これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「接地はなぜ必要か」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
接地はなぜ必要か
接地する理由
電気機器設備を接地する主な理由は次の三つがあります。
- 保安上の理由
- 機能上の理由
- 経済上の理由
保安上の理由は主として電気設備技術基準その他の法令により定められているもので、常時は充電されてはいないが、絶縁劣化などで事故時に充電されるおそれのある金属製外枠や外箱の部分に感電防止のために施す接地、あるいは高圧または特別高圧から低圧へ変成する変圧器の二次側(中性点または二次側1端子)は高低圧が混触したときに、低圧側に高い電圧が侵入してこないように接地することが規定されていますが, このような接地が(1)の保安上の接地です。電気機器の保安上の接地は、機器の種類、電圧の種別によって電気設備技術基準に細部にわたって規定されているので、その都度調べておくことが必要です。
このほか建築基準法で定められている避雷針を設置するときに施行する接地や静電気が充電されるおそれのある機械設備の接地なども保安上の接地です。
(2)の機能上の理由は、接地することによりその機能がより有効に発揮できるような場合で、その最もよい例は、別項で述べる地絡故障時の検出を確実に行うための接地です。
(3)の経済上の理由は例えば、第1図のような特別高圧の三相の送電線路などにおいては、この送電線路に接続される変圧器その他の機器は高い絶縁を施しておくことが必要となりますが、これを少しでも絶縁の低下が図れれば経済的に有利であることから、特に電圧の高い特別高圧の変圧器の中性点は直接接地される場合が多いです。こうすると1線が地絡しても健全相の対地電圧は上昇しないで済み、また接地側の巻線の絶縁は低くすることができるわけです。
接地抵抗の制限
地球は一種の導体とみなすことができます。われわれは地球を零電位として、電位を考える場合の基準としており、したがって接地するということはその接地しようとする機器、設備を零電位に保とうとすることです。しかし、実際に大地に接地電極を埋設して、これに電流を流した場合、その電極と大地間には電位を生じて零電位とはなりません。つまり、抵抗が存在していることになります。これが接地抵抗です。
この接地抵抗の存在(零でないこと)は接地しようとすることからすると好ましいことではないのですが、電線相互の接続のようにコネクタや半田付け、あるいは溶接で大地と接続するようなことは不可能で、電極の相手は土壌であり、これとの接触による接続であるので土壌の質によって接地抵抗は大きく変わってくるわけです。したがって接地は、その地質を調べたうえでどのような接地方法によったらよいかを決めることが大切です。
以上のように接地抵抗は小さい方がよいわけですが、電気設備技術基準ではこれを第1表のように四つの種類に分けて、その上限値が規定されていますので、この規定の値以下に保たれなければなりません。接地電極は打ち込み式の接地棒が最も簡便ですが、岩があって打ち込みが困難な場合は銅線を広範囲にわたって埋める方法が取れれます。また、上質が悪く腐食しやすい場所では亜鉛メッキ鋼管(または鋼材)を使う場合があります。打ち込み深さは土質によって決められます。
電気設備にはどのような接地が必要か
電気機器,器具の鉄台および外箱の接地
われわれの家庭で毎日使っている電気洗濯機や電気冷蔵庫などは漏電による感電の危険性が大きいので、これらは絶対に接地しておくことが必要です。絶縁不良の電気洗濯機に触れて感電した例は非常に多いです。また、工場で使われるモータやその他の電気機器についても感電防止の保安上の理由で接地されています。
第2図はモータに絶縁不良を生じた場合の状況を示す一例です。もしモータの外枠が接地されていないと、絶縁不良部分を通して200Vの電圧が外枠に伝わり、外枠に触れると200Vの電圧を受けて感電するわけです。しかし、モータの外枠が接地されていれば、その接地抵抗とここを流れる電流の積によって決まる電圧が生じますが、この電圧は200Vよりは小さい値となり感電による危険性を軽減することができます。
架空電線路の雷からのしゃへい
架空電線路は地表上の高いところに施設されているので、常に雷の脅威にさらされます。したがって電線路を雷から守るために、架空地線と呼ばれる電線が施設され、この電線は接地されています。このようにすることを “電線路をしゃへいする” といい、もし落雷があると、雷は架空地線に落ちることになり、架空地線から大地へ放電して電線路は雷から保護することができます。
地絡継電器の動作
地絡を検出するための地絡継電器の動作は、第1図のように中性点を直接接地すると線路に地絡故障が発生したとき、大きな地絡電流が流れので地絡検出が確実にできることになります。
接地抵抗の大きさはどんな影響を与えるか
例えば、第2図についてモータが外枠に地絡した場合に外枠に表われる電圧を調べてみると、210Vの電圧はモータの接地抵抗 $R_3$ と変圧器二次の接地抵抗 $R_2$ に加わるので、流れる電流を $I$ とすると、
$I=\displaystyle\frac{210}{R_2+R_3}$〔A〕
したがって外枠に表われる対地電圧は、
$\displaystyle\frac{210}{R_2+R_3}×R_3$〔V〕
この式からわかるようにモータの外枠に表われる電圧はモータの接地抵抗 $R_3$ に関係してくるので、$R_3$ を小さくすれば危険度は小さくなることがわかります。この点からも接地抵抗は小さいほど接地の効果は大きくなります。
接地の効果と逆効果
接地することによる機能上および経済上の効果は明確であり、保安上の効果も明らかですが、考え方によっては安全とはいえない場合もあります。例えば、第3図のように単相105Vの接地側でない方の電線に人が触れた場合は、この人には105Vの電圧が加わるので感電することは明らかです。
しかし、もし変庄器二次側のB種接地工事がなかったならば、105Vの1線に触れても感電しないで、両方の電線に触れたときに感電します。つまりB種接地工事がなければ、1線に触れただけでは人体を通って電気回路ができないので感電しないわけです。このようなことを考えると接地しない方が安全なようにも考えられます。しかし、この場合の変圧器二次側のB種接地工事は高低圧の混触時の保安上の接地であるので、これを外すことはできません。
現在の一般の低圧配電系統では、変圧器の二次側中性点が接地されている接地系統となっていますが、特殊な場合としてプール用水中照明灯の回路には絶縁変圧器(二巻線式)を使用して、その二次側は接地しないことが規定されています。つまり非接地系統とするように要求されています。