電験三種の法規で出題される特殊場所の施設について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の試験で、実際に出題された過去問題も解説しています。
爆発または火災のおそれがある施設
可燃性のガスや火薬などを扱う施設では、電気設備が点火源となって爆発や火災が発生しないように施設しなければなりません。電気設備技術基準 第69条では、可燃性のガス等により爆発する危険のある場所における施設について、次のように規定されています。
- 可燃性のガス等により爆発する危険のある場所における施設(電技 第69条)
次の各号に掲げる場所に施設する電気設備は、通常の使用状態において、当該電気設備が点火源となる爆発又は火災のおそれがないように施設しなければならない。- 可燃性のガス又は引火性物質の蒸気が存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
- 粉じんが存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
- 火薬類が存在する場所
- セルロイド、マッチ、石油類その他の燃えやすい危険な物質を製造し、又は貯蔵する場所
燃性のガス等により爆発する危険のある場所における施設では、危険のおそれがないように施設することが必要です。電気設備技術基準の解釈 第176条では、可燃性ガス等の存在する場所の施設について、次のように規定されています。
- 可燃性ガス等の存在する場所の施設(解釈 第176条抜粋)
- 金属管工事により、次に適合するように施設すること。
- 金属管は、薄鋼電線管又はこれと同等以上の強度を有するものであること。
- 管相互及び管とボックスその他の附属品、プルボックス又は電気機械器具とは、5山以上ねじ合わせて接続する方法その他これと同等以上の効力のある方法により、堅ろうに接続すること。
- 電動機に接続する部分で可とう性を必要とする部分の配線には、耐圧防爆型フレキシブルフィッチング又は安全増防爆型フレキシブルフィッチングを使用すること。
- ケーブル工事により、次に適合するように施設すること。
- 電線は、キャブタイヤケーブル以外のケーブルであること。
- 電線は、がい装を有するケーブル又はMIケーブルを使用する場合を除き、管その他の防護装置に収めて施設すること。
- 電線を電気機械器具に引き込むときは、引込口で電線が損傷するおそれがないようにすること。
- 金属管工事により、次に適合するように施設すること。
電気柵の施設
電気柵は、動物に電気ショックを与えて追い払う柵です。人体への感電を防止するため、電気設備技術基準 第74条では、電気さくの施設の禁止について、次のように規定されています。
- 電気さくの施設の禁止(電技 第74条)
電気さく(屋外において裸電線を固定して施設したさくであって、その裸電線に充電して使用するものをいう。)は、施設してはならない。ただし、田畑、牧場、その他これに類する場所において野獣の侵入又は家畜の脱出を防止するために施設する場合であって、絶縁性がないことを考慮し、感電又は火災のおそれがないように施設するときは、この限りでない。
感電又は火災のおそれがないように施設するときとは、電気設備技術基準の解釈 第192条、電気さくの施設で、次のように規定されています。
- 電気さくの施設(解釈 第192条)
- 田畑、牧場、その他これに類する場所において野獣の侵入又は家畜の脱出を防止するために施設するものであること。
- 電気さくを施設した場所には、人が見やすいように適当な間隔で危険である旨の表示をすること。
- 電気さくは、次のいずれかに適合する電気さく用電源装置から電気の供給を受けるものであること。
- 電気用品安全法の適用を受ける電気さく用電源装置
- 感電により人に危険を及ぼすおそれのないように出力電流が制限される電気さく用電源装置であって、次のいずれかから電気の供給を受けるもの
- 電気用品安全法の適用を受ける直流電源装置
- 蓄電池、太陽電池その他これらに類する直流の電源
- 電気さく用電源装置(直流電源装置を介して電気の供給を受けるものにあっては、直流電源装置)が使用電圧 30V以上の電源から電気の供給を受けるものである場合において、人が容易に立ち入る場所に電気さくを施設するときは、当該電気さくに電気を供給する電路には次に適合する漏電遮断器を施設すること。
- 電流動作型のものであること。
- 定格感度電流が 15mA以下、動作時間が 0.1秒以下のものであること。
- 電気さくに電気を供給する電路には、容易に開閉できる箇所に専用の開閉器を施設すること。
- 電気さく用電源装置のうち、衝撃電流を繰り返して発生するものは、その装置及びこれに接続する電路において発生する電波又は高周波電流が無線設備の機能に継続的かつ重大な障害を与えるおそれがある場所には、施設しないこと。
地絡の危険が高い施設
地絡の危険が高い施設では、感電や火災のおそれがないように、適切な措置を講じなければなりません。電気設備技術基準 第64条では、地絡に対する保護措置について、次のように規定されています。
- 地絡に対する保護措置(電技 第64条)
