絶縁劣化を検出する方法【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「絶縁劣化を検出する方法」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気計測の基礎知識を解説しています。

絶縁抵抗試験と絶縁耐力試験

物質は電気を良く通す導体,電気をほとんど通さない絶縁物および中間的な半導体など大まかには以下のように分類できます。

  • 銅,銀,鉄などの金属9炭素の導体
  • 空気,磁気,ゴム,油,紙などの絶縁物
  • セレン,シリコン,ゲルマニウム,亜酸化銅などの中間的なもの。

絶縁物は電気を全く通さないのではなく,絶縁物の抵抗値が導体に比較して非常に大きいということで電圧を加えると微弱な漏れ電流が流れます。良好な絶縁物も周囲の環境変化,温度,湿度,表面のよごれなどで劣化現象をおこします。絶縁物は次のようなところに使用されています。

  • 電線,ケーブル類の被覆及び絶縁油
  • 電動機の固定子,回転子等の巻線
  • 変圧器,変成器,変流器等に使用する巻線
  • しゃ断器,マグネットスイッチに使用する巻線,ノーヒューズスイッチの箱など

これらの絶縁劣化を検査する方法として,絶縁耐力試験,絶縁抵抗試験などの方法があり,前者は電気設備技術基準で定められており,電圧500V以上7000V以下の機器については使用電圧の1.5倍の電圧で試験してこれに合格することになっています。

既存の機器については試験を実施することにより絶縁物を破壊する恐れもあり絶縁抵抗計により劣化の状況をみることが望ましいです。電力用変圧器,回転機の最低必要な絶縁抵抗値は一般に,つぎにより算出されます。

低圧回路の開閉器または,しゃ断器ごとの絶縁抵抗値は次表のとおりです。絶縁劣化の程度を検査しても過負荷による電流増加,周囲温度の上昇,ゴミあるいは振動などにより急に悪くなることもあり,外部の温度を重視し,心配されるものについては定期的に絶縁抵抗を測定し,記録による変化をよくみることが大切です。

次表は,参考までに高圧回路ならびに機器を使用するうえに,絶縁劣化による問題がおこらないかどうかを電気設備の使用前に実施する絶縁耐力試験の表です。電気を送電する前には必らず絶縁抵抗測定を行い測定値の良好なことを確認して絶縁耐力試験を実施します。

注(1)絶縁耐力試験電圧の基準となる ” 最大使用電圧”とは,機器の接続される配電線路の変圧器の送り出し側の最高タップ電圧(変圧器の現在使用しているタップのことではない)をいい,公称配電電圧6.6 kV系統では,6.6kVをいいます。
注 (2)試験電圧が500V未満とは,例えば,最大使用電圧が220Vの場合は, 220× 1.5=330Vとなるので,試験電圧は500Vにするということです。

絶縁劣化の検査

日常の点検について

  1. 変電室内のケーブル,電灯動力変圧器,コンデンサ,主要スイッチ(低圧配線用しゃ断器,マグネットスイッチ)主要幹線の温度上昇を温度計あるいは外観検査をします。
  2. 分電盤内のスイッチ,分岐配線など(ビニール電線)の温度上昇の検査をします。
  3. 一般動力(給排水,空調)手元スイッチ,分岐配線の温度上昇検査,これらはいづれも外観検査です。

定期点検について

定期点検においては上記(1)~ (3)の各種機器ならびに電気配線を電気設備技術基準にしたがって毎年1回絶縁抵抗計(1000Vあるいは500Vメガー)で測定し,定められた値以上になっているかを調べます。

また,変圧器,コンデンサ,しゃ断器など絶縁油を使用しているものについては,JIS規格に従って, 絶縁耐力試験で破かい試験を行い酸化度を測定し,問題があれば油ろ過や,取り替えで対応します。

前記のとおり絶縁油が劣化する一番の要因は温度上昇ですが,分析してみると,

  • 空調量不足からくるもの
  • ケーブルに安全電流以上のものを流す過負荷
  • 外部からの湿気やゴミ,ホコリが機器の内部に入りこむ

などがあげられます。また,絶縁物を損傷させる要因の一つに電動機の芯出し不良,基礎不良があるが,早期発見のためには,絶縁測定試験をつみ重ねるとか,手で触れて正常な温度になっているかの不断のメンテナンスが必要です。以下に劣化を早期に発見する手段として若干の例を掲げてみます。

3.ケープルのメガによる測定例

メガによる測定方法は,原理的には簡易な直流漏れ電流を測る方法であり,メガには次表のように各種の定格電圧のものがありますが,ケーブルの絶縁測定としては,1000V級のメガを使用することが望ましいです。

測定方法は,ケーブル両端の付属機器を切り放し, ケーブル単独として1線と他の2線ならびにしゃへい間を3線測定します。この結果,

  1. 新設時における測定値に比べて著しく絶縁抵抗が低下している場合
  2. 3線の測定値が著しく不均衡な場合

などの場合,さらに各種の劣化測定を行い,個別管理の強化を必要とします。

次に耐圧試験装置と被絶縁耐力試験を受ける電動機との配線接続例を示します。巻線とケースとの間に試験電圧をかけて検査を行い絶縁物に損傷のないことを確認して電気を送り試運転を行います。

劣化を防ぐ方法

劣化を防ぐためにはつぎの点に注意する必要があります。

  1. 先にものべたとおり,電気機器,配線に規定された安全電流以上流して過負荷にしない
  2. 接触不良,磨耗,振動などによる加熱状況をつくらない
  3. 発生熱源にまけない空調運転を行い温度上昇を防ぐ
  4. 日常ならびに定期点検で問題点の早期発見を行う

日常の保守を良くすることは劣化を防ぐことになり機器ならびに配線の耐用年数をのばすことにつながることになります。

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