増幅回路(多段・負帰還・電力)【電験3種-理論】

理論

電験3種の理論で出題されるトランジスタを使った多段・負帰還・電力などの増幅回路について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験3種の試験で、実際に出題された過去問題も解説しています。

多段増幅回路

必要な増幅度を得るために多段増幅回路を構成する場合、増幅回路間に置く回路を結合回路といいます。多段増幅回路は、結合回路の方式によっていくつかの種類があります。

増幅回路間と結合回路
増幅回路間と結合回路

RC結合増幅回路

コンデンサーを通して、前段増幅回路の出力を次段へ供給する回路をRC結合増幅回路といいます。前段と次段の増幅回路はコンデンサーによって直流的に切り離すことができます。そのため、バイアス回路を設計しやすく、周波数帯域が比較的広くとれるのが特徴です。

RC結合増幅回路
RC結合増幅回路

トランス結合増幅回路

トランス(変成器)を用いて、前段増幅回路の出力を次段へ供給する回路をトランス結合増幅回路といいます。トランス結合増幅回路では、トランスのインピーダンスを前段や次段の負荷インピーダンスと整合させることで電力損失の少ない結合が可能となります。したがって、スピーカなどを接続した電力増幅回路に使用されることが多いです。

トランス結合増幅回路
トランス結合増幅回路

負帰還増幅回路

出力信号の一部を入力側に戻す場合、帰還電圧が元の入力電圧と同相のものを「正帰還]といい、逆相のものを「負帰還」といいます。正帰還では「発振」といった現象を引き起こしますが、負帰還では増幅度の低下が生じるデメリットと引き替えに、ひずみや雑音の低減、周波数特性の改善といったメリットがあります。

負帰還増幅回路
負帰還増幅回路

電力増幅回路

小信号を増幅する回路では、電流または電圧の増幅を目的としているため、スピーカーなどを十分の音量で鳴らすことができません。スピーカーを十分な音量で鳴らすためには電力増幅回路が必要になります。

電力増幅回路とは?

電力増幅回路では、大きな出力を得るためにトランジスタを最大定格内の広い領域で動作させています。次の図は、小信号増幅と電力増幅の特性例を示しています。

電力増幅回路では、トランジスタの電圧や電流の変化量が大きいので、等価回路による線形の解析は困難となるため、特性曲線を用いた解析が一般的です。

また、トランジスタに大きなコレクタ電流 $I_C$ を流すためには、$I_C$ とコレクターエミッタ間電圧 $V_{CE}$ の積で表される「コレクタ損失 $P_C$ 」によるトランジスタ内部の発熱問題が無視できなくなります。

トランジスタを破壊せずに、回路を動作させるためにはコレクタ電流 $I_C$ とコレクターエミッタ間電圧 $V_{CE}$ およびコレクタ損失 $P_C$ の最大定格内で使用しなければなりません。

ここで、トランジスタが耐えることのできる許容コレクタ損失は、周囲温度や放熱板(ヒートシンク)の有無によって変化するので注意が必要です。

低周波用の電力増幅回路では、トランジスタが常に動作する「A級電力増幅回路」と複数のトランジスタが交互に動作する「B級プッシュプル増幅回路」がよく使われています。

トランジスタなどの増幅素子は、入力信号がある一定の直流電圧または直流電流の範囲にあるときだけ、増幅結果が得られるという特性を持っています。もしも、その範囲を外れて使用すると出力信号は歪んでしまいます。そこで、入力信号に対して一定の直流電圧または直流電流(バイアス値)を加えてトランジスタの適切な動作範囲に収まるようにする必要があります。そのため、アナログ増幅回路ではバイアスの量によりA級増幅回路、B級増幅回路、C級増幅回路に分類されています。

