このページでは、架空配電線路に使われる機器について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の電力科目の試験で、実際に出題された架空配電線路に使われる機器の過去問題も解説しています。
架空配電線路に使われる機器
支持物
支持物には、鉄塔、鉄柱、鉄筋コンクリート柱および木柱があります。電線又は弱電流電線若しくは光ファイバケーブルを支持します。
電線
架空配電線路に使われる電線でよく使われる電線を示します。
・ 高圧配電線 : 屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線(OC線)
・ 高圧引込線 : 高圧引下用絶縁電線(PD線)
・ 低圧配電線 : 屋外用ビニル絶縁電線(OW線)
・ 低圧引込線 : 引込用ビニル絶縁電線(DV線)
がいし
がいしは電線を支持するために用いられる陶磁製の絶縁器具です。がいしには高圧用と低圧用とがあり、使用箇所の区分により、主として直線部分に使用するピンがいし、引留部分に使用する耐張(引留)がいし、支線に使用する玉がいしなどがあります。耐張がいしは、電線を支持物に引き留める用途で使用されます。
柱上開閉器
柱上開閉器には、気中開閉器(AS:Air Switch)、ガス開閉器(GS:Gas Switch)または真空開閉器(VS:Vaccum Switch)などがあります。主に作業時の作業区間を区分するために使用されます。
高圧カットアウト
変圧器を電路から区分する働きと、中に収めたヒューズにより変圧器二次側短絡や変圧器内部故障などのときに、変圧器を電路より遮断して、事故の拡大・波及を防止するために使用されます。箱形のものが普通ですが、耐じん・耐塩用に円筒形のものもあります。
柱上変圧器
架空配電線路において、電柱に固定具により取り付けて使用する変圧器です。主に6.6[kV]を100/200[V]に変圧するために用いられます。
三相3線式の変圧器の場合、同一容量の単相変圧器のV結線を採用しています。また、三相4線式の変圧器の場合は、異容量の単相変圧器のV結線を組み合わせることが多いです。
自動電圧調整器(SVR)
自動電圧調整器(SVR)は、配電線の電圧を調整する目的で線路途中に設置されます。単巻変圧器を用いたものが使用されており、そのタップを自動的に切り替えすることにより電圧調整が行われます。
低圧引込線
電柱から建物へ低圧電力 100/200[V]を供給する電線です。一般には、DV線が使われます。低圧引込線は、過電流保護のためにヒューズ(ケッチ)が低圧引込線の電柱側のホルダーに設けられます。
電験三種-電力(送配電)過去問題
2001年(平成13年)問9
次の記述は、高低圧配電系統(屋内配線を含む。)の保護システムに関するものである。
- 配電用変電所の高圧配電線引出口には、過電流及び地絡保護のために継電器と( ア )が設けられている。
- 柱上変圧器には、過電流保護のために( イ )が設けられる。
- 低圧引込線には、過電流保護のためにヒューズ(ケッチ)が低圧引込線の( ウ )取付点に設けられる。
- 屋内配線には、過電流保護のために( エ )又はヒューズが、地絡保護のために通常漏電遮断器が設けられる。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 遮断器 | 柱上開閉器 | 柱側 | 配線用遮断器 |
(2) | 高圧ヒューズ | 柱上開閉器 | 家側 | 電流制限器 |
(3) | 高圧ヒューズ | 柱上開閉器 | 柱側 | 配線用遮断器 |
(4) | 遮断器 | 高圧カットアウト | 家側 | 電流制限器 |
(5) | 遮断器 | 高圧カットアウト | 柱側 | 配線用遮断器 |
2001年(平成13年)問9 過去問解説
- 配電用変電所の高圧配電線引出口には、過電流及び地絡保護のために継電器と( 遮断器 )が設けられている。
- 柱上変圧器には、過電流保護のために( 高圧カットアウト )が設けられる。
- 低圧引込線には、過電流保護のためにヒューズ(ケッチ)が低圧引込線の( 柱側 )取付点に設けられる。
- 屋内配線には、過電流保護のために( 配線用遮断器 )又はヒューズが、地絡保護のために通常漏電遮断器が設けられる。
答え (5)
2003年(平成15年)問12
高圧架空配電線路を構成する機器又は材料として、使用されることのないものは、次のうちどれか。
(1) 柱上開閉器 (2) 避雷器 (3) DV線 (4) 中実がいし (5) 支線
2003年(平成15年)問12 過去問解説
DV線は引込用ビニル絶縁電線のことです。600[V]以下の架空引込用として使用されています。
答え (3)
2005年(平成17年)問13
高圧架空配電線路を構成する機器又は材料に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
- 配電線に用いられる電線には、原則として裸電線を使用することができない。
- 配電線路の支持物としては、一般に鉄筋コンクリート柱が用いられている。
- 柱上開閉器は、一般に気中形や真空形が用いられている。
- 柱上変圧器の鉄心は、一般に方向性けい素鋼帯を用いた巻鉄心の内鉄形が用いられている。
- 柱上変圧器は、電圧調整のため、負荷時タップ切換装置付きが用いられている。
2005年(平成17年)問13 過去問解説
柱上変圧器は通常固定タップで負荷時タップ切換装置はついていません。電柱にはSVRと言う昇圧変圧器が設置されているものがあります。
答え (5)
2006年(平成18年)問9
