このページでは、オシロスコープの周波数測定について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の理論科目で、実際に出題されたオシロスコープの周波数測定の過去問題の解き方も解説しています。
オシロスコープ
オシロスコープは交流や過渡現象などのように時間的に変化する現象の波形を、ブラウン管面上に描いて観測する測定器です。
水平・垂直偏向電極
ブラウン管において蛍光面に投射する電子線の方向を変えるために信号を与える偏向回路において、水平あるいは垂直方向に偏向させるための電極です。垂直および水平の両偏向電極に、同相で同じ大きさの正弦波を加えると、オシロスコープ上には直線上のリサジュー図形が表示されます。
リサジュー図形
二つの正弦波をオシロスコープの水平軸と垂直軸に別々に加え、両者の周波数の比を整数比にすれば、両周波数比と位相差に応じた特有の図形が描かれます。このような図形をリサジュー図形といいます。
電験三種-理論(電気・電子計測)過去問題
2000年(平成12年)問8
オシロスコープを用いて電圧波形を観測する場合、垂直入力端子に正弦波電圧を加えると、垂直偏向電極にそれと同じ波形の電圧が加わり、水平偏向電極には内部で発生する( ア )電圧が加わるので、蛍光膜上に( イ )電圧の波形が表示される。
また、垂直及び水平の両入力端子に、同相で同じ大きさの正弦波を加えると( ウ )のリサジュー図形が蛍光膜上に表示される。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に記入する語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | のこぎり波 | 正弦波 | 直線状 |
(2) | 正弦波 | のこぎり波 | 円 形 |
(3) | 方形波 | のこぎり波 | 直線状 |
(4) | 方形波 | 方形波 | だ円形 |
(5) | のこぎり波 | 正弦波 | 円 形 |
2000年(平成12年)問8 過去問解説
オシロスコープを用いて電圧波形を観測する場合、垂直入力端子に正弦波電圧を加えると、垂直偏向電極にそれと同じ波形の電圧が加わり、水平偏向電極には内部で発生する( のこぎり波 )電圧が加わるので、蛍光膜上に( 正弦波 )電圧の波形が表示される。
また、垂直及び水平の両入力端子に、同相で同じ大きさの正弦波を加えると( 直線状 )のリサジュー図形が蛍光膜上に表示される。
答え (1)
2008年(平成20年)問16
ブラウン管オシロスコープは、水平・垂直偏向電極を有し、波形観測ができる。次の(a)および(b)に答えよ。
(a)垂直偏向電極のみに、正弦波交流電圧を加えた場合は、蛍光面に( ア )のような波形が現れる。また、水平偏向電極のみにのこぎり波電圧を加えた場合は、蛍光面に( イ )のような波形が現れる。また、これらの電圧をそれぞれの電極に加えると、蛍光面に( ウ )のような波形が現れる。このとき波形を静止させて見るためには、垂直偏向電極の電圧の周波数と水平偏向電極の電圧の繰返し周波数との比が整数でなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(b) 正弦波電圧 $v_a$ 及び $v_b$ をオシロスコープで観測したところ、蛍光面に図7に示すような電圧波形が現れた。同図から。$v_a$の実効値は( ア )[V]、$v_b$ の周波数は( イ )[kHz]、$v_a$の周期は( ウ )[ms]、$v_a$と$v_b$の位相差は( エ )[rad] であることが分かった。
ただし、オシロスコープの垂直感度は 0.1 [V]/div 、掃引時間は 0.2 [ms]/div とする。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる最も近い値として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
2008年(平成20年)問16 過去問解説
(a) 垂直偏向電極のみに、正弦波交流電圧を加えた場合は、蛍光面に( 図2 )のような波形が現れる。また、水平偏向電極のみにのこぎり波電圧を加えた場合は、蛍光面に( 図5 )のような波形が現れる。また、これらの電圧をそれぞれの電極に加えると、蛍光面に( 図6 )のような波形が現れる。このとき波形を静止させて見るためには、垂直偏向電極の電圧の周波数と水平偏向電極の電圧の繰返し周波数との比が整数でなければならない。
答え (3)
(b) 図に示します。
正弦波電圧 $v_a$ 及び $v_b$ をオシロスコープで観測したところ、蛍光面に図7に示すような電圧波形が現れた。同図から。$v_a$の実効値は( 0.21 )[V]、$v_b$ の周波数は( 1.3 )[kHz]、$v_a$の周期は( 0.8 )[ms]、$v_a$と$v_b$の位相差は( π/4 )[rad] であることが分かった。
ただし、オシロスコープの垂直感度は 0.1 [V]/div、掃引時間は 0.2 [ms]/divとする。
答え (1)
2013年(平成25年)問16
振幅 Vm[V]の交流電源の電圧 v = Vmsinωt[V]をオシロスコープで計測したところ、画面上に図のような正弦波形が観測された。次の(a)及び(b)の問いに答えよ。ただし、オシロスコープの垂直感度は5[V]/div、掃引時間は2[ms]/divとし、測定に用いたプローブの減衰比は1対1とする。
(a) この交流電源の電圧の周期[ms]、周波数[Hz]、実効値[V]の値の組合せとして、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
周期 | 周波数 | 実効値 | |
(1) | 20 | 50 | 15.9 |
(2) | 10 | 100 | 25.0 |
(3) | 20 | 50 | 17.7 |
(4) | 10 | 100 | 17.7 |
(5) | 20 | 50 | 25.0 |
(b) この交流電源をある負荷に接続したとき $i=25cos(ωt-\displaystyle\frac{π}{3})$ の電流が流れた。この負荷の力率[%]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 50 (2) 60 (3) 70.7 (4) 86.6 (5) 100
2013年(平成25年)問16 過去問解説
(a) 「div」は、1マスを意味します。よって、振幅 Vm [V] は5マス分、 周期 T [ms] は10マス分 ですので、
$V_m=5×5=25$[V]
$T=10×2=20$[ms]
周波数 f [Hz] は、
$f=\displaystyle\frac{1}{T}=\displaystyle\frac{1}{20×10^{-3}} =50$ [Hz]
また、実効値 V [V] は最大電圧の$\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2}}$ 倍ですので、
$V=\displaystyle\frac{V_m}{\sqrt{2}} =\displaystyle\frac{25}{\sqrt{2}} =17.7$ [V]
答え (3)
(b) 瞬時値は v=25sinωt [V] で、負荷電流が $i=25cos(ωt-\displaystyle\frac{π}{3})$ ですので、sinとcosを変換すると、
$i=25cos(ωt-\displaystyle\frac{π}{3})$
$=25sin(ωt-\displaystyle\frac{π}{3}+ \displaystyle\frac{π}{2}) $
$=25sin(ωt+\displaystyle\frac{π}{6}) $
電圧との位相差が $+\displaystyle\frac{π}{6}$ [rad] ですので、その力率は、
$cos \displaystyle\frac{π}{6}=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}=0.866$
答え (4)