これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「交流整流子電動機の特徴」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
交流整流子電動機とは
交流整流子電動機とは、ローターとステーター共に電磁石を使った構造のモーターです。ローターの電磁石に電力を供給する端子に整流子があるためこのように呼ばれています。構造は、直流モーターと同じであり、直流電流を流しても回転します。始動トルクが大きく、高速回転させやすいという特長がありますが、整流子があるため、電気的・機械的ノイズが多くなります。家庭用電源のような単相交流によって高速回転させる必要がある掃除機や電動工具などに使われてます。
種類と一般的な特性
交流整流子電動機は、単相式と三相式、直巻式と分巻式による種類があります。
- 単相式:単相直巻電動機,単相反発電動機,単相分巻整流子電動機
- 三相式:三相直巻整流子電動機,三相分巻整流子電動機
流整流子電動機は次のような特性があります。
- 付属変圧器の変圧比を変えるか、整流子ブラシの移動によって、速度を広範囲に効率よく変速できる。
- 力率改善をすることができる。
- 始動に際しては始動装置は不用で、ブラシの移動によって強力な始動トルクが発生する。
始動トルク、効率、力率
- 始動トルク:250~ 300%
- 始動電流:200~ 250%
- 可変速度範囲:0~ 130%
- 力率:95~ 98%まで改善できる
- 効率:小容量機では40~ 70%、中容量機では75~ 80%、大容量機では80~ 90%程度
単相直巻電動機
第1図のように、界磁巻線で作る磁束と、電機子巻線に流れる電流とによってトルクを発生し、電動機が回転します。
単相反発電動機
第2図のように、回転子のブラシ間を短絡し、固定子には補償巻線を設けて、補償巻線によって回転子に電流を流すようにすれば、この電流と界磁巻線の磁束でトルクを発生し、回転子は回ります。
三相分巻整流子電動機
第3図のように、三相交流は固定子巻線と変圧器を通じて回転子巻線にも直接に供給した構造になっています。
三相交流整流子電動機の構造
三相交流整流子電動機は、ちょうど三相巻線形誘導電動機の固定子と回転子の巻線を逆にしたような構造で、一次側の巻線が回転子鉄心のスロット内に巻かれ、スリップリングを通して三相電源に接続されます。そして同じスロット内に調整巻線が挿入され、この巻線がちょうど変圧器の二次巻線に相当し、一次側からの誘起電圧を整流子を通して、変圧器の二次巻線に相当するような固定子巻線にすべりに比例した電圧を供給して、固定子巻線に電流を流し、トルクを発生して回転します。
整流子の位置をずらしてやれば、固定子巻線内に誘起するすべり電圧の大きさが変化し、同期速度以下から、同期速度以上の速度まで、円滑に速度を変えることができます。
メンテナンス
三相交流整流子電動機は、整流子面を絶えずブラシが摺動するため、直流電動機と同じように整流子面の整備が電動機の機能を左右します。この電動機では、次の点について注意してください。
- 整流子皮膜に異常は見られないか
- ブラシ圧は正常か(正常では200~ 250g/㎠)
- ブラシは摩耗して短くなっていないか
- ブラシのピグテール(リード線)は,熱で変色していないか
- チャタリングはないか
- 整流子のアンダーカットは1mm以下になってはいないか
- カーボン粉等のゴミがたまっていないか
- 整流火花が尾を引いていないか
ブラシの交換方法
ブラシを交換して、ブラシと整流子面をすり合わせする時は、次の要領で行います。
- 整流子面の形状に合わせてブラシをヤスリでけずる。
- 第5図のように、サンドペーパーをブラシと整流子面の間にはさみ、バネで圧力を加えながら、始めは40~ 50番のサンドペーパーですり合わせる。
- 仕上げは100~ 200番のサンドペーパーで、ブラシのほぼ全面が整流子に当たるようになるまで研摩する。
- ブラシを取り付け、バネでブラシに適当な圧力を加えるわけであるが、ブラシ圧は第6図のようにバネ秤を静かに引上げながら紙テープを引張り、紙テープが急に動き出すときのバネ秤の目盛りを読み、数回の平均をとってバネ圧とする