このページでは、電線のたるみと実長について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の電力科目の試験で、実際に出題された電線のたるみと実長の過去問題も解説しています。
電線のたるみと実長
電線は、断線しないように「たるみ」を持たせて架線しなければなりません。たるみを大きくすれば、支持物の高さは高くなると共に電線の短絡故障につながりやすくなります。また、逆にたるみを小さくするために電線を強く張れば、支持物の設計強度が大きくなると共に冬季の着氷雪時には過大な張力が加わるおそれがあります。
電線のたるみの大きさを弛度(ちど)といい、次の式で求めることができます。
$D=\displaystyle \frac{ wS^2 }{ 8T }$
D:たるみ[m]
w:電線1m当たりの荷重[N/m]
S:径間[m]
T:水平張力[N]
たるんだ電線の長さ(実長)は、次の式で求めることができます。
$L=S+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3S }$
L:電線の実長[m]
S:径間[m]
D:たるみ[m]
温度が上昇すると、膨張により電線は長くなります。温度上昇後の電線の長さ L2[m]は、次の式で求めることができます。
$L_2=L_1{1+α(T_2-T_1)}$
L1:温度上昇前の長さ[m]
α:電線の線膨張係数
T1:温度上昇前の温度[℃]
T2:温度上昇後の温度[℃]
電線の荷重
電線を架線するとには、電線自体の荷重 Ww と風圧荷重 Wv 、また被氷雪による荷重 Wi に十分耐えれるように安全率を見込んでおかなければなりません。合成荷重を W とした場合、各荷重の関係は、次の式で表すことができます。
$W=\sqrt{{W_v}^2+(W_w+W_i)^2}$
Ww:電線質量による荷重[N/m]
Wv:風圧荷重[N/m]
Wi:被氷雪質量による荷重[N/m]
支線
配電線路の端末で電線張力が平衡して支持物に加わっていない箇所に、不平衡張力に耐えるために支線を設置します。材料は、亜鉛めっき鋼より線(2.6~4〔mm〕)を用いています。尚、鉄塔には支線を取り付けません。
- 支線防護管:配電線作業時の感電防止
- 玉がいし:漏電による感電防止
- ターンバックル:支線の緩み取り
電柱は電線の張力に、支線と支柱で強度を維持しています。電線張力を P[kg]とするとき、支線で支える力 T[kg]は、次の式で求めることができます。
$T=\displaystyle \frac{ P }{ sinθ }$
電験三種-電力(送配電)過去問題
1998年(平成10年)問6
図のような高低差のない支持点A、Bで、径間長S架空送電線において、架空の水平張力 T を調整してたるみ D を 10[%]小さくし、電線地上高を高くしたい。この場合の水平張力の値として、 正しいのは次のうちどれか。ただし、両側の鉄塔は十分な強度があるものとする。
(1) 0.92T (2) 0.9T (3) $\displaystyle\frac{T}{\sqrt{0.9}}$ (4) $\displaystyle\frac{T}{0.9}$ (5) $\displaystyle\frac{T}{0.9^2}$
1998年(平成10年)問6 過去問解説
調整前の水平張力を T を たるみを D 、調整後の水平張力を T’ を たるみを D’ とすると、
D’=0.9D
調整前の水平張力を T’ は
$D’=\displaystyle \frac{ wS^2 }{ 8T’ }$
$T’=\displaystyle \frac{ wS^2 }{ 8D’ }=\displaystyle \frac{ wS^2 }{ 8D }×\frac{ 1 }{ 0.9 }=T×\displaystyle\frac{ 1 }{ 0.9 }$
答え (4)
1998年(平成10年)問7
送電線に加わる荷重と電線質量による荷重との比(負荷係数)は、被氷雪を考慮した場合、正しいのは次のうちどれか。ただし、Ww、Wv 及び Wi は、次の荷重を表すものとする。
Ww : 電線質量による荷重[N/m]、Wv : 風圧荷重[N/m]、Wi : 被氷雪質量による荷重[N/m]
(1) $\displaystyle\frac{{W_v}^2+{W_w}^2+{W_i}^2}{{W_w}^2}$ (2) $\displaystyle\frac{\sqrt{{W_v}+{W_w}+{W_i}}}{W_w}$ (3) $\displaystyle\frac{\sqrt{{W_v}^2+{W_w}^2+{W_i}^2}}{W_w}$ (4) $\displaystyle\frac{\sqrt{({W_v}+{W_w})^2+{W_i}^2}}{W_w}$ (5) $\displaystyle\frac{\sqrt{{W_v}^2+({W_w}+{W_i})^2}}{W_w}$
1998年(平成10年)問7 過去問解説
$W=\sqrt{{W_v}^2+(W_w+W_i)^2}$
Ww:電線質量による荷重[N/m]
Wv:風圧荷重[N/m]
Wi:被氷雪質量による荷重[N/m]
題意より、負荷係数は $\displaystyle \frac{ W }{ Ww }$
答え (5)
2003年(平成15年)問16
架空電線路の径間、電線の長さ及びたるみに関して、次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) 径間を S[m]、電線のたるみを D[m]とするとき、電線の長さ L[m]を示す式として、正しいのは次のうちどれか。
(1) $S+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3S }$ (2) $S+\displaystyle \frac{ 8D }{ 3S }$ (3) $S+\displaystyle \frac{ 3D^2 }{ 8S }$ (4) $S+\displaystyle \frac{ 3D }{ 8S }$ (5) $S+\displaystyle \frac{ D^2 }{ 3S }$
(b) 架空電線路の径間が 50[m]で、導体の温度が 40[℃]のときのたるみは 1[m]であった。この電線路の導体の温度が 70[℃]になったときのたるみ[m]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、電線の膨張係数は 1[℃]につき 0.000017 とし、張力による電線の伸縮は無視するものとする。
(1) 1.03 (2) 1.14 (3) 1.22 (4) 1.34 (5) 1.47
