このページでは、配電線路の電圧調整と保護について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の電力科目の試験で、実際に出題された配電線路の電圧調整と保護の過去問題も解説しています。
配電線路で行われている電圧調整
配電線路では、電圧を適正な範囲を保つために、各種の電圧調整が行われています。
変電所での電圧調整
- 負荷時タップ切換変圧器の設置
- 負荷時電圧調整器のタップ切換
- 電力コンデンサや分路リアクトルなどの調相設備による調整
配電線路での電圧調整
- 柱上変圧器のタップ切換
- 柱上変圧器の設置位置変更
- 自動電圧調整器(SVR)の設置
- 開閉器付電力用コンデンサの設置
- 昇圧器の設置
- 電線の太線化
配電線の保護
配電線路の保護装置
配電線の故障に対する保護としては、過電流継電器(OCR)と地絡方向継電器(DGR)が主です。6.6KV級配電系統では、中性点が非接地方式のため地絡電流が少なく、また健全部分にも地絡電流が分流します。そのため、電圧と電流要素を組み合わせ、故障時に故障線路と健全線路における地絡電流が逆位相となることを利用した地絡方向継電器(DGR)を使用することが多いです。
尚、22~33KV級配電系統の中性点接地は、抵抗接地が主流です。抵抗接地方式は地絡電流を抑えつつ、電磁誘導障害が起こりにくいといった特徴があります。
低圧配電線路で短絡故障が生じた際の保護装置としては、高圧カットアウトで保護を行っています。高圧カットアウトは、柱上変圧器の一次側に取り付けられます。
故障区間の分離方式
配電線路では、事故箇所を区分する方式として、時限式順送方式が採用されています。事故が発生すると変電所の遮断器が開放され、配電線が無電圧となったことにより自動区分開閉器を一斉に開放します。
その後、変電所の遮断器が再閉路し配電線が充電されれば、設定した時間後に自動区分開閉器を順次役入します。事故箇所の開閉器が投入されると再事故となり変電所の遮断器が開放されます。その際に、事故箇所の開閉器はロックされ、その後に変電所の遮断器が再再閉路して、事故箇所を切り離し配電線に送電することができます。
電験三種-電力(送配電)過去問題
2008年(平成20年)問13
次の文章は、配電線路の電圧調整に関する記述である。
配電線路より電力供給している需要家への供給電圧を適正範囲に維持するため、配電用変電所では、一般に( ア )によって、負荷変動に応じて高圧配電線路への送出電圧を調整している。高圧配電線路においては、一般的に線路の末端になるほど電圧が低くなるため、高圧配電線路の電圧降下に応じ、 柱上変圧器の( イ )によって二次側の電圧調整を行っていることが多い。また、高圧配電線路の距離が長い場合など、( イ ) によっても電圧降下を許容範囲に抑えることができない場合は、( ウ )や、開閉器付電力用コンデンサ等を高圧配電線路の途中に施設することがある。さらに、電線の( エ )によって電圧降下そのものを軽減する対策をとることもある。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、 正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 配電用自動電圧調整器 | タップ調整 | 負荷時タップ切換変圧器 | 太線化 |
(2) | 配電用自動電圧調整器 | 取替 | 負荷時タップ切換変圧器 | 細線化 |
(3) | 負荷時タップ切換変圧器 | タップ調整 | 配電用自動電圧調整器 | 細線化 |
(4) | 負荷時タップ切換変圧器 | タップ調整 | 配電用自動電圧調整器 | 太線化 |
(5) | 負荷時タップ切換変圧器 | 取替 | 配電用自動電圧調整器 | 太線化 |
2008年(平成20年)問13 過去問解説
配電線路より電力供給している需要家への供給電圧を適正範囲に維持するため、配電用変電所では、一般に( 負荷時タップ切換変圧器 )によって、負荷変動に応じて高圧配電線路への送出電圧を調整している。高圧配電線路においては、一般的に線路の末端になるほど電圧が低くなるため、高圧配電線路の電圧降下に応じ、 柱上変圧器の( タップ調整 )によって二次側の電圧調整を行っていることが多い。また、高圧配電線路の距離が長い場合など、( タップ調整 ) によっても電圧降下を許容範囲に抑えることができない場合は、( 配電用自動電圧調整器 )や、開閉器付電力用コンデンサ等を高圧配電線路の途中に施設することがある。さらに、電線の( 太線化 )によって電圧降下そのものを軽減する対策をとることもある。
答え (4)
2009年(平成21年)問8
22(33)[kV]配電系統に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
- 6.6[kV]の配電線に比べ電圧対策や供給力増強対策として有効なので、長距離配電の必要となる地域や新規開発地域への供給に利用されることがある。
