電験三種の法規で出題される電気機械器具の施設について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の試験で、実際に出題された過去問題も解説しています。
電気機械器具の施設
電気機械器具に発生した熱によって、電気機械器具の絶縁物や外箱などの機械器具を作っている材料が損傷して火災が発生しないようにしなければなりません。電気設備技術基準 第8条では、電気機械器具の熱的強度について、次のように規定されています。
- 電気機械器具の熱的強度(電技 第8条)
電路に施設する電気機械器具は、通常の使用状態においてその電気機械器具に発生する熱に耐えるものでなければならない。
高圧や特別高圧の電気機械器具は、一般の人が触れると危険ですので、容易に触れるおそれがないように施設しなければなりません。また、アークを発生する器具は、可燃性の物に火が移らないように施設しなければなりません。電気設備技術基準 第9条では、高圧又は特別高圧の電気機械器具の危険の防止について、次のように規定されています。
- 高圧又は特別高圧の電気機械器具の危険の防止(電技 第9条)
- 高圧又は特別高圧の電気機械器具は、取扱者以外の者が容易に触れるおそれがないように施設しなければならない。ただし、接触による危険のおそれがない場合は、この限りでない。
- 高圧又は特別高圧の開閉器、遮断器、避雷器その他これらに類する器具であって、動作時にアークを生ずるものは、火災のおそれがないよう、木製の壁又は天井その他の可燃性の物から離して施設しなければならない。ただし、耐火性の物で両者の間を隔離した場合は、この限りでない。
具体的な施設方法
電気設備技術基準の解釈 第21条では、高圧用機械器具の施設について、次のように規定されています。
- 高圧用機械器具の施設(解釈 第21条)
高圧用の変圧器、電動機、遮断器などの機械器具は、電圧が高く危険なため、発電所、変電所、開閉所など以外の場所に施設する場合は、次のいずれかにより施設しなければならない。- 屋内であって、取扱者以外の者が出入りできないように措置した場所に施設すること。
- 機械器具の周囲に人が触れるおそれがないように適当なさくを設け、さくの高さとさくから充電部分までの距離との和を 5[m]以上とし、かつ、危険である旨の表示をすること。
- 機械器具を地表上 4.5[m](市街地外においては 4[m])以上の高さに設置し、かつ、人が触れるおそれがないように施設すること。
- 機械器具をコンクリート製の箱またはD種接地工事を施した金属製の箱に収め、かつ、充電部分が露出しないように施設すること。
- 充電部分が露出しない機械器具を、次のいずれかにより施設すること。
- 簡易接触防護措置を施すこと。
- 温度上昇により、又は故障の際に、その近傍の大地との間に生じる電位差により、人若しくは家畜又は他の工作物に危険のおそれがないように施設すること。
電気設備技術基準の解釈 第23条では、アークを生じる器具の施設について、次のように規定されています。
- アークを生じる器具の施設(解釈 第23条)
高圧用又は特別高圧用の開閉器、遮断器又は避雷器その他これらに類する器具であって、動作時にアークを生じるものは、次の各号のいずれかにより施設すること。- 耐火性のものでアークを生じる部分を囲むことにより、木製の壁又は天井その他の可燃性のものから隔離すること。
- 木製の壁又は天井その他の可燃性のものとの離隔距離を、高圧用のものにあっては 1[m]以上、特別高圧用のものにあっては 2[m]以上(35[kV]以下の特別高圧用のもので、アークの方向および長さを火災が発生するおそれのないように制限した場合は、1[m]以上)離さなければならない。
電気使用場所に施設する電気機械器具
電気使用場所に施設する電気機械器具は、「感電のおそれがないように露出しないこと」、「充電部にかかわらず損傷等人体への危害がないように施設すること」「火災の原因となるような 発熱がないように施設すること」を原則として、電気設備技術基準の解釈 第59条で規定されています。
- 電気使用場所に施設する電気機械器具の感電、火災等の防止(電技 第59条)
電気使用場所に施設する電気機械器具は、充電部の露出がなく、かつ、人体に危害を及ぼし、又は火災が発生するおそれがある発熱がないように施設しなければならない。ただし、電気機械器具を使用するために充電部の露出又は発熱体の施設が必要不可欠である場合であって、感電その他人体に危害を及ぼし、又は火災が発生するおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
電験三種-法規(電気設備技術基準)過去問題
2003年(平成15年)問4
次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく保安原則に関する記述である。
- 電路に施設する電気機械器具は ( ア )状態においてその電気機械器具に発生する( イ )に耐えるものでなければならない。
