架空送電線路のコロナ放電・フェランチ効果・線路定数とねん架

電力

このページでは、架空送電線路のコロナ放電・フェランチ効果・線路定数とねん架などについて、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の電力科目の試験で、実際に出題された架空送電線路のコロナ放電・フェランチ効果・線路定数とねん架などの過去問題も解説しています。

コロナ放電

コロナ放電とは、送電線等において、電線表面の電位傾度が大きい部分で絶縁破壊を起こし、放電する現象をいいます。導体表面にコロナが発生する最小の電圧はコロナ臨界電圧と呼ばれます。

コロナ臨界電圧の値は、標準の気象条件では、導体表面での電位の傾きが波高値で約 30[kV/cm]に相当します。コロナ臨界電圧は気圧が低くなるほど低下し、湿度が高くなるほど低下します。

コロナ放電が発生すると、電気エネルギーの一部が音、光などに形を変えて現れ、コロナ損という電力損失を発生させたり、導体の腐食や電線の振動などを生じるおそれがあります。また、放電時に発生するコロナパルスによって可聴雑音や電波障害の原因にもなります。

コロナ臨界電圧は電線間隔が大きくなるほど、また、導体の等価半径が大きくなるほど高くなります。このため、相導体の多導体化はコロナ障害対策として有効となります。

また、太い電線を用いると表皮効果が発生します。そのため、中空より線や鋼心アルミニウムより線などを用いて、見かけ上電線を太くし、導体表面での電位の傾きを小さくしています。また、がいし装置にシールドリングを取り付けることもコロナ発生を防止対策としては有効です。

電線の表皮効果

電線に交流電流を流したとき、電線の中心部より外側の方(表皮)に電流が多く流れる(電流密度が高い)現象です。表皮効果は、電線の導電率が大きいほど、電線が太いほど、周波数が高いほど大きくなります。また、表皮効果が大きくなると電流が一様に流れなくなるため、電線の電力損失も増加します。

フェランチ効果

負荷の力率は、一般的には遅れ力率ですので、大きな負荷が掛かっているときは、電流は電圧より位相が遅れています。しかし、深夜等の軽負荷時は、位相が進み線路末端で電圧が高くなることがあります。このような現象をフェランチ効果といいます。

フェランチ効果は、送電線の単位長さの静電容量が大きいほど、また、送電線のこう長が長いほど著しくなります。この電圧上昇値が高いと絶縁設計および系統運用上の問題が発生します。

そのため、対策の一つとして、配電線端末に接続されている高圧負荷の電力用コンデンサは、軽負荷時は開放します。また、抑制の方法として、分路リアクトルを接続するなどの対策が講じられています。

フェランチ効果
フェランチ効果

ねん架

送電線の抵抗、インダクタンス、静電容量(キャパシタンス)、漏れコンダクタンス(リーカンス)の四つの定数を線路定数といいます。線路定数は、電線の種類、太さ、構造、配置などによって定まる値です。

送電線では、各相の線路定数を平衡させるため、ねん架が行われています。電線をねん架した場合の効果は、各線のインダクタンスが等しくなる、各線の静電容量が等しくなる、中性点に現れる残留電圧が減少する、通信線に対する誘導障害が低減できる、などがあげられます。

ねん架
ねん架

  

電験三種-電力(送配電)過去問題

1999年(平成11年)問9

配電線の電圧調整は、需要家の受電端電圧を適正に維持するため、配電用変電所の二次側母線電圧を、一般に重負荷時には( ア )、軽負荷時には( イ )調整する方式が適用されている。しかし、深夜等の軽負荷時は、配電線端末電圧が送電端末電圧より高くなる現象があり、これを( ウ )効果という。この傾向は、配電線こう長が長くも配電線端末に高圧負荷が多く接続されている場合に現れやすい。この対策の一つとして、配電線端末に接続されている高圧負荷の( エ )は、深夜等においては開放することが望ましい。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する字句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

 (ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)高く低く表皮分路リアクトル
(2)高く低くフェランチ電力用コンデンサ
(3)低く高く表皮電力用コンデンサ
(4)低く高くフェランチ分路リアクトル
(5)高く低く表皮電力用コンデンサ

1999年(平成11年)問9 過去問解説

配電線の電圧調整は、需要家の受電端電圧を適正に維持するため、配電用変電所の二次側母線電圧を、一般に重負荷時には( 高く )、軽負荷時には( 低く )調整する方式が適用されている。しかし、深夜等の軽負荷時は、配電線端末電圧が送電端末電圧より高くなる現象があり、これを( フェランチ )効果という。この傾向は、配電線こう長が長くも配電線端末に高圧負荷が多く接続されている場合に現れやすい。この対策の一つとして、配電線端末に接続されている高圧負荷の( 電力用コンデンサ )は、深夜等においては開放することが望ましい。

答え (2)

2002年(平成14年)問6

架空送電線路の線路定数には、抵抗、インダクタンス、静電容量などがある。導体の抵抗は、その材質、長さ及び断面積によって定まるが、( ア )が高くなれば若干大きくなる。
また、交流電流での抵抗は ( イ )効果により直流電流での値に比べて増加する。インダクタンスと静電容量は、送電線の長さ、電線の太さや( ウ )などによって決まる。一方、各相の線路定数を平衡させるために、( エ )が行われる。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