- 電気方式は、地絡電流抑制の観点から中性点を直接接地した三相3線方式が一般的である。
- 各種需要家への電力供給は、特別高圧需要家へは直接に、高圧需要家への途中に設けた配電塔で 6.6[kV]に降圧して高圧架空配電線路を用いて、低圧需要家へはさらに柱上変圧器で 200~100[V]に降圧して、行われる。
- 6.6[kV]の配電線に比べ 33[kV]の場合は、負荷が同じで配電線の線路定数も同じなら、電流は 1/5 となり電力損失は 1/25 となる。電流が同じであれば、送電容量は5倍となる。
- 架空配電系統では保安上の観点から、特別高圧絶縁電線や架空ケーブルを使用する場合がある。
2009年(平成21年)問8 過去問解説
配電系統の接地方式は、非接地方式が採用されています。尚、中性線接地する場合は、抵抗接地方式またはリアクトル接地方式としています。
答え (2)
2010年(平成22年)問13
配電設備に関する記述の正誤を解答群では「正:正しい文章」又は「誤:誤っている文章」と書き表している。正・誤の組み合わせとして、正しいのは次のうちどれか。
- V 結線は、単相変圧器 2 台によって構成し、△結線と同じ電圧を変圧することができる。一方、△結線と比較し変圧器の利用率は √3/2 となり出力は √3/3 倍になる。
- 長距離で負荷密度の比較的高い商店街のアーケードでは、上部空間を利用し変圧器を設置する場合や、アーケードの支持物上部に架空配電線を施設する場合がある。
- 架空配電線と電話線、信号線などを、同一支持物に施設することを共架といい、全体的な支持物の本数が少なくなるので、交通の支障を少なくすることができ、電力線と通信線の離隔距離が緩和され、混触や誘導障害が少なくなる。
- ケーブル布設の管路式は、トンネル状構造物の側面の受け棚にケーブルを布設する方式である。特に変電所の引き出しなどケーブル条数が多い箇所には共同溝を利用する。
a | b | c | d | |
(1) | 正 | 誤 | 正 | 正 |
(2) | 誤 | 正 | 正 | 誤 |
(3) | 正 | 正 | 誤 | 誤 |
(4) | 誤 | 正 | 誤 | 誤 |
(5) | 誤 | 誤 | 正 | 正 |
2010年(平成22年)問13 過去問解説
- 正しい記述です。
- 正しい記述です。
- 電力線と通信線の離隔距離が緩和されると、混触や誘導障害は大きくなります。離隔距離を大きくする方が、混触や誘導障害のリスクは小さくなります。したがって、c.は誤りです。
- トンネル状構造物の側面の受け棚にケーブルを布設する方式は、暗きょ式です。したがって、d.は誤りです。
答え (3)
2011年(平成23年)問13
配電線路の電圧調整に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 配電線のこう長が長くて負荷の端子電圧が低くなる場合、配電線路に昇圧器を設置することは電圧調整に効果がある。
- 電力用コンデンサを配電線路に設置して、力率を改善することは電圧調整に効果がある。
- 変電所では、負荷時電圧調整器・負荷時タップ切換変圧器等を設置することにより電圧を調整している。
- 配電線の電圧降下が大きい場合は、電線を太い電線に張り替えたり、隣接する配電線との開閉器操作により、配電系統を変更することは電圧調整に効果がある。
- 低圧配電線における電圧調整に関して、柱上変圧器のタップ位置を変更することは効果があるが、柱上変圧器の設置地点を変更することは効果がない。
2011年(平成23年)問13 過去問解説
柱上変圧器の設置地点を変更することは、電圧調整に効果があります。
答え (5)
2013年(平成25年)問12
次の文章は、配電線の保護方式に関する記述である。
高圧配電線路に短絡故障又は地絡故障が発生すると、配電用変電所に設置された( ア )により故障を検出して、遮断器にて送電を停止する。
この際、配電線路に設置された区分用開閉器は( イ )する。その後に配電用変電所からの送電を再開すると、配電線路に設置された区分用開閉器は電源側からの送電を検出し、一定時間後に動作する。その結果、電源側から順番に区分用開閉器は( ウ )される。
また、配電線路の故障が継続している場合は、故障区間直前の区分用開閉器が動作した直後に、配電用変電所に
設置された( ア )により故障を検出して、遮断器にて送電を再度停止する。
この送電再開から送電を再度停止するまでの時間を計測することにより、配電線路の故障区間を判別することができ、この方式は( エ )と呼ばれている。
例えば、区分用開閉器の動作時限が 7 秒の場合、配電用変電所にて送電を再開した後、 22 秒前後に故障検出により送電を再度停止したときは、図の配電線の( オ )の区間が故障区間であると判断される。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
