このページでは、変電所に設置されている避雷器の仕組みについて、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の電力科目の試験で、実際に出題された変電所に設置されている避雷器の仕組みの過去問題も解説しています。
避雷器の仕組み
避雷器は雷過電圧や開閉過電圧などの異常電圧をある値以下に放電し、電気施設の絶縁を保護する機器です。かつ、続流を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱すことなく、原状に復帰する機能をもつ装置です。その特性は、主に放電開始電圧と制限電圧で規定されています。
避雷器の特性要素は、常時の電圧では絶縁性を保ち電流を流しませんが、電圧が一定値を超えると電流を流しやすい導電体に変わる性質をもっています。このような、電流が電圧に比例しない抵抗を非直線抵抗といいます。
避雷器はその特性要素の非直線抵抗特性により、過電圧サージに伴う電流のみを大地に放電させ、サージ電流に続いて交流電流が大地に放電するのを阻止する作用を備えています。
発変電所用避雷器では、酸化亜鉛形ギャップレス避雷器が主に使用されています。配電用避雷器では、酸化亜鉛形直列ギャップ付き避雷器が多く使用されています。
避雷器で保護される機器の絶縁は、避雷器の制限電圧に耐えればよいこととなり、機器の絶縁強度設計のほか発変電所構内の機器配置などを経済的、合理的に決定することができます。このような考え方を絶縁協調といいます。
電験三種-電力(変電所)過去問題
2000年(平成12年)問3
避雷器は、( ア )過電圧や開閉過電圧を( イ )により制限し、送配電系統に設置される機器や線路を保護し、かつ( ウ )を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱すことなく原状に自復する機能を持つ装置である。その特性は、主に放電開始電圧と( エ )電圧で規定される。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する字句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 一線地絡 | 放電 | 事故電流 | 対地 |
(2) | 雷 | 放電 | 続流 | 制限 |
(3) | 雷 | 短絡 | 事故電流 | 制限 |
(4) | 雷 | 短絡 | 続流 | 対地 |
(5) | 一線地絡 | 短絡 | 続流 | 制限 |
2000年(平成12年)問3 過去問解説
避雷器は、( 雷 )過電圧や開閉過電圧を( 放電 )により制限し、送配電系統に設置される機器や線路を保護し、かつ( 続流 )を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱すことなく原状に自復する機能を持つ装置である。その特性は、主に放電開始電圧と( 制限 )電圧で規定される。
答え (2)
2004年(平成16年)問6
変電所では主要機器をはじめ多数の電力機器が使用されているが、変電所に異常電圧が侵入したとき、避雷器は直ちに動作して大地に放電し、異常電圧をある値以下に抑制する特性を持ち、機器を保護する。この抑制した電圧を、避雷器の( ア )と呼んでいる。この特性をもとに変圧所全体の( イ )の設計を最も経済的、合理的に決めている。これを( ウ )という。
上記の述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に記入する語句して、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 制限電圧 | 機器配置 | 保護協調 |
(2) | 制御電圧 | 機器配置 | 絶縁協調 |
(3) | 制限電圧 | 絶縁強度 | 絶縁協調 |
(4) | 制御電圧 | 機器配置 | 保護協調 |
(5) | 制御電圧 | 絶縁強度 | 絶縁協調 |
2004年(平成16年)問6 過去問解説
変電所では主要機器をはじめ多数の電力機器が使用されているが、変電所に異常電圧が侵入したとき、避雷器は直ちに動作して大地に放電し、異常電圧をある値以下に抑制する特性を持ち、機器を保護する。この抑制した電圧を、避雷器の( 制限電圧 )と呼んでいる。この特性をもとに変圧所全体の( 絶縁強度 )の設計を最も経済的、合理的に決めている。これを( 絶縁協調 )という。
答え (3)
2011年(平成23年)問10
次の文章は、発変電所用避雷器に関する記述である。
