静電気の性質とその応用【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「静電気の性質とその応用」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

静電気とは?

セルロイドや化繊などを摩擦するとそれらは電気を帯びて吸引しあったり青白い放電を起こしたりします。一般に原子や分子は電気的に中性な状態にありますが、摩擦やその他により外部からエネルギーを加えられると負の電荷を持った電子の移動が行われ、中性の状態から電子を失った物質は正の電荷を帯び、電子を受けとった物質は負の電荷を帯びることになります。これを帯電といい、静電気とは静止状態にある帯電電荷をさしています。

図1

静電気の発生過程

静電気の発生は、「電荷移動」、「電荷分離」、「電荷緩和」の三つの過程からなります。

電荷移動

図2(a)のように物質AとBが外力により接触(例えば摩擦)されると、AからBに電荷の移動が生じ、A-B間には電位差(接触電位差)が生じます。

電荷分離

図2(a)の状態にあるものを(b)のように外力により引き離すとAからBに移動した電荷はAに戻ることができず、B内に残留することになります。これが帯電です。

電荷緩和

しかし、図2(c)のように、引き離したあとのA-B間の絶縁抵抗が小さければ、Bに残留した電荷はAにある反対符号の電荷による吸引力によって再びAに戻ります。これを電荷緩和といい、電荷緩和が完全に行われるとA,Bは元の中性の状態になります。

図2

以上の素過程は単独で行われるのではなく、同時に行われますので、物体A,Bの帯電量は、分離電荷量-緩和電荷量ということになります。一般に物体が金属である場合、物体内の電子移動は高速に行われるので電荷の分離と同時にほぼ全量の電荷緩和が行われ、結果として金属は帯電しません。

これに反して、物体が絶縁物の場合は、物体内の電子移動が低速であるので分離と同時に行われる電荷緩和量は著しく小さく、結果として絶縁物は大きく帯電します。この帯電電荷も、空気の湿度が高くて空気中の導電性が増すと緩和していきます。冬の晴れた日に静電気を多く感じるのは、空気が乾燥しているため帯電電荷がなかなか緩和しないことによるためです。

静電気を発生させる要因

固体の帯電

固体が帯電する要因は、摩擦による摩擦帯電や他の物体の上で回転体をころがすことにより発生するころがり帯電、接着面の分離により発生する剥離帯電、物体が破断もしくは破砕されるときに発生する破砕帯電、外部電界中に物体を置くことにより発生する誘導帯電、コロナ放電電界中に物体を置くことにより発生するコロナ荷電(図3)などがあります。

図3

液体の帯電

高抵抗率をもつ液体がパイプ中に流れるときに発生する流動帯電、液体中を固体や水などの異粒子が沈降するときに発生する沈降帯電、液体を噴霧するときに発生する噴霧帯電などがあります。

気体の帯電

純ガス体は帯電しないといわれていますが、微粒状の固体や液体が混入していると、固体や液体の諸帯電要因により帯電します。

静電気の性質

静電気は、次のような性質があります。

  • 帯電電荷量 $Q$ は極めて小さく、それを放置させたときに流れる電流は $μA$ のオーダーである
  • 一般に帯電物体間の静電容量(電荷を蓄える容量)$C$ が極めて小さいため、帯電物体間に生じる電位差 $V$ ($=\displaystyle \frac{ Q }{ C }$)は、1万ボルト前後に達する場合もめずらしくない
  • 帯電物体間に静電気放電が発生すると、人体電撃や爆発火災の原因になる
  • 正負両電極間中にある正の帯電物体は負極に、負の帯電物体は正極に吸引される力が作用する。電気集じん器や電子印刷はこの性質を利用しているものである

電撃の発生

空気が乾燥している冬の晴れた日に、じゅうたんの上を歩行した人が金属に触れた場合や、自動車に乗っていた人が降車の際にドアに触れた場合、パチッという音とともに指先がビリビリすることがあります。また、じゅうたんの上を歩行後の人が触れ合った瞬間にも同じようなことが起こることがあります。

これらはいずれも静電気が原因です。人がじゅうたん上を歩行すると靴がじゅうたんと摩擦されるため、図4(a)に示すように、靴とじゅうたんの間で摩擦帯電が生じ、靴に帯電した電荷 $Q$ [C]は靴を通して人体に蓄積されていき、人体は大地に対して次式で与えられた電圧を持つことになります。

$V=\displaystyle\frac{Q}{Cm}$ [V]
ただし、$Cm$ は、人体と大地間の静電容量[F]

第1表に人体に発生する静電気電圧の測定例を示しますが、極めて高い値になることがわかります。このように帯電した人が金属体に近づくと、人と金属体間の空気絶縁が破壊され、放電が行われます。このときの電気的等価回路は、図4(b)のようであり人体には次式で示す放電電流が流れ、しびれやいたみを感じることになります。

$i=\displaystyle\frac{Q}{CmR}e^{-\frac{t}{CmR}}$ [A]
ただし、$R$ は、放電回路抵抗[Ω]

図4

静電気を応用した機器

ゼロックスと呼ばれる静電写真は、コロナ荷電による静電気を利用した機器です。その原理を示します。

  1. 荷電:半導体であるセレン薄膜上に、コロナ放電による電荷を付着させます(コロナ電荷)
  2. 露光:帯電した薄膜に画像の光を当てると、光の大小に応じて薄膜の抵抗が小さくなり、薄膜上の静電荷は抵抗の小さい部分は緩和し、静電潜像ができます。
  3. 現像:接触帯電によりガラス球上に付着したトナー粒子を、ガラス球を転がすことにより静電潜像上に付着させます。
  4. 転写:トナー粒子の付着した薄膜上に紙を乗せ再びコロナ放電により紙を帯電させると、紙にトナー粒子が付着し、転写されます。
  5. 定着:トナー粒子の付着した紙を加熱して定着します。
図5
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