(1) | 保護継電器 | 開放 | 投入 | 区間順送方式 | c |
(2) | 避雷器 | 開放 | 投入 | 時限順送方式 | d |
(3) | 保護継電器 | 開放 | 投入 | 時限順送方式 | d |
(4) | 避雷器 | 投入 | 開放 | 区間順送方式 | c |
(5) | 保護継電器 | 投入 | 開放 | 区間順送方式 | c |
2013年(平成25年)問12 過去問解説
高圧配電線路に短絡故障又は地絡故障が発生すると、配電用変電所に設置された( 保護継電器 )により故障を検出して、遮断器にて送電を停止する。
この際、配電線路に設置された区分用開閉器は( 開放 )する。その後に配電用変電所からの送電を再開すると、配電線路に設置された区分用開閉器は電源側からの送電を検出し、一定時間後に動作する。その結果、電源側から順番に区分用開閉器は( 投入 )される。
また、配電線路の故障が継続している場合は、故障区間直前の区分用開閉器が動作した直後に、配電用変電所に
設置された( 保護継電器 )により故障を検出して、遮断器にて送電を再度停止する。
この送電再開から送電を再度停止するまでの時間を計測することにより、配電線路の故障区間を判別することができ、この方式は( 時限順送方式 )と呼ばれている。
例えば、区分用開閉器の動作時限が 7 秒の場合、配電用変電所にて送電を再開した後、 22 秒前後に故障検出により送電を再度停止したときは、図の配電線の( d )の区間が故障区間であると判断される。
答え (3)
2017年(平成29年)問12
次の文章は、我が国の高低圧配電系統における保護について述べた文章である。
6.6kV高圧配電線路は、60kV以上の送電線路や送電用変圧器に比べ、電線路や変圧器の絶縁が容易であるため、故障時に健全相の電圧上昇が大きくなっても特に問題にならない。また、1線地絡電流を( ア )するため( イ )方式が採用されている。
一般に、多回線配電線路では地絡保護に地絡方向継電器が用いられる。これは、故障時に故障線路と健全線路における地絡電流が( ウ )となることを利用し、故障回線を選択するためである。
低圧配電線路で短絡故障が生じた際の保護装置として( エ )が挙げられるが、これは、通常、柱上変圧器の( オ )側に取り付けられる。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
(1) | 大きく | 非接地 | 逆位相 | 高圧カットアウト | 二次 |
(2) | 大きく | 接地 | 逆位相 | ケッチヒューズ | 一次 |
(3) | 小さく | 非接地 | 逆位相 | 高圧カットアウト | 一次 |
(4) | 小さく | 接地 | 同位相 | ケッチヒューズ | 一次 |
(5) | 小さく | 非接地 | 同位相 | 高圧カットアウト | 二次 |
2017年(平成29年)問12 過去問解説
6.6kV高圧配電線路は、60kV以上の送電線路や送電用変圧器に比べ、電線路や変圧器の絶縁が容易であるため、故障時に健全相の電圧上昇が大きくなっても特に問題にならない。また、1線地絡電流を( 小さく )するため( 非接地 )方式が採用されている。
一般に、多回線配電線路では地絡保護に地絡方向継電器が用いられる。これは、故障時に故障線路と健全線路における地絡電流が( 逆位相 )となることを利用し、故障回線を選択するためである。
低圧配電線路で短絡故障が生じた際の保護装置として( 高圧カットアウト )が挙げられるが、これは、通常、柱上変圧器の( 一次 )側に取り付けられる。
答え (3)
2017年(平成29年)問13
次の文章は、配電線路の電圧調整に関する記述である。誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 太陽電池発電設備を系統連系させたときの逆潮流による配電線路の電圧上昇を抑制するため、パワーコンディショナには、電圧調整機能を持たせているものがある。
- 配電用変電所においては、高圧配電線路の電圧調整のため、負荷時電圧調整器(LRA)や負荷時タップ切換装置付変圧器(LRT)などが用いられる。
- 低圧配電線路の力率改善をより効果的に実施するためには、低圧配電線路ごとに電力用コンデンサを接続することに比べて、より上流である高圧配電線路に電力用コンデンサを接続した方がよい。
- 高負荷により配電線路の電圧降下が大きい場合、電線を太くすることで電圧降下を抑えることができる。
- 電圧調整には、高圧自動電圧調整器(SVR)のように電圧を直接調整するもののほか、電力用コンデンサや分路リアクトル、静止形無効電力補償装置(SVC)などのように線路の無効電力潮流を変化させて行うものもある。
2017年(平成29年)問13 過去問解説
低圧配電線路ごとに電力用コンデンサを接続し、力率を改善した方が効果は大きいので、(3)は誤りです。
答え (3)