第三種電気主任技術者(電験三種)試験に独学で合格できるよう、分野ごとに「考え方」や「解き方」の解説と過去問題をまとめています。このページで、電験三種の理論科目に出題されるp型半導体とn型半導体について、初心者の方でも解りやすく、基礎から勉強できます。また、電験三種の理論科目の試験で、実際に出題されたp型半導体とn型半導体の過去問題も解説しています。
半導体の基礎知識
銅や鉄のように電流を流しやすい物質を導体といいます。また、ゴムや硝子のように電流を流さない物質を絶縁体といいます。そして、この中間的な性質をもった物質を 「半導体」といいます。
普通の金属は温度が上昇すると電気抵抗が増加しますが、半導体は温度が上昇すると電気抵抗が減少する性質があります。尚、絶対零度下では電気伝導性を示しません。
真性半導体
半導体の基本となる材料には、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)などがあり、不純物を入れないようにきわめて高い純度に精製した半導体を「真性半導体」といいます。
シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)の原子は最外殻に4個の価電子をもっています。真性半導体はこれらの価電子が「共有結合」をして安定しています。
しかし、光や熱、電界などの外部からエネルギーが加わると、価電子の一部が原子核の拘束を離れて「自由電子」となり、移動した価電子の後には「正孔(ホール)」ができます。この自由電子とホールが電流を流す「キャリア」として働きます。
不純物半導体
真性半導体は、あまり電気を通しませんが、これにヒ素(As)やホウ素(B)等の物質を加えた「不純物半導体」は、電気を通しやすくなります。半導体素子(ダイオードやトランジスタ等)の材料には、主に不純物半導体が利用されています。
n型半導体
シリコン(Si)を用いた半導体に5個の価電子をもつヒ素(As)を少量加えると、シリコンの原子と結合するときに1個の電子が余ることになります。この余った電子が自由電子となり、電流を流すキャリアとして働きます。このように、5価の元素をごくわずか混ぜて作った不純物半導体を「n型半導体」といいます。
このとき不純物として入れたヒ素元素は「ドナー」といいます。ドナーになる5価の元素としては、ヒ素(As)のほか、りん(P)、アンチモン(Sb)などがあります。
電子が余っているということは相対的にマイナス、つまりネガティブ(Negative)だということでこれをn型半導体といいます。
p型半導体
シリコン(Si)を用いた半導体に3個の価電子をもつホウ素(B)を少量加えると、共有結合において不足する位置に正孔ができます。正孔はキャリアとして働くため、半導体はより電流を流しやすくなります。このように、3価の元素をごくわずか混ぜて作った不純物半導体を「p型半導体」といいます。
このとき不純物として入れたホウ素元素等は「アクセプタ」といいます。アクセプタになる物質としては、ホウ素(B)のほか、インジウム(In)、ガリウム(Ga)などがあります。
電子はマイナスの電荷を持っていますから、電子が不足しているということは相対的にプラス、つまりポジティブ(Positive)だということでこれをp型半導体といいます。
半導体に流れる電流
半導体に流れる電流は、電子や正孔の移動で生じます。これらキャリアが半導体中を移動するのは、電気的な力(電界)とキャリアの濃度勾配の二つの要因によって、移動します。
キャリアが電界による力を受けて流れる電流を「ドリフト電流」といい、キャリアの濃度を均一にしようとする移動で流れる電流を「拡散電流」といいます。
p型半導体とn型半導体の接合
n型半導体の多数キャリアは自由電子で、p型半導体の多数キャリアは正孔です。n型半導体とp型半導体を接合した場合、接合面付近にある双方の多数キャリアは、じわじわと互いの領域に移動して結合し消滅します。この現象を「拡散」といいます。拡散現象が起こると、接合面付近には自由電子も正孔もない領域ができます。この領域を「空乏層」といいます。
また、接合面付近のp型領域では電子が流入してくるので負の電荷が、n型領域では正孔が流入してくるので正の電荷が現れます。この電荷(電界)は、キャリアの移動を妨げる方向に働きます。
電験三種-理論の過去問解説:p型半導体とn型半導体
(財)電気技術者試験センターが作成した、第三種電気主任技術者試験の理論科目で出題された問題です。
1998年(平成10年)問1【電験理論の過去問題】
きわめて高い純度に精製されていたけい素(Si)やゲルマニウム(Ge)などのような真性半導体に、微量のひ素(As)又はアンチモン(Sb)などの( ア )価の元素を不純物として加えたものを( イ )形半導体といい、このとき加えた不純物を( ウ )という。
上記の記述中の空白の箇所(ア),(イ),(ウ)に記入する数値又は字句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 5 | n | ドナー |
(2) | 3 | p | アクセプタ |
(3) | 3 | n | ドナー |
(4) | 5 | n | アクセプタ |
(5) | 3 | p | ドナー |
きわめて高い純度に精製されていたけい素(Si)やゲルマニウム(Ge)などのような真性半導体に、微量のひ素(As)又はアンチモン(Sb)などの( 5 )価の元素を不純物として加えたものを( n )形半導体といい、このとき加えた不純物を( ドナー )という。
答え (1)
2002年(平成14年)問10【電験理論の過去問題】
次の文章は、p形半導体とn形半導体の接合面におけるキャリアの働きについて述べたものである。
