短絡と保護装置【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「短絡と保護装置」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

負荷の容量と電流の大きさ

負荷の容量は電圧と電流の積に比例したkWまたはkVAで表わすのが普通です。一方この負荷に供給する電源には100Vでわれわれの家庭へ配電される電灯用電源および200Vで、比較的小規模の工場などに供給される動力用電源があり、さらに大きな電力を消費する需要家へは6600Vの高圧または特別高圧で供給され、この電圧を適宜使いやすい電圧に変成するのが一般的な考え方です。

ここで100Vの電圧で使われる負荷の大きさを調べてみると、せいぜい数kWが限度で、これ以上になると200Vまたは400V(この電圧は電力会社から直接供給される電圧ではないが)の三相電源を使用します。しかし、この電圧で供給される負荷の容量も数十kWが限度で、数百kV以上になると高圧または特別高圧を受電して、高圧または特別高圧から直接その負荷に供給する方法がとられます。

第1図は負荷の大きさによる電圧の使い分けを示す一例です。このような方式をとる主な理由は電流の大きさを制限するためで、電圧の低い電源から大容量の電力を供給することは技術的にも経済的にも困難となるからです。

第1図

正常な電流と異常な電流

負荷電流は、その電路の電圧と負荷の容量(kWまたはkVA)によって決まってきますが、それが単相では、

$電流=\displaystyle\frac{kVA}{V}×10^3=\displaystyle\frac{kW}{Vcosθ}×10^3$〔A〕

であり、三相負荷であれば、

$電流=\displaystyle\frac{kVA}{\sqrt{3}V}×10^3=\displaystyle\frac{kW}{\sqrt{3}Vcosθ}×10^3$〔A〕

となります。電路には負荷状態によってこれに近い電流が常時流れているわけで、これ以上の電流が流れる場合は異常であると考えます。もっとも過電流に対しては過電流(過負荷)保護装置が動作して電路はしゃ断されるようになっています。短絡は正常な電流および過負荷による過電流をはるかに超えた過電流であって次にこれについて説明します。

短絡とは

負荷には前節で説明したように定格電圧と定格電流があるので、これによって負荷には見かけ上のインピーダンスがあるわけです(見かけ上といったのは電動機などの回転機は負荷のかかり方によって見かけ上のインピーダンスが異なってくるからです)。

短絡とは、この見かけ上のインピーダンスが零となった状態のことで、負荷として電源の電圧を吸収することができなくなった状態のことです。したがって、この場合に流れる電流(短絡電流)を制限するものは線路の電線のインピーダンスと電源のインピーダンスだけであるので大きな短絡電流が流れます。

短絡に対する保護

電路に短絡が生ずると正常なときに流れる電流の数倍から十数倍の電流が流れるので、この電流が流れ続けると、短絡故障点および短絡電流の流れる電線並びにこの電流を供給する電源機器は焼損してしまうので、短絡電流は瞬時に動作して電路をしゃ断する装置が必要です。また、このしゃ断装置は、このしゃ断器を流れる短絡電流とこの回路の使用電圧によって定まる短絡容量と同等以上のしゃ断容量のものが必要となります。

第2図は負荷の接続端子で短絡した場合のようすを示したもので、短絡に対する保護には、その回路の短絡電流をしゃ断する能力のある(つまり、しゃ断容量のある)しゃ断装置が必要です。

第2図

短絡に対する保護装置の選択

ビルや工場においては、施設する規模が大きくなって、電源の設備容量も増大していますが、それに伴って短絡したときに流れる電流は非常に大きな値となります。

しかし、「短絡」という事故を絶無にすることはできないので、これに対する保護対策は講じておかなければなりません。自家用受電設備の受電点に設けるしゃ断器の定格電流は、その需要家の設備容量によって決まってきますが、短絡したときに流れる電流はその需要家ではわかりません。

その理由は受電点の短絡電流は電源側のインピーダンスによって決まってくるからです。したがって受電点に設置するしゃ断器のしゃ断容量は電力会社から聞いたインピーダンスによって決めることになるわけです。こうして受電点のしゃ断容量がわかると、このしゃ断容量を満足したしゃ断器を選定することができます。

しゃ断器を何にするかは技術的なことと経済的なことの両面から決められることが多く、500 kW未満の小容量の高圧需要家では電カヒューズを使用している例が多いです。

次に低圧回路の短絡保護装置には気中しゃ断器、配線用しゃ断器またはヒューズが用いられます。これらの容量の選定も、それが置かれる線路の短絡容量以上のしゃ断容量をもったものでなければなりません。

短絡電流のしゃ断の仕方

短絡電流のしゃ断の仕方には限流しゃ断と非限流しゃ断とがあります。非限流しゃ断は第3図(a)のように短絡電流の波形が最大値を通過して、電流が零点を通るときにしゃ断するもので、もしこの零点通過の際にしゃ断できないときは次の半サイクル後の零点を通過する際にしゃ断する方式です。

これに対して限流しゃ断は第3図(b)のように短絡電流が波高値に達する前で電流を抑制してしゃ断してしまう方式です。この方式によると短絡エネルギーは減少し、短絡による事故の被害も最小限に止めることができます。次に各種保護装置のしゃ断の仕方を以下に示します。

第3図

気中しゃ断器のしゃ断の仕方

気中しゃ断器は一般には非限流形ですので、しゃ断時間はヒューズに比べると長く、全しゃ断時間はおよそ30~ 50 msぐらいかかります。したがってこの間の短絡電流による機器への機械的、熱的ストレスは無視できません。

配線用しゃ断器のしゃ断の仕方

これも一般には非限流形ですが、気中しゃ断器よりも可動部分が小さくできていて動作が早いため、しゃ断時間は、10~ 25 ms程度です。

ヒューズのしゃ断の仕方

ヒューズは限流形と非限流形とがあり、最近ではほとんど限流形となっています。したがってしゃ断時間は5~ 10 msです。

短絡事故発生の要因とその注意事項

短絡の生ずる要因は、線間の絶縁が何らかの原因で低下してきて線間短絡に発展したり、しゃ断装置が動作して回路をしゃ断した際に、そのしゃ断装置のしゃ断容量が不充分であったためにアークが線間を渡って短絡してしまった例が多いです。例えば、ヒューズを交換する場合には,、しゃ断容量をよく確認したうえで、その回路に適合したしゃ断容量のものを取付けないと大きな事故の要因となるので、注意が必要です。

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