電験三種の法規で出題される架空電線の保安について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の試験で、実際に出題された過去問題も解説しています。
架空電線の感電の防止
低高圧の架空電線が、一般の家屋等に接近して施設される場合には、誤って電線に接触すると危険です。そのため、電気設備技術基準 第21条では、架空電線の感電の防止について、次のように規定されています。
- 架空電線の感電の防止(電技 第21条)
低圧又は高圧の架空電線には、感電のおそれがないよう、使用電圧に応じた絶縁性能を有する絶縁電線又はケーブルを使用しなければならない。ただし、通常予見される使用形態を考慮し、感電のおそれがない場合は、この限りでない
また、架空電線路を施設する場合には、錯綜による危険を防止しなければなりません。そのため、電気設備技術基準 第26条では、架空電線による他人の電線等の作業者への感電の防止について、次のように規定されています。
- 架空電線による他人の電線等の作業者への感電の防止(電技 第26条)
- 架空電線路の支持物は、他人の設置した架空電線路又は架空弱電流電線路若しくは架空光ファイバケーブル線路の電線又は弱電流電線若しくは光ファイバケーブルの間を貫通して施設してはならない。ただし、その他人の承諾を得た場合は、この限りでない。
- 架空電線は、他人の設置した架空電線路、電車線路又は架空弱電流電線路若しくは架空光ファイバケーブル線路の支持物を挟んで施設してはならない。ただし、同一支持物に施設する場合又はその他人の承諾を得た場合は、この限りでない。
特別高圧架空電線は、静電誘導による電撃や電磁誘導電圧による感電を防止しなければなりません。そのため、電気設備技術基準 第27条では、架空電線路からの静電誘導作用又は電磁誘導作用による感電の防止について、次のように規定されています。
- 架空電線路からの静電誘導作用又は電磁誘導作用による感電の防止(電技 第27条)
- 特別高圧の架空電線路は、通常の使用状態において、静電誘導作用により人による感知のおそれがないよう、地表上1メートルにおける電界強度が3000ボルト毎メートル以下になるように施設しなければならない。ただし、田畑、山林その他の人の往来が少ない場所において、人体に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
- 特別高圧の架空電線路は、電磁誘導作用により弱電流電線路(電力保安通信設備を除く。)を通じて人体に危害を及ぼすおそれがないように施設しなければならない。
- 電力保安通信設備は、架空電線路からの静電誘導作用又は電磁誘導作用により人体に危害を及ぼすおそれがないように施設しなければならない。
配線の使用電線(電技 第57条)
架空電線路の電線に必要な強度は、施設場所の状況によって、絶縁体の種類や厚さなどが異なります。電線の選定にあたっては、感電や火災のおそれがないように選定する必要があります。そのため、電気設備技術基準 第57条では、配線の使用電線について、次のように規定されています。
- 配線の使用電線(電技 第57条)
- 配線の使用電線(裸電線及び特別高圧で使用する接触電線を除く。)には、感電又は火災のおそれがないよう、施設場所の状況及び電圧に応じ、使用上十分な強度及び絶縁性能を有するものでなければならない。
- 配線には、裸電線を使用してはならない。ただし、施設場所の状況及び電圧に応じ、使用上十分な強度を有し、かつ、絶縁性がないことを考慮して、配線が感電又は火災のおそれがないように施設する場合は、この限りでない。
- 特別高圧の配線には、接触電線を使用してはならない。
特別高圧の接触電線は、充電部が露出したものです。電圧が高く、危険度が大きいため使用を禁止しています。
支持物の危険防止
架空電線路の支持物の昇塔防止
架空電線路の支持物に一般の人が昇塔し、充電部に接触すると危険です。そのため、電気設備技術基準 第24条では、架空電線路の支持物の昇塔防止について、次のように規定されています。
- 架空電線路の支持物の昇塔防止(電技 第24条)
架空電線路の支持物には、感電のおそれがないよう、取扱者以外の者が容易に昇塔できないように適切な措置を講じなければならない。
取扱者以外の者が容易に昇塔できないように適切な措置とは、電気設備技術基準の解釈 第53条で、次のように規定されています。
- 架空電線路の支持物の昇塔防止(解釈 第53条)
架空電線路の支持物に取扱者が昇降に使用する足場金具等を施設する場合は、地表上 1.8m以上に施設すること。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合はこの限りでない。- 足場金具等が内部に格納できる構造である場合