- 図1のように、p形半導体とn形半導体が接合する接合面付近では、拡散により、p形半導体内のキャリア(△印)はn形半導体の領域内に移動する。また、n形半導体内のキャリア(□印)はp形半導体の領域内に移動する。
- 接合面付近では、図2のように拡散したそれぞれのキャリアが互いに結合して消滅し、 ( ア ) と呼ばれるキャリアのない領域が生じる。
- その結果、( ア )内において、p形半導体内の接合面付近に( イ )が、n形半導体内の接合面付近に( ウ )が現われる。
- それより、接合面付近にはキャリアの移動を妨げる( エ )が生じる。 その方向は、図2中の矢印( オ )の方向である。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
(1) | 空乏層 | 負の電荷 | 正の電荷 | 電界 | A |
(2) | 反転層 | 正の電荷 | 負の電荷 | 磁界 | A |
(3) | 空乏層 | 負の電荷 | 正の電荷 | 磁界 | C |
(4) | 反転層 | 正の電荷 | 負の電荷 | 電界 | B |
(5) | 空乏層 | 負の電荷 | 正の電荷 | 電界 | B |
- 図1のように、p形半導体とn形半導体が接合する接合面付近では、拡散により、p形半導体内のキャリア(△印)はn形半導体の領域内に移動する。また、n形半導体内のキャリア(□印)はp形半導体の領域内に移動する。
- 接合面付近では、図2のように拡散したそれぞれのキャリアが互いに結合して消滅し、 ( 空乏層 ) と呼ばれるキャリアのない領域が生じる。
- その結果、( 空乏層 )内において、p形半導体内の接合面付近に( 負の電荷 )が、n形半導体内の接合面付近に( 正の電荷 )が現われる。
- それより、接合面付近にはキャリアの移動を妨げる( 電界 )が生じる。 その方向は、図2中の矢印( B )の方向である。
答え (5)
2006年(平成18年)問11【電験理論の過去問題】
極めて高い純度に精錬されたけい素(Si)の真性半導体に、微量のほう素(B)又はインジウム(In)などの( ア )価の元素を不純物として加えたものを( イ )形半導体という。このとき加えた不純物を( ウ )という。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句又は数値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 5 | n | ドナー |
(2) | 3 | p | アクセプター |
(3) | 3 | n | ドナー |
(4) | 5 | n | アクセプター |
(5) | 3 | p | ドナー |
極めて高い純度に精錬されたけい素(Si)の真性半導体に、微量のほう素(B)又はインジウム(In)などの( 3 )価の元素を不純物として加えたものを( p )形半導体という。このとき加えた不純物を( アクセプター )という。
答え (2)
2008年(平成20年)問11【電験理論の過去問題】
pn接合の半導体を使用した太陽電池は、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに直接変換するものである。半導体のpn接合部分に光が当たると、光のエネルギーによって新たに( ア )と( イ )が生成され、( ア )はp形領域に、( イ )はn形領域に移動する。その結果、p形領域とn形領域の間に( ウ )が発生する。この( ウ )は光を当てている間持続し、外部電気回路を接続すれば光エネルギーを電気エネルギーとして取り出すことができる。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正Lいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 電子 | 正孔 | 起磁力 |
(2) | 正孔 | 電子 | 起電力 |
(3) | 電子 | 正孔 | 空間電荷層 |
(4) | 正孔 | 電子 | 起磁力 |
(5) | 電子 | 正孔 | 起電力 |
太陽電池は、シリコンなどの半導体で作られ pn 接合部分に光(光子)が当たると、衝突した光子のエネルギーによって電子と正孔が発生し、これらの電荷を帯びた粒子(荷電粒子)が移動する仕組みにより、電気が流れます。
pn接合の半導体を使用した太陽電池は、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに直接変換するものである。半導体のpn接合部分に光が当たると、光のエネルギーによって新たに( 正孔 )と( 電子 )が生成され、( 正孔 )はp形領域に、( 電子 )はn形領域に移動する。その結果、p形領域とn形領域の間に( 起電力 )が発生する。この( 起電力 )は光を当てている間持続し、外部電気回路を接続すれば光エネルギーを電気エネルギーとして取り出すことができる。
答え (2)
2009年(平成21年)問11【電験理論の過去問題】
半導体に関する記述として,誤っているのは次のうちどれか。
- シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)の真性半導体においては、キャリヤの電子と正孔の数は同じである。
- 真性半導体に微量のⅢ族又はV族の元素を不純物として加えた半導体を不純物半導体といい、電気伝導度が真性半導体に比べて大きくなる。
- シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)の真性半導体にV族の元素を不純物として微量だけ加えたものをp形半導体という。
- n形半導体の少数キャリヤは正孔である。
- 半導体の電気伝導度は温度が下がると小さくなる。
シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)の真性半導体にV族の元素を不純物として微量だけ加えたものをn形半導体といいます。したがって(3)の記述が誤りです。
答え (3)
2010年(平成22年)問11【電験理論の過去問題】
次の文章は、図1及び図2に示す原理図を用いてホール素子の動作原理について述べたものである。
図1に示すように、p形半導体に直流電流 $I$[A]を流し、半導体の表面に対して垂直に下から上向きに磁束密度 $B$[T]の平等磁界を半導体にかけると、半導体内の正孔は進路を曲げられ、電極①には( ア )電荷、電極②には( イ )電荷が分布し、半導体の内部に電界が生じる。また、図2のn形半導体の場合は、電界の方向はp型半導体の方向と( ウ )である。この電界により、電極①ー②間にホール電圧 $V_H=R_H×$( エ )[V]が発生する。
ただし、$d$[m]は半導体の厚さを示し、$R_H$ は比例定数[㎥/C]である。
上記の記述中の空白個所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句又は式として、正しいものを組み合わせたのはどれか。
ホール素子とは、p型または n 型の半導体に直流電流を流し、電流に対して垂直方向に磁界をかけると、電流と磁界の両方に直交する方向に起電力が現れる素子です。この現象はホール効果といい、運動する電子などのキャリアが磁界からローレンツ力を受けて導体の片側に偏ることによって起こります。尚、ホール素子は、磁界の検出などに用いられています。
答え (5)
2013年(平成25年)問11【電験理論の過去問題】
次の文章は、不純物半導体に関する記述である。
極めて高い純度に精製されたケイ素(Si)の真性半導体に、微量のリン(P)、ヒ素(As)などの( ア )価の元素を不純物として加えたものを( イ )形半導体といい、このとき加えた不純物を( ウ )という。
ただし、Si,P,Asの原子番号は、それぞれ14,15,33である。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 5 | p | アクセプタ |
(2) | 3 | n | ドナー |
(3) | 3 | p | アクセプタ |
(4) | 5 | n | アクセプタ |
(5) | 5 | n | ドナー |
極めて高い純度に精製されたケイ素(Si)の真性半導体に、微量のリン(P)、ヒ素(As)などの( 5 )価の元素を不純物として加えたものを( n )形半導体といい、このとき加えた不純物を( ドナー )という。
ただし、Si,P,Asの原子番号は、それぞれ14,15,33である。
答え (5)
2016年(平成28年)問11【電験理論の過去問題】
半導体に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 極めて高い純度に精製されたシリコン(Si)の真性半導体に、価電子の数が3個の原子、例えばホウ素(B)を加えるとp形半導体になる。
- 真性半導体に外部から熱を与えると、その抵抗率は温度の上昇とともに増加する。
- n形半導体のキャリアは正孔より自由電子の方が多い。
- 不純物半導体の導電率は金属よりも小さいが、真性半導体よりも大きい。
- 真性半導体に外部から熱や光などのエネルギーを加えると電流が流れ、その向きは正孔の移動する向きと同じである。
導体は,熱を与えると一般的に抵抗率が増加します。しかし、半導体は反対に減少します。 つまり、温度の上昇に伴って電気伝導性が高くなります。したがって(2)の記述が誤りです。
答え (2)
2017年(平成29年)問11【電験理論の過去問題】
半導体の pn 接合の性質によって生じる現象若しくは効果、又はそれを利用したものとして、全て正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 表皮効果、ホール効果、整流作用
- 整流作用、太陽電池、発光ダイオード
- ホール効果、太陽電池、超伝導現象
- 整流作用、発光ダイオード、圧電効果
- 超伝導現象、圧電効果、表皮効果
表皮効果は、導体に交流電流を流したとき、導体の中心部より外側の方(表皮)に電流が多く流れる(電流密度が高い)現象です。
ホール効果は、電流と直角方向に磁界を加えたとき、これらの直角方向に起電力を生じる現象です。
整流作用は、ダイオードに印加する電圧の正負の向きが変わると電流が流れたり流れなくなったりする現象です。pn 接合の性質によって生じます。
太陽電池は、p形とn形を接合した単結晶シリコン半導体に光を照射した場合、この光がシリコンに吸収されて正の電荷と負の電荷が発生します。正の電荷はp形シリコンに、負の電荷はn形シリコンに分離され、p層は正に帯電しn層は負に帯電します。このpn層の外部に負荷を接続すると電流が流れるので電池と同じ働きします。
発光ダイオードは、半導体を用いたpn接合で作られています。発光はこの中で電子の持つエネルギーを光に変換されています。
超伝導現象は、ある特定の物質を混ぜ合わせて作った材料を冷やすと、電気抵抗がなくなる現象です。
圧電効果は、水晶や特定の種類のセラミックなどに圧力を加えることで生じるひずみに応じて、電圧が発生する現象です。
答え(2)
電験三種の理論科目に出題される「電子回路」のページ
1.p型半導体とn型半導体
2.ダイオードとトランジスタの特性
3.トランジスタ増幅回路
4.トランジスタのバイアス回路
5.トランジスタの等価回路
6.FET増幅回路
7.多段・負帰還・電力増幅回路
8.オペアンプ(反転・非反転増幅回路)
9.発振回路と変調回路の原理
10.波形整形回路(クリッパ回路とリミッタ回路)