これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「電動機のしくみと分解整備」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
直流電動のしくみ
直流電動機はなぜ回転できるのでしょうか。第1図(a)のように平等磁界 $B$〔Wb/㎡〕の中に導体を置いて磁束と鎖交させ、導体に直流電流 $I$〔A〕を流すと、電気磁気で学んだように、フレミング左手の法則によって、導体に力 $F$〔N〕が働き、導体が動きます。このとき、
$F=IBlsinθ$〔N〕
$l$:磁界中の導体の長さ〔m〕
となります。そこで第1図(b)のように導体が回転できるようにして磁界の中に置くと、(b)のように導体はフレミング左手の法則によって、グルグル回転します。
直流電動機のトルク
直流電動機のトルクは次式で求めらることができます。
三相誘導電機のしくみ
第2図のように2個の短絡環で導体を連絡し、軸を中心に回転できる構造として、磁極を図のように回転すると、磁極の磁束を導体が切って、フレミング右手の法則で導体に電流が流れます。この電流と磁極の磁束との積でフレーミング左手の法則で導体に回転トルクが発生し、磁極の回転方向と同じ方向に導体が回転します。これが三相誘導電動機の原理です。
かご形と巻線形
第2図では磁極が機械的に回転するようになっていますが、実際は磁極は静止していて、これに多相巻線を巻き、交流電力を流して磁界が回転するようになっています。これを回転磁界といいます。三相誘導電動機は回転子にかご形と巻線形の2種類があります。かご形回転子は第2図のように回転子の構造が、かごの形をしている。比較的小容量のものに用いられます。
巻線形回転子は、Y結線になるように回転子に巻き、第3図のようにスリップリングを通じて外部の可変抵抗に接続するようになっています。外部の可変抵抗は速度制御用または始動用として使われます。
整流子とスリップリング
直流電動機は、第1図(b)のようにブラシを通して電動機に電気を供給します。ビル・工場に使われている巻線形誘導電動機は、第3図のように、回転子の電流はスリップリングに接触しているブラシを通して外部の可変抵抗に流れる仕組みになっています。
いずれの電動機も第4図(a)のようブラシを、(b) のように回転子に取りつけて回転する整流子またはスリップリングと接触して、通電する役割りをはたしています。
電動機の分解整備の方法
ビルや工場では、数多くの電動機が使用されていますが、長年月の運転で、摩耗・変形・機能の劣化やほこりの付着などによって、故障の原因となりますので、適当な期間を定めて分解整備を行う必要があります。
分解の難易
数kWの小容量電動機の分解整備は、それほどむずかしいものではありませんが、 20~ 30 kW以上の中形機になると分解手順が難しくなります。そこで、今回は中容量機の分解要領を説明します。
負荷側からの分解
負荷側とは第5図のように電動機の軸がポンプ負荷につながる方をいいます。
第5図(1)
- カップリングはギヤープーラーではずす。
- 軸受の外カバーの取付けボルトを抜いて、軸受外カバーをはずす。
- ブラケット取付けボルトを抜いてブラケットをはずし、グリースバルブのセットネジを緩めてグリースバルブをはずす。
- 軸受の取りはずしは、第6図(a)のようにギヤープーラーの爪を軸受と、軸受内カバーの間に引っかけてはずす。または第2図(b)のように引出し金具ではずす。
反負荷側からの分解
反負荷側とは、第5図を見てください。分解は負荷側の手順と同様に行います。
清掃
圧縮空気で電動機各部のほこりを吹きとばし、さらに洗油に浸したウエスなどで、きれいにふき取ります。わずかでも、絶縁物の傷を発見したときは、テーピングをして絶縁ワニスを塗布します。
軸受の交換
第7図(a)のようにあて金をあてて、ハンマーでたたき込むときは、軸受の内輪と同じサイズの円筒パイプをあてて、徐々にたたき込みます。
最も良い方法は、第7図(b)のようにヒー夕か、または油中で軸受を100℃ ぐらいにあたため、回転軸は清潔なウエスで拭いて滑りを良くし、ころあいを見て軸受を素早く回転軸にはめ込みます。