直流の性質と特徴【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「直流の性質と特徴」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

直流の定義

図1に示すように、電池Bにランプ L を導線により接続すると、スイッチ S を閉じるとランプは点灯し、スイッチ S を開くとランプは消灯します。これは、スイッチ S を閉じることによって、負の電荷を持つ電子が電池に負(-)極から放出され、導線及びランプを通過して電池の正(+)極に戻る現象が起きるからです。この電子の移動を電流といい、電流の移動は正の電荷が移動する方向と決められています。電子は負の電荷と言えますので、図中の破線矢印の向きに流れます。それに対して、電流は実線矢印の方向に流れることになります。

図1

電流は、その方向と同時に大きさも考えなければなりません。電流の単位は[A](アンペア)が用いられます。電流は、任意の箇所を単位時間に通過する電荷量で定義されています。それを式で表すと次のようになります。

$I=\displaystyle\frac{dQ}{dt}$ … (1)
$Q$:電荷量[C] $t$:時間[s]

したがって、1[A]は1[s]間に1[C]の電荷が通過することになります。これを通過電子数 $n$ で表せば、電子1個の持つ電荷は $1.602×10^{-19}$ [C]ですので、

$n=\displaystyle\frac{10^{19}}{1.602}≒6.242×10^{18}$ [個/s]

となります。

直流とは?

電流の流れる路を回路といいます。この回路に流れる電流の方向が時間の経過と無関係に同一のものを直流電流といい、直流電流と同じようにその方向が変化しない起電力や電圧を直流起電力や直流電圧といいます。単に直流という言葉は、直流電圧・直流電流に共通な性質を考える場合、直流電流を略していう場合に使用されます。

直流の性質

直流は次のような性質を持っています。

  • 電圧、電流の方向が常に一定です。増幅器やその他の電子回路のように定方向電圧が必要な機器には欠かすことができません
  • 発生や貯蔵が容易です。直流起電力は電池で簡単に得ることができ、直流電力は電池や蓄電池に容易に貯蔵することができます。したがって、非常電源や携帯用の電源として多用されています。

直流回路

直流を扱う回路を直流回路といいます。直流回路を扱うためには、オームの法則とキルヒホッフの法則を知っておく必要があります。

オームの法則

オームの法則は電気回路理論の基本法則ともいえるものです。図2のように $R$ [Ω]の抵抗に電流 $I$ [A]を流した時、抵抗の両端子間の電圧 $V$ [V]は次のように表すことができます。

図2

$V=RI$ … (2)

(2)式は適時次のように変形することができます。

$R=\displaystyle\frac{V}{I}$, $I=\displaystyle\frac{V}{R}$

キルヒホッフの法則

キルヒホッフの法則には、第1法則と第2法則があります。

図3

キルヒホッフの第1法則

回路網中の任意の1点に出入りする電流の総和(代数和)は0となります。これを図3のP点について数式化(P点の入る電流を+とする)すると、次の式で表すことができます。

$I_1+I_2+I_3=0$

キルヒホッフの第2法則

回路網中の任意の1閉回路を考えた場合、閉回路中に含まれる起電力の代数和 $ΣE$ [V]は、閉回路中の電圧降下の代数和 $ΣRI$ [V]と等しくなります。これを図3の♯1閉回路について数式で表すと次のようになります。

$ΣE=E_4-E_7$
$ΣRI=R_4I_4+R_6I_6-R_7I_7$
$∴E_4-E_7=R_4I_4+R_6I_6-R_7I_7$

上式を作る上で注意しなければならないことが2点あります。

  • 起電力は閉回路の方向と同方向のものを正、逆方向のものを負とする
  • 電圧降下は、その抵抗を流れると仮定した電流の方向が閉回路の方向と同じならば正、逆ならば負とする

直流を作る方法

直流を作る装置には、「電池」、「整流器」、「電動発電機」などがあります。

電池

電池には再充電ができないものと再充電できるものがあります。再受電できない電池を「1次電池」、再充電できる電池を「2次電池」といいます。電池は電解液中で物質が化学反応を起こした際に発生するエネルギーを利用したものです。その基本構成は図4に示すように、正極・陰極および電解液から成っています。

図4

図4の場合、陰極亜鉛 $Zn$ は、$Zn→Zn^{2+}+2e^-$ というように $Zn^{2+}$ イオンとなって電解液中に溶け出して、陰極に電子 $2e^-$ を残します。この電子 $2e^-$ は負荷抵抗 $R$ を通って正極 $Cu$ に到達します。そして電解液 $H_2SO_4$ の $H^+$ イオンと結合し、$2H^++2e^-→H_2$ となって、$H_2$ ガスを発生します。

一方で、$H_2SO_4$ の $SO_4^{2-}$ イオンは $Z_n^{2+}$ イオンと結合して、$Z_n^{2+}+SO_4^{2-}→Z_nSO_4$ になります。電池ではこのようにして電子が陰極から陽極に流れることで、直流を得ることができます。

整流器

整流器は、交流から直流を得る装置です。半導体と金属の接合面やP形半導体とN形半導体の接合面が一方向の電流のみを通し、逆方向の電流通過を阻止する性質を利用しています。交流は直流と異なって、時間の経過と伴に電圧や電流の方向が変化するものですが、図5のような交流電源に整流器Dを接続すると、負荷抵抗 $R$ に流れる電流は図5(b)のようになります。この電流波形は電池で得られる電流波形のように平坦ではありませんので、図5(c)のような回路で平坦化を行います。図6に代表的な整流器の構造を示します。

図5
図6

電動発電機

電動発電機は図7に示すように交流電源で誘導電動機などの交流電動機を回転させ、その駆動力により直結された直流発電機を運転して直流電圧を得る装置です。ただし、効率や保守管理の点で不利がありますので、電動発電機を使うことは少なくなっています。

図7
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