電験三種の法規で出題される電気設備技術基準の用語の定義について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の試験で、実際に出題された過去問題も解説しています。
電気設備技術基準と電気設備技術基準の解釈
電験三種の「法規」科目では、「電気設備技術基準」と「電気設備技術基準の解釈」からの出題が多数を占めています。
電気設備技術基準とは、電気事業法の規定の委任に基づいて経済産業大臣が制定した命令(省令)の一つです。正式な名称は、「電気設備に関する技術基準を定める省令」といいます。電気設備技術基準では、電気工作物が感電や火災そのほか人の体に危害を及ぼしたり、物に損害を与えないように作られた技術上の基準を定めています。
電気設備技術基準の解釈は、電技に定めている技術的内容をできるかぎり具体的に示したものです。電気設備技術基準の解釈の内容は、技術的な判断基準となっていますが、十分に保安水準が確保できる技術的根拠があれば、この解釈によらなくてもよいことになっています。
尚、電気設備技術基準と電気設備技術基準の解釈の第1条では、用語の定義が規定されています。用語の定義で、最重要箇所は、解釈の第1、2項に規定されている 「電圧」に関する規定です。簡単に説明しますので、覚えておいてください。
電圧の種別
電気設備技術基準では、電圧は低圧・高圧・特別高圧の3種類に区分されています。
交流 | 直流 | |
低圧 | 600V 以下のもの | 750V 以下のもの |
高圧 | 600V を超え 7000V 以下のもの | 750Vを超え 7000V 以下のもの |
特別高圧 | 7000V を超えるもの | 7000V を超えるもの |
電圧が高いほど、取り扱いに注意が必要が必要になるため、電気設備技術基準では、電圧の種別に従ってさまざまな規則が定められています。
公称電圧と最大使用電圧
送配電線の電圧は、線間の電圧で表されます。その電線路を代表する線間の電圧を「公称電圧」といいます。例えば、100[V],200[V],600[V],22000[V]などです。公称電圧は「使用電圧」ともいいます。
送配電線は、常に公称電圧の電圧が加わっているとは限りません。季節や昼夜などの負荷要因によって電圧は変動します。例えば 6600V 系の送配電線は、6200V~6900V 程度まで大きく変動します。そこで、変動するものを規制するために、「最大使用電圧」を決めています。
最大使用電圧は、通常の使用状態において電路に加わる最大の線間電圧のことで、公称電圧と最大使用電圧 $V_m$[V]の関係はつぎのようになります。
公称電圧が 1000[V]以下の電路 | $V_m$ = 公称電圧×$1.15$ |
公称電圧が 1000[V]を超え、 500[kV]以下の電路 | $V_m$ = 公称電圧×$\displaystyle \frac{ 1.15 }{ 1.1 }$ |
用語の定義
電気設備技術基準 第1条と電気設備技術基準の解釈 第1条に規定されている用語の定義を示します。第1条では、電技や解釈に使われる用語のうち、全般的に用いられる主要な用語の定義を掲げています。
電気設備技術基準 第1条 用語の定義
- 電路 … 通常の使用状態で電気が通じているところ
- 電気機械器具 … 電路を構成する機械器具
- 発電所 … 発電機、原動機、燃料電池、太陽電池その他の機械器具(小出力発電設備、非常用予備電源を得る目的で施設するもの及び携帯用発電機を除く。)を施設して電気を発生させる所
- 変電所 … 構外から伝送される電気を構内に施設した変圧器、回転変流機、整流器その他の電気機械器具により変成する所であって、変成した電気をさらに構外に伝送するもの
- 開閉所 … 構内に施設した開閉器その他の装置により電路を開閉する所であって、発電所、変電所及び需要場所以外のもの
- 電線 … 強電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物で被覆した上を保護被覆で保護した電気導体
- 電車線 … 電気機関車及び電車にその動力用の電気を供給するために使用する接触電線及び鋼索鉄道の車両内の信号装置、照明装置等に電気を供給するために使用する接触電線
- 電線路 … 発電所、変電所、開閉所及びこれらに類する場所並びに電気使用場所相互間の電線(電車線を除く。)並びにこれを支持し、又は保蔵する工作物