次に示す配電用機材(ア),(イ),(ウ)及び(エ)とそれに関係の深い語句(a),(b),(c),(d)及び(e)とを組み合わせたものとして、正しいものは次のうちどれか。
2006年(平成18年)問9 過去問解説
- 酸化亜鉛形避雷器をギャップレス避雷器といいます。平常の回路電圧では、ほとんど電流が流れないので、直列ギャップがありません。
- ガス絶縁開閉器(GIS)は、密封した容器の中に開閉装置などを収納し、六ふっ化硫黄ガスを封入した開閉器です。
- CV(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシース)ケーブルは、水トリー現象が発生する恐れがあります。
- 変圧器の鉄心である磁心の損失にはヒステリシス損とうず電流損があります。この2つの損失を合わせて鉄損といいます。
- ギャロッピングは、電線に付着した氷雪に風が当たり揚力が生じ、電線が振動する現象です。
答え (3)
2009年(平成21年)問13
次の a 〜 d は配電設備や屋内設備における特徴に関する記述で、誤っているものが二つある。それらの組み合わせは次のうちどれか。
- 配電用変電所において、過電流及び地絡保護のために設置されているのは、継電器、遮断器及び断路器である。
- 高圧配電線は大部分、中性点が非接地方式の放射状系統が多い。そのため経済的で簡便な保護方式が適用できる。
- 架空低圧引込線には引込用ビニル絶縁電線(DV電線)が用いられ、地絡保護を主目的にヒューズが取り付けてある。
- 低圧受電設備の地絡保護装置として、電路の零相電流を検出し遮断する漏電遮断器が一般的に取り付けられている。
(1) aとb (2) aとc (3) bとc (4) bとd (5) cとd
2009年(平成21年)問13 過去問解説
断路器は一般的に、電流が流れている回路は開閉できません。過電流及び地絡保護に断路器は使いません。したがって(a)は誤りです。
引込線に使用するヒューズ(ケッチヒューズ)は、過電流保護のために設けられます。地絡保護を目的としたものではありません。したがって(c)は誤りです。
答え (2)
2010年(平成22年)問12
配電線路の開閉器類に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。
- 配電線路用の開閉器は、主に配電線路の事故時の事故区間を切り離すためと、作業時の作業区間を区分するために使用される。
- 柱上開閉器は、気中形と真空形が一般に使用されている。操作方法は、手動操作による手動式と制御器による自動式がある。
- 高圧配電方式には、放射状方式(樹枝状方式)、ループ方式(環状方式)などがある。 ループ方式は結合開閉器を設置して線路を構成するので、放射状方式よりも建設費は高くなるものの、高い信頼度が得られるため負荷密度の高い地域に用いられる。
- 高圧カットアウトは、柱上変圧器の一次側の開閉器として使用される。その内蔵の高圧ヒューズは変圧器の過負荷時や内部短絡故障時、雷サージなどの短時間大電流の通過時に直ちに溶断する。
- 地中配電系統で使用するパッドマウント変圧器には、変圧器と共に開閉器などの機器が収納されている。
2010年(平成22年)問12 過去問解説
高圧カットアウトは、変圧器の一次側に設置して短絡事故が生じたとき内蔵されているヒュ ーズで回路を遮断するものです。 雷サージなど雷害による異常電圧は、避雷器により各種の機器を保護します。
答え (4)
2013年(平成25年)問11
我が国の配電系統の特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 高圧配電線路の短絡保護と地絡保護のために、配電用変電所には過電流継電器と地絡方向継電器が設けられている。
- 柱上変圧器には、過電流保護のために高圧カットアウトが設けられ、柱上変圧器内部及び低圧配電系統内での短絡事故を高圧系統側に波及させないようにしている。
- 高圧配電線路では、通常、6.6[kV]の三相 3 線式を用いている。また、都市周辺などのビル・工場が密集した地域の一部では、電力需要が多いため、さらに電圧階級が上の 22[kV]や 33[kV]の三相 3 線式が用いられることもある。
- 低圧配電線路では、電灯線には単相 3 線式を用いている。また、単相 3 線式の電灯と三相 3 線式の動力を共用する方式として、V 結線三相 4 線式も用いている。
- 低圧引込線には、過電流保護のために低圧引込線の需要場所の取付点にケッチヒューズ(電線ヒューズ)が設けられている。
2013年(平成25年)問11 過去問解説
低圧引込線には、過電流保護のためにヒューズ(ケッチ)が低圧引込線の柱側取付点に設けられます。
答え (5)
2014年(平成26年)問13
高圧架空配電系統を構成する機材とその特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 柱上変圧器は、鉄心に低損失材料の方向性けい素鋼板やアモルファス材を使用したものが実用化されている。
- 鋼板組立柱は、山間部や狭あい場所など搬入困難な場所などに使用されている。
- 電線は、一般に銅又はアルミが使用され、感電死傷事故防止の観点から、原則として絶縁電線である。
- 避雷器は、特性要素を内蔵した構造が一般的で、保護対象機器にできるだけ接近して取り付けると有効である。
- 区分開閉器は、一般に気中形、真空形があり、主に事故電流の遮断に使用されている。
2014年(平成26年)問13 過去問解説
区分開閉器は保守点検や修理などの作業をする場合に電路を遮断するものです。事故電流を遮断するものではありません。
答え (5)