絶縁抵抗計の原理と絶縁抵抗の測定方法【電気・電子計測】

計測

これだけは知っておきたい電気計測の基礎知識をご紹介します。このページでは「絶縁抵抗計の原理と絶縁抵抗の測定方法」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気計測の基礎知識を解説しています。

絶縁抵抗とは

電気は、電線を通して目的の場所に運びます。本来の通り道以外を通りますと不都合です。言いかえれば、電路(電気の通り道)は、他の電路や大地とは高い抵抗で、絶縁されていなければならないのです。絶縁抵抗計は図1のように、直流電圧を印加したときに絶縁物に流れる電流により、絶縁抵抗を測定します。

図1

絶縁抵抗が低くなると、回路が正常な動作しなくなったり、「漏れ電流増加→絶縁物の温度上昇→絶縁劣化→漏れ電流増加→温度上昇→機器の故障」という悪循環を引き起こし、最悪の場合は、発火して火災の発生や作業者の怪我などを引き起こすこともあります。また、漏れ電流による電磁波障害発生の可能性もあります。

絶縁抵抗は、機器が置かれている場所の環境に大きく影響されるとともに、時間の経過とともに低下するのが一般的な傾向ですから、絶縁が正常に保たれているかどうかを定期的に点検する必要があります。

どの程度以上の絶縁抵抗が必要なのかは、個々の回路により異なっていますが、高い抵抗値を必要としますので、抵抗値を表す単位には〔MΩ〕が多く使われます。

絶縁抵抗計の種類と原理

絶縁抵抗計は、新しい機器の使用開始時、定期点検時、機器に異常があって絶縁抵抗を確認するときなどに使います。絶縁抵抗の測定は,機器に電源電圧を加えない状態で行います。通常の抵抗計が低い電圧で抵抗を測定するのに対して,絶縁抵抗は高い電圧を加えて測定します。

測定に必要な電圧は、絶縁抵抗計の中で発生させるのですが、古いものでは手回しの発電機を使っていました。現在では、ほとんどの絶縁抵抗計が内蔵している電池からインバータを使って高い電圧を発生させています。

測定電圧が高い場合は、測定時に感電の危険があります。絶縁抵抗を測定するときは、絶縁の良い太いテスト棒(プローブ)を使うとともに、一方は、クリップ方式で測定箇所をつかんでから、電圧を発生させて測定します。

ショートしても、感電により死亡するほどの電流は流れないように配慮してはありますが、電撃によるショックはありますから、通常のテスタで使うテスト棒(プローブ)を流用することは危険です。このようなことは、絶対やらないでください。

また、電圧をDC100〔V〕、DC250〔V〕、DC500〔V〕、DC1000〔V〕などに切り替えられるほか、電圧計や導通チェッカなどの機能を持っているものもあります。

絶縁抵抗の測定

絶縁抵抗計は、電圧を切り替えられるようになっています。それは、絶縁抵抗を測定する機器、設備、電路により測定する電圧(定格測定電圧)を変える必要があるからです。

以前は、AC100~200〔V〕の機器は、DC500〔V〕で測定していたのですが、パソコンやOA機器などの半導体素子を使った機器故障が発生した例がありましたので、最近では、AC100〔V〕の配線および機器はDC125〔V〕で、AC200〔V〕ではDC250〔V〕で試験するようになっています。

電動機、変圧器などの電気機器や送電配線などをDC500〔V〕程度の電圧で試験したいときには、パソコンやOA機器など高電圧を加えると故障しやすい機器のコンセントを抜いておくのが無難です。そして、パソコンやOA機器などについては、配線とは別の低い電圧で個々の機器を試験するのがよいでしょう。この測定電圧は、例を示したものですから絶対守らなければならないという性格のものではなく、目安と考えてください。

個々の電路や機器で測定電圧が指定されている場合は、その指定にしたがってください。電路や機器には静電容量があります。いいかえれば、コンデンサであるということです。したがって、絶縁抵抗を測定すると始めは大きな電流が流れ、次第に一定の電流になって安定します。このことから、絶縁抵抗は、電圧を印加した直後に判定するのではなく、1分間以上通電した後に判定します。

図2のように、高圧ケーブルの絶縁抵抗を測定すると、指示値に絶縁物の表面抵抗が表れて誤差が大きくなり、真の絶縁抵抗が測定できなくなることがあります。

図2

この誤差を防ぐために、定格測定電圧がDC500〔V〕以上で、有効最大目盛が1000〔MΩ 〕の絶縁抵抗計には、ガード(G)という保護端子が付いています。図2のようにG端子をケーブルの絶縁物に巻き付けると、表面抵抗が指示計に出なくなりますから、ケーブルだけの絶縁抵抗を測定できます。

絶縁抵抗の判定

一般的には、AC100~200〔V〕の低圧機器が多く使用されます。これらの機器や電路では、どの程度の絶縁抵抗が必要かを示します。

なお、この判定基準は、使用中の電路や機器の絶縁低下による感電や火災の危険がないという観点から決められています。新たに使用するものであれば、1〔MΩ 〕以上あることが望ましいです。

絶縁抵抗の測定は、「電気設備技術基準」で、年1回実施しなければならないと決められている「定期点検」で実施します。電気設備技術基準には、定期点検の他にも、次のような′点検、試験、検査などがあります。

  • 竣工検査:電気設備が完成したときに実施する。
  • 月次点検:使用中の電気設備を2~ 12回/年実施する(点検頻度は設備の種類により異なる)。
  • 定期点検:1回/年実施する。
  • 精密点検:必要に応じて、定期点検よりも精密な点検をする(頻度の指定はない)。
  • 臨時点検:故障や事故のあったときに、原因究明や再発防止措置を取るために行う。

電気設備技術基準による年1回の絶縁抵抗測定試験

  1. 変電室機器(しゃ断器,変圧器,コンデンサ,計器用変成器,変流器,避雷器)と電線路
  2. 変電室照明メインスイッチから各フロア分電盤までの電線路と分岐スイッチまで
  3. フロア分電盤分岐スイッチ端子から天丼灯蛍光灯器具あるいは柱コンセント負荷まで
  4. 変電室動カメインスイッチから各フロア電動機分岐スイッチまで
  5. フロア電動機マグネットスイッチから電動機まで

設備の内容によっては多少異なるところがありますが,以上五つの部分を絶縁抵抗計により測定し,記録保持します。

機器,ケーブルの取り替え時

工場検査で試験したものをさらに絶縁抵抗計で良好になることを確認して使用します。

第3図

機器,配線などの故障時

どの場所がどんなことが原因であったかを知るため,電源を切り絶縁抵抗計で測定し判断します。

  1. 変電室の場合
    高圧しゃ断器ー圧変成器(計器用)ー変流器ー高圧ケーブル線ー変圧器一次側変圧器二次側ーメインスイッチ
  2. 電動機の場合
    高圧の場合:変電室しゃ断器ー高圧ケーブル線ー手元スイッチーケーブル線ー電動機
    低圧の場合:手元マグネットスイッチー配管内電線ー電動機
第4図
  1. 照明の場合
    フロア全般あるいは1/2,1/3が消灯した場合:変電室低圧メインスイッチーダクト,配管,電線ー分電盤メインスイッチ
    フロアの1部が消えた場合:分電盤スイッチー配管内電線あるいは分岐ケーブルー照明器具(蛍光灯,電球)
第5図
計測
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