- 電車線路 … 電車線及びこれを支持する工作物
- 調相設備 … 無効電力を調整する電気機械器具
- 弱電流電線 … 弱電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物で被覆した上を保護被覆で保護した電気導体
- 弱電流電線路 … 弱電流電線及びこれを支持し、又は保蔵する工作物(造営物の屋内又は屋側に施設するものを除く。)
- 光ファイバケーブル … 光信号の伝送に使用する伝送媒体であって、保護被覆で保護したもの
- 光ファイバケーブル線路 … 光ファイバケーブル及びこれを支持し、又は保蔵する工作物(造営物の屋内又は屋側に施設するものを除く。)
- 支持物 … 木柱、鉄柱、鉄筋コンクリート柱及び鉄塔並びにこれらに類する工作物であって、電線又は弱電流電線若しくは光ファイバケーブルを支持することを主たる目的とするもの
- 連接引込線 … 一需要場所の引込線から分岐して、支持物を経ないで他の需要場所の引込口に至る部分の電線
- 配線 … 電気使用場所において施設する電線(電気機械器具内の電線及び電線路の電線を除く。)
- 電力貯蔵装置 … 電力を貯蔵する電気機械器具
電気設備技術基準の解釈 第1条 用語の定義
- 使用電圧(公称電圧) … 電路を代表する線間電圧
- 最大使用電圧 … 次のいずれかの方法により求めた、通常の使用状態において電路に加わる大の線間電圧
- 使用電圧が、電気学会電気規格調査会標準規格 JEC-0222-2009「標準電圧」の「3.1 公称電圧が1,000V を超える電線路の公称電圧及び高電圧」又は「3.2 公称電圧が1,000V以下の電線路の公称電圧」に規定される公称電圧に等しい電路においては、使用電圧に、1-1表に規定する係数を乗じた電圧
- イに規定する以外の電路においては、電路の電源となる機器の定格電圧(電源となる機器が変圧器である 場合は、当該変圧器の大タップ電圧とし、電源が複数ある場合は、それらの電源の定格電圧のうち大の もの)
- 計算又は実績により、イ又はロの規定により求めた電圧を上回ることが想定される場合は、その想定され る電圧
- 技術員 … 設備の運転又は管理に必要な知識及び技能を有する者
- 電気使用場所 … 電気を使用するための電気設備を施設した、1の建物又は1の単位をなす場所
- 需要場所 … 電気使用場所を含む1の構内又はこれに準ずる区域であって、発電所、変電所及び開閉所以外のもの
- 変電所に準ずる場所 … 需要場所において高圧又は特別高圧の電気を受電し、変圧器その他の電気機械器具により電気を変成する場所
- 開閉所に準ずる場所 … 需要場所において高圧又は特別高圧の電気を受電し、開閉器その他の装置により電路の開閉をする場所であって、変電所に準ずる場所以外のもの
- 電車線等 … 電車線並びにこれと電気的に接続するちょう架線、ブラケット及びスパン線
- 架空引込線 … 架空電線路の支持物から他の支持物を経ずに需要場所の取付け点に至る架空電線
- 引込線 … 架空引込線及び需要場所の造営物の側面等に施設する電線であって、当該需要場所の引込口に至るもの
- 屋内配線 … 屋内の電気使用場所において、固定して施設する電線(電気機械器具内の電線、管灯回路の配線、エックス線管回路の配線、接触電線、小勢力回路の電線、 出退表示灯回路の電線、特別低電圧照明回路の電線及び電線路の電線を除く。)
- 屋側配線 … 屋外の電気使用場所において、当該電気使用場所における電気の使用を目的として、造営物に固定して施設する電線(電気機械器具内の電線、管灯回路の配線、接触電線、小勢力回路の電線、出退表示灯回路の電線及び電線路の電線を除く。)
- 屋外配線 … 屋外の電気使用場所において、当該電気使用場所における電気の使用を目的として、固定して施設する電線(屋側配線、電気機械器具内の電線、管灯回路の配線、接触電線、小勢力回路の電線、出退表示灯回路の電線及び電線路の電線を除く。)
- 管灯回路 … 放電灯用安定器又は放電灯用変圧器から放電管までの電路
- 弱電流電線 … 弱電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物で被覆した上 を保護被覆で保護した電気導体(小勢力回路の電線又は出退表示灯回路の電線を含む。)