- 電気設備に( ウ )を施す場合は、電流が安全かつ確実に大地に通ずることができるようにしなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 通常の使用 | 熱 | 接地 |
(2) | 過負荷の | 振動 | 耐雷対策 |
(3) | 事故時の | 電磁力 | 感電対策 |
(4) | 通常の使用 | 振動 | 過電流保護対策 |
(5) | 事故時の | 熱 | 接地 |
2003年(平成15年)問4 過去問解説
電気設備技術基準の第8条「電気機械器具の熱的強度」、 第11条の「電気設備の接地の方法」の規定です。
- 電路に施設する電気機械器具は ( 通常の使用 )状態においてその電気機械器具に発生する( 熱 )に耐えるものでなければならない。
- 電気設備に( 接地 )を施す場合は、電流が安全かつ確実に大地に通ずることができるようにしなければならない。
答え (1)
2003年(平成15年)問9
次の文章は、「電気設備技術基準」及び「電気設備技術基準の解釈」に基づくアークを生ずる器具の施設に関する記述である。
電気設備技術基準では、「高圧又は特別高圧の開閉器、遮断器、避雷器その他これらに類する器具であって、動作時にアークを生ずるものは、火災のおそれがないよう、木製の壁又は天井その他の可燃性の物から離して施設しなければならない。ただし、( ア )の物で両者の間を隔離した場合は、この限りでない。」としている。
電気設備技術基準の解釈では、上記の「木製の壁又は天井その他の可燃性の物から離して施設しなければならない。」について、「高圧用のものにあっては( イ )[m]以上、特別高圧用のものにあっては( ウ )[m]以上(使用電圧が 35[kV]以下の特別高圧用の開閉器等について、動作時に生ずるアークの方向及び長さを火災が発生するおそれがないように制限した場合にあっては、( イ )[m]以上)離すこと。」としている。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に記入する語句又は数値として、正しいものを組み合わせたものは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 耐火性 | 0.5 | 1 |
(2) | 不燃性 | 0.5 | 2 |
(3) | 耐火性 | 1 | 2 |
(4) | 不燃性 | 1 | 3 |
(5) | 難燃性 | 2 | 3 |
2003年(平成15年)問9 過去問解説
電気設備技術基準 第9条「高圧又は特別高圧の電気機械器具の危険の防止」、電気設備技術基準の解釈 第23条「アークを生じる器具の施設」の規定です。
電気設備技術基準では、「高圧又は特別高圧の開閉器、遮断器、避雷器その他これらに類する器具であって、動作時にアークを生ずるものは、火災のおそれがないよう、木製の壁又は天井その他の可燃性の物から離して施設しなければならない。ただし、( 耐火性 )の物で両者の間を隔離した場合は、この限りでない。」としている。
電気設備技術基準の解釈では、上記の「木製の壁又は天井その他の可燃性の物から離して施設しなければならない。」について、「高圧用のものにあっては( 1 )[m]以上、特別高圧用のものにあっては( 2 )[m]以上(使用電圧が 35[KV]以下の特別高圧用の開閉器等について、動作時に生ずるアークの方向及び長さを火災が発生するおそれがないように制限した場合にあっては、( 1 )[m]以上)離すこと。」としている。
答え (3)
2005年(平成17年)問6
次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく電気使用場所に施設する電気機械器具に関する記述の一部である。
電気使用場所に施設する電気機械器具は、充電部の( ア )がなく、かつ、( イ )に危害を及ぼし、又は( ウ )が発生するおそれがある発熱がないように施設しなければならない。ただし、電気機械器具を使用するために充電部の( ア )又は発熱体の施設が必要不可欠である場合であって、( エ )その他( イ )に危害を及ぼし、又は( ウ )が発生するおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 露出 | 公衆 | 障害 | 漏電 |
(2) | 露出 | 人体 | 火災 | 感電 |
(3) | 露出 | 取扱者 | 火災 | 感電 |
(4) | 混触 | 人体 | 障害 | 漏電 |
(5) | 混触 | 取扱者 | 障害 | 放電 |
2005年(平成17年)問6 過去問解説
電気設備技術基準 第59条「電気使用場所に施設する電気機械器具の感電、火災等の防止」の規定です。
電気使用場所に施設する電気機械器具は、充電部の( 露出 )がなく、かつ、( 人体 )に危害を及ぼし、又は( 火災 )が発生するおそれがある発熱がないように施設しなければならない。ただし、電気機械器具を使用するために充電部の( 露出 )又は発熱体の施設が必要不可欠である場合であって、( 感電 )その他( 人体 )に危害を及ぼし、又は( 火災 )が発生するおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
