電流の作用とその応用【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「電流の作用とその応用」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

電流の3作用

電流が流れると、「発熱作用」、「磁気作用」、「化学作用」が現れます。この3つの作用について説明します。

発熱作用

ニッケル・クロム、鉄・クロムなどの抵抗材料で作った抵抗体に電流を流すと、抵抗体には次の式で表される熱が発生します。

$W=RI^2×10^{-3}$ [kW] … (1)
ただし、$R$:抵抗体の電気抵抗[Ω]
    $I$:通過電流[A]

この熱はジュール熱とよばれています。電力の単位[W]は、力学的な仕事率の単位[J/S]に等しく、またジュールの法則により 1[J]≒0.239[cal] の関係にありますので、1[kW] を [kcal/H] の単位で表すと、

1[kW] ≒ 860 [kcal/H]

となります。この関係は、電力量を熱量関係に変換するときなどに使います。

磁気作用

電線に電流を流し、その電線の付近に磁石を置くと磁針は振れます。これは電流により電線の周囲に磁界(磁場)が生じるからで、この現象を電流の磁気作用といいます。磁界は大きさと同時に方向も持つベクトル量ですが、図1のように直線状導体に電流 $I$ [A]が流れたとき、導体の半径方向に中心から $r$ [m]離れた点Pの磁界 $H$ [A/m]の大きさは次の式で表すことができます。

$H=\displaystyle\frac{I}{2πr}$ [A/m] … (2)

その方向は図2のように右ねじの法則に従います。また図3のようにコイルに電流を流した場合、コイルは無限長と仮定すればコイル内部に生じる磁界 $H$ [A/m]の大きさは次の式で表すことができます。

$H=n_oI$ [A/m] … (3)
ただし、$n_o$:1m当たりのコイルの巻回数

その方向は各コイル片に流れる電流に右ねじの法則を適用して定めることができます。

以上のように、電流と磁気は密接な関係にありますが、このほかにも二つの重要な関係があります。

電動機と発電機の原理

図4のように磁界中に電流の流れている導体を置くと、図の方向に値から $F$ [N]が発生します。

$F=μ_0HIl$ [N] … (4)
ただし、$μ_0$:真空の透磁率

また、図4において導体に電流が流れていない状態で、導体を $F$ の方向に $v$ [m/s]で移動すると、導体内に、図の破線矢印方向に起電力 $E$ [V]が発生します。これを電磁誘導作用といいます。

$E=μ_0Hlv$ [N] … (5)

式(5)は電動機の原理に、式(6)は発電機の原理になるものです。

図4

化学作用

図5のように水溶液中に不溶性の電極A,Bを浸しA-B間に直流電流を流すと、水は分解されて、正極Aには酸素、負極Bには水素が発生します。

図5

このように電流を流すと化学反応を起こさせることが可能で、これを電流の化学作用といいます。化学作用は各種電解工業や電気精錬、電気メッキなどの分野で応用されています。

また、希硫酸溶液中に亜鉛電極と銅電極を浸し、両電線を導線で結ぶと導線には電流が流れます。この現象は外部から電流を流すことによる化学反応とは逆の関係になりますが、これも電流の化学作用の一種で、電池や電気防食などに応用されています。

電流の作用の応用

電流の作用の応用したものには、たくさんの種類があります。その中でいくつか紹介をします。

スペースヒータ

配電盤の内部には多数の電気部品が収納されていますが、配電盤が設置されている場所の湿度が高いと、その湿気が配電盤内に侵入し、絶縁物上で結露する場合があります。この現象は、配電盤を停止している場合に起こりやすく、絶縁物上に結露すると絶縁抵抗が著しく低下して、使用不可となる場合があります。

これを防止するために配電盤内に抵抗発熱体を設置して、適時に通電してその内部空気を加熱し、乾燥させるようにしていることがあります。このような目的で使われるヒータをスペースヒータといい、電流の発熱作用を利用した機器です。また、同様の目的で大容量の電動機には、その鉄枠内にスペースヒータを埋め込まれているものもあります。

電磁石の応用

電流の磁気作用を利用したものが電磁石で、電磁継電器、遮断器、開閉器、電磁弁などの操作用や電磁クラッチなどに応用されています。図6に電磁継電器、図7に真空遮断器に使用されている電磁操作コイルを示します。

図6
図7

電動機

電流と磁界との間の電磁力を利用したものが電動機で、直流電動機の原理を図8に示します。実際の電動機は脈動が少なく、かつ、大きな回転力を得るために複雑な構造になっています。

図8

電池

電池は電流の化学作用の逆現象を利用したものです。放電後の再充電が不可能なものを一次電池、再充電が可能なものを二次電池といいます。電気設備の直流電源として、主に利用されているのは二次電池で、これには鉛蓄電池やアルカリ蓄電池などがあります。図9に鉛蓄電池の構成を示します。鉛蓄電池は陽極に二酸化鉛、陰極に金属鉛、電解液に比重1.2程度の希硫酸を用い、無負荷時の単電池電圧は約2Vです。

図9

また、アルカリ蓄電池は陽極に高級水酸化ニッケル、陽極にカドミウム、電解液に苛性カリ溶液を用いたもので、無負荷時の単電池電圧は約1.5Vです。アルカリ蓄電池では、苛性カリは化学反応に関与していないので、充放電に伴う電解液の比重変化が極めて小さいことが特徴です。

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