2003年(平成15年)問16 過去問解説
(a) 電線の実長の公式より
$L=S+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3S }$
答え (1)
(b) 40℃のときの電線の実長を L40 とすると
$L=S+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3S }$
$\begin{eqnarray}L_{40}&=&50+\displaystyle \frac{ 8×1^2 }{ 3×50 }\\\\&=&50.0533[m]\end{eqnarray}$
70℃のときの電線の実長を L70 とすると
$L_2=L_1{1+α(T_2-T_1)}$
$\begin{eqnarray}L_{70}&=&50.0533{1+0.000017 (70-40)}\\\\&=&50.07883[m]\end{eqnarray}$
$L=S+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3S }$ より
$50.07883=50+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3×50 }$
$D≒1.22$
答え (3)
2006年(平成18年)問14
両端の高さが同じで径間距離 250[m]の架空電線路があり、電線 1[m]当たりの重量は 20.0[N]で、風圧荷重は無いものとする。
いま、水平引張荷重が 40.0[kN]の状態で架線されているとき、たるみ D[m]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1) 2.1 (2) 3.9 (3) 6.3 (4) 8.5 (5) 10.4
2006年(平成18年)問14 過去問解説
$D=\displaystyle \frac{ wS^2 }{ 8T }=\displaystyle \frac{ 20×250^2 }{ 8×40×10^2 }=3.9$[m]
答え (2)
2012年(平成24年)問13
図のように高低差のない支持点 A,,B で支持されている径間 S が 100[m]の架空電線路において、導体の温度が 30[℃]のとき、たるみ D は 2[m] であった。
導体の温度が 60[℃]になったとき、たるみ D[m]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、電線の線膨張係数は 1[℃]につき 1.5×10-5 とし、張力による電線の伸びは無視するものとする。
(1) 2.05 (2) 2.14 (3) 2.39 (4) 2.66 (5) 2.89
2012年(平成24年)問13 過去問解説
30℃のときの電線の実長を $L_{30}$ とすると
$L=S+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3S }$
$\begin{eqnarray}L_{30}&=&100+\displaystyle \frac{ 8×2^2 }{ 3×100 }\\\\&=&100.10667[m]\end{eqnarray}$
60℃のときの電線の実長を $L_{70}$ とすると
$L_2=L_1{1+α(T_2-T_1)}$
$\begin{eqnarray}L_{60}&=&100.10667{1+1.5×10^{-5}× (60-40)}\\\\&=&100.1517[m]\end{eqnarray}$
$L=S+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3S }$ より
$100.1517=100+\displaystyle \frac{ 8D^2 }{ 3×100 }$
$D≒2.385$
答え (3)
2013年(平成25年)問9
図のように、架線の水平張力 T[N]を支線と追支線で、支持物と支線柱を介して受けている。支持物の固定点Cの高さを h1[m]、支線柱の固定点Dの高さを h2[m]とする。また、支持物と支線柱の距離 AB をℓ1[m]、支線柱と追支線地上固定点Eとの根開き BEを ℓ2[m]とする。
支持物及び支線柱が受ける水平方向の力は、それぞれ平衡しているという条件で、追支線にかかる張力 T2[N]を表した式として、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、支線、追支線の自重及び掲示していない条件は無視する。
2013年(平成25年)問9 過去問解説
力の関係は次の図のとおりになります。
水平張力 $T$ と追支線にかかる張力 T2 の関係は、
$cosθ=\displaystyle \frac{ T }{ T_2 }=\displaystyle \frac{ l_2 }{ \sqrt{ h_2^2+l_2^2 } }$
$T_2=\displaystyle \frac{ T\sqrt{ h_2^2+l_2^2 } }{ l_2 }$
答え (1)
2017年(平成29年)問8
支持点間が 180 m、たるみが 3.0 mの架空電線路がある。いま架空電線路の支持点間を 200 mにしたとき、たるみを 4.0 mにしたい。電線の最低点における水平張力をもとの何[%]にすればよいか。最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、支持点間の高低差はなく、電線の単位長当たりの荷重は変わらないものとし、その他の条件は無視するものとする。
(1) 83.3 (2) 92.6 (3) 108.0 (4) 120.0 (5) 148.1
2017年(平成29年)問8 過去問解説
支持点間が 180 m、たるみが 3.0 m の架空電線路の水平張力 T は
$3=\displaystyle \frac{ w×180^2 }{ 8T }$
$T=\displaystyle \frac{ w×180^2 }{ 3×8 }$
支持点間が 200 m、たるみが 4.0 m の架空電線路の水平張力 $T’$ は
$4=\displaystyle \frac{ w×200^2 }{ 8T’ }$
$T’=\displaystyle \frac{ w×200^2 }{ 4×8 }$
T と T’ の比は
$\displaystyle \frac{ T’}{ T }=\displaystyle \frac{ \displaystyle\frac{ w×200^2 }{ 4×8 } }{ \displaystyle \frac{ w×180^2 }{ 3×8 } }=0.9259$
答え (2)