これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「放電とその応用」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
放電とは
空気中に1対の電極を置き、両面極間に電圧を加えていくと、電圧が低い範囲ではその大きさに無関係にほぼ一定な 0.1μA以下程度の微少電流が流れます。これは暗流といわれ、空気が天然の紫外線や放射線の影響によりわずかに電離 (イオン化)されているために生ずるイオン電流です。 したがってそれらの影響を取り除くと電流は流れません。このように通常状態では空気は絶縁性を保っていますが、電圧をさらに高くしていくと空気の絶縁性が破壊されて電流が急増します。このように気体のもつ絶縁性が破れて電流が流れる現象を放電といい、第1図のような過程で進行します。
コロナ放電
コロナ放電は気体が局部的に絶縁破壊される現象です。コロナ放電が起こると、普通の状態では電流は数 μA~ 10μA程度しか流れませんが、電圧の上昇とともに増加する特性を示します。コロナ放電は、電界分布が著しく不均一であること、コロナの発生によって最大電界強度が減少することの2条件がないと生じない特徴があります。したがって平行平板電極間に電圧を加える場合は、これらの条件が成立しないのでコロナ放電はなく、暗流の状態から一気に火花放電に移行します。
コロナ放電が生ずると「ジーッ」という音や微光を発し、空気中の場合は付近にオゾンが発生します。
火花放電
火花放電は、気体の局部絶縁破壊が全路破壊に移行するとき短時間の放電現象で、放電電圧 $V$ と電極間隔 $d$ 、気体の圧力を $p$ とすると、パッシェンの法則によりそれらの間には次の関係が成立する特徴をもっています。
$V=f(pd)$ … (1)
ただし $f$ は関数を表わす 。
(1)式は、$p$ と$d$ の積が一定であれば $V$ も一定であることを表わしています。
グロー放電・アーク放電
グロー放電とアーク放電は気体絶縁が全路破壊されているときの放電形態をいい、ア ーク放電は気体放電の最終形態です。グロー放電とアーク放電の領域を電圧―電流曲線で示すと第2図のようになります。 グロー放電とアーク放電の特徴は表1のとおりです。
沿面放電
第3図のように空気中において固体絶縁物の上に電極 A, Bをのせてこの間に電圧を加えていくと、電極先端から絶縁物の表面に沿って沿面コロナが発生し、さらに電圧を上昇するとコロナが伸展して火花放電に至ります。このように絶縁物の表面に沿って絶縁破壊が進行する放電形態を沿面放電またはせん絡 (フラッシオーバ)といい、絶縁物の長さを決める際の重要な要素となります。
放電を応用した光源機器
ネオン電球
ネオン電球は低気圧中でのグロー放電による発光を利用するもので、その構造は第4図のように、ガラス球の中に2つの電極をわずかの間隔で相対して置き、この中に Ne と He とを 3:1 の割合で混ぜたものを 15mmHg の圧力で封じ込んだものです。ネオン電球は消費電力が少なく、寿命も長いので、表示灯などに使用されています。
ネオン管
ネオンサインに用いられるもので、その構造はガラス管の両端に円筒形の電極を設け、数 mmHg の Ne,Ar,Cr,Xe,He などの不活性ガスや水銀蒸気などを封入した放電管です。ネオン管はグロー放電による陽光極の部分の発光を利用するもので、その発光色は封入ガスの種類によって変わり、Neでは橙黄色、Heでは黄金色、水銀蒸気では青白色です。
蛍光灯
蛍光灯は、低気圧水銀蒸気中でのアーク放電により発生す る紫外線を、蛍光物質に当てて可視光線を得るランプです。 その構造は第5図に示すよう細長い管の両端に2個のピンを有する口金を備え、管内部にはタングステンフィラメントを二重コイルにした電極が両端に置かれています。
管内には小量の水銀と始動 (放電)を容易にするための数mmHgの Ar が封入され、管内壁には一種または数種の蛍光物質が薄く塗られています。蛍光灯の点灯は第5図のスイッチKを閉じると次の順序で行われます。
- グローランプGに電源電圧が加わるためGはグロー放電し、自分自身のバイメタル式可動電極を加熱する。
- Gのバイメタル電極が熱のために変形し、固定電極に接すると、タングステンフィラメントに大きな電流が流れ、フィラメン卜は赤熱して電子を放 出 し易くなる。
- Gはグロー放電が停止しているためバイメタル電極は冷却され、固定電極から離れる。
- その瞬間に安定器 Lに高電圧が発生し、その電圧が電極A― B間に加わるため蛍光管内で放電が開始する。これが点灯である。
高圧水銀灯
数気圧の水銀蒸気中におけるアーク放電による陽光柱部分の発光を利用するもので、その構造は第6図のように、発光管と称される石英ガラス管内に水銀を封入し、発光管の両端にある主電極間にアーク放電を起こさせ ます。水銀灯の始動は初めに発光管内にある補助電極と主電極の一方との間のアーク放電に始まり、これが次第に主電極間のアーク放電に移行する形態をとっています。
その他の光源
アーク放電を利用する光源としてはその他に、キセノンランプ、ナトリウムランプ、メタルハライドランプなどがあります。
電気集じん器への応用
電気集じん器の構造は第7図のようで、針金状の負電極とその周囲の円筒状正極との間に高電圧を加えてコロナ放電を生じさせ、極間を通るじんあいを負に帯電させます。負に帯電したじんあいは静電引力により正極に吸引付着され、じんあいの除去が行われます。