直流発電機の種類と特性

機械

このページでは、直流発電機の種類と特性について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の機械科目で、実際に出題された直流発電機の種類と特性の過去問題の解き方も解説しています。

直流発電機の起電力

磁極数を $p$、電機子導体数を $Z$、磁極の磁束を $ϕ$[Wb]、回転数を $N$[rpm]、電機子の並列回路数を $a$ とすると、直流発電機全体の誘導起電力 $E$[V]は、次の式で表すことができます。

$E=e×\displaystyle\frac{Z}{a}$
 $=\displaystyle\frac{pϕN}{60}×\displaystyle\frac{Z}{a}=\displaystyle\frac{pZ}{60a}ϕN=K_1ϕN$[V]

ただし、$K_1=\displaystyle\frac{pZ}{60a}$ は電圧定数

誘導起電力 $E$[V]は、磁束を $ϕ$[Wb]と回転数を $N$[rpm]に比例します。つまり、強い磁力と速い回転力を与えることにより、大きな起電力を得ることが出来ます。

直流発電機の誘導起電力と負荷電流

界磁鉄心は界磁巻線に電流が流れる事で磁化されます。直流発電機では界磁をどのように磁化するかによって、他励式と自励式に分類されます。

  • 他励式 … 界磁巻線の励磁電流を別の電源から取る方式
  • 自励式 … 界磁巻線の励磁電流を自己の起電力から取る方式。自励式には分巻式、直巻式、複巻式があります

他励発電機

図1に他励発電機の原理図と回路図を示します。界磁巻線 $F_C$ に流す界磁電流 $I_f$[A]は外部の電源 $V_f$[V]から供給されます。このような直流発電機を他励発電機といいます。

他励発電機
図1他励発電機

無負荷飽和曲線

スイッチSを開いた状態で、電機子を定格回転速度 $n_n$[min-1]で回転させ、界磁電流 $I_f$[A]を増加すると、起電力 $E$[V]は界磁電流 $I_f$[A]にほぼ比例して大きくなります。しかし、界磁電流 $I_f$[A]がある大きさ以上になると、鉄心の磁気飽和のため、起電力 $E$[V]は増加しなくなります。次に、界磁電流 $I_f$[A]を最大値から減少すると、鉄心のヒステリシスのため起電力 $E$[V]の値は一致しません。尚、$E_r$[V]は鉄心の残留磁気による起電力です。

このように無負荷の状態において界磁電流 $I_f$[A]と起電力 $E$[V]との関係を示す曲線を無負荷飽和曲線といいます。

無負荷飽和曲線
図2無負荷飽和曲線

外部特性曲線

スイッチを開じて、直流発電機を定格回転速度 $n_n$[min-1]で回転させ、定格電圧 $V_n$[V]のときに、定格電流 $I_n$[A]となるように界磁抵抗 $R_f$[Ω]と負荷抵抗 $R_L$[Ω]を調整します。回転速度 $n_n$[min-1]、界磁電流 $I_f$[A]を変えないで、負荷抵抗 $R_L$[Ω]を変化させるときの負荷電流 $I$[A]と端子電圧 $V$[V]との関係を示す曲線を外部特性曲線といいます。

外部特性曲線
図3外部特性曲線

図3は、外部特性曲線の例で、負荷電流 $I$[A]の増加にともなって端子電圧 $V$[V]が減少します。これは電機子巻線抵抗 $R_a$[Ω]による電圧降下 $R_aI$[V]、電機子反作用による電圧降下 $v_a$[V] 、ブラシ接触電圧降下 $v_b$[V]があるためです。端子電圧 $V$[V]と起電力 $E$[V]の関係は、次の式で表すことができます。

誘導起電力:$V=E- (R_aI+v_a+v_b )$[V]

