電動機の故障原因とその対策【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「電動機の故障原因とその対策」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

電動機に起こり易い故障

電源の1線開路

電源回路の1線開路としては、リード線の断線、開閉器・接続部分の接触不良などに起因することが多く、電動機の巻線の断線は比較的少ないといえます。この場合、電動機は始動せず、外から回してやれば、激しい音を立てて回転することがあります。とくに、単相運転状態になっているときは、うなりを生じ、電源を切らずに放置すると焼損することがあります。

二次回路の開路

電動機のかご形回転子の銅棒と端絡環との接触不良、銅棒の溶断があっても、トルクが減少し、始動状態が不良となります。この場合、固定子電流の動揺により見分けられ、負荷をかけると、振動をともない音が大きくなります。

固定子巻線の短絡

電動機の固定子巻線の短絡は、一つのコイルの素線間の短絡、異相間の短絡、同相間の短絡などがあります。このような場合、磁束が不平衡になり、トルクが減少し、うなりを生じて局部的過熱がおこり、発煙溶断することもがあります。

固定子巻線の地絡

固定子巻線の地絡の原因は、短絡の場合と同じで、電源の中性点または1線が接地されている場合には、巻線の1個所が地絡しても回路ができ障害を生ずるが、電源が接地されていない場合には問題はありません。2個所以上の地絡があれば、電源の接地の有無にかかわらず回路ができ障害を生じます。地絡の検出はメガーなどで、鉄心と口出線間を測定すれば、地絡のある場合には絶縁抵抗値が低下するので判明します。

軸受の過熱

グリースの過剰給油による軸受の温度上昇は、よく経験することで、軸受から排油口にいたる経路がせまい場合、また、排油口を閉じたまま給油した場合などは、グリースが過剰であると、内部で攪拌され,その摩擦熱で過熱することがあります。

フレームの過熱

軸受の摩擦による固定子と回転子とがすれ合って生ずる摩耗により、フレームの過熱を生ずることがあります。また、じんあいその他の堆積による放熱効果の低下および冷却風に対する抵抗の増加によっても生じます。一方向の回転方向に適した通風ファンがあるものは、指定外の回転方向に運転しないことが必要です。温度上昇をまねくことがあります。

過負荷運転

電動機に定格以上の負荷を加えると、電流が増加して過熱することは当然ですが、短時間の過負荷であれば、ただちに故障につながるとは限りません。しかし、その電動機の最大トルク以上の負荷に対しては、電動機回転速度は急激に減少し、電流が急増して焼損することがあります。このため、電動機の過負荷運転保護として、サーマルリレーあるいは過電流継電器が用いられます。

始動器による故障

電動機とスターデルタ始動器との接続誤り、あるいは始動補償器の口出線選定誤りなどに原因して、始動が困難となることがあります。この場合は点検すれば原因が判明します。

供給電圧の低過ぎ

供給電圧が低過ぎると、無負荷あるいは軽負荷ならば始動しますが、負荷が重いと始動しないことがあります。始動時電動機の端子電圧を測定すれば原因がわかります。

電動機に起こり易い故障
第1図 電動機に起こり易い故障

電動機の故障とその対策

電動機の比較的一般的な故障とその対策について、次に示します。実際には、これ以外の故障も多く、複合した故障もありますが、電動機の故障現象から、その原因を探り対策を立てる際に目安となります。

現 象原 因対 策
ヒューズの溶断
しゃ断器の動作
1.電動機の短絡0層間短絡
2.電動機の過負荷・拘束
3.定格電流の選定の誤り
4.定格の過小
1.電動機の点検修理
2.負荷あるいは電動機定格の適正化
3.4.電動機定格電流の再選定
電動機の始動時間大
加速不良
1.電動機の始動方法の不適
2.電動機の始動トルク小
3.始動時の電圧降下大
4.回路電圧が低い
5.回路不良
1.始動方法の検討,タップの再選定
2.電動機トルクの検討,出力検討
3.配線サイズ,こう長の検討
4.回路電圧の上昇,変圧器タップの変更
5.回路チェック是正
電動機始動不能
始動しにくい
1.電動機巻線の断線,短絡
2.開閉器類の接触不良
3.電動機の単相運転
4.電動機回路の接続間違い
5.電動機負荷の過大
6.電動機のGD2の過大
1.電動機巻線の点検修理
2.開閉器の点検修理
3.配線の断線,接触不良,ねじの緩み点検
4.端子マーク,配線の再確認是正
5.6.電動機定格,負荷の見直し
電動機の過熱・
焼損・発煙・発臭
1.電動機の過負荷
2.冷却通風路の阻害
3.冷却吸気温度が高い
4.電動機の単相運転
5.電動機の相間短絡
6.電源電圧の著しい高・低
7.電圧の不平衡
8.電動機の高ひん度の始動停止
9.電動機の固定子と回転子の接触
1.負荷を減らす
2.ごみ,異物の排除,清掃
3.冷却吸気取入法の変更
4.配線の断線,接触不良,ねじの緩み点検
5.電動機巻線の点検修理
6.変圧器タップの選定
7.過大な単相負荷の排除
8.適正始動回数におさめる
9.電動機の分解修理
電動機振動
騒音が大きい
1.電動機の心出し直結精度の狂い
2.電動機軸受の不良
3.電動機空隙のアンバランス
4.電動機の単相運転
5.負荷の機械的バランス不良
6.基礎ボルトなどの緩み
7.電動機内部に異物の混入
1.心出し直結精度の修正
2.電動機軸受の交換
3.電動機分解修理
4.配線の断線,接触不良,ねじの緩み点検
5.負荷の再バランス取り
6.基礎ボルトを締め直す
7.電動機分解修理
電動機軸受の
加熱・焼きつき
1.電動機軸の曲がり
2.電動機軸受のオーバグリース
3.電動機軸受のグリース劣化
4.電動機軸受のスラスト,ラジアル荷重大
5.電動機軸受の摩耗
1.電動機回転子の交換,直結精度の修正
2.軸受のグリース量を下げる
3.軸受のグリース入れかえ
4.負荷との連結方法の検討,改善
5.電動機軸受の交換
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