これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「単相誘導電動機の種類と特徴」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
単相でモーターが回る理由
第1図のように、永久磁石NSの磁界の中に閉じたコイルを置き、永久磁石を回すとコイルは磁石の回転によって移動する回転磁束を切ることになって、フレミングの右手法則により図示の方向に誘導電圧が発生し、電圧と同じ向きに電流が流れます。その電流によって点線の矢印の向きの磁界 ns ができます。この ns は近づいてくる永久磁石の NS に反発されて、永久磁石の回る方向と同じ向きに回転します。
単相誘導電動機の回転磁界
次に単相誘導電動機の主巻線による磁界を考えてみます。いま、主巻線に単相交流を流すと、磁界を生じます が、電流は交流であるから時々刻々変化し、 0 から正の最大になり再び 0 になる。この間は、第2図の(イ)の方向に磁界を生じます。それから、電流は負の最大になり再び 0 にもどります。この半サイクルは電流が負であるので、磁界の方向も(ロ)のようになり、磁界も反転して逆向きとなります。
このように主巻線に流れる電流が正から負と変化するにつれて磁界の強さも変化しますが、方向は正逆にかわるだけで回転磁界は生じません。そこで、第3図のように主巻線と直角の位置に補助巻線を設け、主巻線と90°の位相遅れをもつ単相交流を流してみます。すると、補助巻線も主巻線の場合と同じように、大きさと方向が正逆にかわる磁界が主巻線による磁界と直角の方向に発生します。その磁界の変化の仕方は主巻線によって作られる磁界の変化よりも、ちょうど 90°の位相遅れで変化しますので、第4図で示すように合成磁界ができ回転する磁界となります。
主巻線磁界だけで回転
このようにして主巻線と補助巻線で作られた回転磁界によって、回転子は回転力を発生し回転加速されますが、充分加速された時点で補助巻線の回路をしゃ断してみます。すると固定子の磁界は主巻線のみとなって回転磁界にならないのですが、回転子のコイル(導体)が第5図のように矢印の方向に回転していると主巻線の磁界を切ることになり、主巻線磁界が y 軸の方向であるとフレミングの右手則によリ、コイルには図示の方向に電流が流れ、 x 軸の方向に磁界を作ります。
この磁界は主巻線磁界より90°の位相遅れがあるため補助巻線による磁界と同じ働きをし、回転磁界を作ります。したがって、回転子は持続して回転することができます。
このように単相誘動電動機では主巻線の他に、始動用の補助巻線を設け始動させ、定格速度の約80 %加速後に補助巻線回路だけ始動用開閉器(遠心力スイッチ)によって開くように作られています。充分加速されないうちに早目に始動用開閉器が開かれると円滑な加速ができません。加速不良はよくあるので注意する必要があります。
単相電動機の種類と特徴
(1)分相始動形
始動装置 … 遠心カスイッチにより始動巻線を切離す
出力速度 … 35~40〔W〕
特徴 … 比較的安価,構造簡単,始動電流が大きいので電圧降下に注意
用途 … 工作機械,浅井戸ポンプ,ファンプロア,事務機械,一般家庭用機械
(2)コンデンサ始動形
始動装置 … 始動用コンデンサ,遠心カスイッチ
出力速度 … 100~400〔W〕
特徴 … 価格は分相始動形より少し高いが始動電流は小さい,始動特性良好
用途 … ポンプ,コンプレッサー,冷凍機,工業用洗濯機,コンベヤ
(3)コンデンサ運転形
始動装置 … 運転用コンデンサ
出力速度 … 35~200〔W〕
特徴 … 構造簡単,遠心カスイッチがないので故障が少ない,始動トルクが小さい
用途 … ファン,プロア,洗濯機,事務機械,映写機
(4)コンデンサ始動コンデンサ運転形
始動装置 … 遠心カスイッチ,始動用コンデンサ,運転用コンデンサ
出力速度 … 100~750〔W〕
特徴 … やや価格が高い,始動特性・運転特性ともに良い,比較的出力大なものに向く
用途 … ポンプ,コンプレッサー,冷凍機,コンベヤ,工業用洗濯機
(5)反発始動形
始動装置 … 整流子,ブラシ,整流子ショートリング
出力速度 … 200~750〔W〕
特徴 … 価格は高い,構造は最も複雑,始動電流は小さいが、始動トルクは大きい
用途 … 各種ポンプ,コンプレッサー,農業機械,コンベヤーその他大きなトルクのもの
(6)くま取リコイル始動形
始動装置 … くま取リコイル
出力速度 … 50〔W〕以下
特徴 … 価格は安価,構造簡単,こわれにくい
用途 … 扇風機,レコードプレーヤなどの小形民生機器