低圧用しゃ断器の役割と動作機構【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「低圧用しゃ断器の役割と動作機構」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

低圧しゃ断装置の役割

低圧しゃ断装置を広い意味にとると、気中しゃ断器、配線用しゃ断器、漏電しゃ断器、電磁接触器、ヒューズなどが含まれます。このなかで漏電しゃ断器は地絡保護を目的としていますので、これを除外すると、 これらのしゃ断装置は主としてしゃ断できる電流の大きさの限度によって区別することができます。

  • 低圧しゃ断器・配線用しゃ断器:回路の短絡電流のしゃ断など異常電流のしゃ断や投入を行う
  • 電磁接触器:一般に負荷の過電流領域の投入しゃ断を行う
  • ヒューズ:主として短絡時の大電流のしゃ断を目的を行う

それぞれ取扱う電流の大きさによってその役割を異なっているのですが、このように分類されるのは電気系統が年を追って拡大強化されるにおよんで電源設備は大きくなり、負荷電流の大きさと、その回路の短絡電流の大きさとに大きな開きが生じてきたことと、電動機などを制御する開閉制御機器が、その目的に合致したものが作られるようになったからです。したがって、開閉装置のこのような目的別に、保護しゃ断装置と制御開閉装置とを分けて考えなければならないようになってきました。

つまり、護用しゃ断装置は、電気回路が短絡したときのような異常電流による被害を局限することを目的としたもので、これには低圧しゃ断装置およびヒューズが使われます。一方で、制御用開閉装置は使用電流領域において高い開閉頻度の動作を繰り返す用途、例えば、電動機の始動停止などを目的としたもので、これには主として電磁接触器が使われています。

従来は低圧系統のしゃ断装置は比較的軽視されてきましたが、最近のビルや工場では、低圧電気設備の容量が大きくなって、高圧設備と同じようにその重要度が増してきたため、起こり得る故障を想定して十分な保護がなされるように考慮しておくことが必要となっています。

低圧しゃ断器とその役割

特に低圧しゃ断器という定義はないようですが、低圧回路で使用されるしゃ断器はすべて低圧しゃ断器です。しかし、ここでは低圧回路に使われる配線用しゃ断器と区別して、主として低圧用の電源回路に使われる気中しゃ断器を指すものとします。

気中しゃ断器は交流の低圧および直流電路に使われ、直流しゃ断器のうち高速度で限流しゃ断する場合は直流高速度しゃ断器と呼ばれます。気中しゃ断器は短絡電流を規定回数しゃ断した後も接触子や消弧室などの補修を行って再使用できますが、配線用しゃ断器の場合は補修できない構造となっていますので、動作責務を遂行したあとの再使用はできません。

したがって、一般には気中しゃ断器は低圧回路の電源端における重要な電路の自動しゃ断器として使われ、配線用しゃ断器は負荷端における自動しゃ断器として使うのがよく、パワセンタ(低圧閉鎖配電盤)のしゃ断器にはこの気中しゃ断器が主として用いられています。

気中しゃ断器は交流1000V以下、直流3000V以下の電路に使用され、定格電流の標準は200~ 6000A、定格しゃ断電流の標準は125 kA位まであります。気中しゃ断器は外気中でしゃ断するため消弧装置を備えています。

第1図はディアイオングリッドと呼ばれる多数の鉄板をアークと直角になるように配置して、アーク電流による磁束の電磁力でアークをグリット内に駆動して消弧させるものです。第2図は吹消コイルを有するもので、アークは吹消コイルの生ずる磁束とアークの間に生ずる電磁力を利用して消弧させるものです。

気中しゃ断器は前述のように主としてパワセンタに収納して使われる場合が多く、 しゃ断器は引出し可能な構造となっています。したがって、同一容量のしゃ断器が多数ある場合は入替えて使うことができ互換性をもたせることができます。しゃ断器の構造は一般には上方に電路を開閉する接触部が消弧装置に囲まれており、下方には投入操作機構や過電流引外し装置が取付けられています。しゃ断器の後方には端子が設けられています。開閉接触部の主接触子は主として銀接触、アーク接触子は銀タングステン合金が用いられています。

気中しゃ断器の投入操作は手動操作と電動操作がありますが、一般には押釦による電動操作で行う場合が多いです。低圧気中しゃ断器は高圧のしゃ断器と違って過電流引外し装置がしゃ断器に内蔵しているのが特徴です。

低圧用しゃ断装置の動作機構

気中しゃ断器の過電流引外し要素

気中しゃ断器は一般に長限時、短限時および瞬時の三つの要素をもっています。瞬時引き外しは各メーカとも主回路に直列に接続された直列過電流引き外しコイルによる電磁引き外し装置を使っているのが多いです。短限時と長限時引き外しは、限時引き外し特性をもたせるためそれぞれ限時要素をもっていますが、これには時計機構やオイルダッシュポット、エアダッシュポット、またはプランジャ形などメーカによって種々なものが使われています。瞬時、短限時、長限時の引き外し装置は、負荷によって、その特性と整定範囲は相当幅広く調整できるので、その調整範囲内で整定できるような各引き外し要素を選定します。

一般に長限時特性の調整範囲は定格電流の 80~160%で、,短限時要素は定格電流の 2,3,4 倍または 6, 9,12 倍の3点調整となっています。瞬時要素は定格電流の 100%~ 1600%の調整範囲をもっていますが、瞬時の動作時間は 30~ 50 msであり、配線用しゃ断器のそれよりも長いです。

これは気中しゃ断器は配線用しゃ断器よりも数倍も大きく構造的にみて止むを得ないことです。第3図は気中しゃ断器の動作特性の一例です。

気中しゃ断器の動作特性例
第3図 気中しゃ断器の動作特性例

気中しゃ断器の保護協調

第4図は変圧器の容量が大きく、二次側の気中しゃ断器によって幾つかのフィーダに分岐されている場合の系統です。この組合せでは、まず負荷側のしゃ断器 ACB3 は負荷の始動時その他の瞬時的な過渡電流で動作しないように長限時特性(L)をもたせると同時に、短絡故障時に短時間でその回路をしゃ断するように瞬時要素(I)をもたせます。

第4図

次に後備しゃ断器 ACB2 , ACB1 は ACB3 より順次動作時間を遅らせて、長限時要素(L)と短限時要素(S)を設けます。この場合選択性をもたせるために ACB2 と ACB1 には瞬時要素は設けません。

なお、これらの時限の整定は系統の機器および電線などの過電流強度を考慮して決められますが、変圧器については二次側端子で短絡した場合2秒間は耐えうるように作られていますので、ACB2 , ACB1 の短限時特性は 1 秒以下で動作するようにします。 第3図の保護協調曲線は第4図の回路におけるものです。

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