計装ループの端子極性とノイズについて

自動制御と計装

計装とは、自動制御を行う目的で、計測装置や計測制御装置を装備することをいいます。つまり、監視や制御の為に検出器や調節器などを取り付け、測定や計測をする技術のことです。このページでは制御と計装ループの方式について、基本的な回路でやさしく解説しています。

計装とは?

計装という言葉は、1950 年頃に、Instrumentation の訳語として生まれたもので、制御の目的で計測装置または計測制御装置を装備すること。またその技術」と定義されています。

プロセス工業や装置工業の発展により、規模の増大や複雑化により、人間の感覚や熟練にたよって創業することができない状態になっています。そこで、必然的に計測器および自動制御装置の導入によるオートメーション化が必要となり、これらの生産設備の合理的な運転を実現することを目的に発達してきたものが、計装技術です。

計装化の目的

工業における計装化の目的は、いかにプラントを合理的に運転するかにあります。つまり、

  1. 製品品質の維持・向上ならびに均一化
  2. 生産性(原単位・歩留り)の維持、向上・省エネ
  3. 省力化または作業条件の改善
  4. 事故防止および安全衛生の維持・向上
  5. 設備管理ならびに技術管理の改善・向上

などがあげられます。プラントの条件や経済的理由などにより、計装の程度や施工方法は一概には述べることはできませんが、計装化の目的を達成するためには、計測器および制御装置に対する理解と適切な選定、また施工と技術が伴う事が必要となります。

計装ループの端子極性

代表的な計装用統一信号には、電圧信号1~5V DCと電流信号4~20mA DCがあります。これらを接続するときの端子の極性について説明します。

並列受信方式

並列受信方式

電圧信号DC1~5Vの場合には機器を並列に接続します。この接続方式を並列受信方式と言います。

この回路の欠点として、ノイズの影響を受けやすいことと、長距離の伝送で電圧降下の影響を受けやすいといったデメリットがあります。

直列受信方式

電流信号DC4~20mAの場合には、機器をを直列に接続します。この接続方式を直列受信方式と言います。

直列受信方式

直列受信方式には、端子に+-の極性があります。信号源から電流が流れる向きを考えてやる解りやすいです。

変換器には出力負荷抵抗というものがあります。指示計器、警報設定器、記録計なども抵抗を持っており、一種の負荷として働きます。ループ内は許容範囲の抵抗内でないと誤差や故障の原因になります。尚、業界標準は750Ω以下となっています。

この回路の特徴としては、

  • ノイズの影響を受けにくい
  • 伝送線抵抗の影響が無い
  • 1-5V入力機器への信号変換が簡単
  • 2線方式センサーが可能(4mAを電源として供給できる機器がある)

といったメリットがあります。

直列・並列受信方式

図のように250Ωのシャント抵抗を挿入すれば、直列回路からと並列回路に変換できます。実際の現場では、シャント抵抗を使わず、アイソレータを使うことが多いです。

直列・並列受信方式

直列・並列受信方式のように実際の工業計装ループでは使われています。コントローラや機器についての多くは、DC1-5V入力として使用します。信号を受信する機器が収納されている盤内で、DC4-20mAの信号をDC1-5Vに変換しています。

この変換は250Ωのシャント抵抗を挿入すれば、簡単に変換できるのですが、信号を変換する大きなメリットとして調整や点検時にDC1-5Vの信号は取り扱いが簡単なためです。

DC4-20mA信号のままなら、信号を計測するときに端子から配線を外し、電流計を直列に入れなければなりません。DC1-5Vの信号なら、信号線を端子から外す必要がありません。そのままの状態で入力端子の両端を電圧計で計測するだけで済みます。

信号を分岐する場合についてDC4-20mAは250Ω抵抗1本で受け、DC1-5Vの入力機器に並列接続が可能です。ただし回路全体の抵抗値は750Ωまでです。

以上のような理由で直列・並列受信方式は多く採用されています。

2線式伝送器

2線式伝送器は、4~20mA DCの出力信号線を使って電源を供給する方式です。そのため、伝送器には独立した供給電源端子はありません。伝送器という名前から、信号源であるように感じますが、実際は負荷として動作しています。この場合も、電流の向きを考えて極性を割り付けます。

配線とノイズ

信号に混入するノイズによって、計装システムが誤動作し、システムトラブルとなることがあります。 ノイズ対策としては、変換器、受信計器など信号を受ける計器に、ノイズを除去するフィルタを付加する方法が挙げられますが、計器の応答を遅くしますから、高速の応答を必要とする場合や、パルス性の信号を扱う場合には適していません。もっとも望ましいノイズ対策は、ノイズを信号に混入させないことです。そのためには、信号線の配線の方法、使用する信号線の種類、アースの取り方などについて考慮しなければなりません。具体的な対策はノイズの種類によって異なります。

ノイズ に対して考慮が必要な信号

ノイズによるトラブルの発生しやすい信号を挙げれば、次のとおりです。

  1. モータなどの動力機械、大型トランスの近くを通過する信号線。高電圧、大電流の電源線と平行して配線される信号線、とくに長距離配線の場合。
  2. 数mVの微小電圧信号。
  3. 高い信号源インピーダンスをもつ信号。

一方、変換器出力など4~20mA DCの統一電流信号は、信号のレベルが高く、受信計器から見たインピーダンスが低いので、ノイズに強い信号です。

ノイズの及ぼす影響

電圧信号0~10Vの伝送ラインに10Vのノイズが乗ったとすると、受信電圧としては信号電圧に匹敵するノイズ電圧が現われる結果になります。電流信号4~20mA DCを伝送するラインに10Vのノイズ電圧が発生した場合を考えてみましょう。

電流出力形変換器の出力端子からみた変換器の抵抗値は通常1MΩ以上で、5MΩ程度あるのが普通です。したがって受信抵抗250Ωにノイズ電圧10Vによって流れる電流値は、I(A)=V(V)/R(Ω)より

 I=10(V)/10 6(Ω)=10 -5(A)=0.01(mA)

となります。その結果、ノイズは信号20mAの1/2,000以下で、まったく測定上問題にならないことがわかります。10Vのノイズ電圧が1/2,000しか影響しない電圧信号は10Vの2,000倍、すなわち0~20,000Vということになります(ただし、ノイズ電圧が電流出力形変換器の出力回路にあるトランジスタの耐圧限界35V以下であることが必要です)。

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