  • A級増幅回路は、$V_{BE}$-$I_B$ 特性の直線部分に動作点を定める増幅回路です。波形のひずみが少なく、小信号増幅に適しています。
  • B級増幅回路は、$V_{BE}$-$I_B$ の0部分に動作点を定める増幅回路です。入力の半周期のみ増幅します。
  • C級増幅回路は、$V_{BE}$-$I_B$ の$I_B$ がマイナス部分に動作点を定める増幅回路です。波形の一部しか増幅しないので、波形のひずみは大きくなります。

A級電力増幅回路

A級電力増幅回路では、回路の出力に接続するスピーカーのインピーダンス $R_S$ は、数Ω~数十Ωですので、出力トランスを用いてインピーダンス整合をとるのが一般的です。

出力トランスの巻線比を n:1 とすると、入力側から見たインピーダンスは次の式のようになります。

$R_L=n^2R_S$

つまり、トランスの巻線比 n を選択することよって任意のインピーダンス整合を取ることができます。次の図は、A級電力増幅回路の動作特性を示します。

動作点Pは、負荷線のほぼ中心に設定します。直流入力と交流出力は次の式で表すことができます。

$直流入力=V_{CC}×I_C$

$交流出力=\displaystyle\frac{V_{cm}}{\sqrt{2}}×\displaystyle\frac{I_{cm}}{\sqrt{2}}=\displaystyle\frac{V_{cm}I_{cm}}{2}$

トランジスタの飽和特性のために生じる電圧 $V_{C-min}$ は、非常に小さいので0とみなすことができますので、$V_{cm}≒V_{CC}$、$I_{cm}≒I_{CC}$ が成立しますので、電力効率 $η$ は50%になります。しかし、次実際には、トランジスタの内部抵抗やトランスの巻線抵抗などの損失が発生するので、電力効率 $η$ は50%以下になります。

B級プッシュプル電力増幅回路

次の図はB級電力増幅回路の動作特性を示しています。動作点Pをバイアスが0になる位置に設定します。したがって、入力信号の半周期のみでコレクタ電流が流れるために、A級電力増幅回路と比較すると、平均電流が小さくなります。

この回路では、出力信号も半波となりますで、特性の揃った2個のトランジスタを対象に配置し、出力信号を全波となるように工夫したものを、「B級プッシュプル電力増幅回路」といいます。

B級プッシュプル電力増幅回路では、入力トランス $T_1$ によって、入力信号を互いに逆相で振幅の等しい信号に分離し、トランジスタ $Tr_1$ と $Tr_2$ に入力します。各トランジスタのベースには入力信号が半周期ずつ流れ、コレクタ電流は互いに逆向きになります。出力トランス $T_2$ で合成された出力信号は、全波の正弦波になります。このようにトランスを用いたプッシュプル増幅回路を「DFFP方式」といいます。

B級プッシュプル電力増幅回路では、A級電力増幅回路に比べて電力効率がよく、比較的小型のトランジスタを用いても大きな出力を得ることができます。ただし2個のトランジスタの特性が揃っていないとひずみが発生します。

電験3種-理論(電子回路)過去問題

2003年(平成15年)問12

図1は、変成器を用いたB級プッシュプル(push-pull)電力増幅回路の原理図である。図1中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまめる図記号を図2の図記号の記号a~jの中から選ぶとき、正しいものを組み合わせは次のうちどれか。

 (ア)(イ)(ウ)
(1)fdi
(2)gah
(3)ebj
(4)hci
(5)fdh

2003年(平成15年)問12 過去問解説

B級プッシュプル(push-pull)電力増幅回路では、図の上のトランジスタで正の信号波形を受け持たせて、下のトランジスタで負の信号波形受け持たせています。それぞれのトランジスタのベースには正の波形として入力することになります。

また、全入力信号波を正の領域にかさ上げするために(イ)の箇所にバイアス用の定電圧用の電池が必要になります。また、この電池の方向は両トランジスタからの出力と同じ方向でなければなりません。 (ウ)は、両トランジスタからの信号を合成するための変成器です。

答え(1)

