器の二次側を開放したり、高インピーダンスを接続すると、一次側に流れる電流はすべて励磁電流となって、磁束がひずみ、二次側に高い電圧を誘起します。このため、通電中の変流器の二次側の計器(電流計など)を取り換える場合の手順としては、変流器の二次側端子を短絡し、次に電流計をほかの電流計に取り換え、短絡した場所を外します。
電験三種-法規(施設管理)過去問題
2000年(平成12年)問10
自家用電気工作物の竣工検査等における接地抵抗の測定において、電池内蔵直読式のアーステスタ(JIS C 1304「接地抵抗計」適合品)を用いて、被測定接地極と二つの補助接地極を一直線上に配列して測定する場合、各接地極の配列位置及び接地極間の距離として最も適切なものは、次のうちどれか。ただし、各接地極の記号は以下のとおりとする。
E:被測定接地極、C:電流用補助接地極、P:電圧用補助接地極
2000年(平成12年)問10 過去問解説
図は、電池内蔵直読式の接地抵抗計を用いて、接地極と大地の接地抵抗を測定したものです。
答え (2)
2001年(平成13年)問9
高調波が電気機械器具に与える具体的障害の例として、次のようなものがある。
- コンデンサ及びリアクトルは、( ア )、うなりを発生し、さらに過熱、焼損などに至ることもある。
- ラジオ、テレビ等に雑音を生じ、また、半導体など電子部品の故障、寿命の低下、性能劣化なども生じる。
- 電力ヒューズは、エレメントの過熱、( イ )などが発生する。
- 電力量計、過電流継電器、配線用遮断器等の( ウ )の焼損、あるいは計量誤差、誤動作などを生じる。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 雑音 | 焼損 | 動作部 |
(2) | 雑音 | 焼損 | 電流コイル |
(3) | 振動 | 焼損 | 電圧コイル |
(4) | 騒音 | 溶断 | 動作部 |
(5) | 振動 | 溶断 | 電流コイル |
2001年(平成13年)問9 過去問解説
- コンデンサ及びリアクトルは、( 振動 )、うなりを発生し、さらに過熱、焼損などに至ることもある。
- ラジオ、テレビ等に雑音を生じ、また、半導体など電子部品の故障、寿命の低下、性能劣化なども生じる。
- 電力ヒューズは、エレメントの過熱、( 溶断 )などが発生する。
- 電力量計、過電流継電器、配線用遮断器等の( 電流コイル )の焼損、あるいは計量誤差、誤動作などを生じる。
答え (5)
2001年(平成13年)問10
非接地式 6.6[kV]配電線路では、地絡事故を検出するため、配電用変電所に通常 GPT(接地形計器用変圧器)が図のように設置されている。この GPT の二次側回路 の結線図として、正しいのは次のうちどれか。ただし、Rは制限抵抗、RTは地絡過電圧継電器とする。
2001年(平成13年)問10 過去問解説
非接地式 6.6[kV]配電線路では、地絡事故を検出するため、配電用変電所に通常 GPT(接地形計器用変圧器) が図のように設置されています。
答え (3)
2002年(平成14年)問10
次の文章は、過電流に対する低圧電路の保護に関する記述である。
電動機の始動電流や変圧器の励磁突入電流などは、過渡的にそれぞれの定格電流をはるかに超える大きさになることがある。図は、誘導電動機が接続されている低圧電路の過電流保護協調の一例を示したものである。
図中の曲線( ア )は電動機の始動電流特性、曲線( イ )は配電線遮断器の動作特性、曲線( ウ )はこの電路の電線の許容電流の時間特性である。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に記入する図の各曲線の記号として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | B | A | C |
(2) | C | B | A |
(3) | B | C | A |
(4) | A | B | C |
(5) | A | C | B |
2002年(平成14年)問10 過去問解説
電流容量は次のようにしなければなりません。
始動電流(C) < 配線用遮断器(B) < 電線の許容電流(A)
答え (2)
2004年(平成16年)問8
電気設備の改修工事において、通電中における変流器とこれに接続する計器類の取扱に関する記述として、正しいものは次のうちどれか。
- 変流器の二次側端子を短絡し、次に電流計を他の電流計に取替え、短絡した箇所を外した。
- 変流器の二次側端子を短絡し、次に電流計を電圧計に取替え、短絡した箇所を外した。
- 変流器の二次側端子を短絡しないで、電流計を他の電流計に取替えた。
- 変流器の二次側端子間に高抵抗を接続し、次に電流計を他の電流計に取替え、高抵抗を外した。
- 変流器の二次側に接続された電流計を取り外し、二次側端子を開放した。
2004年(平成16年)問8 過去問解説
変流器の二次側を開放したり、高抵抗を接続して、二次電流を少なくすると、一次電流が全て励磁電流となって、二次側に高い電圧を発生します。よって、電流計を取外す場合は、変流器の二次側を短絡した後に行わなければなりません。
答え (1)
2007年(平成19年)問10
自家用需要家が絶縁油の保守、点検のため行う試験には、絶縁耐力試験及び( ア )試験が一般に実施されている。
絶縁油、特に変圧器油は、使用中に次第に劣化して酸化が上がり、( イ )や耐圧が下がるなどの諸性能が低下し、ついには泥状のスラッジができるようになる。変圧器油劣化の主原因は、油と接触する空気が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化であって、この酸化反応は変圧器の運転による( ウ )の上昇によって特に促進される。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 酸化度 | 濃度 | 湿度 |
(2) | 酸化度 | 抵抗率 | 湿度 |
(3) | 重合度 | 濃度 | 湿度 |
(4) | 酸化度 | 抵抗率 | 温度 |
