配電電圧と配線方式の特徴【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「配電電圧と配線方式の特徴」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

配電方式の種類と配電電圧

第1図

単相2線式 (1φ2W)

単相交流電気機器の電源とて使われ、一般に単相負荷の合計容量が 30kW以下の場合に用いられる配電方式で、電圧は単相 100V です。

単相3線式 (1φ3W)

単相負荷密度の高い場合に用いられる配電方式で、電圧は 100/200〔V〕であり、単相負荷容量が 10 kW以上 50kW以下の場合に採用すると経済的です。

この方式では、両外線間電圧が単相 200Vでですので、比較的容量の大きい 200V電気機器を使用でき、また、 40W蛍光灯を 200Vで給電すれば、昇圧変圧器を省略することができるから、40W蛍光灯を多数使用するビル、商業施設などに広く採用されています。

低圧三相3線式 (3φ3W)

三相誘導電動機等の動力負荷電源として用いられる配電方式で、電圧は三相 200V、三相 400Vです。三相誘導電動機の場合、第2図のように、電圧に対して技術的、経済的に製作可能な出力範囲がありますが、200V級と 400V級電動機の価格差はわずかですので、電動機台数が多く、動力負荷容量が大きい場合は、三相 400Vで配電 した方が、三相 200Vに比べ、電流が少なくなるので有利となります。

第2図

一般に、電圧を上げると配線、電気機器の絶縁に要する費用が増加し、電圧を下げると、電線サイズが大とな り銅量が増加しますが、200Vや,400V級では、電圧を上げた方が、銅量節減による配線費減少効果が大きく、経済的であるとともに、電圧変動や電力損失も減少します。

高圧三相3線式(3φ3W)

容量の大きい負荷が、構内に分散している場合や、ビルなどで高層階に一部の負荷が集中しているような場合は、3.3kVあるいは 6.6kV高圧三相3線式で送り、そこで変圧器により降圧して、負荷に配線した方が、電線サイズや電力損失、電圧変動などの面で有利です。また、大容量電動機がある場合は、電動機を 3.3kVなどの高圧仕様で製作し、高圧三相 3線式で配電すると経済的となります (数 百 kWまでは、400V級の電動機の方が安価に製作できる)。なお、電力会社からの受電方式も、6.6kVや 22kVなどの三相 3線式です。

三相4線式

三相4線式は第3図に示すように、変圧器をY結線とし、中性線を用いて三相4線式として配電する方式で、電圧は 240/415〔V〕、220/380〔V〕などが用いられています。この方式は、外線と中性線間 (電圧 220V)に、40Wや 100W蛍光灯などの単相負荷を接続し (接続する負荷を各外線と中性間に等しく平衡するようにすると、中性線には電流は流れない)、380V三相回路には、三相誘導電動機等の動力負荷を接続します。電灯、動力供用方式であり、高層ビルなどで用いられています。非常に経済的な配電方式です。

また、この方式は、特別高圧から直接 400Vに降圧される場合が多く、高圧変圧器やしゃ断器などを省略できるので、床面積や配線費の大幅な減少となり、経済的な受配電方式とすることができます。

第3図

各種配電方式の比較

各配電方式において、同一電力を負荷に供給する場合の電流、電力損失、電圧降下などについて、比較検討してみます。(使用電線量 $W$〔㎥〕を一定、配電距離を $l$〔m〕、線間電圧を $V$〔V〕、負荷電力を $P$〔W〕、負荷力率を 100%、電線の抵抗率を $ρ$〔Ω・㎡/m〕とし、電線のリアクタンスは無視する)。

単相2線式と単相3線式

単相2線式

第4図 単相2線式

電線の断面積 $S$ は $S=\displaystyle \frac{ W }{ 2l }$〔㎡〕であるから、電線 1条の抵抗 $R$ は

$R=ρ\displaystyle \frac{ l }{ S }=ρ\displaystyle \frac{ 2l^2 }{ W }$〔Ω〕

したがって、単相 2線式の場合

電流 $I_1=\displaystyle \frac{P }{ V }$〔A〕

電圧降下 $V_{l1}=2I_1R$〔Ω〕

電力損失 $P_{l1}=2I_1^2R$〔W〕

単相3線式

第5図 単相3線式

中性線を両外線と同一太さとすると、単相3線式の場合の配電線の断面積 $S’$ は $S’=\displaystyle \frac{ W }{ 3l }$〔㎡〕であるから、電線 1条の抵抗 $R’$ は

$R=ρ\displaystyle \frac{ l }{ S’ }=ρ\displaystyle \frac{ 3l^2 }{ W }$〔Ω〕

となり、 単相 2線式の場合と比較して、電線の太さは $\displaystyle \frac{ 2}{ 3 }$ 倍、抵抗の大きさは $\displaystyle \frac{ 3}{ 2 }$ 倍になります。

負荷は図のように $\displaystyle \frac{P}{ 2 }$ ずつ接続すれば、中性線には電流は流れません。(負荷が不平衡であれば、両外線の差の電流が,、性線に流れる。)

したがって、

電流 $I_2=\displaystyle \frac{P }{ 2V }$〔A〕

電圧降下 $V_{l2}=\displaystyle \frac{3}{2}I_2R$〔Ω〕
(負荷端子電圧すなわち外線と中性線間電圧 $V$ に対しての電圧降下)

電力損失 $P_{l2}=3I_1^2R$〔W〕

となります。単相2線式と単相3線式を比較すると、

電流 $\displaystyle \frac{I_2}{I_1}=0.5$

電圧降下 $\displaystyle \frac{V_{l2}}{V_{l1}}=0.375$

電力損失 $\displaystyle \frac{P_{l2}}{P_{l1}}=0.375$

したがって、同一電線量を用いて、同一電力を負荷に供給する場合、単相 3線式は、単相 2線式に比べて、電線太さは 63%、電流は 50%、電圧降下は 37.5%、電力損失は 37.5%となり、非常に有利となります。

単相2線式と三相3線式

第6図 三相3線式

三相3線式の場合は、単相3線式と同様、配電線は 3本ですから、電線 1条の抵抗は単相2線式の場合の $\displaystyle \frac{3}{2}$ 倍です。したがって

電流 $I_3=\displaystyle \frac{P }{ \sqrt{3}V }$〔A〕

電圧降下 $V_{l3}=\displaystyle \frac{3\sqrt{3}}{2}I_3R$〔Ω〕
(線間電圧 $V$ に対する電圧降下は、電線1条の電圧降下の $\sqrt{3}$倍)

電力損失 $P_{l3}=\displaystyle \frac{9}{2}I_3^2R$〔W〕

となります。単相2線式と三相3線式を比較すると、

電流 $\displaystyle \frac{I_3}{I_1}=0.578$

電圧降下 $\displaystyle \frac{V_{l3}}{V_{l1}}=0.75$

電力損失 $\displaystyle \frac{P_{l3}}{P_{l1}}=0.75$

したがって、電線太さは 63%、電流 57.8%、電圧降下 75%、電力損失 75%となります。

三相4線式の場合も同様に計算すると、単相2線式と比較して、電線太さ 50%、電流 33.3%、電圧降下 33.3%、電力損失 33.3%となります。これは同じ三相回路でも、三相4線式の方が三相3線式に比べ有利であることを示しています。

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