避雷器、避雷針の役割【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「避雷器、避雷針の役割」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

避雷装置とは

雷の有する電気エネルギーは非常に大きく、この電圧および電流を正確に測定することは困難なほど大きな値です。したがってこれが電気設備や建造物、人畜に落雷すると、その被害は測り知れないものがあります。このため電気設備、建造物その他危険物の製造または貯蔵する設備にはそれぞれ避雷設備が設けられていますが、これらは総称して避雷装置と呼ばれ、この避雷装置は保護の対象物によって2種類に分けられます。

その一つは電気機器を保護する目的で設けられる避雷器と、もう一つは建築物や危険物に関する保護をするために設けられる避雷針です。

避雷器の設置については電気設備技術基準により、建築物に関しては建築基準法により、また,危険物の避雷に関しては消防法でそれぞれ規定されています。

避雷器の役割

避雷器の施設場所については電気設備技術基準に定められていますがそのうち、

  1. 発変電所の架空電線の引出口および引込口
  2. 高圧(受電電力500 kW以上)または特別高圧架空電線路から供給を受ける需要場所の引込口

に設けることが定められていますが、ここで避雷器の役割について考えてみます。雷はいつ、どこへ落ちるかわかりませんが、電気機器の絶縁耐力は商用周波の電圧ではせいぜい定格電圧の約 2 倍強であり、インパルス電圧で 5~ 7 倍程度です。ところが雷の電圧は数百kV以上の高い電圧ですので、電気機器の絶縁をこの雷の電圧に耐えられるように作ることは技術的にも経済的にも不可能に近いことです。したがって、このような高い電圧が現われたら、その近くに設置した避雷器によって、この高い電圧を電気機器の絶縁耐力より低い電圧まで下げて電気機器を保護しようというのが避雷器です。

第1図は電気設備技術基準により避雷器を設置しなければならない場所を示したものです。

避雷器を設置しなければならない場所
第1図 避雷器を設置しなければならない場所

避雷器の保護動作特性

避雷器は気中ギャップとこれと直列に接続された避雷器の特性要素で構成されており、第2図はその構成を示す略図です。気中ギャップの役目は系統が常規電圧のときは特性要素に電圧が加わらないように、また、避雷器が動作してから正常になったときに放電電流の流れ続けるのを防止するためです。次に特性要素は第3図のような非直線抵抗性の特性を有します。例えば炭化けい素 SiC の微粒子に結合剤を加えて加圧成形し焼結して作られたものです。いま線路に雷撃があって第2図のP点の電位が異常に高くなったとすると、気中ギャップは放電して特性要素に高い電圧が加わり、この電圧によって大きな電流が大地に向かって放電します。そしてP点の電位は第3図のような非直線性の電圧電流特性で示される大きさに制限することができます。

避雷器の構成
第2図 避雷器の構成
非直線抵抗性の特性
第3図 非直線抵抗性の特性

避雷針とその施設場所

避雷針の施設場所はビルや工場等の建築物については、建築基準法に高さ20m以上の建築物には避雷設備を設けることが規定されていますが、同一敷地内に高い建物や煙突などがあって、その保護範囲に入り、安全上支障ない場合は避雷設備を施設しなくともよいことになっています(この場合の保護範囲は避雷針の先端から60° 以下の範囲内です)。

また、消防法により、危険物の製造所や貯蔵所およびその取扱所に指定数量の10倍以上の危険物を置く場合は、避雷針または架空地線等の避雷装置を施設することが規定されています(危険物の場合の保護範囲は45°以下の範囲です)。

避雷針および架空地線の役割

避雷針の避雷原理は電気機器を保護する避雷器とは全然異なっており、避雷針は保護しようとする建造物または構造物の上部に金属製の棒(突針とよばれる)を取付け、この付近に雷撃があった場合は、この突針に導びいて大地に放電させキうとするもので、避雷器のような電気的な特性要素などは備えていません。ただ、避雷針に導びいた雷を安全に大地に放電させるため接地抵抗は低い方がよく10Ω 以下となるように定められていますが、これは避雷器の接地抵抗についても同じです。

次に架空地線というのは、被保護物の上部を水平に張った接地された電線のことで、避雷針は1点で雷を導くものですが、架空地線では水平に張った線で雷を大地に導くような役目をもっています。

避雷器と電気機器の保護協調

避雷器が雷によって放電したときの動作特性の一例は第4図のように水平に近く、被保護機器(この場合は変圧器)巻線の対地絶縁破壊の電圧時間特性Tと交わらず、気中ギャップは放電開始電圧の不整の少ないように作られているので十分な保護協調が得られます。

避雷器の放電動作特性
第4図 避雷器の放電動作特性

外雷と内雷

外雷はいままで説明してきた雷によるものですが、これは次の2種類の現象に分けられます。

  • 誘導雷:雷雲相互間、または雷雲と大地間に放電が生じたとき、雷雲の下にある送電線上に異常電圧を発生する現象で、これは静電誘導作用によって、送電線上に拘束されていた雷と反対極性の電荷が自由電荷となって線路を伝播して、異常電圧進行波を発生する現象です。
  • 直撃雷:送電線の導体またはその架空地線へ雷が直撃して、直撃雷電圧を発生し線路の絶縁を破壊に至らしめる現象で、この現象はいかに高い絶縁を施した送電線でも碍子のフラッシオーバは避けられません。

以上の誘導雷と直撃雷を外雷と呼んでいます。

次に内雷というのは電気系統内部において、 1線接地などの故障を生じたときに生ずる故障サージと、しゃ断器の投入またはじゃ断時の開閉サージにより異常電圧を発生することがありますが、この種の異常電圧を内雷といい、その大きさは回路の使用電圧波高値の3~5倍程度に達します。したがってこの種の異常電圧による機器の絶縁破壊を防ぐには、機器の端子付近に避雷器またはこれと並列にコンデンサを接続したサージアブソーバが取付けられます(第5図)。

第5図 サージアブソーバ

避雷針の避雷方式

一般に煙突などのように水平投影面積の小さい構造物に対する避雷針は、突針の長さは短くとも十分保護範囲に入りますが、 ビルのように水平投影面積の大きい場合には、1~ 2本の突針だけで保護範囲に収めるには高さが高くなり、美観上からも経済上からも好ましくないので水平導体方式(架空地線)が適しています。

次に高層ビルの避雷については一般の建築物と同様に施設されますが、屋上部分のかど付近の非受雷部には絶対に直撃を受けないようにしゃへいを行って、雷の直撃によってコンクリートなどが破壊しないように考慮することが必要です。また、建築物の側面が金属製のカーテンウォールであるような場合は、これらがすべて電気的に接続され、かつ建築物の鉄骨あるいは鉄筋と電気的に接続された状態にあればこれを受雷部として使用することができます。

避雷針についてはJISに規定されています。突針の材料は直径12 mm以上の銅棒が用いられ、これに接続される避雷導線は断面積30㎟以上の銅より線または銅管を使用することになっています。また、接地電極には、厚さ1.4㎜以上、面積0.35㎟以上(片面)の鋼板またはこれと同等以上の効果のある金属体を用います。

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