コンバインドサイクル発電の仕組み

電力

第三種電気主任技術者(電験三種)試験に独学で合格できるよう、分野ごとに「考え方」や「解き方」の解説と過去問題をまとめています。このページで、電験三種の電力科目に出題される「コンバインドサイクル発電の仕組み」について、初心者の方でも解りやすく、基礎から勉強できます。また、電験三種の電力科目の試験で、実際に出題された「コンバインドサイクル発電の仕組み」の過去問題も解説しています。

ガスタービン発電

ガスタービン発電は蒸気を使わずに、燃料を燃焼させた高温のガスでタービンを回転させます。ガスタービン発電は、空気圧縮機、燃焼器、タービンなどから構成されており、基本サイクルは、「圧縮→過熱→膨張→放熱」の4過程からなっています。

ガスタービン発電を空気やガスの流れの点から大きく分けると、「オープン(開放)サイクル」と「クローズド(密閉)サイクル」の2種類があります。

オープンサイクルガスタービン

吸気、排気ともに「大気に開放」されている方式です。外気から燃焼用空気を取り入れ、これを空気圧縮機で圧縮、燃料ガスと混合させた後、燃焼器で燃焼させて高温高圧のガスを作り、これをタービンに送り、タービンを回します。タービンを出た排気ガスはそのまま大気へ放出されます。

オープンサイクルガスタービン
オープンサイクルガスタービン

オープンサイクルガスタービンの特徴

  • ガスタービンの吸排気ともに、大気に開放されている
  • 吸排気の量が多いので騒音が大きい
  • 外気温が上がれば出力が低下する
  • 設備は単純で、運転保守が容易

クローズドサイクルガスタービン

圧縮機からタービンへと循環する気体(作動流体)を「大気から隔離」する方式です。作動流体を圧縮加熱し、高温高圧のガスにして、それによりタービンを回します。外気を吸気しないので外気温に左右されず、また、外気に排気を直接放出しないため騒音が小さくなるという利点がありますが、開放サイクルに比べて設備が複雑になるため、運転方法も複雑で、設備費が高くなるといった欠点があります。

クローズドサイクルガスタービン
クローズドサイクルガスタービン

クローズドサイクルガスタービンの特徴

  • 作動する流体を循環使用する
  • 騒音が小さい
  • 効率や出力が外気の影響を受けない
  • 設備が複雑で保守運転が難しい

コンバインドサイクル発電

コンバインドサイクル発電は、「ガスタービン発電と汽力発電を組み合わせた」発電方式です。コンバインドサイクル発電にはいくつかの種類がありますが、排熱回収式コンバインドサイクル発電が主流となっています。

排熱回収式コンバインドサイクル発電は、高温高圧ガスでガスタービンを回して発電を行い、さらに、ガスタービンの排熱を利用して、排熱回収ボイラで蒸気を発生させ、汽力発電を行います。

コンバインドサイクル発電
コンバインドサイクル発電

コンバインドサイクル発電の特徴

  • 汽力発電だけよりも、熱効率は高い
  • 復水器の冷却水量が少ない
  • 起動・停止の時間が短い
  • 付属設備が少ないので、所内率が小さい
  • 排気量が多く、出力が外気温の影響を受ける

一軸形と多軸形

コンバインドサイクル発電には「一軸形」と「多軸形」があり、ガスタービン-蒸気タービン-発電機」を同一軸上に配置したものを一軸形、「ガスタービン-発電機」と「蒸気タービン-発電機」を分けたものを多軸形といいます。

一軸形は、ユニットを複数台並べて構成し、ユニットごとに運転停止ができるため、運転台数の増減で負荷の増減に対応することができます。また 、発電機が1 台で済むので設備を小型化することができます。

多軸形は、「複数台のガスタービン」と「1 台の大型蒸気タービン」から構成されます。蒸気タービンの容量が大きくなるので、蒸気タービンの効率が上がります。

コンバインドサイクル発電の高効率化

コンバインドサイクル発電を高効率化させるためには次のような方法があります。

・ガスタービン入り口ガス温度を高くする
・空気圧縮機で、空気を高圧縮する

  

電験三種-電力(火力発電)過去問題

1997年(平成9年)問4

発電用ガスタービンの高効率化にあたっては、燃焼温度の( ア )及び空気圧縮機の圧力比の( イ )を図らなければならず、特に( ウ )技術の改善及び( エ )材料の開発が必要となる。

上記の記述中の空白の(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する記号又は字句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

 (ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)上昇増加冷却耐熱
(2)上昇減少冷却超電導
(3)上昇増加制御超電導
(4)低下減少冷却耐熱
(5)低下減少制御超電導

1997年(平成9年)問4 過去問解説

発電用ガスタービンの高効率化にあたっては、燃焼温度の( 上昇 )及び空気圧縮機の圧力比の( 増加 )を図らなければならず、特に( 冷却 )技術の改善及び( 耐熱 )材料の開発が必要となる。

