電子放出と熱起電力の原理

理論

第三種電気主任技術者(電験三種)試験に独学で合格できるよう、分野ごとに「考え方」や「解き方」の解説と過去問題をまとめています。このページで、電験三種の理論科目に出題される電子放出と熱起電力の原理について、初心者の方でも解りやすく、基礎から勉強できます。また、電験三種の理論科目の試験で、実際に出題された電子放出と熱起電力の原理の過去問題も解説しています。

電子放出

電子放出とは、物体から電子が出ていく現象です。金属や半導体の中にある自由電子は普通は外に出られませんが、何らかの方法でエネルギー得ると外部に出ていくことができます。電子放出は、そのエネルギーの種類によって、熱電子放出,光電子放出,電界放射,二次電子放出などがあります。

熱電子放出

金属の自由電子は、一般的には温度が上昇すると運動エネルギーが大きくなります。このため、金属を高温に熱すると金属の表面から電子が飛び出します。この現象を「熱電子放出」といいます。また、このときに放出した電子を熱電子といいます。

冷陰極放出

金属の表面に強い電界を印加すると、金属内の自由電子はトンネル効果によって障壁をすり抜け、放出されます。この現象を「冷陰極放出」または、「電界放出」といいます。

光電子放出

金属の表面に光などの電磁波が投射されると、その入射エネルギーによって表面から電子が放出されます。この現象を「光電子放出」といいます。また、このときに放出した電子を「光電子」といいます。

二次電子放出

金属などの表面に高速の電子が衝突すると、金属内部の自由電子がエネルギーをもらい、表面から電子が放出されます。この現象を「二次電子放出」といいます。また、このときに衝突した電子を一次電子といい、飛び出した電子は「二次電子」といいます。

熱起電力の効果

ゼーベック効果

2種類の異なった金属を両端で接合し、接合部分に温度差を与えると、回路に起電力が発生し、電流が流れます。この現象を「ゼーベック効果」といいます。また、このときに発生した起電力を熱起電力といいます。

ペルチェ効果

2種類の異なった金属を両端で接合し、閉回路に外部から起電力を加えて電流を流すと、一方の接合部で熱が発生し、他方の接合部で熱の吸収が起こります。この現象を「ペルチェ効果」といいます。ゼーベック効果の逆の効果といえます。

  

電験三種-理論の過去問解説:電子放出と熱起電力の原理

(財)電気技術者試験センターが作成した、第三種電気主任技術者試験の理論科目で出題された問題です。

2001年(平成13年)問7【電験理論の過去問題】

次の文章は、金属表面から真空中に電子を放出する方法に関する記述である。

  1. 金属を高温に熱するとその表面から電子が飛び出すようになる。これを( ア )放出という。
  2. 金属に高速度の電子が衝突すると、そのエネルギーをもらって、金属の表面から電子が飛び出す現象がある。これを( イ )放出という。
  3. 金属の表面の電界の強さをある値以上にすると、常温でも電子が飛び出すようになる。これを( ウ )放出という。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しい組み合わせは次のうちどれか。

 (ア)(イ)(ウ)
(1)熱電子二次電子電界
(2)光電子熱電子二次電子
(3)電 界二次電子熱電子
(4)光電子冷陰極二次電子
(5)熱電子光電子電界
  1. 金属を高温に熱するとその表面から電子が飛び出すようになる。これを( 熱電子 )放出という。
  2. 金属に高速度の電子が衝突すると、そのエネルギーをもらって、金属の表面から電子が飛び出す現象がある。これを( 二次電子 )放出という。
  3. 金属の表面の電界の強さをある値以上にすると、常温でも電子が飛び出すようになる。これを( 電界 )放出という。

答え (1)

2005年(平成17年)問11【電験理論の過去問題】

図のように、異なる2種類の金属A、Bで一つの閉回路を作り、その二つの接合点を異なる温度に保てば( ア )。この現象を( イ )効果という。

上記の記述中の空白箇所(ア)及び(イ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

2005年(平成17年)問11
(ア)(イ)
(1)電流が流れるホール
(2)抵抗が変化するホール
(3)金属の長さが変化するゼーベック
(4)電位差が生じるペルチェ
(5)起電力が生じるゼーベック

図のように、異なる2種類の金属A、Bで一つの閉回路を作り、その二つの接合点を異なる温度に保てば( 起電力が生じる )。この現象を( ゼーベック )効果という。

答え (5)

2010年(平成22年)問12【電験理論の過去問題】

次の文章は、金属などの表面から真空中に電子が放出される現象に関する記述である。

  1. タンタル(Ta)などの金属を熱すると、電子がその表面から放出される。この現象は( ア )放出と呼ばれる。
  2. タングステン(W)などの金属表面の電界強度を十分大きくすると、常温でもその表面から電子が放出される。この現象は( イ )放出と呼ばれる。
  3. 電子を金属又はその酸化物・ハロゲン化物などに衝突させると、その表面から新たな電子が放出される。この現象は( ウ )放出と呼ばれる。

上記の記述中の空白個所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

(ア)(イ)(ウ)
(1)熱電子電界二次電子
(2)二次電子冷陰極熱電子
(3)電 界熱電子二次電子
(4)熱電子電界光電子
(5)光電子二次電子冷陰極
  1. タンタル(Ta)などの金属を熱すると、電子がその表面から放出される。この現象は( 熱電子 )放出と呼ばれる。
  2. タングステン(W)などの金属表面の電界強度を十分大きくすると、常温でもその表面から電子が放出される。この現象は( 電界 )放出と呼ばれる。
  3. 電子を金属又はその酸化物・ハロゲン化物などに衝突させると、その表面から新たな電子が放出される。この現象は( 二次電子 )放出と呼ばれる。

答え (1)

2017年(平成29年)問12【電験理論の過去問題】

次の文章は、紫外線ランプの構造と動作に関する記述である。

紫外線ランプは、紫外線を透過させる石英ガラス管と、その両端に設けられた( ア )からなり、ガラス管内には数百パスカルの( イ )及び微量の水銀が封入されている。両極間に高電圧を印加すると、( ウ )から出た電子が電界で加速され、( イ )原子に衝突してイオン化する。ここで生じた正イオンは電界で加速され、( ウ )に衝突して電子をたたき出す結果、放電が安定に持続する。管内を走行する電子が水銀原子に衝突すると、電子からエネルギーを得た水銀原子は励起され、特定の波長の紫外線の光子を放出して安定な状態に戻る。さらに( エ )はガラス管の内側の面にある種の物質を塗り、紫外線を( オ )に変換するようにしたものである。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

紫外線ランプは、紫外線を透過させる石英ガラス管と、その両端に設けられた( 電極 )からなり、ガラス管内には数百パスカルの( 希ガス )及び微量の水銀が封入されている。両極間に高電圧を印加すると、( 陰極 )から出た電子が電界で加速され、( 希ガス )原子に衝突してイオン化する。ここで生じた正イオンは電界で加速され、( 陰極 )に衝突して電子をたたき出す結果、放電が安定に持続する。管内を走行する電子が水銀原子に衝突すると、電子からエネルギーを得た水銀原子は励起され、特定の波長の紫外線の光子を放出して安定な状態に戻る。さらに( 蛍光ランプ )はガラス管の内側の面にある種の物質を塗り、紫外線を( 可視光 )に変換するようにしたものである。

答え(5)

電験三種の理論科目に出題される「電気電子工学(電気の現象)」のページ

1.電気の単位と抵抗温度係数
2.電界中の電子の運動
3.ローレンツ力の向きと円運動
4.電子放出と熱起電力の原理
5.過渡現象と時定数とは

理論電験3種
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