(5) | 重合度 | 抵抗率 | 温度 |
2007年(平成19年)問10 過去問解説
自家用需要家が絶縁油の保守、点検のため行う試験には、絶縁耐力試験及び( 酸化度 )試験が一般に実施されている。
絶縁油、特に変圧器油は、使用中に次第に劣化して酸化が上がり、( 抵抗率 )や耐圧が下がるなどの諸性能が低下し、ついには泥状のスラッジができるようになる。変圧器油劣化の主原因は、油と接触する空気が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化であって、この酸化反応は変圧器の運転による( 温度 )の上昇によって特に促進される。
答え (4)
2009年(平成21年)問9
次の文章は工場等における電気設備の運用管理に関する記述である。
電気機器は適正な電圧で使用することにより、効率的な運用を図ることができる。このため電気管理者にとって、( ア )の検討を行うことは重要である。
また、電力損失の抑制対策として、次のように幾つかの例が挙げられる。
- 電力機器と並列にコンデンサ設備を設置し、( イ )をすることにより電力損失の低減を図る。
- 変圧器は、適正な( ウ )を維持するように、機器の稼働台数の調整及び負荷の適正配分を行う。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 短絡保護協調 | 力率改善 | 需要率 |
(2) | 電圧降下 | 電圧維持 | 負荷率 |
(3) | 地絡保護協調 | 力率改善 | 不等率 |
(4) | 電圧降下 | 力率改善 | 需要率 |
(5) | 短絡保護協調 | 電圧維持 | 需要率 |
2009年(平成21年)問9 過去問解説
電気機器は適正な電圧で使用することにより、効率的な運用を図ることができる。このため電気管理者にとって、( 電圧降下 )の検討を行うことは重要である。
また、電力損失の抑制対策として、次のように幾つかの例が挙げられる。
- 電力機器と並列にコンデンサ設備を設置し、( 力率改善 )をすることにより電力損失の低減を図る。
- 変圧器は、適正な( 需要率 )を維持するように、機器の稼働台数の調整及び負荷の適正配分を行う。
答え (4)
2010年(平成22年)問10
次の文章は配電系統の高調波についての記述である。不適切なものは次のうちどれか。
- 高調波電波を多く含んだ程度に応じて電圧ひずみが大きくなる。
- 高調波発生機器を設置していない高圧需要家であっても直列リアクトルを付けないコンデンサ設備が存在する場合、電圧のひずみを増大させることがある。
- 低圧側の第3次高調波は、零相(各相が同相)となるため高圧側にあまり現れない。
- 高調波電流流出抑制対策のコンデンサ設備は、高調波発生源が変圧器の低圧側にある場合、高圧側に設置した方が高調波電流流出抑制の効果が大きい。
- 高調波電流流出抑制対策設備に、高調波電流を吸収する受動フィルタと高調波電流の逆極性の電流を発生する能動フィルタがある。
2010年(平成22年)問10 過去問解説
(4)は、低圧側に高調波電流の発生源があるので、抑制対策のコンデンサは低圧側に設置します。従って、(4)の記述が誤りです。
答え (4)
2014年(平成26年)問8
次の文章は、油入変圧器における絶縁油の劣化についての記述である。
- 自家用需要家が絶縁油の保守、点検のために行う試験には、( ア )試験及び酸価度試験が一般に実施されている。
- 絶縁油、特に変圧器油は、使用中に次第に劣化して酸価が上がり、( イ )や耐圧が下がるなどの諸性能が低下し、ついには泥状のスラッジができるようになる。
- 変圧器油劣化の主原因は、油と接触する( ウ )が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化であって、この酸化反応は変圧器の運転による( エ )の上昇によって特に促進される。そのほか、金属、絶縁ワニス、光線なども酸化を促進し、劣化生成物のうちにも反応を促進するものが数多くある。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 絶縁耐力 | 抵抗率 | 空気 | 温度 |
(2) | 濃度 | 熱伝導率 | 絶縁物 | 温度 |
(3) | 絶縁耐力 | 熱伝導率 | 空気 | 湿度 |
(4) | 絶縁抵抗 | 濃度 | 絶縁物 | 温度 |
(5) | 濃度 | 抵抗率 | 空気 | 湿度 |
2014年(平成26年)問8 過去問解説
- 自家用需要家が絶縁油の保守、点検のために行う試験には、( 絶縁耐力 )試験及び酸価度試験が一般に実施されている。
- 絶縁油、特に変圧器油は、使用中に次第に劣化して酸価が上がり、( 抵抗率 )や耐圧が下がるなどの諸性能が低下し、ついには泥状のスラッジができるようになる。
- 変圧器油劣化の主原因は、油と接触する( 空気 )が油中に溶け込み、その中の酸素による酸化であって、この酸化反応は変圧器の運転による( 温度 )の上昇によって特に促進される。そのほか、金属、絶縁ワニス、光線なども酸化を促進し、劣化生成物のうちにも反応を促進するものが数多くある。
答え (1)
2015年(平成27年)問10
次の文章は、計器用変成器の変流器に関する記述である。その記述内容として誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 変流器は、一次電流から生じる磁束によって二次電流を発生させる計器用変成器である。
- 変流器は、二次側に開閉器やヒューズを設置してはいけない。
- 変流器は、通電中に二次側が開放されると変流器に異常電圧が発生し、絶縁が破壊される危険性がある。
- 変流器は、一次電流が一定でも二次側の抵抗値により変流比は変化するので、電流計の選択には注意が必要になる。
- 変流器の通電中に、電流計をやむを得ず交換する場合は、二次側端子を短絡して交換し、その後に短絡を外す。
2015年(平成27年)問10 過去問解説
(4)は、二次側の抵抗値によって変流比は変化しません。 従って、(4)の記述が誤りです。
答え (4)