- 支持物に昇塔防止のための装置を施設する場合
- 支持物の周囲に取扱者以外の者が立ち入らないように、さく、へい等を施設する場合
- 支持物を山地等であって人が容易に立ち入るおそれがない場所に施設する場合
支持物の倒壊による危険の防止
架空電線路や架空電車線路の支持物は、通常想定される気象の変化や振動、衝撃その他の外部環境の影響を考慮して、倒壊のおそれがないようしなければなりません。そのため、電気設備技術基準 第32条では、支持物の倒壊の防止について、次のように規定されています。
- 支持物の倒壊の防止(電技 第32条)
- 架空電線路又は架空電車線路の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は、当該支線に係るものを含む。)は、その支持物が支持する電線等による引張荷重、風速 40メートル毎秒の風圧荷重及び当該設置場所において通常想定される気象の変化、振動、衝撃その他の外部環境の影響を考慮し、倒壊のおそれがないよう、安全なものでなければならない。ただし、人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路にあっては、その施設場所を考慮して施設する場合は、風速 40メートル毎秒の風圧荷重の 2分の1 の風圧荷重を考慮して施設することができる。
- 特別高圧架空電線路の支持物は、構造上安全なものとすること等により連鎖的に倒壊のおそれがないように施設しなければならない。
電線路のがけへの施設の禁止(電技 第39条)
電線路をがけに施設することは、危険なため原則として禁止しています。ただし、工事用動力のための電線路を施設する場合など、特別の事情があり、保安上支障がない場合は、施設することができます。 電気設備技術基準 第39条では、電線路のがけへの施設の禁止について、次のように規定されています。
- 電線路のがけへの施設の禁止(電技 第39条)
電線路は、がけに施設してはならない。ただし、その電線が建造物の上に施設する場合、道路、鉄道、軌道、索道、架空弱電流電線等、架空電線又は電車線と交さして施設する場合及び水平距離でこれらのもの(道路を除く。)と接近して施設する場合以外の場合であって、特別の事情がある場合は、この限りでない。
電験三種-法規(電気設備技術基準)過去問題
1997年(平成9年)問3
架空電線路の支持物に、取扱者が昇降に使用する足場金具等を地表上 1.8[m]未満に施設することができる場合として、不適切なものはつぎのうちどれか。
- 足場金具等を内部に格納できる構造を有する支持物を施設する場合
- 支持物に昇降防止のための装置を施設する場合
- 架空電線にケーブルを使用する場合
- 支持物を山地等であって人が容易に立ち入るおそれがない場所に施設する場合
- 支持物の周囲に取扱者以外の者が立ち入らないように、さく、へい等を施設する場合
1997年(平成9年)問3 過去問解説
電気設備技術基準の解釈 第53条「架空電線路の支持物の昇塔防止」の規定です。
架空電線路にケーブルを使用しても 1.8m 以下に施設はできません。
答え (3)
1999年(平成11年)問4
「電気設備技術基準」では、支持物の倒壊防止に関し、次のように規定している。
架空電線路又は( ア )の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は、当該支線に係るものを含む)は、その支持物が支持する電線等による引張荷重、風速( イ )[m/秒]の風圧荷重及び当該設置場所において常時想定される気象の変化、振動、衝撃その他の外部環境の影響を考慮し、倒壊のおそれがないよう、安全なものでなければならない。ただし、人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路にあっては、その施設場所を考慮して施設する場合は、風速は( イ )[m/秒]の風圧荷重の( ウ )の風圧荷重を考慮して施設することができる。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に記入する字句又は数値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 架空弱電流電線路 | 30 | 2分の1 |
(2) | 架空電車線路 | 40 | 2分の1 |
(3) | 架空電車線路 | 40 | 3分の1 |
(4) | 架空弱電流電線路 | 50 | 3分の1 |
