磁性材料

電力

このページでは、磁性材料について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の電力科目の試験で、実際に出題された磁性材料の過去問題も解説しています。

磁性材料の種類と特徴

磁性材料は、鉄やニッケル、コバルトなどの強磁性体が用いられ、磁束を通すことを目的に作られた「磁心材料」と永久磁石をつくることを目的に用いられる「磁石材料」に分けられます。

磁心材料に求める性能

  • 飽和磁束密度が大きい
  • 透磁率が大きい
  • 抵抗率が大きい
  • 保磁力が小さい
  • 残留磁気が小さい

磁心材料の種類

変圧器や電動機の鉄心には、けい素鋼が一般的に使用されています。けい素鋼は、透磁率と抵抗率が高いのが特徴です。けい素鋼は、積層して用いらます。

アモルファス磁性材料は、液状の溶融金属を急冷して作られる、結晶構造をもたない材料です。けい素鋼と比べて次のような特徴があります。

  • 抵抗率が約3倍
  • 鉄損が1/3~1/4程度
  • 励磁電流が1/3程度
  • 硬くてもろいので加工しにくい
  • 飽和磁束密度が小さい
  • 磁気ひずみが大きく、騒音が大きい

  

電験三種-電力(電気材料)過去問題

2000年(平成12年)問9

磁性材料に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

  1. 鉄、ニッケル、コバルト及びこれらの合金は強磁性体である。
  2. 強磁性体に交番磁界を加えると、中の磁区が半サイクルごとに方向を変えて、鉄損が生じる。
  3. 鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損の和で表される。
  4. 交番磁界1サイクルのヒステリシス損は、ヒステリシス曲線で囲まれる面積に比例する。
  5. 交番磁界が強磁性体中を通過すると、磁束の周りに誘導電流が流れ、これによりヒステリシス損が発生する。

2000年(平成12年)問9 過去問解説

交番磁界が強磁性体中を通過すると、磁束の周りに誘導電流が流れ、渦電流が発生します。この電流による損失を渦電流損といいます。

答え (5)

2003年(平成15年)問14

アモルファス鉄心材料を使用した柱上変圧器の特徴に関する記述として、誤っているものは次のうちどれか。

  1. ケイ素鋼帯を使用した同容量の変圧器に比べて、鉄損が大幅に少ない。
  2. アモルファス鉄心材料は結晶構造である。
  3. アモルファス鉄心材料は高硬度で、加工性があまりよくない。
  4. アモルファス鉄心材料は比較的高価である。
  5. ケイ素鋼帯を使用した同容量の変圧器に比べて、磁束密度が高くできないので、大形になる。

2003年(平成15年)問14 過去問解説

アモルファス鉄心材料は結晶構造をもたない材料です。けい素鋼と比べて、鉄損が1/3~1/4程度に低減できるため、ランニングコストが大きく節減できます。

答え (2)

2008年(平成20年)問14

次の文章は、発電機、電動機、変圧器などの電気機器の鉄心として使用される磁心材料に関する記述である。
永久磁石材料と比較すると磁心材料の方が磁気ヒステリシス特性(B-H特性)の保磁力の大きさは( ア )、磁界の強さの変化により生じる磁束密度の変化は( イ )ので、透磁率は一般に( ウ )。
また,同一の交番磁界のもとでは、同じ飽和磁束密度を有する磁心材料同士では、保磁力が小さいほど、ヒステリシス損は( エ )。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

 (ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)大きく大きい大きい大きい
(2)小さく大きい大きい小さい
(3)大きく大きい小さい大きい
(4)小さく小さい小さい小さい
(5)小さく小さい大きい小さい

2008年(平成20年)問14 過去問解説

永久磁石材料と比較すると磁心材料の方が磁気ヒステリシス特性(B-H特性)の保磁力の大きさは( 小さく )、磁界の強さの変化により生じる磁束密度の変化は( 大きい )ので、透磁率は一般に( 大きい )。
また,同一の交番磁界のもとでは、同じ飽和磁束密度を有する磁心材料同士では、保磁力が小さいほど、ヒステリシス損は( 小さい )。

答え (2)

2015年(平成27年)問14

変圧器の鉄心に使用されている鉄心材料に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 鉄心材料は、同じ体積であれば両面を絶縁加工した薄い材料を積層することで、ヒステリシス損はほとんど変わらないが、渦電流損を低減させることができる。
  2. 鉄心材料は、保磁力と飽和磁束密度がともに小さく、ヒステリシス損が小さい材料が選ばれる。
  3. 鉄心材料に使用されるけい素鋼材は、鉄にけい素を含有させて透磁率と抵抗率とを高めた材料である。
  4. 鉄心材料に使用されるアモルファス合金材は、非結晶構造であり、高硬度であるが、加工性に優れず、けい素鋼材と比較して高価である。
  5. 鉄心材料に使用されるアモルファス合金材は、けい素鋼材と比較して透磁率と抵抗率はともに高く、鉄損が少ない。

2015年(平成27年)問14 過去問解説

磁心材料に求める性能は、飽和磁束密度が大きいことが求められます。

答え (2)

電力電験3種
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