ロードヒーティング等の電熱装置、プール用水中照明灯その他の一般公衆の立ち入るおそれがある場所又は絶縁体に損傷を与えるおそれがある場所に施設するものに電気を供給する電路には、地絡が生じた場合に、感電又は火災のおそれがないよう、地絡遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならない。
地絡に対する保護措置についての具体は、電気設備技術基準の解釈 で、次のように規定されています。
- 水中照明灯の施設(解釈 第187条抜粋)
- 水中又はこれに準ずる場所であって、人が触れるおそれのある場所に施設する照明灯は、容器に収め、損傷を受けるおそれがある箇所にこれを施設する場合は、適当な防護装置を更に施すこと。
- プール用水中照明灯に電気を供給するためには、一次電路の使用電圧及び二次側電路の使用電圧がそれぞれ 300[V]以下及び 150[V]以下の絶縁変圧器を使用し、絶縁変圧器の二次側配線は金属管工事により施設し、かつ、その絶縁変圧器の二次側電路を接地しないこと。
- 遊戯用電車の施設(解釈 第189条抜粋)
- 遊戯用電車に電気を供給する電路の使用電圧に電気を変成するために使用する変圧器は、絶縁変圧器であること。
- アーク溶接装置の施設(解釈 第190条抜粋)
- 可搬型の溶接電極を使用するアーク溶接装置を施設するとき、溶接変圧器は、絶縁変圧器であること。また、被溶接材又はこれと電気的に接続される持具、定盤等の金属体には、D種接地工事を施すこと。
電験三種-法規(電気設備技術基準)過去問題
1999年(平成11年)問6
「電気設備技術基準」では、可燃性のガス等により爆発する危険のある場所における施設について、次のように規定している。
次に掲げる場所に施設する電気設備は、通常の使用状態において、当該電気設備が点火源となる爆発又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
- 可燃性ガス又は引火性物質の( ア )が存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
- ( イ )が存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
- ( ウ )が存在する場所
- セルロイド、マッチ、石油その他の燃えやすい危険な物質を製造し、又は( エ )する場所
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する字句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 液体 | 粉じん | 火薬類 | 使用 |
(2) | 蒸気 | 可燃物 | 薬品類 | 貯蔵 |
(3) | 液体 | 可燃物 | 火薬類 | 使用 |
(4) | 蒸気 | 可燃物 | 薬品類 | 使用 |
(5) | 蒸気 | 粉じん | 火薬類 | 貯蔵 |
1999年(平成11年)問6 過去問解説
電気設備技術基準 第69条「可燃性のガス等により爆発する危険のある場所における施設」の規定です。
- 可燃性ガス又は引火性物質の( 蒸気 )が存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
- ( 粉じん )が存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
- ( 火薬類 )が存在する場所
- セルロイド、マッチ、石油その他の燃えやすい危険な物質を製造し、又は( 貯蔵 )する場所
答え (5)
2004年(平成16年)問5
次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく特殊場所に施設する電気設備に関する記述である。
次に揚げる場所に施設する電気設備は、( ア )状態において、当該電気設備が点火源となる爆発又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
- 可燃性のガス又は( イ )物質の蒸気が存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
- 粉じんが存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
- 火薬類が存在する場所
- セルロイド、マッチ、( ウ )その他の燃えやすい危険な物質を( エ )し、又は貯蔵する場所。
上記の記述の空欄箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に記入する語句として、正しいものを組合せたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 過負荷の | 揮発性 | 石油類 | 販 売 |
(2) | 過負荷の | 引火性 | 石 炭 | 販 売 |
(3) | 通常の使用 | 揮発性 | 石 炭 | 製 造 |
(4) | 通常の使用 | 引火性 | 石油類 | 製 造 |
