自動制御は検出器やセンサーからの信号を読み取り、目標値に近づくように操作量を制御します。検出器やセンサーは温度や圧力・流量といった物理量を、電気信号に変換し制御部へ信号を送るのですが、この信号は統一されていないと、非常に扱いにくいので信号変換器で電気信号を統一する必要があります。このページでは、「信号変換器」について初心者の方でもわかりやすいように、やさしく解説しています。
信号変換器の種類と特徴
工場,プラントにおいては,各種工業量を常に把握し,プロセスの適正管理, 安全確保,自動化,効率化を図る必要から,様々な制御機器や,電子機器(工業計器)が使用されています。この工業用データ機器には,
- 温度・圧力・流量などの各種の工業量を検出し,電気量に変換する発信器・検出器・変換器
- 記録する記録計
- 目標とする設定値に調節する調節計
- 遠方の工業量を中央で遠隔監視・制御,データ伝送する遠隔制御機器及びデータ伝送端末機器
などがありますが,これらは電子化・ディジタル化が一層進んでいます。ここでは,信号変換器の種類と特徴などについて解説します。
センサ入力変換器とは?
検出器で検出された温度や圧力・流量といった物理量は、電気信号に変換する装置です。この信号は統一されていないと、非常に扱いにくいのでセンサ入力変換器で扱いやすい電気信号に統一しています。
センサ入力変換器には、検出器と一体になったものと、検出器とは別々になったものがあります。尚、計装用標準信号(統一信号)である、直流信号DC4-20mAを出力するものが大半です。
アイソレータとは?
信号絶縁器のことです。入力信号と出力信号の間を絶縁する機能をもった変換器です。信号を絶縁するため、入力信号と出力信号がそれぞれ個別の電位になった場合でも直流信号を正確に伝送できる機能をもっています。
例えば、1つの信号を2つの機器に取り込むとき、工業計装では標準信号であるDC4~20mAを使用して直列に接続することがあります。その場合、電流の回り込みがおき、機器の一方に信号が流れないといった現象が起こることがあります。そのような信号の回り込みを防止します。
又、ノイズなどが原因でセンサーが不具合を起こしたとき、絶縁されていないとメータやシーケンサーに悪影響を及ぼすことがあります機器の保護用にも使われます。
特性変換器とは?
センサからの出力特性が直線的でない信号を直線化する変換器です。例えば、流量計が出力する特性は、完全に比例していません。これを、リニアライザーや演算器によって正比例するように修正変換して出力します。
特性変換器で直線性を持たせ、統一信号に変換することで、制御回路に取り込むことができます。
又、2つの信号を受信し、それらの和や差、乗などに比例する信号を出力する演算器などもあります。
主な使用方法として
・信号形態変換(Pt100Ω→4-20mAなど)
・信号レベル変換(DC0-1V→0-10Vなど)
・リニアライズ(非直線データ→直線化)
・フィルタリング(ノイズ除去)
・信号絶縁(アイソレーション、責任分界のため)
などがあります。信号変換器は、センサーの出力に合わせて、たくさんの種類があります。
パルス変換器とは?
積算流量計や電力量計、カウンターなどはパルス信号を出力します。このパルス信号を、メータなどのアナログ機器で表示させるには変換する必要があります。又、逆にアナログ信号をパルス変換するものもあります。
警報設定器(アラームセッタ)とは?
センサーからのアナログ信号に設定値(リミット)を持たせ、信号がある設定値を越えた、または下がったときに警報を出力します。
AD/DA変換器とは?
アナログデータとデジタルデータを変換するものです。AD変換は、コンピュータやシーケンサーにアナログ値を取り込む場合に使われます。DA変換は、コンピュータやシーケンサーからの指令をアナログ機器へ伝達するのに使われます。
電子式変換器の種類と特徴
温度変換器
温度変換器は,熱電対・測温抵抗体及び放射式温度計などの検出部からの出力信号を,受信計に対応した種類の信号に変換するものです。
変換器のもつ電子回路には,分圧,分流インピーダンス変換,A/D変換, リエアライズ,温度補償及び増幅器などの種類があり,用途に応じて必要な回路が組み合わされ,ケースに内蔵されています。温度変換器は,内部回路にはマイクロプロセッサを搭載し,温度センサと一体で現場におかれるタイプが出てきています。
流量計(差圧伝送器)
流体の移動量を測定するものが流量計で,多種多様なものがあります。管路内に絞りを入れると,その前後(上流側と下流側)に圧力差が生じます。この圧力差(差圧)が流量の2乗に比例するので, この差圧を測定して流量を求めることができます。差圧を発生させるための絞りにオリフィスが使用されています。
差圧伝送器は,発生した差圧を空気信号あるいは電気信号の取り扱いやすい信号に変換し,受信計へ伝送するものです。この場合,差圧はダイヤフラムの変位差を静電容量の差としてとらえ,電子回路で変換・増幅して出力信号を出します。
圧力変換器
一般に圧力発信器または圧力伝送器と呼ばれ,電子式と空気式があります。電子式圧力変換器の受圧素子は,ダイヤフラムが多く用いられています。圧力を電気量に変換する素子として,静電容量または半導体ストレンゲージ方式が主流となっていますが,これは受圧素子の変位がきわめて小さくてすむからです(これらは静電容量式圧力変換器及び半導体ストレンゲージ圧力変換器といわれる)。
電気量変換器(電圧・電流・電力・周波数など)
各種の電力量を入力し,各種の直流信号を出力する変換器です。交流電流変換器・交流電圧変換器・直流電流変換器・直流電圧変換器・抵抗変換器が主なものです。これらの入力・出力信号は,各種の使用目的に応じて定められており,多種多様となっています。
このほか,工業用の変換器としては,液体のレベルを計測する発信器・伝送器,及び工業プロセスラインに使用されるガス分析計・液体分析計などのプロセス用分析計があります。
変換器の出力信号(伝送信号)
変換器の基本的な役目は,いろいろな量を検出し,その値を信号で受信計ヘ送ることです。工業計器の場合,この伝送信号は電気信号と空気信号が主として用いられるが,光信号を用いたものもあります。伝送信号はアナログ信号とディジタル信号に分類され,ディジタル信号は電気信号と光信号に分類されます。
- アナログ信号(統一信号といわれるもの)
・電気信号 4~20mA DC及び10~ 50mA DCの2種
・空気信号 0.02~0.1MPa(0.2~ l kgf/cm2) - ディジタル信号
・電気信号
・光信号
統一信号は,プロセス計装の高度化に伴い世界的に標準化されたものです。温度変換器のアナログ出力は4~20mADC,プロセス制御用の圧力変換器の出力信号は4~20mA DC, 1~ 5V DCのものが多く使われています。
電子式変換器は,情報量の増加,監視・制御機能の向上,自己診断,コストの低減に対応するため,ディジタル信号による伝送方式が増加しています。光信号は,光パルスによリディジタル信号で伝送するもので,伝送路には光ファイバケーブルが使用されています。