答え (1)

1998年(平成10年)問4

オープンサイクルガスタービンの単純サイクルとして、正しいのは次のうちどれか。

  1. 圧縮→放熱→膨張→加熱→圧縮
  2. 圧縮→加熱→膨張→放熱→圧縮
  3. 圧縮→放熱→加熱→膨張→圧縮
  4. 圧縮→膨張→放熱→加熱→圧縮
  5. 圧縮→加熱→放熱→膨張→圧縮

1998年(平成10年)問4 過去問解説

ガスタービン発電の基本サイクルは、「圧縮→過熱→膨張→放熱」です。

答え (2)

2001年(平成13年)問2

コンバインドサイクル発電を同一出力の汽力発電と比較した記述として、誤っているのは次のうちどれか。

  1. コンバインドサイクル発電の方が熱効率が高い。
  2. コンバインドサイクル発電の方が温排水量が少ない。
  3. コンバインドサイクル発電の方が、最大出力が外気温度の影響を受けやすい。
  4. コンバインドサイクル発電の方が起動停止時間が短い。
  5. コンバインドサイクル発電の方が多様な燃料を使用できる。

2001年(平成13年)問2 過去問解説

  1. 正しい
  2. 正しい
  3. 正しい
  4. 正しい
  5. コンバインドサイクルのガスタービンの燃料は、灯油、LNG、LPG等に限られています。

答え (5)

2006年(平成18年)問2

排熱回収方式のコンバインドサイクル発電におけるガスタービンの燃焼用空気に関する流れとして、正しいのは次のうちどれか。

  1. 圧縮機→タービン→排熱回収タービン→燃焼器
  2. 圧縮機→燃焼器→タービン→排熱回収タービン
  3. 燃焼器タービン→圧縮機→排熱回収タービン
  4. 圧縮機→タービン→燃焼器→排熱回収タービン
  5. 燃焼器→圧縮機→排熱回収タービン→タービン

2006年(平成18年)問2 過去問解説

燃焼用空気は、圧縮して燃焼器で燃料と混合されます。

答え (2)

2007年(平成19年)問3

排熱回収形コンバインドサイクル発電方式と同一出力の汽力発電方式とを比較した次の記述のうち、誤っているのはどれか。

  1. コンバインドサイクル発電方式の方が、熱効率が高い。
  2. 汽力発電方式の方が、単位出力当たりの排ガス量が少ない。
  3. コンバインドサイクル発電方式の方が、単位出力当たりの復水器の冷却水量が多い。
  4. 汽力発電方式の方が大形所内補機が多く、所内率が大きい。
  5. コンバインドサイクル発電方式の方が、最大出力が外気温度の影響を受けやすい。

2007年(平成19年)問3 過去問解説

  1. 正しい
  2. 正しい
  3. コンバインドサイクル発電方式の方が復水器の冷却水量が少なくなります。
  4. 正しい
  5. 正しい

答え (3)

2010年(平成22年)問3

複数の発電機で構成されるコンバインドサイクル発電を、同一出力の単機汽力発電と比較した記述として、誤っているのは次のうちどれか。

  1. 熱効率が高い。
  2. 起動停止時間が長い。
  3. 部分負荷に対応するため、運転する発電機数を変えるので、熱効率の低下が少ない。
  4. 最大出力が外気温度の影響を受けやすい。
  5. 蒸気タービンの出力分担が少ないので、その分復水器の冷却水量が少なく、温排水量も少なくなる。

2010年(平成22年)問3 過去問解説

  1. 正しい
  2. 起動停止時間は短い
  3. 正しい
  4. 正しい
  5. 正しい

答え (2)

2014年(平成26年)問3

次の文章は、コンバインドサイクル発電の高効率化に関する記述である。
コンバインドサイクル発電の出力増大や熱効率向上を図るためにはガスタービンの高効率化が重要である。高効率化の方法には、ガスタービンの入口ガス温度を( ア )することや空気圧縮機の出口と入口の( イ )比を増加させることなどがある。このためには、燃焼器やタービン翼などに用いられる( ウ )材料の開発や部品の冷却技術の向上が重要であり、同時に( エ )の低減が必要となる。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)高く温度耐熱窒素酸化物
(2)高く圧力触媒窒素酸化物
(3)低く圧力耐熱ばいじん
(4)低く温度触媒ばいじん
(5)高く圧力耐熱窒素酸化物

2014年(平成26年)問3 過去問解説

コンバインドサイクル発電の出力増大や熱効率向上を図るためにはガスタービンの高効率化が重要である。高効率化の方法には、ガスタービンの入口ガス温度を( 高く )することや空気圧縮機の出口と入口の( 圧力 )比を増加させることなどがある。このためには、燃焼器やタービン翼などに用いられる( 耐熱 )材料の開発や部品の冷却技術の向上が重要であり、同時に( 窒素酸化物 )の低減が必要となる。

答え (5)

電力電験3種
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