(5) | 通常の使用 | 引火性 | 石油類 | 販 売 |
2004年(平成16年)問5 過去問解説
電気設備技術基準 第69条「可燃性のガス等により爆発する危険のある場所における施設」の規定です。
次に揚げる場所に施設する電気設備は、( 通常の使用 )状態において、当該電気設備が点火源となる爆発又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
- 可燃性のガス又は( 引火性 )物質の蒸気が存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
- 粉じんが存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
- 火薬類が存在する場所
- セルロイド、マッチ、( 石油類 )その他の燃えやすい危険な物質を( 製造 )し、又は貯蔵する場所。
答え (4)
2007年(平成19年)問7
次の文章は、「電気設備技術基準」に基づく異常時の保護対策に関する記述の一部である。
ロードヒーティング等の電熱装置、プール用水中照明灯その他の( ア )おそれがある場所又は( イ )を与えるおそれがある場所に施設するものに電気を供給する電路には、( ウ )が生じた場合に、感電又は火災のおそれがないよう、( ウ )遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならない。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ)及び(ウ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) | (イ) | (ウ) | |
(1) | 短絡する | 人体に危害 | 短絡 |
(2) | 地絡する | 絶縁体に損傷 | 地絡 |
(3) | 一般公衆の立ち入る | 人体に危害 | 地絡 |
(4) | 地絡する | 人体に危害 | 短絡 |
(5) | 一般公衆の立ち入る | 絶縁体に損傷 | 地絡 |
2007年(平成19年)問7 過去問解説
電気設備技術基準 第64条「地絡に対する保護措置」の規定です。
ロードヒーティング等の電熱装置、プール用水中照明灯その他の( 一般公衆の立ち入る )おそれがある場所又は( 絶縁体に損傷 )を与えるおそれがある場所に施設するものに電気を供給する電路には、( 地絡 )が生じた場合に、感電又は火災のおそれがないよう、( 地絡 )遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならない。
答え (5)
2011年(平成23年)問8
次のaからcの文章は、特殊施設に電気を供給する変圧器等に関する記述である。「電気設備技術基準の解釈」に基づき、適切なものと不適切なものの組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ
- 可搬型の溶接電極を使用するアーク溶接装置を施設するとき、溶接変圧器は、絶縁変圧器であること。また、被溶接材又はこれと電気的に接続される持具、定盤等の金属体には、D種接地工事を施すこと。
- プール用水中照明灯に電気を供給するためには、一次電路の使用電圧及び二次側電路の使用電圧がそれぞれ 300[V]以下及び 150[V]以下の絶縁変圧器を使用し、絶縁変圧器の二次側配線は金属管工事により施設し、かつ、その絶縁変圧器の二次側電路を接地すること。
- 遊戯用電車(遊園地、遊戯場等の構内において遊戯用のために施設するものをいう。)に電気を供給する電路の使用電圧に電気を変成するために使用する変圧器は、絶縁変圧器であること。
a | b | c | |
(1) | 不適切 | 適 切 | 適 切 |
(2) | 適 切 | 不適切 | 適 切 |
(3) | 不適切 | 適 切 | 不適切 |
(4) | 不適切 | 不適切 | 適 切 |
(5) | 適 切 | 不適切 | 不適切 |
2011年(平成23年)問8 過去問解説
- アーク溶接装置の施設(解釈 第190条)により適切です。
- 水中照明灯の施設(解釈 第187条)によると「絶縁変圧器の二次側電路を接地しないこと」ですので、不適切です。
- 遊戯用電車の施設(解釈 第189条) により適切です。
答え (2)
2016年(平成28年)問9
次の文章は、「電気設備技術基準」における電気さくの施設の禁止に関する記述である。
電気さく(屋外において裸電線を固定して施設したさくであって、その裸電線に充電して使用するものをいう。)は、施設してはならない。ただし、田畑、牧場、その他これに類する場所において野獣の侵入又は家畜の脱出を防止するために施設する場合であって、絶縁性がないことを考慮し、( ア )のおそれがないように施設するときは、この限りでない。
次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」における電気さくの施設に関する記述である。
電気さくは、次のaからfに適合するものを除き施設しないこと。
