電力計の原理と電力の測定方法【電気・電子計測】

計測

これだけは知っておきたい電気計測の基礎知識をご紹介します。このページでは「電力計の原理と電力の測定方法」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気計測の基礎知識を解説しています。

電力計の原理と構造

電力を計算する式は、次の式で求めることができます。

直流電力:$P=VI$〔W〕
交流電力(瞬時値):$P=VIcos θ$〔W〕

いずれにしても電圧と電流の積に比例します。したがって、電力を測定するためには、電圧と電流を同時に測定する必要があることがわかります。時間的に変化しない直流であれば、一つの計器で電圧と電流を別々に測定して、その積を計算することも可能ですが、時間的に変化する交流では、電圧と電流の位相関係が電力に影響を与えますので、電力計では同時に計測して各瞬間の電力を計算し、その平均値を求めますから、電圧と電流を同時に連続的に測定することが必要です。

図1は、電流力計形電力計の構造を示しています。この計器では、固定コイルに負荷に流れる電流を通し、磁界を発生させます。この磁界の中にある可動コイル(指針と一緒に動くコイル)には、電源の電圧を加えて、電圧に比例する電流を流し、磁界を発生させます。この二つの磁界により指針が動くのですが、指針が振れる幅は電圧と電流の積に比例しますから、電力を測定できるのです。

図1

電力計には、機器に取り付けて連続的に電力を監視する目的で固定して使う場合もありますが、必要に応じていろいろな場所の電力を測定したい場合もあります。そのような場合は、携帯型のディジタルAC電力計が便利です。移動して測定する用途に適しています。

電力の測定

表は、アナログ電力計の仕様例です。この表を見ると同じタイプの電力計に、単相電力計と三相電力計、電流の範囲の区分があることがわかります。

また、いずれの形名の電力計でも、定格電圧は120〔V〕と240〔V〕の両方で測定でき、定格電流は二つの測定範囲をもっていることがわかります。

電力計の接続

電圧計や電流計は一つの値を計測する測定器ですから接続は比較的簡単なのですが、電力計は電圧計としての接続と電流計としての接続を同時に行わなければなりませんから、少々複雑になります。

図2は、電力を測定する考え方を示している回路です。実際の電力計では、図1のように、内部に電圧計と電流計があるわけではないのですが、このように考えるとわかりやすくなります。図3は、アナログ電力計の接続例です。図3の接続に関して、注意すべき事柄を次に説明します。

  1. 電流コイルの±端子と電圧コイルの±端子を同じ極性(同じ線側)にしなければなりますません。もし、極性が異なっていますと指針が逆に振れます。
  2. 電圧、電流端子は、測定回路に応じて、適切なものを使用します。
  3. 配電盤などでは大電流が流れていますから、回路を切断して電流を計測することが困難です。このような問題を解決するために、クランプ電流計のように、電流の流れている電線から発生する磁力線を検出して電流を計測するための変流器(CT:カレントトランス)を使っている場合が多いのですが、回路に電流が流れているときにCTの2次回路を開放(オープン)にしますと非常に高い電圧が発生して危険ですから、常にショートしておく必要があります。CTの両端の開放は、計器への接続の完了後にする必要があります。
  4. 送電機器、配電機器や高電圧回路を含む機器などの電圧測定では、直接高電圧を測定者の触れる可能性のある計器に加えると感電の危険がありますから、計器用変圧器(PT)を使って安全な電圧まで下げてから計器に接続することがあります。絶縁された変圧器を使うとはいつても、変圧器の絶縁が低下していれば感電をする危険がありますから、安全のために二次回路(測定器側)は接地しておきます。
  5. 定格力率1.0とします。これは、電力計によっても多少の差がありますが、たとえば力率が0.98になると大幅な誤差が出るという意味ではなく、力率が1.0に近い場合は大きな誤差は出ないということを意味しています。

電力計の乗率

アナログテスタは電圧、電流、抵抗値など多数の項目の測定ができます。さらに、個々の測定項目でも複数のレンジをもっていますから、日盛板には多数の目盛が表示されていて、便利ではありますが読取りの間違いを起こしやすいのが欠点です。

図3の電力計では、電力だけしか測定しませんから、テスタほど複雑ではありませんが、電圧と電流の端子が、それぞれ二つありますので、これらを組み合わせると4種類の目盛を表示しなければならないことになります。

しかし、図3のタイプの電力計では目盛が1種類しか表示されていないものがあります。電圧と電流の測定範囲が一つであれば問題はないのですが、複数レンジの電力計では、日盛から読み取った測定値に次の表のような乗率をかけます。

たとえば、電圧レンジが120〔V〕、電流レンジが5〔A〕であれば、乗率が10ですから、指針が45を指していれば、電力は、45×10=450〔W〕になります。もしも、電圧レンジが240〔V〕、電流レンジが2〔A〕であれば、乗率が4ですから、指針が45を指していれば、電力は、45×2=90〔W〕になります。また、PTやCTを使っているときには、それぞれの仕様により、乗率と同様な換算も併せて必要になります。

これらのことは、指針の指示値と正しい値が一致していないということなので、測定値読取りの誤りを引き起こす要因ですから、注意が必要です。

三相電力の測定

三相交流回路における電力の測定は、平衡回路と不平衡回路で異なります。図4は単相電力計を使って平衡三相回路の電力測定法です。スイッチを①側にして測定した値と②側に切り替えて測定した値の絶対値を加えて電力を求めます。絶対値を加えるという意味は、力率によって① もしくは②のいずれかが負の値(指針の逆振れ)になることがあるからです。

図4

図5は単相電力計2台を使って測定する方法で二電力計法といいます。この方法では、不平衡の三相交流回路でも電力を測定することが可能です。この方法でも、二つの電力計の指示値の絶対値を加えて電力を求めます。

図5

単相電力計を2台使うのではなく、2台の電力計を1台の計器に組み込んだものが、三相電力計として作られていますから、三相電力を頻繁に測定する場合は、このような計器があると便利です。

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