電圧・電流の測定計器【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「電圧・電流の測定計器」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

電圧・電流の測定計器

一口に電圧あるいは電流の測定といっても、その対象にはいろいろな種類があります。最も身近な 50Hzや 60 Hzの商用周波電圧(電流)や直流電圧(電流)もあれば、数MHzの高周波もあります。また、一瞬に消滅してしまう衝撃電圧(電流)もあれば、直流や高調波交流が合成されたひずみ波電圧(電流)もあります。さらにこれらの大きさは $10^{-6}$ V(A)よリ小さいものから $10^6$ V(A) よりも大きなレンジに及ぶものもあります。

商用周波電圧・電流の測定計器

商用周波数用の電圧計および電流計には可動鉄片形、誘導形、整流器形および電流力計形などいろいろな種類のものがありますが、その中で可動鉄片形が最も広く用いられています。これは構造が簡単で丈夫であり、取り扱いが容易で安価といった特長があるからです。

第1図は、可動鉄片形計器の駆動部分の例です。測定しようとする電流を通じる固定コイルの中に、軸を中心とした可動的な小鉄片を配置しておき、 コイルに電流を通じるとコイル内に磁界が生じ、小鉄片はコイル中に吸引される力を生じます。これを駆動トルクとするのが動作の原理です。この場合の駆動トルクはコイルに流れる 電流の 2乗に比例するので、基本的には 2乗目盛となりますが、実際には鉄片の形や配置をうまく工夫して目盛ができるだけ均一になるように改善されています。

第1図

同図(a)は、可動鉄片Mが固定コイルCの磁界によって、磁化されそのコイル方向にトルクを生じる構造となっています。(b)は、反発形といわれるタイプで、可動鉄片Mが固定コイルCの磁界によって、強く磁化される方向に吸引される力によってトルクを生じる構造となっています。(c)は、目盛の一例を示すものです。

計器用変成器

低電圧・小電流(0~ 70A程度)は計器で直接測定することができますが、これ以上になるとそうはいかなくなります。そこで高圧・大電流でもこれらの計器でそのまま測定できるように工夫したのが計器用変成器です。

JIS規格によると、計器用変成器は「電気計器または測定装置とともに使用する電流および電圧の変成機器で変流器、計器用変圧器および計器用変圧変流器の総称」と定義されています。これらは、回路の電圧または電流を正確に変成することが大切であり、回路の二次側につながる計器類と回路を絶縁する機能をもっているものでなければなりません。

商用周波数用としては、変流器二次電流(つまり電流計入力側電流)は 5A が普通であり、計器用変圧器二次電圧(つまり高圧計入力側電圧)は 110 V となっています。

第2図は高圧・大電流(大電流でないが高圧回路から絶縁したい場合も含む)の測定回路を示します。

第2図

電圧・電流測定の各種と測定上の注意

商用周波数の高低圧、中位の電流測定以外に微小電圧や電流あるいは衝撃電圧や電流などを測定しなければならない場合があります。電圧・電流の種類や測定計器また、測定対象ごとの測定方法と特徴を示します。

検流計(微小電圧・電流の測定)

検流計はきわめて微小な電流または電圧の有無を検出するものです。動作原理は電流計とあまり変わりませんが感度が極度に高くなるように作られています。

測定対象としては熱電対の熱起電力や光電流、イオン電流などの測定があげられますが、検流計には電流目盛が施されていないので、既知電流によって目盛を校正しなければならず手間がかかります。

一般形直流電圧・電流計と倍率器・分流器(高圧・大電流の測定)

10kV程度までの直流高圧は普通の電圧計に抵抗倍率器を付 属させて測定します。

1000Aまでの直流電流は普通の電流計に分流器を付属させて測定します。

一般形交流電圧・電流計と計器用変成器(高圧・大電流の測定)

10 kV程度までの交流高圧は計器用変圧器や分圧器と組合せて測定します。なお、コンデンサを利用した容量分圧器を使用する場合500 kV程度の測定もできます。

交流大電流の測定は変流器と組合せて測定します。

火花ギャップ(衝撃電圧・電流の測定)

衝撃電圧は、一般形の計器で測定することはできません。その波高値の測定には、球ギャップあるいは棒ギャップが使用されます。雷電圧は1~ 10μ sで最大値に達し50~ 100μ sでその 50%程度まで減衰します。

磁鋼片形サージ電流計(衝撃電圧・電流の測定)

残留磁気の大きい磁鋼片を導体の近くに取付けておき、流れたサージ電流によって生じる磁鋼片の残留磁気を測定してサージ電流の波高値を知ります。

計器用変成器と測定上の注意

変成器のレンジ

指示電気計器や電力変換器などの精度は全て最大目盛値または最大出力値に比べて小さすぎる場合は、誤差が大きくなるので注意する必要があります。

例えば、階級1.5の交流電流計があり30A程度の電流を測定するとします。これに対して100/5Aの変流器(CT)を用いたとすると、100Aに対する誤差は、100× 1.5/100=1.5A ですが、30A測定時にも 1.5Aの誤差が生じる可能性がありますので、この場合の誤差は 1.5/30× 100=5% となります。このように、変成器の選定を誤ると計器は予想以上の誤差を生じます。

変成器の負担

変成器の二次側端子に接続する計器や継電器は変成器からみれば一種の負荷ですが、 これを特に負担といいVAの単位で表わします。定格負担は 5, 10, 15, 25,40, 100 VAなどがあり、その値をこえる負担をかけると変成器の過負荷や誤差が増大するため避けなければなりません。

変流器二次の開放

変流器二次側を開放することは危険であるから十分注意しなければなりません。二次側を開放すると、一次電流による起磁力を打ち消すものがなくなって、一次電流の全部が励磁電流として働き鉄心には大きな起磁力が作用します。このため二次誘導電圧が非常に大きくなり、巻線の絶縁が破壊することがあります。また、鉄損のため鉄心が過熱されることになるため変流器の使用中にその二次回路の接続変更やテストなどのため、二次回路を開放することは避けなければなりません。このような場合は二次回路を短絡状態として作業を終え、それから短絡を解くようにしなければなりません。

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