- 弱電流電線等 … 弱電流電線及び光ファイバケーブル
- 弱電流電線路等 … 弱電流電線路及び光ファイバケーブル線路
- 多心型電線 … 絶縁物で被覆した導体と絶縁物で被覆していない導体とからなる電線
- ちょう架用線 … ケーブルをちょう架する金属線
- 複合ケーブル … 電線と弱電流電線とを束ねたものの上に保護被覆を施したケーブル
- 接近 … 一般的な接近している状態であって、並行する場合を含み、交差する場合及び同一支持物に施設される場合を除くもの
- 工作物 … 人により加工された全ての物体
- 造営物 … 工作物のうち、土地に定着するものであって、屋根及び柱又は壁を有するもの
- 建造物 … 造営物のうち、人が居住若しくは勤務し、又は頻繁に出入り若しくは来集するもの
- 道路 … 公道又は私道(横断歩道橋を除く。)
- 水気のある場所 … 水を扱う場所若しくは雨露にさらされる場所その他水滴が飛散する場所、又は常時水が漏出し若しくは結露する場所
- 湿気の多い場所 … 水蒸気が充満する場所又は湿度が著しく高い場所
- 乾燥した場所 … 湿気の多い場所及び水気のある場所以外の場所
- 点検できない隠ぺい場所 … 天井ふところ、壁内又はコンクリート床内等、工作物を破壊しなければ電気設備に接近し、又は電気設備を点検できない場所
- 点検できる隠ぺい場所 … 点検口がある天井裏、戸棚又は押入れ等、容易に電気設備に接近し、又は電気設備を点検できる隠ぺい場所
- 展開した場所 … 点検できない隠ぺい場所及び点検できる隠ぺい場所以外の場所
- 難燃性 … 炎を当てても燃え広がらない性質
- 自消性のある難燃性 … 難燃性であって、炎を除くと自然に消える性質
- 不燃性 … 難燃性のうち、炎を当てても燃えない性質
- 耐火性 … 不燃性のうち、炎により加熱された状態においても著しく変形又は破壊しない性質
- 接触防護措置 … 次のいずれかに適合するように施設することをいう。
- 設備を、屋内にあっては床上2.3m以上、屋外にあっては地表上2.5m以上の高さに、かつ、人が通る場所か ら手を伸ばしても触れることのない範囲に施設すること。
- 設備に人が接近又は接触しないよう、さく、へい等を設け、又は設備を金属管に収める等の防護措置を施 すこと。
- 簡易接触防護措置 … 次のいずれかに適合するように施設することをいう。
- 設備を、屋内にあっては床上1.8m以上、屋外にあっては地表上2m以上の高さに、かつ、人が通る場所から 容易に触れることのない範囲に施設すること。
- 設備に人が接近又は接触しないよう、さく、へい等を設け、又は設備を金属管に収める等の防護措置を施 すこと。
- 架渉線 … 架空電線、架空地線、ちょう架用線又は添架通信線等のもの
電験三種-法規(電気設備技術基準)過去問題
1999年(平成11年)問1
「電気設備技術基準」では、「光ファイバーケーブル」の定義をつぎのように規定している。
- 「光ファイバーケーブル」とは、光信号の伝送に使用する伝送媒体であって、保護( ア )で保護したものをいう。
- 「光ファイバーケーブル線路」とは、光ファイバーケーブル及びこれを( イ )し、又は保蔵する工作物(造営物の屋内又は( ウ )に施設するものを除く)をいう。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に記入する字句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 装置 | 収納 | 屋外 |
(2) | 装置 | 収納 | 屋上 |
(3) | 被覆 | 保護 | 屋上 |
(4) | 被覆 | 支持 | 屋側 |
(5) | 器具 | 支持 | 屋側 |
1999年(平成11年)問1 過去問解説
「電気設備技術基準」では、「光ファイバーケーブル」の定義をつぎのように規定しています。
- 光ファイバケーブル … 光信号の伝送に使用する伝送媒体であって、保護被覆で保護したもの
- 光ファイバケーブル線路 … 光ファイバケーブル及びこれを支持し、又は保蔵する工作物(造営物の屋内又は屋側に施設するものを除く。)
答え (4)
2014年(平成26年)問7
次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」における、接触防護措置及び簡易接触防護措置の用語の定義である。