自励発電機

直流発電機において、自己の誘導起電力を利用して磁極を励磁すれば、外部の直流電源は不要になります。このような発電機を自励発電機といいます。

この場合、電機子巻線と界磁巻線の接続のしかたによって、分巻発電機・直巻発電機・複巻発電機などがあります。

分巻発電機

図4(a)のように、電機子と界磁巻線 $F_c$ が並列に接続されたものを分巻発電機といいます。

分巻発電機
分巻発電機
図4 分巻発電機

図4(b),(c)において、電機子が回転すれば、まず磁極の残留磁束によって、電機子巻線に $E_r$[V]の起電力が誘導され、それによって界磁巻線に $I_{f1}$[A]の電流が流れます。$I_{f1}$[A]の電流による磁束と残留磁束の向きが同じであれば、それらの和の磁束によって電機子巻線に $E_1$[V]の起電力が誘導され、界磁巻線に $I_{f2}$[A]の電流が流れます。さらには $I_{f2}$[A]の電流によって、電機子巻線には $E_2$[V]の起電力が誘導されます。

このような経過をすばやくたどって、電機子巻線には安定した起電力 $E_n$[V]が得られることになります。また、$\overline{OP}$を界磁抵抗線とよんでいます。

分巻発電機の外部特性曲線は、定格値の範囲では負荷電流に比例して端子電圧は減少し、その値は小さくなります。この場合の端子電圧 $V$[V]と起電力 $E$[V]の関係は、次の式で表すことができます。

誘導起電力:$V=E-(R_aI+v_a+v_b+v_f ) $[V]

電機子電流:$I_a=I+I_f$[A]

界磁電流:$I_f=\displaystyle\frac{V}{R_f}$[A]

分巻発電機の外部特性曲線
図5分巻発電機の外部特性曲線

なお、定格電流 $I_{n}$[A]より負荷をさらに大きくすると、電流の最大値の点bを通って点cに達し、安定な運転ができません。

直巻発電機

図6(a)のように電機子と界磁巻線 $F_d$ が直列に接続されたものを直巻発電機といいます。

直巻発電機
直巻発電機
図6直巻発電機

直巻発電機の外部特性曲線は、界磁巻線を切り離し、他励発電機として無負荷飽和曲線を求め、この曲線から電機子巻線抵抗と界磁巻線抵抗の電圧降下 $(R_a+R_d)I$[V]、電機子反作用による電圧降下 $v_a$[V]およびブラシ接触電圧降下 $V_b$[V]を差し引いて描いたものです。したがって、端子電圧 $V$[V]と起電力 $E$[V]の関係は、これらの関係より次の式で表すことができます。

誘導起電力:$V=E-{(R_a+R_d)I+v_a+v_b}$[V]

複巻発電機

複巻発電機は、 2 つの界磁コイルを持ち、 1 つは電機子コイルと直列に、もう 1 つは電機子コイルと並列に接続します。その際、 2 つの界磁コイルの接続極性が、互いに磁束を増加させる向きに接続する方法を「和動複巻」、互いに磁束が相反する向きに接続する方法を「差動複巻」といいます。一般的には、和動複巻が多く使われています。

複巻発電機
図7複巻発電機

複巻式は、分巻式と直巻式を組み合わせた方式で、発電機の場合は分巻界磁が直巻界磁より電機子側にあり、「内分巻」といいます。尚、電動機の場合は分巻界磁が端子側にあり、「外分巻」といいます。

内分巻
図8内分巻

誘導起電力:$V=E-I_aR_a-IR_{fs}=I_fR_{fp}-IR_{fs}$[V]

界磁電流:$I_a=I+I_f$[A]

  

電験三種-機械(直流機)過去問

2001年(平成13年)問1

直流電動機が回転しているとき、導体は磁束を切るので起電力を誘導する。この起電力の向きは、フレミングの( ア )によって定まり、外部から加えられる直流電圧とは逆向き、すなわち電機子電流を減少させる向きとなる。このため、この誘導起電力は逆起電力と呼ばれている。直流電動機の機械的負荷が増加して( イ )が低下すると、逆起電力は( ウ )する。これにより、電機子電流が増加するので( エ )も増加し、機械的負荷の変化に対応するようになる。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

