同期電動機の特徴と用途【電気設備】

電気設備

これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「同期電動機の特徴と用途」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。

同期電動機とは

同期電動機は、定常運転状態では常に同期速度で回転します。普通は速度制御は行いません。誘導電動機と違 って、直流励磁が必要な電動機です。

同期電動機の特徴

  1. 力率改善をして、力率100〔%〕で運転することができる
  2. 回転速度は、常に同期速度である
  3. 効率は、同期電動機の方が誘導電動機より数%高い
  4. 始動トルクが小さい
  5. 同期引入れの手間がかかる
  6. 始動に手間がかかるので、始動・停止の頻繁な負荷には適していない
  7. 可変速制御は行わない

同期電動機の用途

同期電動機の用途を第1表に示します。表中の負荷が要求するトルクは一応の標準値で、これより小さいとき
も、大きいときもあります。

同期電動機の用途

V曲線

同期電動機の電源電圧と負荷の大きさを一定にして、励磁電流を増減すると、電機子電流は第1図のようにV字形に変化するします。これをV曲線といい、MM′から左側は電機子電流は遅れ電流、右側は進み電流になります。

また、SS′の下側が安定に電動機が運転できる範囲、SS′の上側は不安定運転領域です。

V曲線
第1図 V曲線

同期電動機の乱調

同期電動機の負荷が変わると、その負荷に相当する新しい内部相差角を中心にして振動が起こります。これを乱調といいます。

負荷トルクが脈動する往復圧縮機などでは、乱調が大きくなるので、適当なはずみ車を取りつけて乱調が小さくなるようにします。

同期電動機が乱調を起こしているとき、電機子電流は第2図のようになり、このとき

$\displaystyle\frac{i_1-i_2}{\displaystyle\frac{1}{2}(i_1+i_2)}×100$[%]

を脈動率といい、70%以下にするのが適切であるといわれています。

乱調
第2図 乱調

誘導同期電動機

巻線形誘導電動機と同じような構造をしており、起動時は巻線形誘導電動機として起動します。運転時は、回転子巻線に直流を通じて励磁し、同期速度で回転する同期電動機になります。第1表のように起動トルクが大きい特長があります。

超同期電動機

電動機の軸受が二重軸受になっていて、固定子も軸のまわりに回転子と同様に回転できる構造になっています。起動時は、回転子は負荷を背負っているので重く、回転しませんが、そのかわり固定子がその反発力で反対方向に回転します。固定子が同期速度に達したら、回転子に直流を流して励磁し、固定子のブレーキを締めてゆくと、回転子が加速します。

同期電動機の始動と同期引入れ

同期電動機の固定子巻線は、三相誘導電動機の固定子巻線と同じような巻き方をしていますが、回転子磁極は凸極形と円筒形とがあります。

第3図は凸極形磁極で、励磁巻線の巻かれた磁極面に数本の導体を挿入し、その両端をかご形誘導電動機のように、短絡環に溶接してあります。

凸極形磁極
第3図 凸極形磁極

固定子巻線に三相交流電圧を加えると、電流が流れて回転磁界が発生します。回転子の励磁巻線に直流を流してN・S極を作ると、N・S極が回転磁界に引かれて、回転磁界と同じ速さで回転します。この速度 $N_S$ は、 電動機の磁極数 $P$ と電源の周波数 $f$〔Hz〕で決まり、次の関係式で表わされ、同期速度といいます。

$N_S=\displaystyle\frac{120f}{P}$[rpm]

始動方法

同期電動機の始動法には、自己始動法、始動電動機による始動法、低周波始動法があります。ここでは、自己始動法について説明します。

励磁極面に導体が挿入されていない場合、直流励磁された回転子が静止しているとします。この状態で急に固定子巻線に三相交流電圧を加えると、瞬時に同期速度で回転磁界が回り、回転子の励磁極に非常に早い周期で、吸引・反発作用が働きく、回転子は相当な慣性があるため、回転を始めることができません。

それで凸極形では、磁極面にかご形誘導電動機のように、導体を埋込み、両端子を短絡してあります。こうすると、電源投入時は誘導電動機として始動し、徐々に加速して同期速度の95%ぐらいになったときに、励磁巻線に直流を流してやると、回転子は慣性に打ち勝って同期速度まで速度を上げます(第4,5図参照)。

同期速度に引き込まれるときのトルクは、定格トルクの40~ 50%ぐらいで、引入れトルクといいます。始動時に励磁巻線を開放しておくと、加速中に高電圧を誘起して、絶縁破壊を起こす恐れがあるので、界磁巻線の両端を巻線抵抗の5倍程度の放電抵抗で短絡しておき、同期引入れ後に開放し、正常運転に入ります。

同期電動機の速度トルク特性
第4図 同期電動機の速度トルク特性
同期電動機の始動回路
第5図 同期電動機の始動回路

運転

運転中は負荷の大きさに応じて、回転磁界の磁気中心に対して、回転子磁極の中心がある位相差(電気的遅れ角)を保って回転します。

無負荷のときは、おのおのの磁気中心は合致して位相差0で回りますが、負荷が重くなると位相差が大きくなり、回転子磁極の中心が、固定子の回転磁界N -S間(N極とS極の位相差は180°)の1/2、つまり遅れ角90°の位置までずれると、安定な運転ができなくなります。電気的な遅れ角80°くらいの時のトルクを脱出トルクといいます。

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