抵抗測定用ブリッジ【電気・電子計測】

計測

このページでは、 抵抗の精密測定 などに使用する「抵抗測定用ブリッジ」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気計測の基礎知識を解説しています。

ホイートストンブリッジの原理

ホイートストンブリッジは,各種ブリッジのなかで, もっともよく使用されるもので,0.1〔Ω〕~100〔kΩ 〕程度の中抵抗を精密測定するのに適しています。

図1は,ホイートストンブリッジの回路を示しています。$R_x$は,測定する抵抗で,$R_1$,$R_2$,$R_3$は可変抵抗であって,それぞれの抵抗値は正確にわかっているものです。c点とd点の電位が同じになったときは,検流計には電流が流れません。この状態をブリッジが平衡したといいます。

図1

平衡状態では,$R_1$と$R_2$および$R_x$と$R_3$の電圧降下が同じですから,

$I_1R_1=I_2R_2$, $I_1R_x=I_2R_2$

また,$R_1$と$R_a$および$R_2$と$R_3$の電圧降下の合計は,電源の起電力$E$〔V〕ですから,次の関係があります。

$E=I1(R_1+R_x)=I_2(R_2+R_3)

これらの式を整理しますと,ブリッジの平衡条件は,次の式です。

$\displaystyle\frac{R_1}{R_x}=\displaystyle\frac{R_2}{R_3}$

この式を整理しますと,不明の抵抗$R_x$の値は,次の式で計算できます。

$R_x=\displaystyle\frac{R_1R_3}{R_2}$

ホイートストンブリッジの使用法

図2は,小形のホイートストンブリッジで1〔Ω〕~10〔MΩ 〕の抵抗測定が可能です。測定したい抵抗(未知の抵抗)を$R_x$端子に接続し,測定ダイ アルを回して,検流計の指示を零にします。MULTIPLYダイアルの数値は, 前式の$R_1$/$R_2$に相当する値を示しており,測定ダイアルの値に掛ける倍率になります。

図2

測定ダイアルの×1000,× 100,× 10,× 1の値が1, 4, 6, 8で検流計の指示が零点を指示したとすれば,MULTIPLYダイアルの数値が1のときは,$R_X$=1468〔Ω〕,0.01のときは,$R_x$=14.68〔Ω〕になります。

BAスイッチ($K_1$)はブリッジに電流を流すスイッチですから,これをONした後で,GAスイッチ($K_2$)をONして検流計の振れを確認します。

測定する抵抗が100〔kΩ 〕を超えますと検流計の振れが小さくなって誤差が大きくなりますから,感度の良い外付けの検流計を使用します。感度の良い検流計を内蔵しない理由は,非常に感度の良い計器は構造的に弱く壊れやすいので,ポータブルには適さないからです。

ケルビンダブルブリッジ

ホイートストンブリッジでは測定できない0.1〔Ω〕以下の抵抗測定にはケルビンダブルブリッジを使います。なぜ,ホイートストンブリッジでは低抵抗を測定できないかというと,ホイートストンブリッジでは,測定対象の抵抗値と測定端子に接続する際に発生する接触抵抗を含めた抵抗値が測定値となるからです。

ケルビンダブルブリッジの特徴は,測定する抵抗に電流を流す端子と電圧を測定する端子を別にしていることです。このことにより,接触抵抗の影響を無視できるようにしています。電圧端子と電流端子を別にする方法は,接触抵抗の影響を受けないので,ケルビン法として各種の測定に利用されています。

その他のブリッジ

ブリッジとしては,ホイートストンブリッジがよく知られていますが,インダクタンスやキャパシタンスを測定できるブリッジもあります。ここでは,主なブリッジの名前と用途のみを紹介します。

① 万能ブリッジ:インダクタンス,キャパシタンス,抵抗測定
② ウィーンブリッジ:キヤパシタンス測定
③ マクスウェルブリッジ:インダクタンス測定
④ コールラウシュブリッジ:インピーダンス測定

ホイートストンブリッジやケルビンダブルブリッジでは,ブリッジに直流電源を使いましたが,インダクタンスやキャパシタンスを測定するブリッジは,電源に交流を使います。交流ブリッジでは,直流ブリッジに比べて平衡状態にするのが少々難しくなります。

ブリッジではありませんが,インダクタンスやキャパシタンスを測定するには,ディジタル方式のLCRメータを使う
と比較的簡単に誤差の少ない測定ができます。

なお,コンデンサのキャパシタンスは,周波数により大きく変化し,通常のコンデンサは温度の影響を大きく受けますから,測定時は注意が必要です。

計測
シェアする
cubeをフォローする
基礎からわかる電気技術者の知識と資格