変圧器の容量と過負荷限度【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「変圧器の容量と過負荷限度」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

変圧器の定格と容量とは

変圧器の定格とは、使用条件(電圧,電流,周波数, 力率)が指定されたとき、ここまでは使用してもよいという使用限度のことです。定格容量とは、定格二次電圧、定格周波数および定格力率において、二次端子間に得られる値をいい、 kVAまたはMVAで表わします。定格容量の標準値を第 1表に示しめします。

変圧器のタップとは

変圧器のタップ(tap:中間出口)とは、第1図(a)のように変圧器の巻線の途中から端子を出すことがあり, この端子のことをタップと称しています。この場合は一次巻線にタップを付けた例です。

第1図

なぜタップが必要であるかというと、二次電圧は負荷に供給されるので、二次電圧は変動しない一定の値に落付いているのが望ましいからです。そのために一次電圧のようすによって適当なタップを選んで変圧器を使用します。

入力電圧が6000Vに下がったときは、第1図(b)のように6000Vのタップに切替えて使用すれば、二次電圧は前と変わらず210V一定にります。

全容量タップと低減容量タップ

変圧器のタップとは、,定格出力で連続使用しても耐えることができる全容量タップと、温度上昇の点から定格出力で連続使用に耐えない低減容量タップがあります。

6kV級変圧器のタップ電圧の標準値は第2表のとおりです。

特殊な変圧器の容量

特殊変圧器として、単巻変圧器の容量を求めてみます。第2図は単巻変圧器で、負荷に供給できる負荷容量は、

負荷容量$=V_2I_2$〔VA〕
ただし、$V_2,I_2$:二次電圧〔V〕,二次電流〔A〕

普通変圧器としてもっている容量を等価容量といいます。

等価容量$=I_1(V_1-V_2)=V_2(I_2-I_1)$〔VA〕
ただし、$V_1,I_1$一次電圧〔V〕,一次電流〔A〕

第2図

特殊な定格

一般の変圧器は、連続して運転できる連続定格ですが、高電圧試験などに使用される試験用変圧器は、短時間定格が用いられます。電気鉄道用または製鉄用圧延機に用いられる直流変電所の変圧器には、過酷な短時間過負荷にも耐えられるように、連続定格に短時間過負荷を加えた特殊定格を用いることが多いです。

変圧器の過負荷容量とその限度

変圧器の容量は、変圧器に加えられる電圧 $E$〔kV〕と負荷に流れる電流 $I$ 〔A〕との積 $EI$〔kVA〕で表わすことができます。したがって、電圧を上げるか、電流を多く流せば、変圧器には大きな負荷がかかるわけですが、これが定格電圧・定格電流を上まわった状態で使用する場合、変圧器を過負荷で運転するといいます。

過負荷の限度とは

変圧器に高い電圧を加えたり、電流を多く流すと、鉄損や銅損が増えて、変圧器の温度を上昇することになり、絶縁物・絶縁油の劣化を進行させます。そして、変圧器の寿命が短縮します。つまり、変圧器の容量は温度上昇によって決まります。

変圧器にやむを得ず過負荷運転をかけるときは、正規寿命を期待しながらかける場合と、若干寿命を犠牲にしてかける場合があります。(第1表,第2表を参照)。

正規寿命を期待して1日1回だけ過負荷するときは、第1表を適用します。寿命短縮を1%許すものとして、 1年1回だけ過負荷するときは、第2表を適用します。しかし、過去にたびたび事故を起こしているものや、絶縁油の劣化しているもの、20年以上経過した変圧器を過負荷運転するときは、個々にその限度を過去の記録を参照して決めるようにしてください。

チェックポイント

実際に過負荷をかけるときは、次の点を充分にチェックしましょう。

  1. ケーブル・しゃ断器・断路器・変流器などの 許容電流容量
  2. 継電器の整定、電流計・電力計の指示範囲
  3. ブッシング、タップ切替器の電流容量
  4. コンサベータの容量
  5. 密封形変圧器の場合,過負荷時の温度上昇による内圧上昇
  6. 屋内設置の場合,過負荷時の発生損失熱による室内温度上昇と冷却装置能力

以上のチェックポイントの他に、変圧器負荷は絶えず変動するものですので、次の点にも注意してください。二次電圧の異常昇圧・異常低下、三相回路負荷の不平衡。これらは変圧器の鉄損の増加や負荷電流の実質的増加によって巻線や油の温度上昇を助長させます。

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