2004年(平成16年)問12

次の文章は、それぞれの増幅器について述べたものである。

  1. ( ア )増幅器は、特性の等しい二つの増幅器を対称的に接続することで、両器の入力の差に比例した出力を得るものである。
  2. ( イ )増幅器は、スピーカのような負荷を動作させるのに利用される。
  3. 出力電圧の一部を入力側に戻し、逆位相で加えて増幅するものを( ウ )増幅器という。
  4. ( エ )増幅器は、アンテナで送受信する信号を増幅するのに利用される。

上記の記述の空欄箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しいものを組合せたのは次のうちどれか。

 (ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)負帰還高周波電 力差 動
(2)差 動負帰還電 力高周波
(3)差 動高周波負帰還電 力
(4)高周波電 力差 動負帰還
(5)差 動電 力負帰還高周波

2004年(平成16年)問12 過去問解説

  1. 入力の差とありますので、「差動増幅器」
  2. スピーカとありますので、「電力増幅器」
  3. 逆位相とありますので、「負帰還増幅器」
  4. アンテナとありますので、「高周波増幅器」

答え(5)

2006年(平成18年)問13

図は、増幅回路の出力の一部を帰還回路を通して増幅回路の入力に戻している回路を示す。この回路は次の1、2で示す位相と利得の条件を同時に満たすとき発振する。
1、増幅回路の入力電圧V1と帰還回路の出力電圧Vfが( ア )である。
2、増幅回路の増幅度をA、帰還回路の帰還率をβで示すとき、( イ )である。
このような回路は( ウ )回路ともいい、電源を入れることにより上記1、2の条件を同時に満たす雑音等の信号成分が循環して発振する。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる語句または式として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

 ( ア )( イ )( ウ )
(1)同 相Aβ≧1正帰還
(2)逆 相Aβ≦1負帰還
(3)同 相Aβ=1負帰還
(4)逆 相Aβ≧1正帰還
(5)同 相Aβ≦1正帰還

2006年(平成18年)問13 過去問解説

 「信号成分が循環し発振する」とあるので、「正帰還」で考えることができます。

1、増幅回路の入力電圧V1と帰還回路の出力電圧Vfが( 同相 )である。
2、増幅回路の増幅度をA、帰還回路の帰還率をβで示すとき、( Aβ≧1 )である。
このような回路は( 正帰還 )回路ともいい、電源を入れることにより上記1、2の条件を同時に満たす雑音等の信号成分が循環して発振する。

答え(1)

2007年(平成19年)問18

図1のように、トランジスタを用いた変成器結合電力増幅回路の基本回路がある。次の(a)及び(b)に答えよ。
ただし、$I_B$ [μA],$I_C$ [mA]は、ベースとコレクタの直流電流を示し、$i_b$ [μA],$i_c$ [mA]は、それぞれの信号分を示す。また、$V_{BE}$ [V]はベースとエミッタ間の直流電圧を示し、$V_{CE}$ はコレクタとエミッタ間の直流電圧を示す。$V_{BB}$ [V]はバイアス電源の直流電圧、$V_{CC}$ [V]は直流電源電圧、$v_i$ [V]は信号電圧を示す。また、$R_L$ [Ω]は負荷抵抗 $R_S$ [Ω]を変成器の一次側からみた場合の等価負荷抵抗を示す。

(a)図1のトランジスタの $V_{BE}$ー$I_B$ 特性を図2に示す。図2中の①、②及び③で示す点はトランジスタの動作点であり、これらに関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。

(1)出力波形のひずみが最も大きいのは、①である。
(2)プッシュプル電力増幅回路に使われるのは、通常②である。
(3)電源効率が最も良いのは、③である。
(4)①での動作は、③の動作よりトランジスタ回路の発熱が少ない。
(5)出力波形のひずみが最も小さいのは、③である。