答え (2)
2009年(平成21年)問6
「電気設備技術基準の解釈」に基づく、高圧用の機械器具(これに附属する高圧の電気で充電する電線であってケーブル以外のものを含む。)の施設について、発電所又は変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所以外の場所において、高圧用の機械器具を施設することができる場合として、誤っているのは次のうちどれか。
- 機械器具の周囲に人が触れるおそれがないように適当なさく、へい等を設け、さく、へい等との高さとさく、へい等から充電部分までの距離との和を 5[m]以上とし、かつ、危険である旨の表示をする場合。
- 工場等の構内において、機械器具の周囲に高圧用機械器具である旨の表示をする場合。
- 機械器具を屋内の取扱者以外の者が出入りできないように設備した場所に施設する場合。
- 機械器具をコンクリート製の箱又はD種接地工事を施した金属製の箱に収め、かつ、充電部分が露出しないように施設する場合。
- 充電部分が露出しない機械器具を人が容易に触れるおそれがないように施設する場合。
2009年(平成21年)問6 過去問解説
電気設備技術基準の解釈 第21条「高圧用機械器具の施設」の規定です。(解釈 第21条)
「機械器具の周囲には、人が触れるおそれがないように適当なさく、へい等を設ける」必要があります。したがって(2)の記述は誤りです。
答え (2)
2013年(平成25年)問5
次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」における、アークを生じる器具の施設に関する記述である。高圧用又は特別高圧用の開閉器、遮断器又は避雷器その他これらに類する器具(以下 「開閉器等」 という。)であって、動作時にアークを生じるものは、次のいずれかにより施設すること。
- 耐火性のものでアークを生じる部分を囲むことにより、木製の壁又は天井その他の( ア )から隔離すること。
- 木製の壁又は天井その他の( ア )との離隔距離を、下表に規定する値以上とすること
開閉器等の使用電圧の区分 | 離隔距離 |
高圧 | ( イ )[m] |
特別高圧 (35000[V]以下) | ( ウ )[m] (動作時に生じるアークの方向及び長さを火災が発生するおそれがないように制限した場合にあっては、( イ )[m]) |
特別高圧 (35000[V]超過) | ( ウ )[m] |
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 可燃性のもの | 0.5 | 1 |
(2) | 造営物 | 0.5 | 1 |
(3) | 可燃性のもの | 1 | 2 |
(4) | 造営物 | 1 | 2 |
(5) | 造営物 | 2 | 3 |
2013年(平成25年)問5 過去問解説
電気設備技術基準の解釈 第23条「アークを生じる器具の施設」の規定です。
- 耐火性のものでアークを生じる部分を囲むことにより、木製の壁又は天井その他の( 可燃性のもの )から隔離すること。
- 木製の壁又は天井その他の( 可燃性のもの )との離隔距離を、下表に規定する値以上とすること
開閉器等の使用電圧の区分 | 離隔距離 |
高圧 | ( 1 )[m] |
特別高圧 (35000[V] 以下) | ( 2 )[m] (動作時に生じるアークの方向及び長さを火災が発生する おそれがないように制限した場合にあっては、( 1 )[m]) |
特別高圧 (35000 [V] 超過) | ( 2 )[m] |
答え (3)
2016年(平成28年)問3
次の文章は、高圧の機械器具(これに附属する高圧電線であってケーブル以外のものを含む。)の施設(発電所又は変電所、開閉所若しくはこれらに準ずる場所に施設する場合を除く。)の工事例である。その内容として、「電気設備技術基準の解釈」に基づき、不適切なものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 機械器具を屋内であって、取扱者以外の者が出入りできないように措置した場所に施設した。
- 工場等の構内において、人が触れるおそれがないように、機械器具の周囲に適当なさく、へい等を設けた。
- 工場等の構内以外の場所において、機械器具に充電部が露出している部分があるので、簡易接触防護措置を施して機械器具を施設した。
- 機械器具に附属する高圧電線にケーブルを使用し、機械器具を人が触れるおそれがないように地表上 5mの高さに施設した。
- 充電部分が露出しない機械器具を温度上昇により、又は故障の際に、その近傍の大地との間に生じる電位差により、人若しくは家畜又は他の工作物に危険のおそれがないように施設した。
2016年(平成28年)問3 過去問解説
電気設備技術基準の解釈 第21条「高圧用機械器具の施設」の規定です。
「充電部分が露出しないように施設する」必要があります。したがって(3)が誤りです。
答え (3)