三相誘導電動機の特徴と用途【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「三相誘導電動機の特徴と用途」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

三相誘導電動機の種類

誘導電動機(Induction Motor)は、ビルや工場で最も広く使われている電動機です。三相誘導電動機には、次のような種類があります。

  • 普通かご形誘導電動磯
  • 特殊かご形誘導電動機
  • 二重かご形誘導電動機
  • 深みぞかご形誘導電動機
  • 巻線形誘導電動機
三相誘導電動機の種類

普通かご形誘導電動機

かご形誘導電動機は、回転子巻線が第1図のようなかごの形をしているので、かご形と呼ばれています。構造が簡単で、きわめて丈夫で、効率もよいのですが、始動電流がきわめて大きいのに、始動トルクはその割りに大きくならない特性があります。第2図に速度トルク特性を示します。

かごの形
第1図 かごの形
かご形速度トルク特性
第2図 かご形速度トルク特性

二重かご形誘導電動機

二重かご形誘導電動機は、第3図のように回転子巻線が上部と下部とに二重に巻かれています。始動電流は黄銅(固有抵抗は銅の4倍)で作られた上部巻線を流れるので、高始動トルクが得られます。運転中は銅で作られた下部巻線に電流が流れます。

二重かご形
第3図 二重かご形

深みぞかご形誘導電動機

第4図のように、溝が深くなっているのが、深みぞかご形誘導電動機です。始動特性は第2図のように、深みぞかご形より二重かご形の方が優れていますが、運転特性(効率,力率)は、深みぞかご形の方が二重かご形よりやや優れています。

深みぞかご形
第4図 深みぞかご形

巻線形誘導電動機

巻線形誘導電動機は価格は高いですが、外部抵抗をスリップリングを通して回転子巻線に接続すると、速度制 御ができたり、始動電流を小さく押さえながら高始動トルクを得ることができます。第5図に巻線形のトルク速度特性を示します。起動特性が良いことから、大形の揚水ポンプ、汚水ポンプ、送風機に用いられ、いずれも二次抵抗制御を行い、高トルク・低始動電流でも始動します。

巻線型速度トルク特性
5図 巻線型速度トルク特性

三相誘導電動機の始動方式

誘導電動機に全電圧を加えて始動しようとすると、大きな始動電流が流れ、電源や他の負荷に悪い影響を与えるので、始動装置を用いて大きな始動電流が流れないようにしています。

全電圧始動

第6図のように停止している誘導電動機に全電圧(定格電圧)を加えて始動するものです。一般に5~ 10〔kw〕以下のかご形誘導電動機や特殊かご形誘導電動機は、この方式で始動することが多いようです。また、ポンプのようにはずみ車効果の小さく、始動時間の短い負荷には、50~ 270 kW程度まで全電圧始動を行うことがあります。

始動時間の長いものや、始動停止の頻度が高い負荷では、電動機が過大な始動電流で過熱するので、この方式は適しません。

全電圧始動
第6図 全電圧始動

スターデルタ始動

第7図のように、始動電流を押さえるために、始動時は固定子巻線をスターに接続し、同期速度近くになってからデルタ接続に切替えて、始動を完了する方式です。始動時には固定子巻線がスターに接続されているため、各相巻線には定格電圧の $1/\sqrt{3}$ 倍の電圧しかかりません。トルクは電圧の2乗に比例しますので、始動トルクは1/3、電流も1/3となり、始動時のショックが柔らげられます。

スターデルタ始動
第7図 スターデルタ始動

コンドルファ方式

第8図のように、電磁接触器 $MS_1$ および $MS_2$ を閉じて、単巻変圧器接続にして電動機を始動します。電動機が充分に加速した後、$MS_1$ の電磁接触器のみを開き、単巻変圧器をリアクトルとして始動電流を押さえ、続いて電磁接触器 $MS_3$ を閉じ、リアクトルを短絡するとともに、誘導電動機に全電圧をかけて始動を完了します。全電圧始動より始動電流が小さくなります。単巻変圧器には、50%,65%,80% の電圧が得られるように、タップを出しています。

コンドルファ始動
第8図 コンドルファ始動

その他の始動法

リアクトル始動、一次抵抗始動、サイリスタによる一次電圧制御始動の方式などがあります。ビルや工場では省エネルギー対策としてファン・ポンプの流量制御に、サイリスタ利用の一次電圧制御が採用され、大きな省電力と始動電流の抑制に効果をあげています。また、スターデルタ始動でスターデルタ切替え時の一時的電源開放による突入電流防止のため、デルタ切替え回路に並列に限流素子そう入の電磁接触器回路を設け、スターデルタ切替え時の電源開放を防止した始動方式があります。

特性比較
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