 (ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)温 度フェランチ材質多導体化
(2)電 圧表 皮配置多導体化
(3)温 度表 皮材質多導体化
(4)電 圧フェランチ材質ねん架
(5)温 度表 皮配置ねん架

2002年(平成14年)問6 過去問解説

架空送電線路の線路定数には、抵抗、インダクタンス、静電容量などがある。導体の抵抗は、その材質、長さ及び断面積によって定まるが、( 温度 )が高くなれば若干大きくなる。
また、交流電流での抵抗は( 表皮 )効果により直流電流での値に比べて増加する。インダクタンスと静電容量は、送電線の長さ、電線の太さや( 配置 )などによって決まる。一方、各相の線路定数を平衡させるために、( ねん架 )が行われる。

答え(5)

2004年(平成16年)問11

架空電線路におけるコロナ放電に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

  1. コロナ放電が発生すると、電気エネルギーの一部が音、光などに形を変えて現れ、コロナ損という電力損失を伴う。
  2. コロナ放電は、電圧が高いほど、また、電線が太いほど発生しやすくなる。
  3. 多導体方式は、単導体に比べてコロナ放電が少ないので、電力損失が少なくなる。
  4. 電線表面の電位の傾きがある値を超えると、コロナ放電が生じるようになる。
  5. コロナ放電が発生すると、電波障害や通信障害が生じる。

2004年(平成16年)問11 過去問解説

コロナ臨界電圧は電線間隔が大きくなるほど、また、導体の等価半径が大きくなるほど高くなります。

答え (2)

2007年(平成19年)問9

交流送電線の受電端電圧値は送電端電圧より低いのが普通である。しかし、線路電圧が高く、こう長が( ア )なると、受電端が開放又は軽負荷の状態では、線路定数のうち( イ )の影響が大きくなり、( ウ )電流が線路に流れる。このため、受電端電圧値は送電端電圧値より大きくなることがある。これを( エ )現象という。このような現象を抑制するために、( オ )を接続するなどの対策が講じられている。

上記の記述の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

 (ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)短く静電容量進みフェランチ直列リアクトル
(2)長くインダクタンス遅れ自己励磁直列コンデンサ
(3)長く静電容量遅れ自己励磁分路リアクトル
(4)長く静電容量進みフェランチ分路リアクトル
(5)短くインダクタンス遅れフェランチ進相コンデンサ

2007年(平成19年)問9 過去問解説

交流送電線の受電端電圧値は送電端電圧より低いのが普通である。しかし、線路電圧が高く、こう長が( 長く )なると、受電端が開放又は軽負荷の状態では、線路定数のうち( 静電容量 )の影響が大きくなり、( 進み )電流が線路に流れる。このため、受電端電圧値は送電端電圧値より大きくなることがある。これを( フェランチ )現象という。このような現象を抑制するために、( 分路リアクトル )を接続するなどの対策が講じられている。

答え (4)

2008年(平成20年)問7

送配電線路や変電機器におけるコロナ障害に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

  1. 導体表面にコロナが発生する最小の電圧はコロナ臨界電圧と呼ばれる。その値は、標準の気象条件( 20[℃]、気圧 1013[hPa]、絶対湿度 11[g/㎥])では、導体表面での電位の傾きが波高値で約 30[kV/cm]に相当する。
  2. コロナ臨界電圧は、気圧が高くなるほど低下し、また、絶対湿度が高くなるほど低下する。
  3. コロナが発生すると、電力損失が発生するだけでなく、導体の腐食や電線の振動などを生じるおそれもある。
  4. コロナ電流には高周波成分が含まれるため、コロナの発生は可聴雑音や電波障害の原因にもなる。
  5. 電線間隔が大きくなるほど、また、導体の等価半径が大きくなるほどコロナ臨界電圧は高くなる。このため、相導体の多導体化はコロナ障害対策として有効である。

2008年(平成20年)問7 過去問解説

コロナ臨界電圧は気圧が低くなるほど低下し、湿度が高くなるほど低下します。

答え (2)

2012年(平成24年)問12

送配電線路のフェランチ効果に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 受電端電圧の方が送電端電圧より高くなる現象である。
  2. 線路電流が大きい場合より著しく小さい場合に生じることが多い。
  3. 架空送配電線路の負荷側に地中送配電線路が接続されている場合に生じる可能性が高くなる。
  4. 線路電流の位相が電圧に対して遅れている場合に生じることが多い。
  5. 送配電線路のこう長が短い場合より長い場合に生じることが多い。

2012年(平成24年)問12 過去問解説

フェランチ効果は、位相が進み線路末端で電圧が高くなることです。

答え (4)

2014年(平成26年)問9

架空送電線路におけるコロナ放電及びそれに関わる障害に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 電線表面電界がある値を超えると、コロナ放電が発生する。
  2. コロナ放電が発生すると、電線や取り付け金具で腐食が生じることがある。
  3. 単導体方式は、多導体方式に比べてコロナ放電の発生を抑制できる。
  4. コロナ放電が発生すると、電気エネルギーの一部が音、光、熱などに変換され、コロナ損という電力損失が生じる。
  5. コロナ放電が発生すると、架空送電線近傍で誘導障害や受信障害が生じることがある。

2014年(平成26年)問9 過去問解説

多導体方式を用いると単導体方式に比べてコロナ放電の発生を抑制できます。

答え (3)

電力電験3種
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