これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「抵抗値の測定計器」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
抵抗測定の意義
鉄や銅は電気をよく通し、ガラスや紙は容易に通しません。しかし、銅の抵抗が 0 であることはなく、ガラスや紙が無限大の抵抗値をもっているわけでもなく、これらには一定の抵抗値が存在します。そして、 当然のことですが、電線として使用する場合の導線抵抗はできるだけ低くなければならないし、導線相互間や導線と大地との間の抵抗(絶縁抵抗)はできるだけ高くなければなりません。
例えば、ケーブルの抵抗が高い場合は心線導体で電力損失が生じ、また心線の温度が上昇るためその絶縁物の寿命が短縮したり、ひどい場合には心線間の絶縁が破壊されて短絡することもあります。また、心線導体の絶縁物の抵抗が十分高くないときは、心線の電流が漏れて感電や火災の原因になります。このようなことから電気設備の運用にあたっては、つぎに示すようにいろいろな場面で抵抗を実測しなければならないケースがあります。
- 接地工事を施したが、果たして所期の抵抗が得られているかどうか確かめたい場合
- 変圧器や電動機の特性試験を行う場合に巻線抵抗がいくらであるか測定したい場合
- 配線が十分な絶縁抵抗をもっているか確かめたい場合
抵抗測定器の種類
数グラムの物体の重さを測る場合と数10トンの物体の重さを測る場合とでは同じ重さを測るにしても、その方法はおのずと異なってきます。抵抗の測定についても、このことはあてはめられ、抵抗値の大小や測定対象の種類に応じて測定計器も異なります。
例えば、現場においては 0.lΩ 以下のオーダで接地抵抗をとり、これを正確に測定しなければならないことがあったり、大ざっぱでよいが数 MΩ 以上の絶縁抵抗を測定しなければならないこともあります。
第1表は、被測定抵抗とその測定計器の大要です。ここで、抵抗は取扱いの便宜上 1~ 1000Ω 程度のものを高抵抗などといっていますが、実際にはっきりした区別があるわけでありません。
なお、電解液の抵抗や電池の内部抵抗あるいは接地抵抗の測定などにおいては、それぞれの性質に適した方法を用いなければなりません。例えば、電解液の抵抗は、液の濃度や温度によって変化するばかりでなく、液に直流を通じると電気分解を起こしたり、分極作用を生じたりするため主として交流が用いられます。また、電池の内部抵抗を測るには内部に起電力をもっていますので、別な方法が用いられます。
導通テスト
現場において通信、制御あるいは動力配線等に誤結線が生じたまま、通電したら大変なことになります。ところが配線径路は容易に点検できるものではありません。そこで、誤結線や断線の有無を調べなければならないわけですが、 これは非常に簡単にテストができます。
導線には抵抗がありますが、その値は非常に小さいです。たとえば、屋内配線として広く使用される直径 2mmの軟銅線の抵抗は 1000mで約 5Ω にすぎません。これをもとに配線のチェックを試みます。第1図において、A一B 間の各線の照合はつぎのようにして簡単にできます。
- r – s を短絡したとき ab 間が 1Ω ならば c – t は同一電線
- s – t を短絡したとき bc 間が 1Ω ならば b – s は同一電線
- t – r を短絡したとき ca 間が 1Ω ならば a – r は同一電線
抵抗測定の方法
次は現場で行う最も一般的な抵抗測定です。
電位降下法(中抵抗の測定)
- あまり精度を要しない場合
- 測定が簡単
オームの法測を利用したもので電圧計と電流計を用いて、未知抵抗 $R_x$ を次の式から求めます。
$R_x=\displaystyle\frac{E}{I}$[Ω]
ホイートストンブリッジ法(中抵抗の測定)
- 0.1~ $10^5$ Ω程度をかなり正確に測れる
- 精密測定に適する
図のブリッジが平衡したときは、
$\displaystyle\frac{P}{Q}=\displaystyle\frac{X}{R}$
の関係が成立しますので、
$X=\displaystyle\frac{PR}{Q}$[Ω]
として、未知抵抗 $X$ を求めます。ブリッジの平衡を求めるには $\displaystyle\frac{P}{Q}$ を適当に選び、キー K1,K2 を閉じて検流計が振れなくなるように加減抵抗 $R$ を調整します。
回路計法 (中抵抗の測定)
- 0.1~ $10^5$ Ω程度をを簡単に測れる
- 携帯でき安価
- 精密測定はできない
メータで未知抵抗 $R_x$ を直読できます。回路計はテスターといわれ、抵抗以外に直流電圧や電流、交流電圧などを、簡単に測定することができます。
直偏法(絶縁抵抗の測定)
これは検流計を用いる方法です。図のように、絶縁物を電極 P1,P2 ではさみ、これに直流電圧を加え
ます。流れる電流を検流計で測定し、これから絶縁抵抗を算出します。
メガー法(絶縁抵抗の測定)
- 取扱いが容易
- 携帯でき安価
メガーは本来、絶縁抵抗試験器の商品名です。測定が容易にでき、絶縁抵抗値が直読できるため広く使用されています。この計器は、電池式のトランジスタ発振器と整流器とで直流電源を得ることができ、テスターと同様な方法で測定することができます。
接地抵抗計法(接地抵抗の測定)
メガーと同じように、接地抵抗値が1回の測定だけで直読できるので広く使用されています。接地電極に電流を流し、接触子の調整によって、振れが0になるときの調整メモリから接地抵抗が読みとれます。