(5) | 架空電車線路 | 50 | 4分の1 |
1999年(平成11年)問4 過去問解説
電気設備技術基準 第32条「支持物の倒壊の防止」の規定です。
架空電線路又は( 架空電車線路 )の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は、当該支線に係るものを含む)は、その支持物が支持する電線等による引張荷重、風速( 40 )[m/秒]の風圧荷重及び当該設置場所において常時想定される気象の変化、振動、衝撃その他の外部環境の影響を考慮し、倒壊のおそれがないよう、安全なものでなければならない。ただし、人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路にあっては、その施設場所を考慮して施設する場合は、風速は( 40 )[m/秒]の風圧荷重の( 2分の1 )の風圧荷重を考慮して施設することができる。
答え (2)
2003年(平成15年)問5
次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく架空電線の感電防止及び配線の使用電線に関する記述である。
- 低圧又は高圧の架空電線には、感電のおそれがないよう、使用電圧に応じた( ア )を有する( イ )を使用しなければならない。ただし、通常予見される使用形態を考慮し、感電の恐れがない場合には、この限りではない。
- 配線の使用電線(裸電線及び特別高圧で使用する接触電線を除く)には、感電又は火災のおそれがないよう、施設場所の状況及び電圧に応じ、使用上十分な( ウ )及び( ア )を有するものでなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 太さ | 軟導線又は硬銅線 | 強度 |
(2) | 太さ | アルミ合金線又は銅合金線 | 強度 |
(3) | 強度 | アルミ合金線又は銅合金線 | 耐熱性 |
(4) | 絶縁性能 | 絶縁電線又はケーブル | 強度 |
(5) | 絶縁性能 | 被覆電線又はケーブル | 耐熱性 |
2003年(平成15年)問5 過去問解説
電気設備技術基準 第21条「架空電線の感電の防止」、第57条「配線の使用電線」の規定です。
- 低圧又は高圧の架空電線には、感電のおそれがないよう、使用電圧に応じた( 絶縁性能 )を有する( 絶縁電線又はケーブル )を使用しなければならない。ただし、通常予見される使用形態を考慮し、感電の恐れがない場合には、この限りではない。
- 配線の使用電線(裸電線及び特別高圧で使用する接触電線を除く)には、感電又は火災のおそれがないよう、施設場所の状況及び電圧に応じ、使用上十分な( 強度 )及び( 絶縁性能 )を有するものでなければならない。
答え (4)
2004年(平成16年)問4
次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく支持物の倒壊の防止に関する記述である。
- 架空電線路又は架空電車線路の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は、当該支線に係るものを含む。)は、その支持物が支持する電線等による( ア )、風速( イ )[m/秒]の風圧加重及び当該施設場所において通常想定される気象の変化、振動、衝撃その他の外部環境の影響を考慮し、倒壊のおそれがないよう、安全なものでなければならない。ただし、人家が多くつらなっている場所に施設する架空電線路にあっては、その施設場所を考慮して施設する場合は、風速( イ )[m/秒]の風圧加重の 1/2 の風圧加重を考慮して施設することができる
- ( ウ )架空電線路の支持物は、構造上安全なものとすること等により連鎖的に倒壊のおそれがないように施設しなければならない。
上記の記述の空欄箇所(ア),(イ)及び(ウ)に記入する語句として、正しいものを組合せたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 曲げ加重 | 40 | 特別高圧 |
(2) | 圧縮加重 | 40 | 特別高圧及び高圧 |
(3) | 引張加重 | 60 | 特別高圧及び高圧 |
(4) | 圧縮加重 | 60 | 特別高圧 |
(5) | 引張加重 | 40 | 特別高圧 |
2004年(平成16年)問4 過去問解説
電気設備技術基準 第32条「支持物の倒壊の防止」の規定です。