- 田畑、牧場、その他これに類する場所において野獣の侵入又は家畜の脱出を防止するために施設するものであること。
- 電気さくを施設した場所には、人が見やすいように適当な間隔で( イ )である旨の表示をすること。
- 電気さくは、次のいずれかに適合する電気さく用電源装置から電気の供給を受けるものであること。
- 電気用品安全法の適用を受ける電気さく用電源装置
- 感電により人に危険を及ぼすおそれのないように出力電流が制限される電気さく用電源装置であって、次のいずれかから電気の供給を受けるもの
・電気用品安全法の適用を受ける直流電源装置
・蓄電池、太陽電池その他これらに類する直流の電源
- 電気さく用電源装置(直流電源装置を介して電気の供給を受けるものにあっては、直流電源装置)が使用電圧( ウ )V以上の電源から電気の供給を受けるものである場合において、人が容易に立ち入る場所に電気さくを施設するときは、当該電気さくに電気を供給する電路には次に適合する漏電遮断器を施設すること。
- 電流動作型のものであること。
- 定格感度電流が( エ )mA以下、動作時間が0.1秒以下のものであること。
- 電気さくに電気を供給する電路には、容易に開閉できる箇所に専用の開閉器を施設すること。
- 電気さく用電源装置のうち、衝撃電流を繰り返して発生するものは、その装置及びこれに接続する電路において発生する電波又は高周波電流が無線設備の機能に継続的かつ重大な障害を与えるおそれがある場所には、施設しないこと。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | |
(1) | 感電又は火災 | 危険 | 100 | 15 |
(2) | 感電又は火災 | 電気さく | 30 | 10 |
(3) | 損壊 | 電気さく | 100 | 15 |
(4) | 感電又は火災 | 危険 | 30 | 15 |
(5) | 損壊 | 電気さく | 100 | 10 |
2016年(平成28年)問9 過去問解説
電気設備技術基準 第74条「電気さくの施設の禁止」、電気設備技術基準の解釈 第192条「電気さくの施設」の規定です。
電気さく(屋外において裸電線を固定して施設したさくであって、その裸電線に充電して使用するものをいう。)は、施設してはならない。ただし、田畑、牧場、その他これに類する場所において野獣の侵入又は家畜の脱出を防止するために施設する場合であって、絶縁性がないことを考慮し、( 感電又は火災 )のおそれがないように施設するときは、この限りでない。
電気さくは、次のaからfに適合するものを除き施設しないこと。
- 田畑、牧場、その他これに類する場所において野獣の侵入又は家畜の脱出を防止するために施設するものであること。
- 電気さくを施設した場所には、人が見やすいように適当な間隔で( 危険 )である旨の表示をすること。
- 電気さくは、次のいずれかに適合する電気さく用電源装置から電気の供給を受けるものであること。
- 電気用品安全法の適用を受ける電気さく用電源装置
- 感電により人に危険を及ぼすおそれのないように出力電流が制限される電気さく用電源装置であって、次のいずれかから電気の供給を受けるもの
・電気用品安全法の適用を受ける直流電源装置
・蓄電池、太陽電池その他これらに類する直流の電源
- 電気さく用電源装置(直流電源装置を介して電気の供給を受けるものにあっては、直流電源装置)が使用電圧( 30 )V以上の電源から電気の供給を受けるものである場合において、人が容易に立ち入る場所に電気さくを施設するときは、当該電気さくに電気を供給する電路には次に適合する漏電遮断器を施設すること。
- 電流動作型のものであること。
- 定格感度電流が( 15 )mA以下、動作時間が0.1秒以下のものであること。
- 電気さくに電気を供給する電路には、容易に開閉できる箇所に専用の開閉器を施設すること。
- 電気さく用電源装置のうち、衝撃電流を繰り返して発生するものは、その装置及びこれに接続する電路において発生する電波又は高周波電流が無線設備の機能に継続的かつ重大な障害を与えるおそれがある場所には、施設しないこと。
答え (4)
2015年(平成27年)問8
次の文章は、可燃性のガスが漏れ又は滞留し、電気設備が点火源となり爆発するおそれがある場所の屋内配線に関する工事例である。「電気設備技術基準の解釈」に基づき、不適切なものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 金属管工事により施設し、薄鋼電線管を使用した。
- 金属管工事により施設し、管相互及び管とボックスその他の附属品とを5山以上ねじ合わせて接続する方法により、堅ろうに接続した。
- ケーブル工事により施設し、キャブタイヤケーブルを使用した。
- ケーブル工事により施設し、MIケーブルを使用した。
- 電線を電気機械器具に引き込むときは、引込口で電線が損傷するおそれがないようにした。
2015年(平成27年)問8 過去問解説
電気設備技術基準の解釈 第176条「可燃性ガス等の存在する場所の施設」の規定です。
(3)「電線は、キャブタイヤケーブル以外のケーブルであること」ですので誤りでする。
答え (3)