- 「接触防護措置」とは、次のいずれかに適合するように施設することをいう。
- 設備を、屋内にあっては床上( ア )m以上、屋外にあっては地表上( イ )m以上の高さに、かつ、人が通る場所から手を伸ばしても触れることのない範囲に施設すること。
- 設備に人が接近又は接触しないよう、さく、へい等を設け、又は設備を( ウ )に収める等の防護措置を施すこと。
- 「簡易接触防護措置」とは、次のいずれかに適合するように施設することをいう。
- 設備を、屋内にあっては床上( エ )m以上、屋外にあっては地表上( オ )m以上の高さに、かつ、人が通る場所から容易に触れることのない範囲に施設すること。
- 設備に人が接近又は接触しないよう、さく、へい等を設け、又は設備を( ウ )lこ収める等の防護措置を施すこと。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
(1) | 2.3 | 2.5 | 絶縁物 | 1.7 | 2 |
(2) | 2.6 | 2.8 | 不燃物 | 1.9 | 2.4 |
(3) | 2.3 | 2.5 | 金属管 | 1.8 | 2 |
(4) | 2.6 | 2.8 | 絶縁物 | 1.9 | 2.4 |
(5) | 2.3 | 2.8 | 金属管 | 1.8 | 2.4 |
2014年(平成26年)問7 過去問解説
「電気設備技術基準の解釈」における、接触防護措置及び簡易接触防護措置の用語の定義は次のとおりです。
- 接触防護措置 … 次のいずれかに適合するように施設することをいう。
- 設備を、屋内にあっては床上 2.3m以上、屋外にあっては地表上 2.5m以上の高さに、かつ、人が通る場所か ら手を伸ばしても触れることのない範囲に施設すること。
- 設備に人が接近又は接触しないよう、さく、へい等を設け、又は設備を金属管に収める等の防護措置を施 すこと。
- 簡易接触防護措置 … 次のいずれかに適合するように施設することをいう。
- 設備を、屋内にあっては床上 1.8m以上、屋外にあっては地表上 2m以上の高さに、かつ、人が通る場所から 容易に触れることのない範囲に施設すること。
- 設備に人が接近又は接触しないよう、さく、へい等を設け、又は設備を金属管に収める等の防護措置を施 すこと。
答え (3)
2017年(平成29年)問6
次の文章は「電気設備技術基準の解釈」における用語の定義に関する記述の一部である。
- 「( ア )」とは、電気を使用するための電気設備を施設した、1の建物又は1の単位をなす場所をいう。
- 「( イ )」とは、( ア )を含む1の構内又はこれに準ずる区域であって、発電所、変電所及び開閉所以外のものをいう。
- 「引込線」とは、架空引込線及び( イ )の( ウ )の側面等に施設する電線であって、当該( イ )の引込口に至るものをいう。
- 「( エ )」とは、人により加工された全ての物体をいう。
- 「( ウ )」とは、( エ )のうち、土地に定着するものであって、屋根及び柱又は壁を有するものをいう。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 需要場所 | 電気使用場所 | 工作物 | 建造物 |
(2) | 電気使用場所 | 需要場所 | 工作物 | 造営物 |
(3) | 需要場所 | 電気使用場所 | 建造物 | 工作物 |
(4) | 需要場所 | 電気使用場所 | 造営物 | 建造物 |
(5) | 電気使用場所 | 需要場所 | 造営物 | 工作物 |
2017年(平成29年)問6 過去問解説
「電気設備技術基準の解釈」では、用語の定義をつぎのように規定しています。
- 電気使用場所 … 電気を使用するための電気設備を施設した、1の建物又は1の単位をなす場所
- 需要場所 … 電気使用場所を含む1の構内又はこれに準ずる区域であって、発電所、変電所及び開閉所以外のもの
- 引込線 … 架空引込線及び需要場所の造営物の側面等に施設する電線であって、当該需要場所の引込口に至るもの
- 工作物 … 人により加工された全ての物体
- 造営物 … 工作物のうち、土地に定着するものであって、屋根及び柱又は壁を有するもの
- 建造物 … 造営物のうち、人が居住若しくは勤務し、又は頻繁に出入り若しくは来集するもの
答え (5)