- 架空電線路又は架空電車線路の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は、当該支線に係るものを含む。)は、その支持物が支持する電線等による( 引張加重 )、風速( 40 )[m/秒]の風圧加重及び当該施設場所において通常想定される気象の変化、振動、衝撃その他の外部環境の影響を考慮し、倒壊のおそれがないよう、安全なものでなければならない。ただし、人家が多くつらなっている場所に施設する架空電線路にあっては、その施設場所を考慮して施設する場合は、風速( 40 )[m/秒]の風圧加重の 1/2 の風圧加重を考慮して施設することができる
- ( 特別高圧 )架空電線路の支持物は、構造上安全なものとすること等により連鎖的に倒壊のおそれがないように施設しなければならない。
答え (5)
2005年(平成17年)問5
次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく電線路のがけへの施設の禁止に関する記述の一部である。
電線路は、がけに施設してはならない。ただし、その電線路が( ア )の上に施設する場合、道路、鉄道、軌道、索道、架空弱電流電線等、架空電線又は( イ )と交さして施設する場合及び( ウ )でこれらのもの(道路を除く。)と( エ )して施設する場合以外の場合であって、特別な事情がある場合は、この限りでない。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 建造物 | 電車線 | 水平距離 | 接近 |
(2) | 造営物 | 通信線 | 水平距離 | 接近 |
(3) | 建造物 | 通信線 | 垂直距離 | 隔離 |
(4) | 造営物 | 電車線 | 水平距離 | 隔離 |
(5) | 造営物 | 電車線 | 垂直距離 | 接近 |
2005年(平成17年)問5 過去問解説
電気設備技術基準 第39条「電線路のがけへの施設の禁止」の規定です。
電線路は、がけに施設してはならない。ただし、その電線路が( 建造物 )の上に施設する場合、道路、鉄道、軌道、索道、架空弱電流電線等、架空電線又は( 電車線 )と交さして施設する場合及び( 水平距離 )でこれらのもの(道路を除く。)と( 接近 )して施設する場合以外の場合であって、特別な事情がある場合は、この限りでない。
答え (1)
2012年(平成24年)問7
架空電線路の支持物に、取扱者が昇降に使用する足場金具等を地表上 1.8[m]未満に施設することができる場合として、「電気設備技術基準の解釈」 に基づき、不適切なものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 監視装置を施設する場合
- 足場金具等が内部に格納できる構造である場合
- 支持物に昇塔防止のための装置を施設する場合
- 支持物の周囲に取扱者以外の者が立ち入らないように、さく、へい等を施設する場合
- 支持物を山地等であって人が容易に立ち入るおそれがない場所に施設する場合
2012年(平成24年)問7 過去問解説
電気設備技術基準の解釈 第53条「架空電線路の支持物の昇塔防止」の規定です。
監視装置を施設する場合であっても、1.8[m]以下に施設はできません。
答え (1)
2015年(平成27年)問3
次の文章は、「電気設備技術基準」における、電気機械器具等からの電磁誘導作用による影響の防止に関する記述の一部である。
変電所又は開閉所は、通常の使用状態において、当該施設からの電磁誘導作用により( ア )の( イ )に影響を及ぼすおそれがないよう、当該施設の付近において、( ア )によって占められる空間に相当する空間の( ウ )の平均値が、商用周波数において( エ )以下になるように施設しなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 通信設備 | 機能 | 磁界の強さ | 200A/m |
(2) | 人 | 健康 | 磁界の強さ | 100A/m |
(3) | 通信設備 | 機能 | 磁界の強さ | 100A/m |
(4) | 人 | 健康 | 磁束密度 | 200μT |
(5) | 通信設備 | 機能 | 磁束密度 | 200μT |
2015年(平成27年)問3 過去問解説
電気設備技術基準 第27条「架空電線路からの静電誘導作用又は電磁誘導作用による感電の防止」の規定です。
変電所又は開閉所は、通常の使用状態において、当該施設からの電磁誘導作用により( 人 )の( 健康 )に影響を及ぼすおそれがないよう、当該施設の付近において、( 人 )によって占められる空間に相当する空間の( 磁束密度 )の平均値が、商用周波数において( 200μT )以下になるように施設しなければならない。
答え (4)