 (ア)(イ) (ウ) (エ)
(1)右手の法則回転速度減少電機子の入力
(2)右手の法則磁束密度増加電機子の入力
(3)左手の法則回転速度増加電機子の入力
(4)左手の法則磁束密度増加電機子反作用
(5)左手の法則回転速度減少電機子反作用

2001年(平成13年)問1 過去問解説

直流電動機が回転しているとき、導体は磁束を切るので起電力を誘導する。この起電力の向きは、フレミングの( 右手の法則 )によって定まり、外部から加えられる直流電圧とは逆向き、すなわち電機子電流を減少させる向きとなる。このため、この誘導起電力は逆起電力と呼ばれている。直流電動機の機械的負荷が増加して( 回転速度 )が低下すると、逆起電力は( 減少 )する。これにより、電機子電流が増加するので( 電機子の入力 )も増加し、機械的負荷の変化に対応するようになる。

答え (1)

2002年(平成14年)問1

出力40[KW]、端子電圧200[V]、回転速度1,500[min-1]で運転中の他励直流発電機がある。この発電機の負荷電流及び界磁電流を一定に保ったまま、回転速度を1,000[min-1]に低下させた。この場合の誘導起電力[V]の値として、正しいのは次のうちどれか。
ただし、電機子回路の抵抗は0.05[Ω]とし、電機子反作用は無視できるものとする。

(1)126 (2)133 (3)140 (4)200 (5)210

2002年(平成14年)問1 過去問解説

問題を図に示します。

2002年(平成14年)問1 過去問解説

発電機の負荷電流を $I_a$[A]、 誘導起電力を $E$[V]とすると、

$I_a=\displaystyle\frac{P}{V}= \displaystyle\frac {40×10^3}{200}=200$[A]

$E=R_aI+V=0.05×200+200=210$[V]

誘導起電力を $E$[V]は、$E=K_1ϕN$ ですので、1,500[min-1]回転と1,000[min-1]回転

1,500[min-1]回転のとき:$210=K_1ϕ×1500$ …(1)

1,000[min-1]回転のとき:$E_{2}=K_1ϕ×1000$ …(2)

(1),(2)式を解くと、

$E_{2}=210×\displaystyle\frac{100}{1500}=140$[V]

答え (3)

2009年(平成21年)問1

直流発電機に関する記述として、正しいのは次のうちどれか。

  1. 直巻発電機は、負荷を接続しなくても電圧の確立ができる。
  2. 平複巻発電機は、全負荷電圧が無負荷電圧と等しくなるように(電圧変動率が零になるように)直巻巻線の起磁力を調整した発電機である。
  3. 他励発電機は、界磁巻線の接続方向や電機子の回転方向よっては電圧の確立ができない場合がある。
  4. 分巻発電機は、負荷電流によって端子電圧が降下すると、界磁電流が増加するので、他励発電機より負荷による電圧変動が小さい。
  5. 分巻発電機は、残留磁気があれば分巻巻線の接続方向や電機子の回転方向に関係なく電圧の確立ができる。

2009年(平成21年)問1 過去問解説

  1. 直巻発電機は、負荷を接続しないと界磁電流が流れず、電圧の確立ができません。
  2. 正しい記述です。
  3. 他励発電機は、界磁巻線の接続方向や電機子の回転方向によらず電圧の確立ができます。
  4. 分巻発電機は、負荷電流によって端子電圧が降下すると、界磁電流も低下するので、他励発電機より負荷による電圧変動は大きくなります。
  5. 分巻発電機は、残留磁気があっても分巻巻線の接続方向や電機子の回転方向により、残留磁気を打ち消すので電圧の確立ができません。 

答え (2)

機械電験3種
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