これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「直流電源装置の特徴と用途」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
直流電源装置とは
ビルや工場では、受変電用しゃ断器の制御用電源やシーケンス制御回路の制御電源、テレメータ装置の電源として直流電源が必要とされるこ とがあります。
このようなとき、一般には第1図のように商用電源を整流して、脈流を少なくするために平滑回路を通じて、負荷に直流を供給します。商用電源が停電したときは、蓄電池から直流を供給します。
整流回路
交流を直流に変換する整流回路には、第2図のような種類があります。交流電源が単相のときは単相ブリッジ、三相のときは三相ブリッジがよく用いられます。
平滑回路
第2図(a)の単相ブリッジ整流回路で整流した電圧波形は、第3図(a)のように脈流した波形をしています。これでは直流とはいっても、実際に使用するときには不便なので、第3図(b)の平滑回路を通すことで、第3図(c)のように電圧波形はなめらかになります。
蓄電池
蓄電池には鉛蓄電池とアルカリ蓄電池などがあります。鉛蓄電池は、充電不足の状態で使用したり、長時間放電したままで充電しないでおくと蓄電池がいたみ、充電しても容量回復が困難になります。
アルカリ蓄電池は過放電しても過充電しても、蓄電池の寿命が短くはならないので、充電すれば容量は回復します。したがってメンテナンス性から考えると、鉛蓄電池よリアルカリ蓄電池の方が保守上面倒が少なくなりますが、価格は高くなります。
蓄電池の寿命
直流電源装置の寿命は、内蔵している蓄電池の寿命によって左右されます。鉛蓄電池の寿命は14~ 25年程、アルカリ蓄電池の寿命は7~25年程です。
ニッケル・カドニウム蓄電池
アルカリ蓄電池とは、強アルカリの濃縮水溶液を電解液として使用する蓄電池のことで、いろいろな種類がありますが、アルカリ蓄電池といえば、ニッケル・カドニウム蓄電池のことを一般に指しています。 ニッケル・カドニウム蓄電池の特徴を次に示します。
- 重負荷によく耐えることができる
- 信頼性が高い
- メンテナンス・フリーにすることができる
- 寿命が長い
- 保守が簡単で、堅ろう
- 放電曲線が平担である
その反面、電池単体の電圧が1.2Vと低いので、直列に並べる電池が多く必要であり、更に高価です。ニッケル・カドニウム蓄電池は、-40℃ でも十分使用できる焼結式があり、その用途は広いです。
蓄電池の役割
ビルや工場では、台風・水害・地震・火災などによる不測の停電事故に備えて、蓄電池や自家発電機が計画され、設置されています。また、 防災の上からの規制が強化され、予備電源として設置を義務づけられています。
蓄電池の用途
ビル・工場では、受変電設備や監視盤設備、機器設備の制御用(しゃ断器の操作・信号・警報など)、通信設備の電源用、常置灯、航空障害灯、その他保安警備上の制御・信号・補機電源用として、蓄電池を設置しています が、法規制により、非常灯・誘導灯・自動火災報知設備・消火栓・非常放送設備等は、それらの機能を一定時限確保できる容量のものを設置しなければなりません。
充電装置
蓄電池は、使用すれば放電をして徐々に容量が減ってきます。放電すれば、充電して常に充分な容量を蓄えておくことが大切です。消防法では、充電装置は自動的に充電できるもので、なお、均等充電完了後は、 自動的に浮動充電またはトリクル充電に切替わるものとしています。
無停電電源装置
無停電電源装置にCVCF(定電圧定周波電源)というものがあります。誘導灯・非常放送設備・火災報知設備等の他に、ビルには短時間の停電も許されないような、 コンピュータ設備・テレックス設備等の設置が目立って多くなってきています。
このため、 自家発電機から電気が供給されるまで、数十秒かかることから、無停電電源装置を設けるところも多くなっています。
定電圧・定周波電源(CVCF)
第4図はCVCFの原理図で、通常は商用電源から整流して交流を直流に変換し、インバータで再び交流に戻して負荷に供給します。蓄電池は、商用電源から充電回路で直流に変換して蓄電池を充電し、いつでも応じられるようになっています。
商用電源が停電すると、蓄電池から直流をインバータを経て、定周波定電圧を負荷に供給します。完全無停電ではなく、0.5秒ぐらいの停電が許される時は、第5に示すように、停電すれば電磁接触器 MC1 , MC2 をインバータ側に切替えて、負荷に交流を供給します。
鉛蓄電池の放電容量
据置用の鉛蓄電池は使用していなくても自己放電をして1日に約0.5~ 1%の容量を減少させていきます。したがって、浮動充電によって自己放電量を補って常に完全充電状態に保つ必要があります。それでも長い間に各電池に若千の不揃いを生ずるため、 3カ月に1回は均等充電を行う必要があります。また、日常放電量をチェックし、 放電後回復充電もおこなわねばなりません。
完全充電時の比重が1.215、放電末期の比重が1.15の電池で、ある放電時の比重を計測すれば放電量は次式で計算できます。
放電量=(1.215-$x$ )÷ (1.215-1.15) 20℃換算比重