(b)図1の基本回路がA級電力増幅器として動作している場合のトランジスタの $V_{CE}$ー$I_C$ 特性例を図3に示す。なお、太線は交流負荷線及び直流負荷線を、点Pはトランジスタの最適な動作点を示す。
この場合、負荷抵抗 $R_S$ [Ω]に供給される最大出力電力 $P_{om}$ [mW]の値と変成器の巻数比 $n$ の値として、最も近いものを組み合わせたのは次のうちどれか。
ただし、負荷抵抗 $R_S=8$ [Ω]、電源電圧 $V_{CC}=6$ [V]とする。また、変成器の巻数抵抗及びトランジスタの遮断領域や飽和領域による特性の誤差は無視できるものとする。

2007年(平成19年)問18 過去問解説

(a)①がC級増幅器、②がB級増幅器、③がA級増幅器です。

(1)出力波形のひずみが最も大きいのは、①(C級増幅器)である。正しい。
(2)プッシュプル電力増幅回路に使われるのは、通常②(B級増幅器)である。正しい。
(3)電源効率が最も良いのは、③(A級増幅器)である。誤り。電源効率が最も良いのは、C級増幅器です。
(4)①(C級増幅器)での動作は、③(A級増幅器)の動作よりトランジスタ回路の発熱が少ない。正しい。
(5)出力波形のひずみが最も小さいのは、③(A級増幅器)である。正しい。

したがって、答えは(3)となります。

(b)負荷抵抗 $R_S$ [Ω]に供給される最大出力電力 $P_{om}$ [mW]の値は、直流負荷線のP点より $I_{CP}=7.5$ [mA]、$V_{CC}=6$ [V]のときですので、

$ P_{om}=\displaystyle\frac{V_{CC}}{\sqrt{2}}×\displaystyle\frac{I_{CP}}{\sqrt{2}}=\displaystyle\frac{7.5×6}{2}=23$ [mW]

出力トランスの巻線比を n:1 とすると、入力側から見たインピーダンスは、

$R_L=n^2R_S$

$\displaystyle\frac{6}{7.5×10^{-3}}=n^2×8$

$n^2=\displaystyle\frac{800}{8}=100$

$n=10$

答え(a)-(3)、(b)-(1)

2013年(平成25年)問13

バイポーラトランジスタを用いた交流小信号増幅回路に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)エミッタ接地増幅回路における電流帰還バイアス方式は、エミッタと接地との間に抵抗を挿入するので、自己バイアス方式に比べて温度変化に対する動作点の安定性がよい。
(2)エミッタ接地増幅回路では、出力交流電圧の位相は入力交流電圧の位相に対して逆位相となる。
(3)コレクタ接地増幅回路は、電圧増幅度がほぼ1で、入力インピーダンスが大きく、出力インピーダンスが小さい。エミッタホロワ増幅回路とも呼ばれる。
(4)ベース接地増幅回路は、電流増幅度がほぼ1である。
(5)CR結合増幅回路では、周波数の低い領域と高い領域とで信号増幅度が低下する。中域からの増幅度低下が6[dB]以内となる周波数領域をその回路の帯域幅という。

2013年(平成25年)問13 過去問解説

(5)「CR結合増幅回路では、周波数の低い領域と高い領域とで信号増幅度が低下する。中域からの増幅度低下が6[dB]以内となる周波数領域をその回路の帯域幅という。」の記述で6[dB]以内ではなく、3[dB]以内です。

答え(5)

2015年(平成27年)問13

バイポーラトランジスタを用いた電力増幅回路に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1)コレクタ損失とは、コレクタ電流とコレクタ・ベース間電圧との積である。
(2)コレクタ損失が大きいと、発熱のためトランジスタが破壊されることがある。
(3)A級電力増幅回路の電源効率は、50%以下である。
(4)B級電力増幅回路では、無信号時にコレクタ電流が流れず、電力の無駄を少なくすることができる。
(5)C級電力増幅回路は、高周波の電力増幅に使用される。

2015年(平成27年)問13 過去問解説

(1)の記述ですが、コレクタ損失とは、コレクタ電流とコレクタ・エミッタ間電圧との積です。したがって、(1)の記述が誤りです。

答え(1)

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