避雷器はその特性要素の( ア )特性により、過電圧サージに伴う電流のみを大地に放電させ、サージ電流に続いて交流電流が大地に放電するのを阻止する作用を備えている。このため、避雷器は電力系統を地絡状態に陥れることなく過電圧の波高値をある抑制された電圧値に低減することができる。この抑制された電圧を避雷器の( イ )という。一般に発変電所用避雷器で処理の対象となる過電圧サージは、雷過電圧と( ウ )である。避雷器で保護される機器の絶縁は、当該避雷器の( イ )に耐えればよいこととなり、機器の絶縁強度設計のほか発変電所構内の( エ )などをも経済的、合理的に決定することができる。このような考え方を( オ )という。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組み合わせとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
(1) | 非直線抵抗 | 制限電圧 | 開閉過電圧 | 機器配置 | 絶縁協調 |
(2) | 非直線抵抗 | 回復電圧 | 短時間交流過電圧 | 機器寿命 | 保護協調 |
(3) | 大容量抵抗 | 制限電圧 | 開閉過電圧 | 機器配置 | 保護協調 |
(4) | 大容量抵抗 | 再起電圧 | 短時間交流過電圧 | 機器寿命 | 絶縁協調 |
(5) | 無誘導抵抗 | 制限電圧 | 開閉過電圧 | 機器配置 | 絶縁協調 |
2011年(平成23年)問10 過去問解説
避雷器はその特性要素の( 非直線抵抗 )特性により、過電圧サージに伴う電流のみを大地に放電させ、サージ電流に続いて交流電流が大地に放電するのを阻止する作用を備えている。このため、避雷器は電力系統を地絡状態に陥れることなく過電圧の波高値をある抑制された電圧値に低減することができる。この抑制された電圧を避雷器の( 制限電圧 )という。一般に発変電所用避雷器で処理の対象となる過電圧サージは、雷過電圧と( 開閉過電圧 )である。避雷器で保護される機器の絶縁は、当該避雷器の( 制限電圧 )に耐えればよいこととなり、機器の絶縁強度設計のほか発変電所構内の( 機器配置 )などをも経済的、合理的に決定することができる。このような考え方を( 絶縁協調 )という。
答え (1)
2015年(平成27年)問7
次の文章は、避雷器とその役割に関する記述である。
避雷器とは、大地に電流を流すことで雷又は回路の開閉などに起因する( ア )を抑制して、電気施設の絶縁を保護し、かつ、( イ )を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱すことなく、原状に復帰する機能をもつ装置である。
避雷器には、炭化けい素(SiC)素子や酸化亜鉛(ZnO)素子などが用いられるが、性能面で勝る酸化亜鉛素子を用いた酸化亜鉛形避雷器が、現在、電力設備や電気設備で広く用いられている。なお、発変電所用避雷器では、酸化亜鉛形( ウ )避雷器が主に使用されているが、配電用避雷器では、酸化亜鉛形( エ )避雷器が多く使用されている。
電力系統には、変圧器をはじめ多くの機器が接続されている。これらの機器を異常時に保護するための絶縁強度の設計は、最も経済的かつ合理的に行うとともに、系統全体の信頼度を向上できるよう考慮する必要がある。
これを( オ )という。このため、異常時に発生する( ア )を避雷器によって確実にある値以下に抑制し、機器の保護を行っている。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
(1) | 過電圧 | 続流 | ギャップレス | 直列ギャップ付き | 絶縁協調 |
(2) | 過電流 | 電圧 | 直列ギャップ付き | ギャップレス | 電流協調 |
(3) | 過電圧 | 電圧 | 直列ギャップ付き | ギャップレス | 保護協調 |
(4) | 過電流 | 続流 | ギャップレス | 直列ギャップ付き | 絶縁協調 |
(5) | 過電圧 | 続流 | ギャップレス | 直列ギャップ付き | 保護協調 |
2015年(平成27年)問7 過去問解説
避雷器とは、大地に電流を流すことで雷又は回路の開閉などに起因する( 過電圧 )を抑制して、電気施設の絶縁を保護し、かつ、( 続流 )を短時間のうちに遮断して、系統の正常な状態を乱すことなく、原状に復帰する機能をもつ装置である。
避雷器には、炭化けい素(SiC)素子や酸化亜鉛(ZnO)素子などが用いられるが、性能面で勝る酸化亜鉛素子を用いた酸化亜鉛形避雷器が、現在、電力設備や電気設備で広く用いられている。なお、発変電所用避雷器では、酸化亜鉛形( ギャップレス )避雷器が主に使用されているが、配電用避雷器では、酸化亜鉛形( 直列ギャップ付き )避雷器が多く使用されている。
電力系統には、変圧器をはじめ多くの機器が接続されている。これらの機器を異常時に保護するための絶縁強度の設計は、最も経済的かつ合理的に行うとともに、系統全体の信頼度を向上できるよう考慮する必要がある。
これを( 絶縁協調 )という。このため、異常時に発生する( 過電圧 )を避雷器によって確実にある値以下に抑制し、機器の保護を行っている。
答え (1)